華奈「・・・というわけでまあ。エドさんとさしで話してきますよ」
さくら「えええぇっ!? ちょっ!? なんでこんなことになっているのよ!? 政府も断ろうよそれぇえ!! 罠とか、思わないの?!」
若アサギ(クオンに変装中)「いえ・・・さくら。日本政府直々、しかも首相のサインまで入ったものなのでなかなか難しく・・・しかも、内容も表向きは世界有数の大企業ノマドのCEOと日本有数の大資産家の華奈さんの今後の投資や株主との意見交換という形になっていまして」
時子「むしろ中華連合と米連に挟まれる日本としては国籍を超えて活動しているノマドの財力を引き込めたり、今はしたがっておく振りを選んだのでしょうね。私と拳志さんで調べましたが」
拳志「あちらの大将。この会談のために相当あれこれやったみたいでなあ。有名企業をいくつか買収と大量投資。政府にも少なくねえ金が流れた。新政権になってばらまきやらで懐が寂しいあちらさんにはうまい話しかなかったってとこだ」
静流「私も独自で探ったけど、実際国益にはなっているからあちらからすれば下請け組織の新顔一つ。アサギや小太郎君とか名門、伝統もない華奈さんならと天秤にかけた結果でしょうねえ・・・後、間違いなく魔界都市での裏取引が出来ないことで金欲しさも多分に」
紅「・・・先生、私が護衛を務めましょうか?」
きらら「私も行くわ! 新スーツなら吸血鬼の攻撃だって」
華奈「ハイストップ。下手に刺激しては大変ですよ紅さん、きららさん。そして、拳志たちの言う通りでしょうねえ。ともかく、あちらから動いてきてくれたのです。私達対魔忍でもその風聞でしか知りえない部分が多いエドウィン・ブラック。その人となりを知ることはノマドと今後戦うことや、どう対応するかを知るいい機会です。行くしかないでしょう」
あやめ「・・・ですが、危険すぎますし・・・政府は軽く見ているのでしょうけど、華奈さん。貴女の存在はすでに・・・」
アサギ「正直、私も反対したいけど・・・」
華奈「まあまあ、最悪逃げやすい場所で話しますから。場所はこちらからでの指定で大丈夫ですので。んー・・・ここでいいですかねえ。せっかくの会話。楽しくできるほうがいいでしょう」
さくら「・・・華奈ちゃん。そこまで危機感を感じていない?」
時子「感じている上であれなのでしょう・・・はぁー・・・さくらさん。少し手を貸してください。やりたいことが」
「ふむ・・・潮風が心地よい」
華奈とのサシでの対談を頼んだエドウィン・ブラック。場所や時間に関しては華奈に任せたところ手紙が華奈に届いた数日後、とある砂浜に足を運んでいた。昼下がり、心地よい陽光を肌に浴びながら名前に負けない黒いスーツ姿で普段はコンクリートジャングル。性欲まみれの部下、暴走しがちな幹部たちから離れて、まあ遠巻きにいるのは感じられるがあれこれ考えずに歩ける時間の中砂に靴底が少し沈む感覚と潮風の涼しさ、海の波の音を楽しみつつ聞きながら歩くことしばらく。
「おや、お疲れ様ですエドさん。おお、頼んでいたものもばっちりですねえ」
砂浜で華奈が釣りをしており、釣り人の格好といけす代わりのバケツには釣果と思われる魚が泳いでいた。
更には側に巨大な寸胴鍋が火にくべられており蒸留水でも作っているのか湯気が立っている。
「まあ、こういう機会はなかなかないからな。さて、と・・・」
その鍋の近くに椅子代わりだろうか。おかれていた巨大な流木に腰を下ろし、手にもっていたスーパーの袋を砂浜において息を吐く。こうして華奈とエドウィン・ブラックの話し合いは始まった。
「ん・・・よし。かかった!」
