第68話『プロレーサーとしての第一歩』
放送されたアイドルカートレースは好評だった様だ。
高木さんと黒井さんは毎年の恒例行事にしたいと考えているらしい。
それはそれとして、いよいよ俺はマ◯ダの育成ドライバーとして活動する日を迎えていた。
でも…何故か見覚えのある撮影スタッフの姿があるんだけどね。
話を聞くとどうやら俺のドキュメントを撮影するらしい。
えっ?父さんと企業側の許可は取ってる?
俺は一言も聞いてないんだけど?
…まぁ、いいか。
リポーターみたいな感じで茂波ちゃん、真ちゃん、双海姉妹も撮影に参加するから、なんだかんだで彼女達と会えるし。
初日の午前中は講習で終わり、午後からいよいよマシンに乗って練習だ。
軽く1周流したらピットに戻ってセッティングを出す。
そしてセッティングを出したら感触を確かめてからアタックを開始。
ロータリーエンジン特有の甲高い音が耳に心地良い。
1度目のアタックで出たタイムはそこそこといったところ。
シフトチェンジに慣れればもっとタイムを出せる筈だ。
俺は新たなマシンに慣れながら、可能な限り能力が示す走りをしていくのだった。
◆
「凄いな…。」
光介の育成担当コーチになった男が、どんどんキレを増していく光介の走りを見て唸る。
(啓介から聞いてはいたが、光介の事は身内贔屓だとばかり思っていた。だが実際に見てみると身内贔屓ではなく、彼の才能が本物なのだという事がわかる。)
そう考えた育成担当コーチはチラリと撮影スタッフに目を向ける。
(そして本物だからこそメディアも動く…か。昨今の容姿だけを基準に考えた選定じゃないのは確かだろうな。)
彼の目には撮影スタッフに浮わついた雰囲気は見えない。
むしろ車が本気で好きだからこそ、皆が真剣に高橋 光介という男を応援しているのがわかる。
もちろん光介は涼介や啓介の兄弟だけあって容姿も優れているが、そんなものはレースの速さとは関係無い。
故に育成担当コーチの目に映るタイムは純粋に光介の実力なのだ。
(まぁ、それはそれとして…。)
育成担当コーチは撮影スタッフ達と一緒にいる美少女達にチラリと眼を向ける。
(くぅ~!どの娘も可愛いじゃねぇか!流石はアイドルだぜ!)
そう考えていた育成担当コーチだが、しばらくすると彼の目から光が消える。
休憩に入った光介に美少女達が積極的に絡んでいったからだ。
(…だよな。世の中そんなに甘くないよな。)
日本のモータースポーツは男の世界というイメージが強く、女性の比率はかなり少ない。
故に出会いも少ないのだ。
独り身の育成担当コーチの背中に哀愁が漂う。
「はぁ…俺の春はいつくるのやら。」
田上 壮亮 31歳。
マ◯ダの育成ドライバーからプロレーサーとなり、啓介が頭角を現すと共に現役を引退した男である。
そんな彼はそろそろ結婚したいと考えるお年頃なのであった。
本日は3話投稿します。
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