こちら対魔忍特別諜報室   作:零課

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~五車学園・校長室~

静流「あんたねえ・・・・・・このアへ顔アサギが・・・」

拳志「さすがにあの場であの発言はねえだろ・・・頭領である前に女を選ぶのは」

アサギ「う・・・・・・」

静流「はぁ・・・もういいわ。過ぎたことはしょうがない。とりあえず、あんたは山本長官とフュルストの潜入ルート、その利用した政治家どもを洗い出しなさい。私たちは私たちの仕事をするし」

拳志「また大将は動きだした。俺たちはそっちの補佐にうつる」

静流「華奈さんもきっと怒らない。だから私もこれ以上は怒らないわ。けどね。今回の件は必ずみんなの心に大きな波を起こすわよ・・・井河にとっては濁流に等しいものが。アサギ、貴女も頭領。やるべきことをしなさい」


地獄の番犬。眠りに

 暗い・・・暗い場所で、冷たい。いやな場所だ。一歩歩くたびにぴちゃりと水音が響くせいもあってか暗い洞窟の中を歩いているような・・・そんな場所を一人歩く。すると。何かが足先に当たる。人のような・・・

 

 

 「!!?」

 

 

 それは人。アサギさん。いや、アサギさんだけではない。さくらさんも、紫さんも、不知火さんも、時子さんも天音さんも、災禍さんも、拳志も、小太郎君も、紅さんも、ゆきかぜさんも、骸佐君も、凜子さんも・・・みんな、みんなが倒れていた。心音も、呼気も何も聞こえない。死臭、血の匂いだけ。

 

 

 「起きてください! おきて・・・みんな起きて・・・! な、なん・・・間に合わなかった・・・??」

 

 

 手の届く範囲で手当たり次第に皆の肩をゆすったりしていくも、起きない。冷たい身体がただただ揺れるだけ。膝をついてゆすっても、足にべちゃりと暗すぎて見えないが血がつくだけ。

 

 

 その地面の血であろうものがアサギさんのそばで何かの形を成す。それは・・・異形の胎児。それだけじゃない。無数の怪物が、異形が、みんなを食べようとしている。胎児は私に近づいてきた。

 

 

 「いや・・・ごめんなさい! ごめんなさい!! 私の教え方が間違っていたから・・・! 守れなかったから・・・! ごめんなさい・・・ごめんな・・・「カナ・・・」いや、いや・・・こんなために・・・」

 

 

 救えなかった子供が私に訳の分からぬ言葉を吐いてくる。でも、わかる。呪詛だ、恨みだ。生まれることすらできなくて、道具のままで終わって・・・

 

 

 こんな未来のために教えたわけじゃない。救うために仕事をしたのに、皆を育てたのに。こんなことなら、私一人が死んだ方が、私が関わらなければ・・・

 

 

 「華奈!! 起きて!!! 謝る必要はないの!」

 

 

 「ごめ・・・・・・ぁ・・・・・ゆめ・・・?」

 

 

 「華奈・・・また悪夢を見ていたのよ・・・大丈夫・・・? 華奈・・・泣いて・・・」

 

 

 地獄のような光景から目を覚まし、何度も見た自宅の自室。その天井と、心配そうな目で私に抱き着いてきたナディアさん。

 

 

 ほほを伝う水の感覚と、滝のような冷や汗、そしてナディアさんが私に抱き着いて背中を撫でて、心配そうな声で慰めること。まただ。またあの悪夢を見た。

 

 

 「もう・・・何度目でしょうかね・・・」

 

 

 あの一件以来、やるべきことのために休日も何もかもを返上しての奔走の日々。仮眠を取っても、昼寝をしても、一度寝てしまうとあの悪夢を見てしまう。そして一緒にナディアさんがいれば今のように起こしてもらい、その後はナディアさんの踊りで活力を回復してもらってまた動く日々。

 

 

 「わからないわ・・・でも、本当にもう限界よ華奈・・・頑張らないで・・・私は貴女が・・・ほら・・・もう、身体も震えて・・・」

 

 

 そのさなか私と一緒に動くことでナディアさんの信頼も五車の里内で獲得し、その踊りでのヒーリングを活かして学園での緊急の校医としても働いてもらっていたりした。私なんかを心配して、こうして優しい瞳で語り掛けてくれることでわかるというもの。ナディアさんの言う通りふと自分の手を見るとカタカタと震えて・・・いや、身体全体が震えている。