エドさんに頼んでおいたお使いも無事なようで安堵しながら私はこの話し合いのための食材を用意中。いやはや、私専用のプライベートビーチ。ここを使えてよかったです。すぐそこが深いので釣りもできますし、普段は立ち入り禁止にしているのできれいですし、いい漁場でもあるんですよね。季節になれば漁師の皆様に開放したりもしますし。
いま釣り上げた魚と今までの釣果を見て数も十分。糸を巻いて竿を片付けて今度はまな板と包丁を取り出していきます。さっくりと解体しないとですから。
「さてさて・・・刺身と素揚げと~♪ ああ、そうです。護衛の皆さんには食べさせますか? どうにも遠巻きで見ているようですけど」
「何、お互い様だろう? それに、いま私たちは一対一で話をしに来たのだ。余計な気遣いもいらぬ世話だ」
「違いないですね。失礼。お、エドさん、いい味噌を知っていますね。これ、中々セール対象にもならないですし」
魚を捌きながらエドさんの取り出した味噌を見ていると高級志向のデパートなどで見かけるレベルの味噌が。なんとなく匂いを感じていましたが、いやはやいいものを。ありがたいです。
で、さすがに話しながらの食事。しかも互いに表も裏でも資産やら立場で卑怯な手段を、今回の場合は毒殺や暗殺を警戒して互いに護衛がつくと譲らず、けど距離を取っている形になってます。エドさんは匂いと気配からして魔界騎士団のトップが数名。此方はさくらさんと時子さんがさくらさんの忍術で影に紛れて潜伏。あやめさんが1キロ先から狙撃支援。その護衛に不知火さんと拳志がついている状況。もう一つのサポートにナディアさんと亜希さん、望月さん。
後はどう動こうとも相手の人となりを見れるので録画もしていたり、私の服にボイスレコーダーを忍ばせておいたりと互いに警戒をしながらの話し合いとなりました。学生組も私も行くと言い出しましたが却下。暴走を万が一にでもされては大変ですし、特にきららさんと紅さん、ゆきかぜさん、凜子さんあたりは特に怖いですし。
最近は少しづつ減ってきていますが本当に対魔忍は脳筋具合がすごい。アサギさんも最近は落ち着いてきましたが何かあればすぐさま単身で救出に飛び出そうとしていたりと、救援任務の経験が浅いのに、しかもプランはガンガン行こうぜを素で選択するのはどうしたものか。私の授業でも忍術と才能でどうにかなるぜと戦闘訓練以外さぼる人もいるくらいですしもう・・・
「うちの騎士団に聞いてみればこれがいいだろうと言ってくれていてな。最近、自炊やら裁縫などまあ・・・花嫁修業のようなものをしているものが多いのがここで助かるとは。互いに支え合い、階級を気にしない輩も出ていてな」
「いやはや、いいことではないですか。それに、実際理にかなっているのでは? 自分の身体を作るご飯に、身を守り、騎士の証を示す装備や衣服を自分で面倒を見れるぐらいの技術を持つというのは」
「ふむ。魔界騎士になるのは大体が支配階級、貴族にあたるがそういうものか。歴史でも部下のために自ら手を貸した、傷の手当てをした将軍が中国にいたというしイングリットの発案と聞いているがそこから学んだのだろうかね」
呉起、項羽あたりですかね。しかし、なんやかんや私たちを見下していた節もあるイングリットさんが古代中国の傑物から学んでいくですか。変なこともあるものですねえ。この変化が私たちに立ち向かうための鍛錬というかそういうたぐいのものじゃなければいいですが。魔族のハイスペックゆえの慢心や油断もこちらが付け入るタイミングですし。
ただまあ、項羽に目を付けたのは納得といいますか。あれ、本当に人かといいたいくらいに滅茶苦茶な存在ですから。
「人も魔族も似たような物です。能力のあるなしを除けば戦乱の歴史もありますし、変わり種もありましょう。強さ弱さを抜けば似たような出来事から学べることもあるのでは?」
