こちら対魔忍特別諜報室   作:零課

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前回のオカマ魔女や混沌の一日が予想外との感想が多くてなんだか嬉しかったです。これからも楽しめるように細々と作品を書いていければと思います。


~専用垂直離陸機内部~


華奈「さて・・・ナディアさん。これを」
(端末とイヤホンを渡す)


ナディア「? ええ。ありがと。使い方は・・・」


災禍「ああ、これはですね・・・」


拳志「しっかし、俺も何となく読めてきたが、大胆だねえ。前金は一応この機体にも積んではいるが、予約なしじゃ怒られるかね?」


華奈「どうでしょうね。まあ、私が謝りますし、穏やかな人です。無下にはされないでしょう」




ひどい連鎖

 「さて・・・と。アサギさん。桐生さんからの返事はどうですか?」

 

 

 移動を済ませた私たちは一度休憩がてら専用機の中でテレビ電話を開始。桐生さんもフュルストに文字通り死にかける事態にあっていたのですがもう復活。それを理解した上で浩介君の解析を依頼しておいて、とりあえずの結果を聞くことに。

 

 

 あの人だけでやれるのであればそれに越したことはないですし、こちらも気が楽ですから。

 

 

 「無理のようね・・・」

 

 

 「駄目だな。ここの猿の肉体に絡んでいる呪詛や魔術の類が肉体や精神に密接に絡んでいるせいでさすがの俺でもできない」

 

 

 ひょっこりと顔を見せた桐生さんも渋面を浮かべてはっきりと駄目だという始末。あの鬼才がそういうあたり本当にすさまじいものですねえ。

 

 

 「なら、私の今から提案する手段では可能ですか?」

 

 

 「ほう? 言ってみろ華奈。前の紫と俺とさくらをあのふと眉騎士から逃げた時のように笑えるものかどうか聞かせてみろ」

 

 

 あちらも師のフュルストにやられっぱなしは癪なようでぶっちゃけ紫さんの秘蔵写真を見せた時張りのテンションで食いついてきました。ちょうどいいです。専門家がこうもノリノリだと私も意見を出しやすい。

 

 

 「魔術や呪いも、その対象に与える影響や変化のプロセスがあります。その手順を仕込んだ術式が魔術で、効果を書き込んだのが呪いでしょう?」

 

 

 「ああ。そして、俺の見立てではこのきったねえミートボールへの・・・ぶべらっ!? に、にくだんぼへの・・・肉体の変化にも魔界医療のみならず魔術や呪詛が絡んでいる・・・うぐご・・」

 

 

 アサギさんの見事な右ストレートで吹き飛んで、前が見えねえ状態で戻ってきた桐生さん。アサギさん・・・今から一番働いてもらうかもな人にその扱いはちょっと・・・

 

 

 「で、魔界医療のみならず、魔術や呪いが邪魔なら、それをどうにかする専門家と、その相手の技術を利用しようと思いまして。はい。というわけで今回私がお呼びしたゲストはこちら。アミダハラにお住いの大魔術師ノイ・イーズレーンおばさまです」

 

 

 「はいどうも。やれやれ。華奈ちゃんが土下座するほどの頼みだからと来てみればこれとはねえ。騒ぎに事欠かない娘だよ」

 

 

 「「ノイ・イーズレーン!!?」」

 

 

 「ああ、私の茶飲み友達です」

 

 

 「このばばあに世界中のおいしい茶葉をくれてねえ。いろいろ話をしてくれるので助かっているよ」

 

 

 ノイおばあさまを画面の中に映すと画面の向こうで画面外のメンバーも驚いていました。まあ、そりゃあそうですか。実際、今人間界に出ている魔族の中でもトップの一角ですし。更には私とノイおばあさまの茶飲み友達宣言でさらにひっくり返っている始末。

 

 

 ちなみにノイおばあさまはいつものお店から出てアミダハラの少し外れのほうに来てくれています。一応対魔忍のトップに情報を与えるのは嫌でしょうしね。ま、とりあえず協力は取り付けられましたし。説明を始めましょう。

 

 

 「桐生さんの口ぶりからも魔術や呪詛さえどうにかなれば後は治療できる。ならばノイおばあさまの力で呪詛や術式を出してもらい、私がそれを斬る。ただし、完全に斬り捨てるのではなく浩介君をこの状況にしたプロセスを逆転できる程度に緩め、ノイおばあさまに術式を書き換えてもらいます」

 

 

 「私も魔界医療でここまでのは驚いたが、魔術や呪詛はどうにでもなる。華奈ちゃんの技術で概念を一部切ってくれればどうにでもなるさね」

 