 

 

 「潮時・・・でしょう・・・ね・・・・・・凡才がよくやれたものです」

 

 

 震えを抑えるために握りこぶしを作ってもろくに力が入らない。対魔粒子を抑える薬も使っていないのにそれ以上に力が入らない。精神の疲労か、その影響が肉体にも及んだか。

 

 

 これ以上居続けるのは無理。ナディアさんの言う通り。限界なのでしょう。ちょうどやることも終わった。いいタイミング・・・ここまで持ってくれたと私の身体に感謝です。

 

 

 「ナディアさん・・・ふふ。もう大丈夫ですから・・・また、寝ましょ。一緒に・・・ね?」

 

 

 「ええ・・・分かったわ」

 

 

 しっかりと笑えているかはわからないけど、一度シャツを脱いで新しいシャツに着替えてナディアさんと一緒に短い時間の間添い寝をしてもらうことに。ありがとう・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・というわけで新任の校医ですが私のかかりつけの女医さんを五車の総合病院から出向。新条 友奈さんを新任として学園で働いてもらいます。フュルストの事もあるのでノイおばあ様や五車の技術を使って肉体への罠がないかのチェック。家に関しても元が対魔忍の家系。精査もしっかりとしました。私の教師としての後任には東堂 紗也子さんに復帰してもらいます。

 

 

 私の部隊は拳志に隊長の座を譲り、以降は彼の指揮で動きます。ナディアさんも私の監視の下で五車の訓練の日々週3で治療のアルバイトを行うことに。セキュリティーですが政府やツヨシ工業の技術。米連、ノイおばあさまのノウハウを生かしてアップグレードをしました。

 

 

 私の持ち得る資産も70%を拳志に譲渡。これで第二九郎隊、わた・・・拳志の諜報部隊は最低20年フルで動いても問題はありません。それと、マカオとジョマの討伐に関してのことを活かしてナディアさんの領地とアミダハラの魔女のお歴々からオリハルコンをはじめとした金属を各種1t購入してきました。加工方法はこの書類に・・・これでこのヘンダーランド及びフュルストの責任を果たした。と考えてよろしいでしょうか?」

 

 

 「ええ。むしろ、それ以上に凄いことをしたわね。華奈ちゃん・・・」

 

 

 あの騒ぎから5日後。華奈ちゃんは文字通り休む間もなく各地を飛び回ってヘンダーランド、及び浩君の事でのセキュリティー問題を痛感しての更なるアップグレード、もろもろの問題のために奔走していた。

 

 

 私は私で山本長官へ室井を寄越した連中の洗い出しと処罰をしたし。互いに忙しい日々だった。いつも以上に。

 

 

 浩君は流石に私への事やそれからの五車、ひいては対魔忍への影響を考えれば斬り捨てるべきだったのでしょうけど、華奈ちゃんもかばってくれて、五車の里には浩君を介してのフュルストの罠にはまった。とだけ。肉体関係については箝口令を事実を知っているメンバーに頼むことでどうにかなった。

 

 

 あの後はリハビリを終えた直後に罰としてツヨシ工業への出向とその後は元米連だけど今な日本に住んでいる超日本好きの退役軍人のヘリントン? とヴァン? だかの軍人と九郎の元上官にして特殊部隊ですらも鬼教官と呼ぶほどの人物の元で5か月のしごき。更には沢木家にはどんな功績をあげても向こう10年は昇格は無し。浩君もこれらのことが終わっても私、そして幹部たちには接触は最低3か月は禁止となった。命が救われただけでも良かったけど、これは私個人には堪えた。けど、同時に仕方がない。それほどの出来事だったのだもの。

 

 

 「ありがとうございます・・・そして、これを受け取ってください。アサギさん・・・」

 

 

 力なく微笑んだ華奈ちゃんはその後スーツの懐から二つの辞表を私の机の上に置いた・・・

 

 

 「私、船坂華奈は対魔忍、そして教師としての責務を果たす自信がなく、今回の責任を取れたこと、および仕事の引継ぎが出来たことを出来たとしてこの度引退したいと思います。・・・・・・この10年と少しの間・・・素晴らしい出会いと、私を拾ってくださり、見てくださり。ありがとうございました。アサギさん・・・」

