人を呪わば恋せよ少女   作:緑髪のエレア

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土御門(旧姓:町田)末那の幕間

 

 ゆっくりと意識が浮上する。

 

 ぼんやりとした意識の中、手を伸ばして掛布団を手繰り寄せ、胸のあたりまで引き寄せる。枕に顔を押し付け、深く息を吸い込むと、自分のものではない匂いがした。

 

 少しずつ、意識がはっきりとしてくる。

 

 何度か寝返りを打ち、心地よい体勢を作っては微睡みに浸ったが、やがて寝ている方がだるさを感じるようになってきたため、私はベッドの上で起き上がった。沸き上がる衝動に逆らわず、口を大きく開けて欠伸をする。両手を頭上に向けて伸びをすると、じんわりと筋肉が伸びて、両腕に血液が巡るような感じがした。

 

 数秒間、そうして筋肉を伸ばす。両腕を下ろすと、ぼんやりと目の前のクローゼットを見つめた。

 よく眠れた。

 私はすっきりとした頭で、十分な睡眠がとれた満足感に浸る。睡眠不足、というわけではなかったのだが、いかんせん目覚めがよかった。頭の中が空っぽになったかのような、脳の配線を丸ごと入れ換えたかのような、そんな爽快な気分だった。

 

 「……起きるか」

 

 ベッドから降り、立ち上がる。背筋を伸ばし、今度は全身で伸びをする。その体勢のまま首を回して時計を見ると、短針が六、長針が十二を指していた。

 六時か。

 昨晩床に就いたのは十時頃だったので、八時間程度寝たことになる。そりゃ爽快な目覚めになるはずだった。

 (……水でも飲むか)

 伸びを終え、ぼーっと突っ立っていた私は、のどの渇きを感じ、ドアへと向かう。初めから設置してあった鍵を開け、ドアを開くと、廊下へと踏み出した。

 

 

 

 

 『パンとお米、どっちが好きかい』

 『え……どちらかといえば…お米です』

 

 そんな会話があったのは、昨日の晩、土御門家における初の夕食が終わり、私が自身の使う部屋をあてがわれた直後だった。無論のことながら、土御門家の家長である土御門小夜と、私との会話である。新しい同居人に、パンと米のどちらが好きか、聞いたから何になるというのか。と昨夜の私は思っていたが、朝餉の匂いにつられて階下へ降りた私は、そういうことだったのかと昨夜の質問の意図を理解した。

 

 ほわほわと湯気を立てる白米が、私の前に置かれている。食卓には他に、みそ汁と焼き鮭と漬物が並んでいる。土地も含めればその時価総額が億に届きそうな豪邸に住む土御門家も、流石に朝食は一般家庭と同様のスタイルらしい。昨夜の質問は、朝食は米がよいかパンがよいかという質問、あるいは、土御門家は朝食に米を食べるがそれでよいかという確認の意味だったようだ。

 

 私は朝食の用意された食卓を眺める。普通の人間ならここで、自分の慣れ親しんだ光景が見られてほっとしたり、あるいは似てはいても慣れ親しんだ味とは微妙に異なることでかえって寂寥感を感じたりするのかもしれないが、あいにくこれまで朝食を食べるという習慣がなかった私は、朝餉にみそ汁や米を食べた記憶がそもそもないため、むしろもの珍しいものを見る気分というか、新鮮な心持で目の前の食卓を眺めていた。

 

 「それじゃ、食べましょう」

 

 小夜がそう言ったため、私はいただきます、と言う。小夜がそうしたように、取り敢えずみそ汁を一口飲んだ。

 (あー…)

 胃がむかむかする。朝食を食べる習慣がなかったからだろう。胃が普段とは異なる時間帯の食事を拒否していた。

 面倒だな。

 私は心の中で思った。

 今から断るのも、これを食べるのも。

 私は少し迷ったうえで、今日のところは適当に終わらせることにした。

 焼き鮭を一口大に切っていく。

 切り終えると、米を口に入れ、咀嚼も程々にみそ汁で流し込む。時折一口大に切った鮭を口に押し込み、それも流し込む。四,五回それを続けると、私の朝食は終わった。

 

