兄弟でワンツーフィニッシュを飾った初戦の後は、ドキュメント撮影を始めとした取材でちょっと忙しかった。
忙しくて少し疲れたけど、チーム全体の雰囲気は良くなったからプラスかな。
そんな良い雰囲気で迎えた第2戦はストレートが多く、ドライバーの技術よりもマシンの完成度を問う様なコースだった。
結果は俺が5位で啓兄ィが2位。
正直に言って今の俺のマシンじゃどうしようもないと感じたコースだ。
情けないことに茂波ちゃん達に愚痴ってしまった。
でも彼女達から返ってきた反応は好感触。
もっと甘えてもいいらしい。
…女性は強いね。
続いて迎えた第3戦は、第2戦とは正反対のドライバーの腕を問うテクニカルなコースだった。
更にレース前から雨が降っていた事で更に俺向きの状態になった。
結果は予選と決勝共に俺が1位のポールトゥウィン。
そしてこのレースでは俺のサポートに回った啓兄ィが2位と、今シーズン2度目のワンツーフィニッシュだ。
シーズンは進んでいき第8戦目。
ポイントでは啓兄ィがトップに立ってるけど、このレースと残る最終戦でライバルチームのエースにトップを取られたら逆転されるという状況だ。
そんな状況で行われた第8戦。
結果は…見事にライバルチームにワンツーフィニッシュを決められた。
これで最終戦では勝つしかなくなった。
啓兄ィがわかりやすくていいって不適な笑みを浮かべていたのが心強い。
そして迎えた最終戦。
俺はスタッフと協力し、マシンを現状で出来る最高の状態に仕上げたのだった。
◆
最終戦の予選で1回目のアタックを終えた俺は、いい手応えにガッツポーズをする。
『光介、ピットに戻ってきてくれ。』
「了解。」
指示に従ってピットに戻る。
すると何やら妙な雰囲気が漂っている。
「どうしたんですか?」
「光介か、いい走りだった。」
「ありがとうございます。」
「それはそれとしてだ。これを見てくれ。」
監督に示されたのは現在の予選順位だ。
1位は俺、2位が啓兄ィ、3位がライバルチームのエースで4位がライバルチームのセカンドドライバー。
「今の状況だと、ライバルチームのセカンドが第1コーナーで啓介にぶつけてくる可能性がある。」
フェアプレーが重要視される様になったのは近年の事で、プロの世界でもまだ浸透しきれているとは言えないのが現状だ。
だからライバルチームが勝つ為にぶつけてくるのを、無いとは言いきれない。
本来ならそれを防げる位置に俺がいるのがベストなんだけど、あいにくと俺の予選順位は現在のところ1位。
「すみません、もっとタイムを抑えるべきでした。」
「いや、光介が気にすることではない。私がもっと早く気付くべきことなのだから。まぁ、言い訳をさせてもらうなら、チーム悲願の総合優勝が目の前まで迫っていて、やはり冷静じゃなかったのだろうな。」
そう言いながら困った様に頭を掻いた監督。
そんな監督の肩にピットに戻って来ていた啓兄ィが手を置いた。
「まだ悲観するのは早いんじゃねぇか?」
そう言って啓兄ィは掲示板を指し示す。
するとそこにはコンマ1秒だが、俺のタイムを上回っていた啓兄ィのタイムが表示されていた。
チームスタッフから歓声が上がる。
盛り上がるのも当然だろう。
何故ならこの土壇場の状況で啓兄ィは、このコースでの自己ベストを更新してみせたのだから。
流石は啓兄ィだ。
悔しさなんて感じないぐらいカッコいい。
「さぁ、後は優勝するだけだ!光介、サポートは頼んだぜ?」
「うん、任せてよ。」
そして挑んだ最終戦の決勝戦、俺達はワンツーフィニッシュでの勝利と共にシーズン総合優勝も成し遂げた。
この日のシャンパンファイトと祝勝会は一生忘れないものになりそうだ。
その後は取材やら何やらでなかなか興奮が冷めない日々が続いたが、俺はプロとして初めての契約更改の日を迎えたのだった。
本日は3話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。