Dragons Heart   作:空野 流星

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第十六話 同調(ポゼッション)の真実

 巨大な龍は咆哮を上げる。 それだけで物凄い衝撃波は私を襲ってくる。 天羽々斬を地面に突き刺して私はその衝撃波を耐える。

 

 

「まさか、お兄ちゃん達と戦う日が来るとはね……」

 

 

 もう一度、刀を構え直して龍を見据える。 圧倒的な存在感、膨大な魔源(マナ)の量……正直い、今すぐここから逃げ出したいくらいだ。 それでも私は戦わなければならないのだ。

 

 

「身体強化――っはぁ!」

 

 

 魔法の力で自らの身体能力を強化し、大きくジャンプする。 龍の頭上をも飛び越え、その勢いを利用して思いっきり刀を振り下ろす。

 

 

 ガキン!

 

 

 強力な魔法障壁が私の攻撃を防ぐ。 魔法障壁とは、時空龍達が持つバリアでほとんどの物理、魔法攻撃を防ぐ事が出来るとんでもない物だ。

 

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 

 刀に魔力を思いっきり注ぎ込み更に力を入れる。 いくら強力なバリアでも、壊せない事はない。 一定以上の威力を越えさえすれば……

 天羽々斬が呼応するように刀身を輝かせる。 更に力を増し――魔法障壁を切り裂いた。

 

 

「ぬっ……」

 

 

 龍は慌てて身を引いてその攻撃を回避する。 しかし、私だってそれを見過ごすわけがない。

 

 

「”トルネード”!」

 

 

 魔法を放ち、着地と同時に懐へと踏み込む。 更に刀で横薙ぎの一撃――!

 

 

「ぐぬっ!」

 

「っ、流石に硬いわね。」

 

 

 鱗の硬さのせいで大きなダメージにはなってない! もっと攻めこまないと!

 

 

「天羽々斬の力なら、もっと……!」

 

 

 目覚めてから、私の力は飛躍的に上がっていた。 まともな攻撃魔法一つ使えなかった私が、こんなに戦えるようになっているのがその証拠だ。 理由は分からないが、こんな事になってしまった以上は本当に助かっている。

 

 

「殺す気で来なければ、お前が死ぬぞ!」

 

「――ブレス!?」

 

 

 龍は大きく息を吸い込み――吐き出す! 炎の息(ファイアー・ブレス)と呼ばれる攻撃だ。 まともに受けては消し炭も残らない。

 

 

「魔法障壁を展開して……ジャンプ!」

 

 

 何重にも魔法障壁重ねて展開する。 これでも時空龍の魔法障壁に比べたら木の板みたいなものだ。 最低限敵の攻撃を減衰出来ればそれでいい。 

 今度は刀を龍に目掛けて投げつける。

 

 

「”ファイアボール”」

 

 

 飛来する刀を撥ね退けようと動かした右手に魔法を叩き込む。 一瞬よろけた隙に空中で刀をキャッチして、そのまま左目に突き立てる。

 

 

「”サンダーグレイル”」

 

 

 刀を通して雷の魔法を叩き込む。 これならば内部にもダメージが通るはず!

 

 

「――ちっ!」

 

「発想は悪くない、だが……」

 

 

 急いで刀を引き抜きもう一度距離を取る。 ダメージが無い、という事はないだろうが、正直効いている感じはしない。 やはり小手先の技ではダメなのだろうか。

 

 

「お前の攻撃には迷いがある!」

 

 

 これは、氷の魔法……違う、風の魔法との合わせ技だ! 吹き荒れる吹雪が視界を遮り、龍の姿を掻き消す。

 

 

「私に迷い……?」

 

 

 右側面から風圧を感じ、慌てて魔法障壁を展開する。 鋭い爪からの横薙ぎ攻撃を防ぐが、簡単に吹き飛ばされる。

 

 

「くっ……」

 

 

 手足は――動く。 背中が少し痛むがまだ戦える。

 

 

「もう終わりか?」

 

「……まだまだ! ”ウィンブレイド”」

 

 

 迷って当然でしょうが! 家族を殺すなんて、そう簡単に割り切れるわけないでしょ!