 「ごちそうさまでした」

 

 流しへ持っていくため、食器を重ねる。胃のあたりに気持ち悪さを抱えつつ、私は明日から朝食は必要ない旨を告げようと、小夜の方に顔を向けた。

 

 「あの…」

 

 明日から朝食はいらないです。そう言おうとして、私は言葉を詰まらせた。

 

 なぜか。

 

 小夜が、私のことを、とても__本当に、とても、嬉しそうに見ていたからだ。

 

 「…あ、今お茶入れるわね。ちょっと待ってちょうだい」

 

 言葉を詰まらせた私をどう解釈したのか、小夜は席を立ちお湯を沸かしに行く。やかんを火にかけると、棚をあさり茶葉を出す。

 その様子を見ていると、小夜は、しわの刻まれた目を申し訳なさげに下げ、しかし依然として嬉しそうに口角を上げながら、「ごめんなさいね、じろじろ見ちゃって、」と言った。

 

 「黙々と食べてくれるのが嬉しくて…昨夜も思ったのだけれど、末那ちゃんは食べるのが好きなのかしら」

 

 小夜がそう問うてくる。

 

 「あ、いえ、そういうわけでも……昨日はお寿司だったので」

 

 虚を突かれた私は、その問いに本心で答えてしまう。すると小夜はさらに喜色を浮かべて、「そうなのねえ」と言い、にっこりと笑った。

 私は困惑した。

 何がそんなに小夜を喜ばせたのかが分からない。

 黙々と食べてくれたのが嬉しかった?私が食事をしていると嬉しいの?

 なぜ?

 私はそう問いたいのをすんでのところで堪えた。本当に私には、小夜が何を言っているのか、全くもって理解ができなかった。

 黙々と食べてくれて嬉しい?違うよ。あれは、食べるのも断るのも面倒だったから、ただ胃の中に詰め込んだだけだよ。

 食べるのが好き?まともなものを食べてこなかっただけだよ。

 

 あなたが思っているような姿は、本来の私の姿とはかけ離れているよ。

 

 にこにこと笑う小夜を見ていると、自分がとても罪深いことをしたような気になった。ただ、なぜそんなふうに思うのかが全く分からず、私は自分の胸の内が分からなくなってしまった。

 

「……すみません、学校の準備をしたいので、部屋に戻ります」

 

 そう告げ、私は立ち上がる。食卓に背を向け、螺旋階段へと向かった。

 

 お茶、ここに置いておくわね。小夜がそう言う。私はそれに返事を返さなかった。

 私は胸の奥に、もう一度、ちくりと痛みを感じた。

 

 

 

 

『財布を出せ』

 

 ぼんやりとした顔の青年が、パンツのポケットから財布を取り出す。

 4枚だけ抜き取り、青年に返す。ぼんやりした青年は受け取った財布をポケットにしまった。

 顎に手を当て、少し考える。金額も少額だし、わざわざストーリーを作らなくてもいいか。

 

『私を認識してから見聞きした全てのことを忘れろ』

 

 青年は一瞬白目を剥き、すぐに元に戻る。記憶を消去すると、このようなおかしな挙動をすることがままあることを、私は度重なる『力』の行使によって知っている。 

 

『ゆっくり100を数えたら正気に戻れ』

 

 いーち…にーい…と数を数え始めた青年を置いて、私は路地裏を出た。

ビルが立ち並んでいる。まだ七時にもなっていないが、出勤のためか、スーツ姿の男女がちらほらと見えた。

 

 ポケットからスマホを取り出し、時刻を確認する。六時五五分。登校時間まではまだまだ余裕がある。早起きの習慣が抜けず家を早く出たが特にすることもなかったため、手ごろな青年から金銭を拝借させてもらっていた。