 

 

 ボロボロと泣きながら頭を下げ、部屋を出ようとした華奈ちゃんの腕をすぐさま私はつかんでとめた。

 

 

 「待って・・・お願い華奈ちゃん・・・やめないで・・・勝手なのはわかっているけど・・・お願い! まだまだ貴女の力が必要なの・・・!」

 

 

 「自分の頭領も、拠点も、教え子も守れなかった無能に何を求めるのですアサギさん! もう、もう駄目なんです!! 脳筋思考は根本から変えられず、私が部隊を作っても不知火さんの旦那様や多くの実力者、仲間を数十人も救えなかった! 何度も何度も政府の膿を吐き出しても今回の事件も政府の手引きでああなりましたし・・・私以上の後任を見つけて動かすべきなんです!」

 

 

 振り払おうとする華奈ちゃんの腕をつかんで、背中から抱きしめていく。いつもなら華奈ちゃんの技術や常時発動型忍術のパワーですぐさま振り払えるかもなのに・・・まるで力が入っていない。それほどに消耗して、疲労しているのに引き留めるのは心苦しいけど・・・でも、本当に彼女以上の補佐、代わりをこなせる対魔忍は本当にいない。

 

 

 「華奈ちゃんの実力も、振る舞いも、成果も出せる人間は本当にいないの! 貴女を待っている、信頼している人達もいなくなることで動揺するかもなのよ! それに、拳志に静流、不知火も貴女がいないと最悪辞めるかもしれない程なのよ!! 時子も・・本当に、本当に貴女の代わりはいないの!」

 

 

 ひたすらに誰かのために戦い、愛し続けたその振る舞いや、人の可能性を見出す能力、姿勢は多くの人に影響を与えてきた。そして、この事件の全貌を知っているメンバーで華奈がいなくなれば、拳志や静流も仕事はするだろうが、何時抜けてもおかしくないし、不知火も華奈ちゃんの部隊ならばと参加している。時子も華奈を潰すような組織でやるつもりはないと教師はともかく対魔忍としては抜けると言ってきたし・・・

 

 

 作戦立案能力や諜報能力。部隊編成能力など私やさくら、むっちゃんにないものを助けてくれる彼女は本当にもう、対魔忍の精鋭中の精鋭だ。

 

 

 「うぅう”~~!!! でも、でもぉお・・・うっ・・・っあ”ぁ”あ”あ”・・・~~~~~!!?!」

 

 

 「お、落ち着いて華奈ちゃん! ごめんなさい! でも、でも今貴女が離脱したら間違いなく対魔忍の組織はもろくなるから、思いとどまって!!」

 

 

 感情が爆発して半ば壊れていった華奈ちゃんにむっちゃん、さくらの説得も入って最終的には教師、対魔忍どちらとも本人が望むまでの間休職ということで落ち着いた。

 

 

 さくらも泣きながらの説得だったし、むっちゃんも華奈ちゃんを見て悲壮な表情だった。そして、私も、酷なことをした自覚はある。けど、それでもしないと・・・とりあえず、拳志と九郎を呼んで今後の動きについて相談しないと。華奈ちゃんがまた元気になった時に何の心配もないような場所を作るために。

 

 

 それと・・・時子にも言われた話も進めておいた方がいいかしらね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・はあ!!?? なんでだよ紫先生! 意味が分かんねえぞ!?」

 

 

 「そういわれるのも仕方がない・・・だが事実なんだ」

 

 

 「なんで先生が・・・ヘンダーランドの功績をあげて、また政府の毒も吐き出した。あれだけの人が何で・・・!」

 

 

 「おい・・・校長や先生が無茶ぶりしたんじゃねえだろうな・・・!!」

 

 

 銃兵衛に骸佐が紫先生に今にもつかみかかろうとし、凜花先輩は顔を真っ青にして不安がる。華奈の教え子たちをまとめた特別クラスに持ち込まれた特大級のバッドニュースに俺・・・小太郎も動揺を隠しきれない。他のクラスでも同様の話がされているせいで学園中がざわついている。当たり前だ。2週間前にはエウリュアレーを撃退。5日ほど前にはヘンダーランドの魔女の二人組を撃退。更には朧、フュルストも撃退した功労者が大けがをしたわけでもなく、敵に掴まったわけでもないのに期限不明の休職。

 

