転生先がファンタジーとは限らない!   作:ネコガミ

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本日投稿3話目です。


第62話『自信喪失』

全国大会後、カペタは完全に自信を喪失していた。

 

言い訳も出ない程の完敗が、カペタから自信を根刮ぎ奪ってしまったのだ。

 

それでもカペタはレースが…マシンが好きであることは変わらず、ナイトキッズの練習には参加している。

 

しかし、タイムは目に見えて落ちているのが現状だ。

 

「カペタ、ちょっと休憩してこいよ。」

「あっ、うん、わかった。」

 

カペタが休憩に向かうとノブは記録表を手に頭をガシガシと掻く。

 

(全国大会から確実にタイムが落ちちまってる。どうしたんだよカペタ?)

 

奈臣や拓海を引き離して単独2位で終えたあのレースは、ノブにとってはカペタの成長の手応えを感じる一戦だった。

 

だがそれはノブの主観であり、彼はレースに参加した者達が感じた光介との絶望的な差を理解していない。

 

戦略が入り込む余地が無い程の絶望的な差…それがカペタから自信を奪った原因だ。

 

思春期真っ只中での自信喪失故にその根は深い。

 

彼が現状を脱するには先ずは自信喪失の原因と向き合わなければならないのだが、カペタの表面上は常と変わらないのでその変化が分かりにくい。

 

それこそ幼馴染みのノブですら気付かない程に…。

 

しかしそこに拓海と樹が姿を見せた。

 

「あっ、ノブお疲れ~。」

「あっ、樹さん、お疲れっす。」

「どうしたんだよ?そんなに悩んで?この樹様に相談してみろよぉ。」

 

少し迷ってからノブは記録表を樹に渡す。

 

「ん?何これ?なんでカペタはこんなにタイムを落としてるんだ?」

「それがわからないから頭を悩ませてるんですよ。」

 

樹の肩越しに拓海も記録表を覗き込む。

 

「…これはヤバイな。」

 

拓海に言われずともノブも理解している。

 

だからこそノブは悩んでいるのだ。

 

「う~ん…ノブ、カペタは大丈夫なのか?」

「至って健康そのものですよ。ただ、気が抜けてるというかなんというか…。」

 

樹とノブの会話を聞いて拓海は気付いた。

 

かつて自身もカペタに近い状態になったことがあるからだ。

 

「もしかしたら、カペタは自信を無くしちまってるのかもな。」

「えっ?拓海さん、どういうことですか?カペタはあれだけ走れたんですよ?それなのに自信を無くすなんてあり得ないですよ。」

 

ノブの言葉に拓海は首を横に振る。

 

「光介と初めて走った時に俺も感じた事があるんだ。俺とあいつとの圧倒的なスピード差を。」

「確かに高橋 光介は速いですけど、それでも戦略とかでなんとか…。」

「結構きついんだぜ?実力で…真っ向勝負じゃ勝てねぇって認めるのは。特にそれが好きなものでなら尚更さ。」

 

その言葉でノブも気付いた。

 

「カペタはレースが…マシンが何よりも好きだ。じゃあカペタのタイムが落ち込んでるのは…?!」

「たぶん光介に実力じゃ勝てねぇってわかっちまったんだろうな。まぁ、カペタが自分のその気持ちに気付いてるかはわかんねぇけど。」

 

ガシガシと頭を掻いてから拓海は言葉を続ける。

 

「ノブ、カペタを復調させたかったら、無理矢理にでも気付かせねぇとダメだと思う。」

「そう、ですよね…。拓海さん、手伝ってくれませんか?」

「俺は後数ヵ月もしたらナイトキッズからいなくなるんだぞ?それに正直、今は自分のことで一杯一杯なんだ。悪いけど、誰かを手助けしてる余裕はねぇよ。」

 

拓海はノブの肩をポンッと叩く。

 

「あいつのパートナーはお前だろ?だから…任せたぜ。」

 

そう言って拓海は樹と共に離れていった。

 

残されたノブは頭を抱えてため息を吐く。

 

「カペタの心の傷を抉んねぇといけねぇとか…冗談きついぜ。」

 

それでもと決意をしたノブは、休憩から戻ってきたカペタに話し掛けるのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

来週の投稿はお休みさせていただきます。

5月17日にまたお会いしましょう。

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