 私は友人たちと作ったグループラインを開く。

『8時まで駅前のスタバいるね』

メッセージを送ると、すぐに既読と返信がついた。

『りょ。あと5分で駅着く』

『…zzz(-_-)zzz』

『まじで!?うわーん(涙)もっと早く起きればよかったー!!!』

 私は画面に向かって軽く微笑むと、駅前に並ぶビル群へと足を向けた。

 

 

 

「そういえばさ、末那、なんで今日スタバ行ってたの?」

 

 授業の合間の空き時間。前の席に座る由美が、椅子の上で体を反転させ、背もたれを抱きしめる様にして尋ねてきた。

 

「そういう気分だったんでしょ」

 

由美の隣の席の亜里沙が言う。

 

「えぇ~、そういや、亜里沙も行ってたね。でも、うちらが朝に行くのってあんまなくない?っていうかスタバ自体あんま行かないし…特に末那は倹約家なイメージあるし…ほら、末那ってあんまうちらとカラオケとか行かないじゃん?だから気になって…」

「バイトが忙しいからでしょ」

 

 亜里沙があけすけな由美をたしなめる様に言う。そりゃそうだけど~と不満そうにぼやく由美。確かに、友人たちがカフェに行くと言っていても、私は欠席することが多かった。そんな私が今朝、急に意味もなくスタバに行っていたため、由美は何かあったのではないかと疑問に思ったのだろう。そんな由美をいさめた形になった亜里沙も、そこはかとなく聞きたそうな雰囲気を出していた。

 

「ちょっと色々あって…」

 

 そこで言葉を切り、何と言ったものかと胸中で思案する。正直に全てを話すのは論外として、具体的にどこまでなら言っても大丈夫だろうか。友人に対し生活が大きく変わったことについてどう説明するか、あまり考えていなかったことに、私は今更ながらに気が付いた。

 そんな私の態度が秘密主義のように見えたのか、由美が「末那はそればっかし」と言い、拗ねたように顔を背ける。

 

「こら」

 

 亜里沙が由美を小突く。私は声を上げて笑った。亜里沙と由美が不思議そうに私を見る。

 

「実は、バイト辞めたんだ」

「え、そうなの?」

 

 がばっと体を起こす由美。亜里沙も驚いたように、へえーと声を漏らす。穂香は相変わらず由美の髪をいじりながら、顔だけこちらに向けた。

 

「うん、正確には、これから辞めるんだけど…もうシフトには入らないかな」

「へぇ~」

 

 チャイムが鳴る。

 教師はまだ入ってきていないが、教室内の生徒たちはわらわらと席に着き始める。一人だけ席が遠い穂香は、由美の髪の毛をいじり倒して満足したのか、満ち足りた表情で席へと戻っていった。

 

 私は、反転させていた体を元に戻した由美と、鞄を漁って教科書を探す亜里沙に向かって言う。

 

「だから、結構ひまな時間できちゃって」

 

 由美はすぐに食いついた。

 

「じゃあじゃあ!カラオケ行こうよ!駅前のDAM置いてあるところ!」

「うん、いいよ」

 

 やったー!とガッツポーズをする由美と、それを楽し気に見る亜里沙。離れた席で教科書をめくっていた穂香は、何事かと不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。

 教師が入ってきて、教室内の喧騒が収まっていく。由美は授業中も嬉しそうに、体を左右に揺らしていた。

 

 

 

 

「町田末那さん、好きです、付き合ってください」

 

 放課後、ごみ出しじゃんけんに負けた私が特別棟裏のごみ捨て場に行き、空のペットボトルで満ちた袋を放り投げ、さあ戻ろうと踵を返すと、突然目の前に男子生徒が現れた。彼はごみ出しを終えた私の通り道をふさぐと、唐突に頭を下げ、冒頭の言葉を発したのだった。

 

「あの、俺、何回か手紙、渡したんだけど...読んでくれましたか...?」

 

 目の前の男子生徒が言う。私は彼の発する言葉を音としては認識していたが、人間の話す言語としては認識していなかったため、何か言ったな、という程度にしか、彼の言ったことを理解していなかった。