 

 学園きっての名物教師にして出自不明ながらも人格と実力でだれもが認めるアサギの、最強の補佐を務める傑物が突然のほとんど引退したような状況。不安や混乱を覚えるのは仕方ない。

 

 

 「華奈先生・・・先生・・・なんで・・・」

 

 

 「ふうまちゃん・・・これって・・・もしかして」

 

 

 「ああ・・・多分。ちょっとまえのあれだよな・・・」

 

 

 紅も死にそうな顔をし、蛇子も不安そうな顔をしてこそこそ耳打ちをしてくる。ヘンダーランド後の室井・・・もとい、フュルスト、浩介の事件。あれのことで華奈先生が数日前に泣きながら学校を飛び出したことだが、あれで本当に心が壊れたのかもしれない。責任感の強く、優しい華奈先生の事だ。室井の事や長期学園、里を開けたことで隙を作ってしまったと思い詰めていてもおかしくない。

 

 

 「た、確かに任務後にフュルストの事もあったが・・・疲労がたまったこともある・・・今は休ませて、とりあえず今後の事を考えてもらうつもりだ」

 

 

 「紫先生たちがま・・・華奈先生を酷使しすぎなんじゃないの!? だって、何度も華奈先生に救援してもらっていたらしいじゃない! しかも裏方の仕事も。私何度も先生が家で書類仕事で遅くまで起きているの見ているわよ!! 私が手伝おうとしても気にしないでいいわよ。って優しく寝かせて・・・」

 

 

 「うっ・・・! し、しかし実際あの方法が現状でベストで・・・」

 

 

 とうとうきららまでも紫先生に食って掛かり、教室の様子は混とん状態だ。このクラスのメンバーはほぼ全員が華奈先生と10年以上も共に過ごした。若しくは何らかの形で家を助けてもらったやつらがほとんど。そのメンバーに姉、親のような人物があれだけの功績を上げた直後にほぼほぼ引退に近い休職を対魔忍、教師共にしましたと言えばこうなるのも必然。

 

 

 「それで!? 華奈先生はどこにいるのよ! 私たちで何とかできないか聞かないと!! だって・・・まだまだ恩返しも、何もできていないもの!」

 

 

 「ああ・・・! 紫先生。ぜひとも教えて欲しい。あの人は、本当に私たちにとっては本当に親・・・大恩人なんだ」

 

 

 ゆきかぜ、凜子も食って掛かり、周りのクラスの生徒も押しかけての大混乱。ちょうどいいと紅に目配せして俺と紅はこっそりと教室を抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「~~・・・♪ ・・~~・・・」

 

 

 「先生・・・やっぱりここだったんだね」

 

 

 「・・・小太郎君・・・?」

 

 

 学園の屋上。華奈先生が1年だけここの生徒だった時期、華奈先生は屋上でよく考え事、ぼんやりとしていたと聞いたことがあったからと来てみれば華奈先生の鼻歌が聞こえて、いたと理解できた。最も、その歌は力なく、悲しい色を含んでいたけど・・・

 

 

 大人数で来なかったのは一気にあの人数にもまれては混乱したり、動揺するかもということで一番会いたいだろう紅だけを呼んでの移動。

 

 

 「華奈先生・・・大丈夫ですか? あの後・・・結局数日も会えなかったし・・・・・」

 

 

 「ごめんなさいね・・・仕事が忙しくて・・・ほっ・・・おっとと・・・あはは・・・」

 

 

 紅の声も聴いて華奈先生も屋上の貯水タンクの部分から降りてきて、ふらついた後に見た華奈先生を見て。ぞっとした。

 

 

 美しい蒼の瞳はよどんで血走り、くまもひどい。あのきれいな肌も荒れに荒れ、銀糸の髪もぼさぼさであの美しさは影もない。精根、肉体共に摩耗したのだろう。体も骨と皮と思う程に細く、どれほどこの数日間思いつめていたのかがなんとなくわかってしまう。かすかに屋上に吹く風だけで倒れてしまいそうなほどに儚い印象を受ける。

 

 

 「華奈先生・・・その・・・大丈夫ですか・・・? 教師も、対魔忍も・・・休職するって・・・しかもいつ戻るかもわからない・・・」

 

 