「いやはや、耳の痛い話だな。人の文化、娯楽も確かに素晴らしいものが多いと最近分かってね。ゲームや書物。実に楽しませてもらっている。いや、むしろ魔界のような弱肉強食がある程度薄れている部分もあるせいか娯楽の幅広さ深さは驚くばかりさ」
「そりゃ、人ですもの。金に女に快楽だけじゃないです。というか、それだけだったら私たちの世代にバトンがつながる前にそちらに征服されていますって」
魔界と人間界の不可侵。暗黙の了解とはいえそれが前まであったことやナディアさんはそれを破ることを後ろめたく思っていたことを見ると人と魔族の交流や戦でどちらにも大きな被害や何らかの影響あってこその部分もあるでしょうしね。それに、うん。エドさんらがいる日本。昔っから色々ぶっ飛んでいる文化が多いですし。今の文化のノリなんて江戸時代から変わらない部分ばかり。更には魔改造もお手の物。
そうこう思っていると魚の切り身を煮た味噌汁と煮物が完成。後はお茶もできましたし、うん。いいころでしょうね。
「さ、ご飯にしましょうか。いただきます。魚の味噌汁に煮つけ、素揚げ、お茶。酒は少ししてから魚のひれ酒にしますが、熱燗がいいですか?」
「ああ、まだまだ夕方からは冷えるもの。それにワインなどでは味わえないあの酒の味もいいものだ。しかし、これが庶民の味わいというものか」
海水を沸かして用意した蒸留水で作ったメニューとエドさんに買わせていた油で揚げていた魚。これを目の前で煮沸消毒した食器に盛り付けて焚火を囲んでご飯を頂きます。
ううん。いい味。流石天然ものと、普段人を入れないので脂もよくのっています。エドさんは熱燗の味を思い出しつつも今日のメニューに少し不思議そうな目を向けていました。
「そうですねえ。ですが、堅苦しい部屋に閉じ込められず、毒殺の心配も少ない採りたての食材に水で作った料理。明かりは海を照らす満月の明かりと星々。私はこれも一種の豪華な食事といえるとは思いますが、いかがですか?」
「そうかもしれないが、こう言い切ってくるのは珍しいな。ん・・・悪くない。酒も・・・温まるな。芯からくる」
なんやかんや生まれてから貴族で、才能もあって王侯貴族張りに不自由ない生活なので野外でキャンプの食事に近いこの状況を少し不思議に思いつつもなんやかんや楽しみつつ、酒に手を伸ばして飲み始めたエドさん。やれやれ。好物を我慢できない子供の様で。
「それに、料理はそちらのお嫁さんやメイドさんが料理したことを見たりはしないのですか? ・・・楓さんも、そちらの手の中でしょう?」
「ああ。しかし基本私が気が付いたときに運ばれているか、メイドが気をきかせてしっかりと時間どおりに朝は運ばれるからな。見たことはない。それと、楓か。今は私の妾だよ。娘の、君も会っただろう? フェリシアに殺されたことで人間をやめてしまってね。まあ、互いに今は愛し合っているよ」
「・・・・・・そうですか」
この際に聞いておきたかったと子を聞いておくとエドさんは少しのろけの空気を出して笑いながら味噌汁をすすっています。私の場合は付き合いもないですが紅さんとの関係や、幻庵さんの事を考えるとどうにも複雑で仕方ないです。この事を伝えるべきかどうか。写真でしか顔を知らず、娘の事も気に欠けることをしていたかわからない相手に対してのことにどうにも悲しさや不快感はわきますが、逆上するほどではないですし・・・まだ抑え込める。
「ああ、そういえば君と紅は付き合っているんだったね。となれば私が義父さんになるわけだが、祝辞でも送ろうか? 私は二人の交際は認めるが」
「んー・・・でしたら、今度機会があれば楓さんと紅さん、幻庵さんに会わせてあげて、話をできる時間を作ってあげてください。フェリシアさんは私と何名か護衛がいないと話もできなさそうですし、まずはそちらから」
「構わない。では今度の話の際にでも都合しよう」