 

 私はふと気になったことがあり、それを彼に尋ねることにした。

 

「尾行けてきたんですか」

「へ…?」

「学校の決まりで、ペットボトルは分別して、通常のごみとは異なる場所に捨てなければなりません。空のペットボトルは業者が回収していくから、その収集場所は道路に近い、特別棟の裏の奥まった場所にある。そして、通常のごみを捨てるタイミングは学年ごとに揃えられていますが、ペットボトルを捨てるタイミングは、クラスの判断に任されている。私がごみ捨てに向かっているのを目にし、その手にペットボトルの入った袋が見えたため、ここまで尾行けてきた、ということでしょうか」

 

 私は、この男子生徒が、何故私が一人になる場所とタイミングを知っていたのか、それを知りたかった。

 男子生徒は私の言葉を聞くと、一瞬無理解に満ちた顔をしたが、理解が及ぶにつれ何故か傷ついた顔になっていった。

 

「あの、俺たち、同じクラスなんだけど」

 

 私は腕を組み、思考を巡らせた。ということは、今日の掃除当番に私が含まれていることを知り、そのうえで彼自身は当番でもないのに放課後教室に残り、私がごみ出しじゃんけんに負けるところを見ていた、ということか。

 確認のためそれで合っているかと尋ねると、彼は傷ついた表情から一変、不愉快そうに眉をひそめた。

 

「いや、俺も掃除当番なんだけど…っていうか、ごみ出しじゃんけんにも参加してたし…最後に君に勝ったの、俺なんだけど…君がペットボトルを捨てに行って、俺が普通のごみを捨てに行くことになったんじゃん…あのさ、ふざけてんの?」

 

 私は納得した。なるほど、それなら私が特別棟の裏に行くことが分かる。男子生徒は苛立ったように髪を手で払うと、

 

「あのさ…」

「わん」

「え…?」

 

『喋るな』

 

「__っ、__!__っ!」

 

 唐突に喋れなくなり、驚愕する男子生徒。何かを訴えようとするが、金魚がえさを待つように口をパクパクと開閉することしかできない。

 ここは特別棟の裏。周囲に人気はない。ブラバンはごみ捨て場の近辺では練習しない。私はこれを機に、少し『力』の実験をしてみることにした。

 

『苦しめ』

 

 地面に倒れ伏し、胸を掻きむしる男子生徒。血走った眼を限界まで見開き、顔面が異様に紅潮している。首や手には血管が浮き出し、本来なら上げているであろう絶叫は、『喋るな』の命令によって禁じられ、かひゅー、かひゅーと肺がおかしくなったかのような息を漏らしながら、顎が外れんばかりに口をかっ開いていた。

 

『やめろ』

 

 芋虫のように地面を這いずり回り、のたうち回る姿が、想像していたものより10倍は気持ち悪く、私は命令を中断した。

 男子生徒がぴたりと動きを止める。

 

『私が「わん」と言ってから見聞きした全てのことを忘れろ』

 

 言い終わった途端、ぱちぱちと瞬きをし状況を確認する男子生徒。自分が地面に横たわり私に見下ろされているのを確認すると、地面に手を付き立ち上がった。

 

「なにを…」

 

『私に関する一切を忘れ、金輪際私に興味を持つことも、視線を向けることも、話題に出すこともするな』

 

 中腰の男子生徒の脳に命令が染み込んでいく。目の焦点は定まらず、眼球はせわしなく動き、手が少し痙攣する。

 

『あとゲイになれ』

 

 一瞬白目を向き、元に戻る。脇を通りすぎたが、呼び止められることはなかった。

 

 

 教室に戻ると、由美が自分の鞄と私の鞄を持ち、うきうきしながら待っていた。由美はごみ捨てから戻って来た私に気が付くと、子犬のように勢いよく抱き着いてきた。

 

「末那〜カラオケ行こっ」

「うん」

 

 亜里沙と穂香も来るようだ。私たちは校門を出て、カラオケのある駅前に向かう。

 他愛もない話をしている道中、ふと亜里沙が言った。

 