 「ええ・・・私・・・先生ね・・・もう、対魔忍としても、教師としても自信がなくなっちゃったの・・・でも、ナディアさんとみんなの校医のアルバイトでは来るから、その時には学園でお話しできれば・・・」

 

 

 「先生・・・まって・・・お願い・・・先生みたいないい先生はいないの・・・だから、だから・・・今は休んでいいから戻ってきて。先生・・・」

 

 

 ははは。と力なく笑う華奈先生に紅が抱き着いて震える声を絞り出していく。あの弱りようを見て、華奈が、憧れの人がこうも弱り切った姿に耐えられないのだろう。そして、華奈のいない生活を考えると怖いのだろう。もう、華奈先生は俺たちの生活に本当に深くかかわっているから。

 

 

 「紅さん・・・でも、ダメ教師で・・・実力もない私が・・・」

 

 

 「先生は弱くない! ダメ教師じゃない・・・! だって・・・だって何度も私たちを強くして、みんなが認めて・・・」

 

 

 「先生・・・俺は、どこか先生を救世主とか、無敵の英雄みたいに思っていました。ふうまのために部隊も、資金も動かしてどうにか今の体制を作って・・・みんな・・アサギ校長やみんなを助けて、大物を何度も撃退したりして・・・でも、やっぱり先生は、俺たちと同じ人なんですよね」

 

 

 「うん・・・それにね・・・私、何十名も救えなかったの・・・だめよね・・ほん”どぉ”・・・」

 

 

 カタカタと震える手で紅を抱きしめながら涙を流していく華奈先生。救援部隊。増援をしているせいだからとはいえ、救えなかった対魔忍たちを思い出して、それもより自責の念に駆られているのだろう。誰よりも優しい分、尚更に。だけど・・・

 

 

 「駄目じゃないです。救えなかった命はありますが、それ以上に数百名の対魔忍、仲間を、未来を救っています。それに、ダメ教師じゃない! 先生だからいまだ忍術が使えない俺でも前線で戦えるほどの実力を手にできた」

 

 

 「わ、私も自分の邪眼に・・・幻庵お爺様から免許皆伝されて・・・わ、私の出自も、血も受け止めて、気にならなくなるようになってきました。先生には心身鍛えられて、教えられて、ゆきかぜも、骸佐も凜花もきららも鹿之助も・・みんなが先生のおかげで強くなった! 先生・・・みんなの強さは、成長は間違っていますか・・・?」

 

 

 「いいえ・・・もう。みんな・・・立派で・・でも、でもこれ以上私が教えたらと思うと・・・怖くて・・・そのせいで失うのが嫌で・・・」

 

 

 「俺たちは先生の教えが間違っているとは思いません。力がなくても、心で、発想で戦うことを教えてくれました。仲間と一緒に力を合わせることの素晴らしさも・・・そして、つぶれそうなときは、誰かに支えてもらうことも」

 

 

 「力を持ちながらも、誰かを守るために振るうことの素晴らしさも教えてくれました・・・先生・・・あのバーでの救出に、アンダーエデンで私たちを用いてくれたこと、ハロウィンで何もわからない任務でも笑顔で出来たこと・・・もっと・・訓練も、ご飯も・・・全部私にとっては最高の思い出なんです・・・! この恩を・・・返したい・・・先生の助けに少しでもなりたい・・・! 遅くなったけど、今からでも、少しでもいいから・・・だから・・・いなくならないで・・・先生・・・! いやなの・・・大切な人が・・・会えなくなると思うのは嫌なの・・・」

 

 

 紅もとうとう涙を流し、お願いだから。と何度も何度も繰り返して抱きしめる力を強めていく。おそらく、一番華奈先生を想っていて、慕うのは紅だ。そして、過去の任務失敗でのあの時の記憶・・・いろいろ。思い出して、そのたびにうつる華奈先生の姿を、笑顔を思い出しているのだろう。

 

 

 「小太郎君・・・紅さん・・・えぐっ・・・うう・・・! 私なんかで・・・わだぢなんがでいいのぉ・・・」

 

 

 華奈先生も紅に支えてもらっているような形で今にも崩れ落ちそうなほどになって涙を流す量が増えている。でも、その表情はさっきまでの消えてしまいそうな儚いものじゃなくて・・・嬉しい時のそれに近い。もう少し・・・もう少しかもしれない。

 

 

