『さぁ、やってきました!ドキッ!アイドルだらけのカートレース!スピンもあるよ!えっ?真面目に?』
765プロと961プロ合同のカートレースイベントの当日がやって来た。
MCをやってるのは765プロで事務員をしている小鳥さんなんだけど、いきなり台本を無視して盛大にやらかしてる。
でも撮影スタッフの様子を見る限り今のは使うみたいだ。
大丈夫なんだろうか?
『…コホン。さぁ、やってきました!765プロと961プロ合同のカートレース大会!優勝者には黒井社長と高木社長が財力と権力が及ぶ限りの願いを叶えて貰えます!単独ライブを願うもよし!冠番組を作って貰うもよし!思う存分願いを叶えて御二人の財布を空にしちゃってください!』
優勝者には~からの件がまたアドリブだ。
まぁ撮影スタッフは黒井さんが用意した人達だから融通は利くんだろうけど、こんなに自由でいいものなのだろうか?
そう思っていたら出番待ちをしている俺に高木さんが耳打ちしてくる。
「実は音無くんもレースに出たがっていたのだよ。でも今回の企画はまだ新人アイドルであるあの子達の名を売るのがメインでね。元Aランクアイドルである音無くんが出場してしまうと、そっちに話題を持っていかれかねないんだ。」
小鳥さんが出場したい理由というのが、優勝の御褒美を使って765プロのプロデューサーと二人きりでデートしたかったらしい。
「いや、普通にデートを申し込めばいいんじゃないですか?」
「それがタイミング良くというか悪くというか、そういう時に限って天海くんと星井くんの邪魔が入ってね。音無くんはまだ一度も赤羽根くんをデートに誘えていないのだよ。」
音無さんのアイドル紹介が始まっているが高木さんの話は続く。
「音無くんも2…20代だからね。彼女は赤羽根くんとの結婚を本気で考えているのだ。来年には重婚が合法化されるが…知っているかね?」
「まぁ、父から聞いてはいますね。」
「天海くんと星井くんは政治にあまり関心が無いのか、はたまたアイドル業が忙しいせいかそれを知らなくてね。音無くんと赤羽根くんが交際を始めない様に必死に防いでいるのだよ。」
それなら音無さんが2人に教えればと思ったのだが高木さん曰く、『音無くんはアイドル時代に出来なかった青春を楽しんでいるのだよ。』だそうだ。
楽しんでいる筈の青春で溜まった鬱憤をああして晴らすのはどうなんだろう?
「ところで光介くんはどうなんだね?いい相手はいないのかな?」
「興味が無いわけじゃないんですけどねぇ…。」
そう、興味がないわけじゃない。
むしろ興味はある。
非常にある。
でも…どうしたらいいかわからんのよ…。
涼兄ィと啓兄ィに彼女ができたから聞いてみたけど…二人とも縁とかタイミングとしか答えが返ってこないのよねぇ。
それがわからんから聞いてるのに。
「ふむ、光介くんはどういった女性が好みなのかね?」
「う~ん…レースに理解がある人がいいですね。」
「容姿などに拘りは?」
「特には。」
「なるほどなるほど。」
うんうんと高木さんが何度も頷く。
俺が首を傾げていると黒井さんがやって来た。
「高木、なにやら面白そうな事を考えている気配を感じたのだが?」
「おぉ、タカティン。いい勘をしてるじゃないか。」
「タカティンって言うな。それで?何を考えている?」
2人が話し込もうとしたその時…。
「あっ、光介くん。スタンバイをお願いします。」
ADの人が呼びに来たのでそちらに向かう。
そんな俺を横目に高木さんと黒井さんは話し込むのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
申し訳ないですが5月一杯の投稿をお休みさせていただきます。
外出自粛や対策のストレスの影響なのか、ちょっと睡眠が不安定になっていまして…。
6月にまたお会いしましょう。