 

 医療ならフュルストレベルはそうはいないでしょう。ですが魔術や呪詛ならこちらの、アミダハラトップの、魔界でも指折りの魔術師のノイおばあ様。魔術や呪いを十八番とする魔術師たちにはかなわないでしょう。

 

 

 「で、その後は本来の肉体にフュルストの魔術や治療で肉団子から戻ってく浩介君の肉体ですがこの強引なやり方。それによる肉体の損傷や不具合を桐生さんがその天才的腕前で重要度の高いものから治療。そして、今回は助手をつけようと思うのですが」

 

 

 「助手?」

 

 

 「魔界の踊り子ナディアさんです。彼女の踊りで桐生さんの活力と体力を常に最高潮の状態にキープ。必要度の低いものをナディアさんの踊りで治療してもらうことで桐生さんは必要な場所の身を常に治療し続け、更には常に最高のコンディションで挑んでもらいます。さて、桐生さん。これなら可能ですか? ああ、踊りが気にならないように防音素材を織り込んだマジックミラーで壁を用意しますし、桐生さんは指さしてくれればナディアさんもやってくれるので」

 

 

 「私も華奈からもらった人間界の音楽を聴いてノリノリで踊れそうな曲をチョイス出来たわ。華奈の教え子を救う準備はばっちりよ!」

 

 

 ナディアさんも画面に映ってにっこりとほほ笑む。おお。数百曲とりあえずチョイスしておきましたがよかったです。踊りの振り付けももう考え始めていますし、問題なさそうですね。

 

 

 「くっくくく・・・・・・・・っはははははははははは!!!! ああ、最高だな華奈!! やはりお前は面白い!! 紫には負けるが実にいい女だよお前は! それほどのおぜん立てを用意してくれるパトロンはいなかったぞ。よかろう! この桐生様に任せるといい。そこの馬鹿な猿なんぞすぐさまいつもの腑抜け顔に戻してくれる。あの大魔術師に魔界の踊り子、そして地獄の番犬を交えた特別オペ。今から心躍るというものだ」

 

 

 「そ、それで!? いったいどうやって浩君を移動させるの!?」

 

 

 「今はアミダハラからここまで縮地で移動できるようになっているので私がまずはそこに移動。そして浩介君をもって再びアミダハラに。そこで私とノイおばあさまで呪いと魔術を解除。その後はナディアさんを抱えて縮地でまたそちらに移動させて今度はナディアさんと桐生さんで治療。私はノイおばあさまに今回の件での報酬を渡すためにまた戻りますがね」

 

 

 「そのために私達に用意させたのね。やれやれ・・・」

 

 

 「これほどのものを・・・」

 

 

 今回のノイおばあさまの報酬として静流さん謹製の薬に私のポケットマネー数億。そして魔族との戦いで奪ってきた魔界の品物数点。中にはなかなかのものもありますが、浩介君のためなら惜しくはありません。静流さんたちはさすがに価値がわかっているので思わず息をのんでいましたがね。

 

 

 「さ、ノイおばあさまを待たせています。始めますよ?」

 

 

 早速縮地でまずはアサギさんたちの前に移動して浩介君をもってすぐさまアミダハラ、私たちのいた場所に移動。机の上においてノイおばあさまに目配せするとすぐさま魔術で浩介君にかけられた魔術と呪詛の術式を具現化させる。

 

 

 素人目でもわかるほどに悍ましい雰囲気ですねえ・・・私には理解できない不可思議な文字や記号が浮かび上がり、揺らめいているのですが色やそういう術だということもあって尚更おっかない。

 

 

 「ここと・・・ここを華奈ちゃんは切ってくれ。後は私が行う」

 

 

 「はい・・・・・・・フゥー・・・・・」

 

 

 ノイおばあさまに指摘された場所を斬るように指示され、一度目を閉じて意識を集中。魔術や呪いを斬り捨てた経験は幾度もありますが緻密な技術で術式を一部だけ壊すというのは私もあまりない経験。感情に蓋をして、心のさざ波すらもけしての静寂・・・

 

 

 「シィッ!」

 

 

 そこからの無数の剣戟を一瞬で魔術、呪詛に向けて振るい、どちらも先ほどまでのおぞましさが嘘のように静まり返る。

 

 

 「さてさて・・・これなら楽なものだわね」

 

 

