F3シリーズの初戦の日を迎えた。
今日はドキュメント撮影の為に茂波ちゃん達が来ているのもあって、是が非でも勝ちたい。
でもエースは啓兄ィだから、チームの優勝って形で彼女達の声援に応える事になりそうだ。
啓兄ィがエースな理由は単純で、啓兄ィの方がタイムがいいからだ。
アメリカにやって来た初日からマシンのセッティングを出すために頑張ってきたけど、ベストタイムでは後一歩が啓兄ィに届かない。
おれのマシンを整備しているエンジニアの人が言うにはエンジンの差が大きいらしい。
啓兄ィのマシンは時間を掛けてじっくりと調整を重ねただけあって、非常に完成度高く仕上がっている。
それに対して俺のマシンは急造品に近いものがあるそうだ。
とはいってもプロのエンジニアの人達が調整してくれただけあって、凄く走りやすくはなっているんだけどね。
そんなこんなでF3で初めての予選が始まった。
スタッフからの指示でアタックを開始する。
タイムは…啓兄ィのものに1秒届かなかった。
惜しいとは思うけど実戦の場であれだけの走りをして、予選タイムで1位になった啓兄ィは流石だ。
やっぱりメンタルが凄く強い。
尊敬するよ、本当に。
ちなみに俺の予選タイムは4位。
2位と3位はF1チームを持つドイツの有名メーカーの下部チーム。
エースの啓兄ィを援護するためにも、早くポジションを上げないとな。
◆
ピットに戻っていた啓介は、光介のタイムを見て称賛の声を上げる。
「あのマシンの状態でこんだけのタイムを出すか…やっぱ光介はすげぇな。俺には真似出来ねぇぜ。」
この言葉は身内贔屓故ではない。
啓介はプロレーサーとして数年戦っている。
その数年の間にマシンが良くない状態で走った事も一度や二度じゃない。
だからこそ啓介は光介を誉め称えているのだ。
しかしモータースポーツの世界は残酷なもので、どれ程の戦略や技術を見せようとも、マシンの性能差に泣く事が多々ある。
それ故にマネースポーツと言われる事もあるのだが、それでも諦めずに戦い続けるだけの魅力が車にはあるのだ。
「啓介。」
「どうした、監督(ボス)?」
不意に問い掛けられた事で啓介は意識を戻す。
「予報によるとレース中に雨が降ってくるかもしれない。タイヤはどうする?」
「雨か…。」
タイヤ選択も重要な戦略の1つだ。
それ次第で結果が変わる事も少なくない。
「スリックでいこう。連中はレインタイヤで抑えられる程甘い相手じゃないからな。それに、もしレース中に雨が降ってきても、そうなったら光介がカバーしてくれる。」
そんな啓介の言葉にチームの監督は笑みを浮かべる。
「信用してるんだな。」
「信用?違うぜ、俺は光介を信頼してるんだ。雨の日のあいつとやりあえるのは、それこそ音速の貴公子ぐらいだってな。まぁ、レース中に雨が降るかどうかはわかんねぇんだ。なら一番速く走れるセッティングでいこう。」
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。