ファイナルラップに突入した頃にはポジションを4位にまで上げていた。
残るは3人。
トップ争いをしている茂波ちゃん、真ちゃん、千早ちゃんだけだ。
第1コーナーを始め、コーナーを抜ける度に差を詰めていく。
コース半ばで3人を射程圏に捉えた。
アウトから千早ちゃんに仕掛ける真ちゃんに合わせて、茂波ちゃんがインから仕掛ける。
千早ちゃんは真ちゃんを抑えにいったため、茂波ちゃんがインから抜けてトップになった。
俺は茂波ちゃんの後ろについていたが、コーナーを抜けたところで囲まれる形になって動けなくなる。
ちょっと軽率な仕掛けだったな。
ヘアピンが迫ってくる。
真ちゃんと千早ちゃんが仕掛けていったことでラインの自由度が上がった。
俺はマシンを外に振ってアウトコースギリギリをドリフトで滑り抜ける。
コーナーでは遅れたがその後のストレートで追い付く。
トップは真ちゃんに入れ替わっていた。
次のコーナーで千早ちゃんと茂波ちゃんをオーバーテイクしないと、真ちゃんに逃げきられてしまう。
スピードに乗ったまま次のコーナーでは大外から仕掛ける。
茂波ちゃんと千早ちゃんを纏めてオーバーテイクして真ちゃんを追う。
残るコーナーは3つだけ。
1つ、2つとコーナーを抜けて真ちゃんの後ろに張り付き最終コーナーへ。
真ちゃんのマシンがドリフトで滑りアウトに抜けていく。
俺は真ちゃんよりもラインを鋭角にしてインに入り込む。
少しでもミスればスピンしかねない博打的なコーナリングだけど、こうしなければ勝てない。
ホームストレートで加速し、前にいた真ちゃんと横並びになる。
そして俺が僅かに前に出たところでチェッカーフラッグを駆け抜けてフィニッシュ。
流しながら安堵の息を一つ吐くと、俺は右手で小さくガッツポーズをするのだった。
◆
イベントを無事に終えた俺達は、とあるカラオケ店のパーティールームで打ち上げを行っていた。
パーティールームのステージにアイドル達が入れ替わり立ち替わりで立っていく光景は、彼女等彼等のファンからしたら垂涎のものなんだろうな。
おっ?次は茂波ちゃんの番か。
そう思った次の瞬間、俺の両膝は双海姉妹に占拠された。
「本気で走るなんてピカリン大人気ないぞ~。」
「そうだそうだ~。謝罪と賠償を要求する。」
「いや、俺がいなくても真ちゃん達に負けてたと思うけど?」
そんな俺の言葉を二人は耳を塞いでやり過ごすと、今度は雛鳥の如く口を開けた。
「「あ~ん。」」
…二人にアイドルの自覚は無いんだろうか?
大人組で酒を飲んでる高木さんに目線で問うとサムズアップを返された。
…大丈夫か?765プロ?
仕方ないのでフライドポテト等で二人の口に持っていく。
すると…。
「ちょっと光介!ちゃんと歌を聞いてよね!」
茂波ちゃんから抗議が飛んできた。
解せぬ…。
これは俺のせいじゃないのになぁ。
その後、歌い終えた茂波ちゃんと一緒に真ちゃんも来襲し、俺は二人にもあ~んをさせる事になったのだった。
これで本日の投稿は終わりです。
次回からプロ編の予定ですが、その前に主な登場人物紹介を挟もうと思います。
また来週お会いしましょう。