 「先生は俺たちに、少なくとも俺にとっては永遠のヒーローです! だって、時子姉も災禍姉も天音姉も、骸佐も比丘尼さんも、みんな・・・みんなに笑顔ができるようにして、くそおやじの反乱があってもこうして井河と手を結べている! 俺にも・・・目抜けなんかの俺が前線での強襲任務や偵察、裏方もこなして、目抜けだの落ちこぼれだの言われても気しなくなったのは先生の日々の教えや応援があったからです! 今は休んでください、先生。今度は俺たちが先生を支えます! それだけの教えを貰っていると証明します! だから・・・今は自分を労わってください・・・本当に・・・毎日頑張りすぎていたんです」

 

 

 「私も・・・先生にお世話になった分必ずその成果を見せます! ご飯も、掃除も、任務も、裏方も・・・全部、全部できるようになったんだって・・・だから、だから先生・・・今は休んで、心から元気になってまた私たちに授業をしてください! いろいろ教えてください! 今度は私が先生の心を曇らせる雲を晴らします。勇気や優しさを捨てないように一緒に支えます。だから・・・だから先生は・・・休んでください。先生は・・・私にとっても救いのヒーローなんです・・・」

 

 

 「・・・・う、うぅあ・・・あふっ・・・・おぶぅ・・・うぁ・・・いいの・・・ね・・・ありがと・・・あでぃがどぉ・・・おおっ・・・おぉぉぉおン! ンオングゥウグウウウ・・・ひぐっ! ぉおぉ・・・おぉお・・・あっ・・うぁあああぁあぁぁ~~~!!! うわぁあああぁああ・・・・!」

 

 

 結局、この後完全に泣き崩れて、紅の胸の中で子供の様に泣き続ける華奈先生を、紅はそっと抱きしめ、俺は背中をさすりながら慰めていた。その声を聞きつけてか俺たちのクラスや、紫先生。他のクラスの連中まで押しかけてるような大騒ぎ。そんな中で華奈先生は糸が切れたように眠ってしまい、最後は俺がおんぶして自宅まで送った。

 

 

 すごく細くて、小さな体なのに、どれほどのものを背負い続けていたのか。泣きまくって、顔中汁まみれの顔を紅がハンカチでぬぐって綺麗にしてみると、本当に憑き物が落ちたように安らかな寝顔をしていて、ようやく俺たちも安心できた。そんな俺たちを迎えた居候のナディアさんが出迎え、ここ数日の様子を聞いて、どれほど思い詰めていたか、精神的に参っていたかを聞いて紅やゆきかぜ、きらら、銃兵衛は涙を流すほど。

 

 

 ただ、その様子を見ていたナディアさんからも今の華奈先生の寝顔は本当に安らかで、問題ないと言って柔和な笑顔を見せてくれる。 

 

 その笑顔を、今度は疲れの残っていない、くま一つない笑顔で見れるように頑張ろう。俺たちは全員その場でそう心に決めた。




 華奈、今回は本当の休職。しばらくは病んでいるせいで精神がより不安定に。ちなみに華奈が見ていた悪夢は親しい人、仲間、教え子たち全員の死体+ウルトラマンネクサスにて斎田リコが部屋中に描いていた不気味、かなり怖いスケッチの数々を想像していただけるとわかりやすいかと思います。


 ウルトラマンネクサス。あれが朝にやっていたというのが今でも信じられません。いろいろ凄すぎる。そしてガンバルクイナくんがまさかのグリッドマンでポーチとして出てくるとは思いませんでした。


 小太郎にとって華奈はヒーロー、ないし本当に救世主だと思っていると考えてくれれば幸いです。ぎりぎりウルトラマンネクサス。ないし仮面ライダー。とかでしょうけど。ぶっちゃけえげつない手も使うのでダークヒーローに近いでしょうし。


 今更ですが拳志が呼び捨てされているのは本人からのリクエストです。部下だし、この立場にいるのは大将のおかげだし。呼び捨てが俺にとっては嬉しい呼ばれ方なのよん。と。


 しばらくは華奈先生休職編。かなり長めになるとは思いますがそれでもネタは放り込めるよう頑張っていきたいです。

華奈のヒーロー、戦士の在り方ってどれに近いと思います?

  • ウルトラマン
  • 仮面ライダー
  • こち亀
  • クレヨンしんちゃん
  • スーパーヒーロー戦隊
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