2度目のF3シリーズのシーズン初戦は2位で終わった。
ハッキリと言って完敗だ。
戦略とか技術の前に勝負が決まっていたと感じた。
素直に悔しい。
そういえば後で聞いた話なんだけど、カペタくんが拓海を抜いて3位になったのはいいんだけど、最後のホームストレートでエンジンを壊しちゃったみたいなんだよね。
それでも無名の中小企業のチームがワークスチームを抑えて表彰台に上がったとあって、観客の人達はかなり盛り上がった。
でも、カペタくんのチームはこれからが厳しいだろうなぁ。
ワークスチームと戦えるエンジンを壊しちゃったんだから。
他人事ではないな。
うちは奈臣や拓海のとこの様に強豪のワークスチームとは言えないからなぁ。
だからといって泣き言ばかり言ってられない。
このチームとの契約を選んだのは俺自身なんだから。
そう思っても今年は辛いシーズンとなった。
第2戦は奈臣に完全に独走される形での2位。
第3戦では拓海にも負けて3位だった。
そして第4戦でワークスチームの強さというものを実感する。
奈臣と同じチームの志波と、拓海と同じチームのカイにも負けて表彰台にすら上がれなかったんだ。
レースをやって来て初めての経験に戸惑うけど、それでマシンの性能がそう簡単に上がるわけもない。
だから俺は俺の出来る事をするしかないんだ。
そんな気持ちで迎えた第5戦はレインレースになったんだけど、このレースで独走して優勝すると逆に戸惑ってしまった。
雨一つでこうまで結果が違う事を素直に受け入れられなかったんだ。
エンジンを壊して入賞すら難しかったカペタくんが2位になったりと、色々と荒れて話題を呼んだ1戦だったな。
そんなこんなでシーズンは過ぎていき最終戦を終えると、チームは3位でシーズンを終えた。
俺個人の総合ポイントは5位。
第5戦以降は一度も表彰台に上がれなかった。
悔しい。
啓兄ィがスーパーGTに行かずに残ったのも納得の悔しさだ。
そんな悔しさを抱えながらシーズン終了を迎えると、代理人の人から会って欲しい人がいると告げられたのだった。
◆
「『初めてましてだね。ドイツ語は大丈夫かな?』」
「『はい、日常会話ぐらいなら出来ますよ。』」
「『素晴らしい。それでは単刀直入に言おう。来期、我々が有するスーパーGTのワークスチームと契約しないかい?』」
代理人に頼まれて会ったのは、三角形っぽいエンブレムが有名なドイツにある企業のワークスチームのスカウトだった。
彼はニッ〇ンのマシンを偵察する為に遥々日本まで来ていた1人なんだけど、そこで俺の走りを見て興味を持ったらしい。
正直に言ってシーズン成績は微妙な俺に何でという感じだ。
「『一ついいですか?』」
「『なんだい?』」
「『俺よりも結果を出しているドライバーもいるのに、何故俺を?』」
「『答えは単純だ。君が最も勝てるドライバーだからさ。』」
スカウトの人はニコリと微笑むと話を続ける。
「『今シーズン君が勝てなかったのは、チームが勝てるだけのマシンを用意出来なかったからだ。』」
コーヒーを一口飲んでからスカウトの人は更に話を続ける。
「『第5戦のレインレース、マシンの性能が問われにくくなったあのレースで君は圧勝した。我々が求めているのは、そういう勝てるドライバーなのだ。』」
そんなスカウトの人の言葉を聞いた代理人が俺に声を掛けてくる。
「光介くん、一つ助言させて貰うがこの誘いは受けるべきだよ。メル〇デスと日本人ドライバーが契約を結ぶなど前代未聞の話だ。」
確かに俺も聞いた事が無い。
「この契約が成れば君は勝てるマシンに乗ることが出来る。そしてメル〇デスと契約したというキャリアは、間違いなく素晴らしいステータスになるよ。君がいつまで現役を続けるのかはわからないが、引退後のセカンドキャリアも考えたら、この契約は絶対に結ぶべきだ。」
代理人の言う事は正しい。
それに今シーズンの経験から、良いマシンに乗りたいって思いが強くなっている。
まぁ、今のチームで勝ちたかったって思いも嘘じゃないけどね。
「『この話、受けさせていただきます。』」
そう言うとスカウトが微笑みながら手を差し出してきたので握手をする。
「接骨木(にわとこ)さん、後の細かい話はお願いします。」
「了解だ。マ◯ダ側へも僕が話を通しておくよ。君は御家族や恋人達に話をしてきなさい。」
こうして来シーズンはメル〇デスという一流企業のワークスチームに所属して戦っていく事が決まった。
まぁ、その前に父さん達と話し合わないといけない。
特にマ◯ダ党の家族と話し合うのは少し気が重いけどね。
それでも俺は良いマシンに乗れるという期待に、胸をワクワクさせていたのだった。
本日は2話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。
光介をどこと契約させるか悩んでいたら2話しか書けませんでした…。