F3の初戦から表彰台に上がりシャンパンファイトをしている光介に、ドキュメント撮影の一環で現場に来ていた茂波達は拍手を送る。
「雨が降ってからのピカリン凄かったねぇ。」
「あのままトップまで行っちゃえばよかったのに。」
双海姉妹のそんな会話に真が反応する。
「路面コンディションが良い時だと、光介のマシンじゃ厳しいみたいだし仕方ないよ。他のレースでも雨が降るとは限らないんだから。」
「でも、雨が降ってからは光介が一番速かった。」
真の言葉に茂波がそう反応すると皆が頷く。
「流石は亜美の恋人だね!」
「ちょっと亜美、ピカリンは真美の恋人でもあるんだから!」
「真美、その言い方だと僕と茂波は恋人じゃないって聞こえるんだけど?」
そんな仲睦まじい会話が行われてから数日後、日本でF3シリーズを戦っている奈臣の元にレース記者の安達が訪れる。
「安達さん、取材に行ったんやろ?光介はどうやった?」
「エンジンの性能で一歩劣るマシンであの走りは見事だったね。」
奈臣は安達が原稿用にまとめたデータを見ながらコーヒーを啜る。
「雨が降ってからラップタイムが殆ど落ちてへんな…。レインタイヤで走っとったんか?」
「いや、スリックタイヤだよ。」
「そんでこれか…相変わらずのバケモンやな。」
呆れた様にため息を吐く奈臣に、安達は興奮した様子で話す。
「凄かったよ、あの走りは。奈臣君にも是非見て欲しかった。音速の貴公子の再来と言っても過言じゃなかったよ。」
奈臣は適当に相槌を返しながら脳内でシミュレーションをする。
(今のマシンの状態なら光介には勝てるやろうけど、啓介さんには勝たれへんな。雨が降れば紛れが起きて勝てる可能性もあるやろうけど、そうなると今度は光介に勝てへん…ほんま、面倒なチームやで。)
奈臣のチームが参戦しているのは光介達とは違うシリーズなので今シーズンは戦う事はないが、来シーズン以降はどうなるかわからない。
(まぁ、ええわ。今は来週の初戦に集中や。光介に負けてられへんで。)
奈臣の元に訪れた翌日に安達は、今度は拓海を訪ねていた。
「調子はどうだい?拓海くん。」
「素直でいいマシンですよ。コーナーはイメージ通りに攻められます。でもちょっとエンジンの吹けが悪くて、ストレートで勝負出来ないのがきついですね。」
現状を素直に吐露する拓海に安達は苦笑いする。
「記者としては素直に情報を教えてくれるのは嬉しいけど、言っちゃってよかったのかい?」
「親父が言ってたんですよ。プロは見られるのが仕事だって。だから少し情報が渡った程度で負けるなら、元々準備が不足してるそうです。」
そんな拓海の言葉に安達は拓海がどこか一皮剥けた様に感じる。
安達のその感覚は正しい。
拓海は婚約者の沙織がアメリカに旅立つ前日に、2人で朝帰りをしているのだから。
「あっ、これ光介君のレースの情報だよ。」
「ありがとうございます。日本にいるとなかなか海外のレースの情報は手に入らないので助かります。」
その後、拓海との話を終えて帰路につく安達はある事を認識する。
初めて光介の走りを見た時に感じた日本のレース界に黄金期が訪れるだろうという予感が、今日この日に確信に変わった事を。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。