 ノイおばあ様も私が剣を振るった後にすぐさま術式を組み替えていきました。空中に映し出された文字がまるで水の上に浮かぶ文字がゆらゆらと動いていって変わっていく様はなかなかに変わった光景です。その後はノイおばあさまがハンズアップをして珍しいウィンクを飛ばしてくれたので浩介君とナディアさんを抱きしめてから縮地で五車学園、桐生さんの研究室の前に移動。

 

 

 「お願いします」

 

 

 「私も手を貸すわ!」

 

 

 「待っていたぞお嬢様方。ナディアはあやめとここから入れ。紫。魔界医療を見るいい機会だぞ」

 

 

 「ならば私はナディアの護衛に一緒にはいろう」

 

 

 ナディアさんをあやめさん、紫さんに任せ、桐生さんは浩介君をもってすぐさま治療のために奥に入り込む。あそこまでやる気満々な桐生さん。始めてみましたよ。いやほんと。

 

 

 「静流さん。時子さん」

 

 

 「はい。物はここに」

 

 

 「薬品・・・とはいっても植物の毒や汁。単品では役立つかも不明なものだけどね。いいの? 私からはこれで」

 

 

 花の静流。その毒や技術で用意されるものはノイおばあ様も気にしていましたし、調合などで使うのでしょうね。これらを受け取り、専用のトランク、アタッシュケースにしまい込んで金品も用意して再びアミダハラに縮地で移動。

 

 

 「これを・・・ノイおばあ様。今回の頼みのお礼・・・報酬ですね・・・お受け取りを」

 

 

 「おやおや・・・私も華奈ちゃんの概念斬りや縮地という神仙術を見れたし、マカオとジョマの件もある。ただでもいいんだよ?」

 

 

 「こういうのは信頼と信用。そして十分な対価、報酬が必要です。今後も貴女様を頼るかもしれません。その時もどうぞ信頼してくれるための投資でもあります。ですから、どうぞお受け取りを・・・」

 

 

 魔と戦う組織である対魔忍。その頭領の補佐をしている私ですからね。ここまでしてくれるリスクを飲んでくれるというだけでも破格のもの。それを組んでくれたかノイおばあさまはにっこりとほほ笑んでくれて

 

 

 「なら、ありがたく受け取るわね。あ、でもこのばばあには重いから運んでくれないかねえ? 茶でも渡すよ?」

 

 

 「ありがたく・・・本当に助かりました」

 

 

 その後は拳志、災禍さんと一緒にノイおばあさまと一緒にしばしお茶をしばき、拳志もノイおばあさまに気に入られたり、災禍さんは小太郎君への慕情を見抜かれてほほを赤くしたり、アドバイスを貰ったりしてイキイキしたり、いいものを見れました。

 

 

 ふぅ・・・私も、なんだかようやくまともな時間を過ごせた気がします。

 

 

 お茶を飲み終わった後で専用機に乗り込んで私たちはノイおばあさまに見送られながら五車の里に戻り、ちょうど治療を終えた桐生さんの高笑いとナディアさんが私の所に駆け込んでのハイタッチ。今はアサギさんとさくらさんたちが話をしているので私は桐生さんから結果を聞くことに。

 

 

 「早い話があの下半身猿は今からリハビリをするが・・・ナディアの補佐のおかげで神経系の治療もほぼほぼ完了している。数日間のあの肉団子生活と変化を戻すため最低向こう3か月はリハビリ漬けだろうさ。俺にとっても治療魔術などをああも高めれば効果を見込めると収穫も大きかったといえよう」

 

 

 「そうですか・・・ふぅぅう・・・・・」

 

 

 とりあえず治療は成功。しかもあれだけの目に合っていながら数か月で復帰可能。助かりましたよ・・・

 

 

 「それと、あの劇薬で後付けされた忍術を使い続けたせいだろうよ。火遁系忍術に目覚めていた。そこも付け加える。さてと・・・華奈。映像を寄越せ。わかっているだろう?」

 

 

 「わかっていますよ。はい」

 

 

 その後は少しにやついた笑みでクイクイと手招きする桐生さん。やはり気づいていたようで。私からも映像の入った端末を渡す。中身は映像記録に残しておいたフュルストの魔術や呪詛が元のものから私の剣技で切り崩され、書き換えられることで変わったものが映っています。なんやかんや魔界医療に組み込める呪詛や魔術。このデータをもとにフュルストの技術を研究。ものにしてさらに自分の腕前を磨くのでしょうね。

 

 

 まあ、紫さんが手綱を握っている間は大丈夫でしょうけども・・・

 

 

 この後はさすがに疲労がどっと来たので校長室の私が作業する席で腰かけていると目の前に朧さん・・・もといマダムさんとアスカさんが・・・どうしてここに!?