「感謝します。貸しの一つ。使ったことにしていいですよ」
「いや、まだ貸しにしておいてくれ。家の事でというのもあるし、ある意味いい刺激になりそうだ」
まあ、さすがに政府でも少し噂になっている船坂家の諸々の話は流石に耳にはいっていますか。それと、今度は何を考えているのやら。んー・・・まあ、何はともあれ、二人にもしかすれば再開の機会を与える可能性が出来ましたし、それに関するプランでも後で練りましょう。
ふぅ。思わぬ収穫でしょうかね? それと素揚げもいい感じです。パリパリ感と脂がうまい。骨せんべいもしたいですが、今度ですね。自由人ゆえに読めないですし。
「ふぅ・・・しかし、確かに部屋に囲まれず、ヨミハラのような狭苦しさもない中のんびり談笑しながら食事をつまむ。いいものだな。ゴマすりも気を使う部下もいない中、まあ、護衛は遠巻きにいるがそれでもこうしてのんびりと。いい休暇だ」
「息抜きになったのであれば幸いです。株主ですからね。会社の主が元気でなければ儲けられない」
夜も更け、月明かりも目立ち、夜空の星々のきらめきも分かるように。少し冷えますがそれも味噌汁と食事、お茶と酒であったまって問題ない。あちらも食事を食べながら徐々に気持ちを切り替えていく用意をしているのがわかりますし、ぼちぼちですか。
「ここまでいいサプライズをしてくれるのは今までなかったよ。今度の利益配分は奮発しないとな」
「感謝します。さて、と。ご馳走様。今日私をこのような話し合いに呼んだ理由はいかなる理由で?」
「ご馳走様。そうだな。まあ、君を改めて理解しておきたいのだよ」
「なんですこの告白のようなセリフ」
互いに食事を終えて本題を切り出せばなんか少女漫画に出てきそうなセリフに思わずツッコミを入れてしまいました。
「いやいや。実際に知っておきたかったのだよ。私の騎士のみならず友人とも渡り合い、友となり、オカマ魔女も封印し、竿師どもも絶滅。踊り子も惚れ込ませた人の怪物。魔界でも君の、船坂華奈の名前は響き渡り、持ちきりだ。次は何をしでかすか、起こすか。あるいは今人間界で暴れるやつらを潰して自分たちの席を開けてくれるかとな」
「なるほど。まあ、私はつまらない人間。ただただ利己的なものですがねえ。ですが、知りたいというのであれば教えるのもいいでしょう。此方もエドさんを知る、再確認するいい機会でしたし」
バケツの水で焚火を消して月明かりと星の光のみ、その中で腰を上げ、エドさんは何もない空間から波打つ独特の刀身を持つ剣、フランベルジュを引き抜いて構え、私は椅子代わりにしていた流木に隠していた二振りの太刀と二振りの脇差を腰に履く。
これを想定していましたがエドさんはいい笑顔を見せてくれました。いやほんと。この人戦闘好きですからねえ。同格レベルとは子供の様な笑顔を見せますから。
「そう。互いの人となりや談話での探り合いも終わった」
「食事と酒で体もあったまり、活力は十分。明かりは今宵は満月。で、あれば」
「「ちょっと、殺し合いをしていくか(いきますか)」」
そこからは互いに戦意を昂らせ刀を抜いて切っ先を向けてほほ笑む。いやはや、エドさんはいちいち絵になりますねえ。満月の輝く砂浜で剣を構えるナイスミドルの吸血鬼。映画や物語であれば見てみたいものです。
「ふっ」
「むぅっ・・・」
互いに剣戟を交え、私がいなし、またはエドさんが弾き飛ばしてまた切り結ぶ。流石吸血鬼最強にして魔界のトップの一角、その一握りの更なる上の存在。まだ小手調べの動きでしょうに、紫さんの馬力が優しく感じるほどに重く、早い。
私も久しぶりに気を完全に張り詰めて出ないと対応できないですし、本当にすごいもの。
「ふむ・・・なるほど、師であろう方よりも遊びがある分、剣もあって面白い。でも、これが甘いですねえ・・・ハッ!!」