「そういえば、末那、なんか雰囲気柔らかくなったよね」

「そうかな」

 

 微笑んで返すと、由美が勢いよく食いついてきた。

 

「そうだよ!あんま自覚ない?なんか前は…よらば切る!みたいな感じで、いつもちょっとピリついてる感じだったけど、今はなんか…」

 

 うーん、と考え始めた由美をよそに、穂香が言った。

 

「ほんわかした感じ?」

「あ、そう!ほんわかした感じ!穂香みたいな!」

「んふふー。どういうこと?」

 

 あわわわわわと由美が失言した自分の口を押さえる。そんな由美ににじり寄る穂香。じゃれあう二人を微笑ましい気持ちで見ていると、同じく目を細めていた亜里沙が言った。

 

「何か良いことでもあった?」

 

 私はついさっき用意した話を、彼女らにすることにした。

 

「母親が海外に赴任になって、お婆ちゃんと暮らすことになったの」

 

 ふにん?そうなの?ふーんと、それぞれの反応を返す三人。亜里沙が重ねて問いかけた。

 

「じゃあ、今はお婆ちゃんと二人暮らしなの?」

「あ、や、もう一人いる」

「へー」

 

 今後の四人での交流のことを考え、嘘にならないようそう言うと、由美がふと訊いてきた。

 

「もしかしてだけど、もう一人って男のひと?」

「え、そうだけど…」

 

 由美は、やっぱり、と言い、ほかの二人と顔を見合わせる。すると三人はくすくすと笑いだした。

 

「ちょっと、なに?」

 

 私が不満を滲ませて言うと、亜里沙がごめん、と言い、

 

「末那ってほら、なんか男に厳しいじゃん?だから、二人暮らしか聞いたときに、もう一人いるって、他人行儀な言い方したから、そのもう一人は男なのかな、って」

 

 私は自分の顔がこわばるのを感じた。けれどもそれは亜里沙や由美に図星を突かれた不快感からではなく、自分が男に厳しい理由、あるいは原因、を想起してしまい、それらに紐づけられた嫌悪感が一瞬顔をのぞかせたからだった。

 私の顔がこわばったことで、三人の会話がぴたりと止まる。この話題は地雷だと思ったのか、亜里沙が会話の方向を変えた。

 

「や、でも、アルバイト辞められたのは良かったね。すごい大変そうにしてたし」

 

 うんうん、と由美が相槌を打つ。穂香もそやね~と柔らかく言った。

 

「…お婆ちゃんが、しなくていいって。生活に必要な分は出してくれるし、学費も心配するな、って言ってくれたから」

 

 半分嘘で半分本当だ。しなくていい、とは言われていない。そもそも私はアルバイトをしていることを小夜に言っていない。小夜の方でも私がアルバイトをしていることは知らないだろう。ただ、大学の学費については「心配しないでほしい」と言われているので、小夜のおかげで学費を稼ぐ必要がなくなったのは本当のことだった。

 

「そっか、良かった…のかな?」

「お母さんは、海外に転勤になっちゃったわけだし…」

 

 こういった場合に、何と声をかけるべきか。言葉を探してくれている彼女たちに、私は朗らかに笑って見せた。

 

「いままでも家にいるような人じゃなかったから、あんまり寂しいとかはないかな、むしろ、今はいつでもお婆ちゃんがいるぶん、前よりも寂しくないかも」

 

 そしてこれも、半分本当のこと。

 

「…そっか、それなら…」

 

 安心したように胸を撫でおろす由美。ありがとね、と言うと、満面の笑みで「ううん!」と頭を振った。

 

「…お婆ちゃんち、結構大きくてさ。よかったら今度おいでよ」

「え、行く行く~!!」

 

 末那から誘ってくれるの初めてじゃない?と由美がはしゃいだように言い、亜里沙と穂香も行きたいと言う。カラオケを通り過ぎたことに気が付き、来た道を引き返すのは、それから一〇分後のことだった。

 

 

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