 

 

 「あら。マカオとジョマの討伐をしたでしょう? その祝いと何やら忙しいようだし手を貸そうかと」

 

 

 「アミダハラも今沸きに沸いているからね。あの大物を倒したって。それと、ナディアもいるんでしょ? 魔界でも指折りの穏健派。ぜひとも会いたくって」

 

 

 あー・・・そういえば同盟を組んでから一部ですが出入りを許可していたんでしたっけ。そういうことならばと体を起こして資料とナディアさんを呼んで・・・

 

 

 「華奈ちゃん! 浩君がしゃべれるようになったわ! 本当の忍術も目覚めて、元通りに戻って本当に・・・アスカ!?」

 

 

 あああぁあああああぁあ!! もう・・・もう!! 五車の襲撃に関しては教えるつもりでしたけど、なんでこのタイミングで!? 五車の失態+頭領同士の色恋の喧嘩とか・・・守りのゆるい組織とは手を組めないと同盟破棄されても文句言えないですよお!!! アスカさんたちの過去もあって尚更・・・!!

 

 

 「ちょっと・・・? どういうことかしら? 浩介が・・・私の弟みたいなやつが・・・説明しなさいアサギ、華奈先生」

 

 

 すぐさま事情をなんとなく察して戦う目つきになったアスカさん。マダムさんも頭を抑えつつも頭領を守るために戦闘態勢を整える。はあぁああ・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、その後は五車へのノマドの襲撃があったことにアサギさんの攻略に浩介君を利用されたことなどなどを伝え、その後は任務でヘンダーランドにいた私によって偶然救出されたことを全て包み隠さず伝えました。その後桐生さんによるチェックで被害はアサギさんと浩介君だけで済んでいることも報告。(室井に治療された経験のある人物全てをチェックしたそうで。何でも私へのお礼だとか)

 

 

 当然これにブチ切れかけるアスカさんにアサギさんは謝りつつも浩介君は私のもの宣言で井河VS甲河が発生させそうになったりで大変でしたがマダムさんと私で抑え込み、その後は二人は一度災禍さんとたまたま来ていた小太郎君。静流さんと拳志で宥めてもらい、私はマダムさんと改めて同盟の打ち合わせ。

 

 

 結果から言えば互いの届かないところに手を貸し合うという取り決めは破棄。そして一定期間はノマド関連の任務以外では一切手を貸さない。そしてその協力する際も私の部隊や教え子、ふうまでも宗家クラスの相手でなければだめ。もし駄目なら災禍さんや天音さんの義手、義足の補充も切るとか。あちらは技術を握っていますし、災禍さんや天音さんは義手の具合で生活にも支障をきたしますし本当にそこは頑張りました。

 

 

 かつてお二人、ひいては甲河の悲劇を思い起こさせるような事態、もとい失態をしてなおここまで譲歩してくれたのは私たちがマカオとジョマ、そしてフュルストと偽朧を一日で撃退、封印。そして浩介君に関してもどうにか戻せたりした手際を評価しての事。ぶっちゃけ完全に切られるかと思っていたので幸いですが・・・それでもまた同盟の結びつきは遠のく・・・はぁ・・・・・

 

 

 最後に、大失恋かましたアスカさんを小太郎君やみんなで慰めるために飲み会に移行。ナディアさんと私の踊りを宴会の肴にしつつもさりげなくアスカさんの気持ちを持ち直せる効果のある踊りにしておいたりとしておきましたし、アスカさんにも同盟の件は私たちの功績からもそれでいいと承諾。

 

 

 気丈で明るいアスカさんがあそこまでおいおいと泣きじゃくるのは本当に浩介君を愛していたんですね・・・小太郎君もみんなも必死にアスカさんを宥めていたりしていましたし。

 

 

 ・・・はぁ・・・子供たちには明るく、笑顔でいて欲しいために頑張ったのにこの体たらく・・・だめですね・・・私も




同盟も崩壊危機。切り抜けられたのは本当にギリギリです。ぶっちゃけノマドの大幹部を撃退する功績を見せなかったら即切られていたくらいに。

ナディアの踊りでの回復治療に操って躍らせたり、元気にしたりなど本当に多彩。これを踊りだけでやるんですから戦闘に本気で回したらどれほどおっかないのやら。

華奈のヒーロー、戦士の在り方ってどれに近いと思います?

  • ウルトラマン
  • 仮面ライダー
  • こち亀
  • クレヨンしんちゃん
  • スーパーヒーロー戦隊

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