空模様が怪しくなったと思ったら予選開始前に雨が降ってきた。
路面状況が悪くなる前にタイムをと考えているのか、誰もが我先にと飛び出しそうな気配を出している。
奈臣もそんな気配を出している1人だ。
予選が始まった。
選手のほとんどが直ぐにアタックを開始している。
ふと見ると、そんな皆の中でもカペタは落ち着いているのがわかる。
たしか雨のレースでは負け無しなんだっけ?
雨のレースは普段とは走り方が変わるからなぁ。
カペタはそっちの走りの方が得意なのかもしれない。
俺はいつもと違う感覚が楽しいから雨は嫌いじゃないけど、それはあくまで走りに関してだけだ。
身体が冷えて体調不良は嫌だしね。
タイムが掲示板に出始めたけど、晴れの日に比べて全体的に良くないのがわかる。
水滴が路面に少しだけ浮かび上がって来ている状態だから、今が一番不意にタイヤが滑り易い状況だからなぁ。
タイムが伸びなくても仕方ない。
でも、そんな状況でもカペタは普段とほとんど変わらないタイムを出してきた。
雨が得意ってのは本当なんだなぁ。
拓海もいいタイムを出してるんだけどカペタほどじゃない。
奈臣は…苦戦してるなぁ。
少しずつタイムは伸びてきたけど、まだ完全にリズムは掴めてないみたいだ。
さて、そろそろ俺もアタックを始めようかな。
能力が示す走りのリズムも掴めてきたしね。
◆
一回目のアタックを終えてピットに戻ったカペタの元にノブが走り寄る。
「いいぞぉカペタァ!今のところ1位だ!」
「ノブ!光介は?!」
「…まだアタックしてねぇ。」
カペタが掲示板に目を向けると、奈臣や拓海のタイムが表示されていた。
「カペタ、見てわかるだろうけど、奈臣と拓海には1秒は差をつけてる。でも…。」
「わかってる。リズムを掴んだら2人のタイムはもっと伸びてくる…だろ?」
「あぁ。」
阿吽の呼吸で互いの意思を感じとる2人のコンビは見事なものがある。
これは幼馴染みの強みと言えるだろう。
だが、それは拓海と樹も同じだ。
「くそっ!拓海のタイムがコンマ1秒まで迫ってきやがった。カペタ、まだタイムを伸ばせるか?」
「うん、さっきのアタックでリズムは掴んだから。」
「よし!」
ノブが拳を打ち鳴らすとほぼ同時に、光介のタイムが掲示板に表示される。
「マジかよ…今の路面でそんなタイムを出すのかよ!?」
光介が出したタイムはカペタのタイムより2秒は速かった。
その現実がノブに対してプレッシャーを与える。
「くそっ!そうなると、やっぱり序盤からか?雨のおかげでタイヤの摩耗はほとんど考えないでいいし…。いや、そうすると最後まで集中力が持たねぇか…?」
「ノブ、予選の結果がどうなっても、俺は最初から行くよ。」
カペタの目には決意が宿っている。
それを察したノブは頭を掻く。
「行けるのか?」
「大丈夫。自分のリズムで走る方が疲れないから。」
「わかった。信じてるぞ、カペタ!」
ガシッと握手を交わすとカペタはもう一度アタックを始める。
そして好タイムを叩き出したカペタは、予選を2位で終えたのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。