 

 

「はぁぁぁぁ!」

 

 

 風の魔法で吹雪を切り裂き、龍の位置を特定する。 そのまま一気に距離を詰めて渾身の一撃を叩き込む。 魔法障壁を貫通し、龍の左手を切り落とした。

 

 

「いいぞ、もっとだ!」

 

「んぐっ!」

 

 

 腹部に強烈な衝撃が走る。 攻撃が来るのが分かっていたのに対処出来なかった……

 私の身体は勢いよく地面を転がっていく。

 

 

「お前の力を見せてみろ、エリカ!」

 

 

 あばら骨が何本か折れちゃったかな……? ――血を吐き出しながらゆっくりと身体を起こす。 龍は先程までと比較にならない魔源(マナ)をかき集めている。

 

 

「流石に、これはまずいかな……」

 

「ゆくぞ――”ニュークリア”」

 

 

 あぁ、これは流石にどうしようもないかも……

 収束していく光、これが爆発すればきっと跡形も残らない。 回復魔法は使っているが、この攻撃から離脱するには少し時間が足りない。

 

 

「翡翠……」

 

 

 その名を呼び空に手を伸ばす。 その瞬間、私の目の前で爆発が……

 

 

「――待たせたな。」

 

「ぁ……」

 

 

 目の前には見慣れた姿の龍がいた…… 身を挺して爆発から守ってくれたのだ。

 

 

「来たか。」

 

「俺抜きで始めるのはおかしいんじゃないか?」

 

「……」

 

「エリカ、動けるか?」

 

「……うん!」

 

 

 ――翡翠の背中に飛び乗る。 彼の温もりが、思いが、流れ込んでくるような感じがする。

 

 

「よし、一気に決めるぞ。」

 

「もちろん!」

 

 

 痛みも、恐怖も、何も感じない。 翡翠が一緒にいてくれるだけで、こんなに安心出来るなんて知らなかった。

 

 

「ついにそこまで登り詰めたか……こい!」

 

 

 互いの魔力が重なり合うのが分かる。 二つが一つになって、大きく膨れ上がる……!

 

 

「いくわよ……龍の息吹(ドラゴン・ブレス)

 

炎の息(ファイアー・ブレス)

 

 

 二つのブレスが衝突し合う。 地面が割れ、突風が巻き起こる。

 

 

「いっけぇぇぇぇ!!」

 

 

 ――均衡は崩れ、龍の息吹(ドラゴン・ブレス)が炸裂した。 同時に轟音が響き、爆発で発生した煙が辺りを包む。

 

 

「……」

 

「……見事。」

 

 

 煙が晴れると、そこにはボロボロになった龍が倒れていた。

 

 

「お兄ちゃん……」

 

「さあ、伝えた事は覚えているな?」

 

 

 ――翡翠は徐々に兄の元に近づく。 継承の儀を終えるための最後に儀式、それは……

 

 

「分かってるよ、私も翡翠もね。」

 

「ならば、いい……」

 

 

 翡翠は右手を振り上げ、心臓目掛けて突き刺す。

 

 

「んぐっ…… すまないな、エリカ……」

 

「お兄ちゃんの、馬鹿……」

 

 

 翡翠はソレを掴むと、一気に引き抜いた。 それと同時に巨大な龍は兄と琥珀の姿へと戻る。 二人は静かに眠っている……

 

 

「エリカ……」

 

「仕方ないよ、いつか来るべき日が今日だっただけ。 さあ翡翠!」

 

「あぁ。」

 

 

 引き抜いたソレを、翡翠は丸呑みにした。

 

 

「これで、継承の儀は終わりよ……」

 

 

 大粒の涙が、頬を伝っていった……




~同調(ポゼッション)の真実~
奏者達が目指す究極の状態。
その真実は、龍二体分のエーテル器官を利用した完全融合状態の事である。
そのため、どんなに奏者と龍の絆を極めようと到達出来る事は無い。
絶対数が少ないのも、継承の儀で特殊なエーテル器官を継承しなければ使えないからである。
このエーテル器官はある意味操縦席のようなもので、予め人間が入り込むようになっている。
これは風の谷の伝説に登場する、村に落ちて来た時空龍のエーテル器官を加工したためである。
これは族長の間で引き継がれてきた事で、族長とその相方の龍にしか知らされていない事である。
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