「・・・ぐふっ・・・!」
剣筋の類からおそらくエドさんの剣術は魔界騎士。その最強であるイングリットさんから学んだものと同じ流派。ただ、本人の自由さ、そしてより優れた身体能力。魔界騎士を知る者からすればワンランク上の剣術、すさまじいのでしょうけども、まだ甘い。
おそらくすぐさま一気に習得した故の一つ一つの技の間のつなぎの緩さを狙って脇差の二刀流で懐に入り込んでから両手での殴打をみぞおちと心臓に叩き込んで吹き飛ばせばあっさりとヒット。胸骨をべきぼきとへし折る感覚と拳が沈む感触を感じつつ違和感を感じて離れてみることに。
「ああ・・・なるほどこの速度はえげつない」
「えらくあっさりと入り込むものだな」
「そりゃ、人ですもの。持ち得る手札は多いほうが私はいいですからね」
拳の形にめり込んだ胸が私が距離を取る間に再生してすぐさま元通り。本人も痛みに対して耐性があるのかさほど効いていないですし。
「そうか。では、次だ」
「! っふ!」
初見、基本任務でも見せたことのない拳での一撃もさほど動揺せずにすぐさま踏み込んで剣を振るうエドさん。袈裟懸け、からの切り返しなどなど動きの速度が2速ほど跳ね上がっている。身体能力をより押し出した剣術。多少の技の鈍りや相手が格上でも押しつぶし切れるほどの連撃。
「ん・・・・・・んっ、しょっ!」
「むぉっ!? これも合わせるか」
ただまあ、私の剣術ならそれも数合、最低でも1、2合合わせればそれも対処できないわけじゃない。むしろ速度や力が増しての剣戟。流してしまえば切り返し、手に戻すためににかかる時間を幾分稼げる分やりやすくさえある。早速何度か剣を力を抜いて何度か吹き飛ばされた後に流し方を覚えたので合わせてからの袈裟懸けを与えると肩から胸にかけてそれなりの切り傷が。
すぐふさがっちゃいましたけど。不死の再生力に関しての概念を切るほうがいいのでしょうけど、まだ殺す時じゃないですからねえ。奥の手もこれに関しては早々振るいたくないですし。
「剣術ではかなわぬか。まあ、私に剣を教えた騎士ですら何度も下した相手。妥当ではあるが」
「いやいや。少し手が痺れますよ。全く、オーガに米連のサイバネ技術、多くの怪力自慢がかすむほどとは」
「ふ。そうか。なら、次からはこれで相手しよう」
「・・・!」
フランベルジュを空間にしまい、やれやれだと笑うエドさん。此方もたった十数合打ち合っただけなのに手にしびれが走り始める始末。これ以上戦って切りつけていってもあの再生力の前では意味がないでしょうし、エドさんも私が上だと理解したか新しい獲物を出すことはなく、かと思えば腕を横に私に向けて振るう。
すると地面が陥没して私に迫ってくるのでとっさにバックステップで回避。力を込めて後ろに回避したので舞い上がった砂や近くの木の枝がまるで掃除機に吸い取られるようにものすごい速さで砂浜に落ち、べきりと砕けてクレーターが出来るほど。
「??・・・」
「考えている暇はないぞ。そら次だ」
爆発したわけでもなく、見えず、けれどクレーターが出来て、舞い上がった砂や枝が押しつぶされるように下へ落ちた。空遁? と考えさせてくれず、今度は手のひらを握りこちらに向けることで身体がグンッ! と引き寄せられていく。
「そ、れは・・・悪手でしょう!!」
ただ、その勢いは利用できると縮地を使用。エドさんの背後に回り込んで引き寄せられる勢いを利用して飛び蹴りを浴びせる。腕で防がれましたが引き込まれる勢いを利用したので砂浜故の踏み込みを殺される分を補って有り余る勢いだったのでエドさんを吹っ飛ばすことに成功。私が縮地で移動する前の場所の数メートル後ろまで蹴り飛ばしました。
「ぐぉ・・・いい対処だ。今までは驚いているうちに串刺し、ドレインで終わったのがほとんどだが・・・」
「今でも驚いていますがね・・・使える手を忘れるほどぼけてはいませんよ・・・っと!」
今の攻撃でおおよそエドさんの攻撃のからくりがわかったのでクレーターの出来ている砂浜に斬撃を飛ばしてクレーターの一部をくりぬき、その塊をエドさんに向かって投擲。
ただ、それはエドさんの振り下ろした腕の前にまた投擲した砂、いや砂岩は地面に落とされる。
「砂浜の砂が砂岩になるほどの圧力。そして先ほどの引き寄せ。重力ですか」
「ご名答。私達を地面に縫い付ける星の力。空遁に近しいが、殺傷力や応用性はこちらもなかなかだぞ?」
黒い魔本を持つ魔物の子と仲良くできそうですねえ。しかし、重力とは面倒極まる。見えないし、軽く見るだけでもその威力は対魔忍は愚か魔族でも上位種族でも耐えきれるものは少ないと考えてよし。人間界に出て対魔忍、米連、裏社会の連中に最近出てきた魔族の腕自慢達との戦いでも見せたことのない能力がこれとは本当に不死の王はそこが知れない。
「例えば・・・こうしたりとな」
「二刀・羅生結界!」
エドさんから感じる戦意と魔力の増加を感じ即座に上空に向けて太刀の二刀で九字を切るように斬撃を飛ばす。重力の概念を切れるようにと振るったその判断は正しかったようで私を除いた周辺は何もかもが押しつぶされ、大気がきしむ音を感じさせながら砂浜がクレーター、もはや砂岩の地面となってしまう。
軽く見回せば半径100メートルの円形の範囲に重力の場を形成しているようでまるでそれは重力の結界、エドさんのとどめを刺すための場を作るための技だとすぐにわかる。
「そら、呆けているつもりか?」
「そっちこそっ!? ぐくぅ・・・」
それに気を取られかけた刹那にエドさんの拳が私の腹にヒット。ただ、あちらも私が気を抜きかけた瞬間に攻撃が当たると油断したか少し緩い攻撃だったのでこちらも心臓目掛けて刺突を振るい、殴られた衝撃で吹き飛ばされながら剣先を抜き、縮地で結界の外に退避。
「うぐ・・・いっつつ・・・おなか、あざで来ていそうです・・・」
「この結界を純粋な剣術で切り開き、逃げ延びるとはな・・・いやはや、人間というのはすさまじいな。アサギも若き頃にカリヤを撃退して見せ、紫は私の騎士相手に死地から逃げのびた。そして華奈、お前は私にここまでの手を使わせてなお拳一つしかもらっていない」
ギランボ戦以降鍛え続けていた肉体ですがそれでも鈍い痛み、息苦しさを感じてしまう。そんな私をお構いなしにエドさんはものすごくいい笑顔でこちらを見てくる。
「それに対しての敬意と、君の更なる可能性を見たい。だからこそ、この姿で今度は相手しよう・・・!」
この言葉を吐いた直後、エドさんの身体は変化、いや本来の姿であろう肉体に戻っていく。髪は白くなり、皮膚は黒くなる。腕は4本に増え、それぞれに剣、大鎌、槍、巨大なチャクラムのような武器を持つ。
魔力だけでも息苦しさを感じるほどのもの。これが本来の姿。そして、魔界でも最高峰に立つ存在。私のよく知るエドさんの能力だけでも十二分に強かったですが、なるほど。これは鬼族もレイスロードもナディアさんすらも差し置いて最強と謳われるのも納得です。
「あぐっ!?」
そこからまるで瞬間移動したように私の目の前に移動したエドさんから振るわれる剣の横薙ぎ。受け止めても勢いを受け流し切れずに吹き飛んでしまう。
「ふん」
「ぐっ!?」
空中で身を捻じって受け身を取るも今度は鎌での振り下ろし。太刀を交差して受け止めるも鎌の刃で肩の一部を切られてしまう。
しかもそこから槍での刺突を喉元目掛けて振るわれる。どうにか片手で鎌の振り下ろしを抑えながら体ごと逸らし、尚も首に届く槍の刃を凌ぐために自由になった手で脇差を抜いて受け止めるも腕は軋み、片手で刺突を防ぎきれずに脇差と体ごと吹っ飛ばされてクレーターの斜面にたたきつけられて吹っ飛び、クレーターの外にまで身体が転がっていく。
「あつつ・・・・・馬力までもけた違い、さっきまでのエドさんが子供の様に思えますよ・・・かふ」
「この姿は魔界でも数えるほどしか見せていない。そして尚も耐えるとは。・・・そろそろ話すか。私が何故今回君を呼んだか。だったか。それはな。君が何故対魔忍にこだわるか。だ」
身体が少しきしむ感覚を抑えながら立ち上がるとエドさんもクレーターから出てきて今回呼びつけた理由を話していく。
「君がアサギに拾われたというのは分かる。それに子供好きで、教え子たちも育てるのを楽しんでいると。しかし恩はすでに十分なほどに返し、教え子たちも巣立つことができるほどに強くなっている。資金力も存在も実力も君はどこでもやっていける。米連、自衛軍、そこに行ってよりやりたいことを選ばない。まだまだ君に対して懐疑的な対魔忍もいればアサギのような対魔忍の家系でも、伝統ある出でもない。それをもってなお、そこにいるのか、君ほどの人物がそれを選んでいるかを知りたい。船坂家を設立出来た。それをもって完全に井河から独立した勢力として動けるのにもったいないと思ってな」
なるほど、私がなんでもっと上の地位を目指さないのか、好き放題しないのかということですか。弱肉強食、野心、野望を多く持つ、見てきたエドさんからすればアサギさんのように魔族と深いかかわりも因縁もまだなく、ないし少ない私なら安全な場所、やりやすい場所に行けるのに。ということですか。
「ふふ・・・そんなの、簡単ですよ。私が・・・アサギさんたちを愛しているからです」
確かにそれは出来るかもです。紅さんや、一部の対魔忍や自衛軍の知り合いや政府と渡りをつけて独立勢力として動けるかもしれない。けど、それは私がしたいことじゃない。
「愛している?」
「そうです。エドさんたちみたいに頭もよくて、強くて、人も魔も抱き込んでやりたい放題する奴ら相手にひるまず戦い、世のため人のためにと抗う。そして私のようなどこの馬の骨とも知れない小娘も受け入れて、アサギさんも、幻庵さんも、小太郎君も紅さんも愛してくれた。だから、私はそれに負けないくらい愛して、みんなで歩きたいんです・・・もっといい明日に、あの人たちの持つ輝きをより輝かせたい」
そのために鍛えたし、無茶も何百回、何千回とした。自分の持てる可能性は広げているつもりだし、技も磨いてきた。やりたいことのために。
その過程で手にした技を使うために体に力を入れ、内に巡る対魔粒子を意識していく。
「どんなに強いやつが来ても、怖いやつが来ても私が一緒に戦うから、守るから・・・一緒にどうすればいいか考えるから、対魔忍の皆には報われてほしいんです。希望と優しさをもっていて欲しいんです。勇気や強さは支えます。だから、どこまでも明るい未来を、希望にあふれた道を歩いて欲しい。それが私がいる理由です・・・!」
「ほう・・・・・・青臭いな、そして、もろい夢だ」
「そうですね。私ひとりじゃ無理・・・でも、一緒に進んでくれる仲間も友達もいる。だから、できると思いたいです」
常に体内をめぐる対魔粒子。私の忍術の場合は常時発動型ゆえにオンオフがわかりづらいがそれをとらえ、活性化。毛先にまで届き、染みわたるようにイメージをし、それを実行させる。
「そしていつか、私や魔族全てを倒す、制する力を手にする。か・・・今の君の奥の手のような手段も用いて」
「かもですね。ですが、私ではないかもしれないです。私は教師でもあります。私を越えて、アサギさんを越えて強くなる子もいるでしょう。その子たちを支えて、教えるために、この技も手にしましたから」
身体に活力がみなぎり、痛みが消えて感覚がよりとがる。そして、変化は私には見えないがエドさんは分かるようで少し驚いた顔をした後ににやりと笑う。
対魔粒子を活性化せて肉体を魔族寄りに、より強化していく奥の手。紅さんやフェリシアさん、きららさんのように魔の側面が強い、力を有している子たちの才能を引き出すために、魔の力も使いようであると見せるためにアサギさんと鍛錬し、互いに手にした技。
私は分かりませんが、きっと今左目は蒼からエメラルド色になって、環がいくつも走っている。そして、顔には回路のようなラインが左半分にあるのでしょう。私はアサギさんほどまだ深く魔人化、あるいは人魔合一と言うべきでしょうか。は出来ませんが、持続時間なら十分。すでにその強化した肉体の再生力でダメージはないですし、気力も何でしたらむしろ増えているほど。
「君やアサギ以上か・・・・・ッハハハハハハ!! 面白い、なら、その為の研鑽をもっと私に見せてみろ!」
「お望み、通りにぃい・・・ガアッ!」
私の発言に大笑いした後にエドさんは槍と剣で左右から挟み込むように攻撃をしますが、今度はそれをしっかりと受け止め、その上で押し返していく。
「剛剣・・・轟天!」
そしてそこから上段からの振り下ろし。エドさんも巨大チャクラムと大鎌で受け止めますが今度はこっちも馬力負けはせずに海まで吹っ飛ばす。
「ぐぅ・・・これなら・・・!」
「剛柔・加羅崩し! 黒鉄双連!!」
エドさんも流石に効いたらしく今度は武器に重力での圧をかけて武器の重量を増やしての重さを乗せての剣での袈裟懸け。それを私はまずは太刀の強い一撃であたり、そこを打点に今度はもう一つの空いた手で脇差を使い、柔らかく衝撃を与えた直後で勢いのころしたエドさんの剣戟を逸らしつつ、身体を泳がせるようにしていく。
重力で武器の重さや勢いを増した分、腕ごと身体が泳いだのでそこに入りこんで内部に衝撃を送る拳を連打。
「っ・・・のぉおおお!!」
「ぬぐぅ・・・・! ここまでするか!」
エドさんも苦痛に顔をゆがめます。ただ、それをしても尚迫ってくる巨大チャクラムでの反撃にエドさんのその巨大チャクラムをつかんでいる手をつかみつつ思いきりローキックで関節を叩いた後に足払いをして体制をより崩してから一本背負いの要領で今度はクレーターの中にぶん投げる。
砂岩がエドさんを思いきりぶつけたことで砂になって砂塵がクレーターから舞い上がる。その中からすぐに飛びだしてくるエドさん。やっぱり、消耗は見られない。と。
「教師ですもの。それに、愛する恋人、我が子のためにもこの技は磨きました。魔の力も使い手次第・・・その力があれば守れるものだってあると・・・そして必要なら教えるために」
「ああ、素晴らしい! 人の身でここまで強くなって私が何度も転がされ、楽しませてくれるとは! やはり君は面白い! さあ、もっと、もっと遊ぼうではないか!」
「いいでしょう・・・私も、貴方相手に技を磨けますからね・・・はぁっ!」
そこからはエドさんも開いた手で重力を用いての攻撃や搦め手、私も縮地を用いた一撃離脱を交えた戦闘を開始。海にも幾つもクレーターが出来、砂浜も砂岩になっていく。月明かりを頼りに互いに激しい戦闘を続けるばかりで、けど互いに決め手に欠けるままに時間だけが過ぎていった。
「っあぁああ!! キリがないですねえ!」
「全くすさまじいスタミナだ! 一晩、一晩も私と本気で戦い続け、この状態も一切揺るがないとは!」
結局、夜が明けて旭を向かえても私たちは戦い続けていました。エドさんにもいくらかダメージは与えていますがそれ以上にエドさんがテンション爆上げ状態のせいでまるで効いている気がしない。
互いに大小の傷を負いながら、ついでに私のプライベートビーチがボロボロになりながらどこまでも続きかねない戦いに流石にエドさんの再生力の概念を斬り捨てようかと考えたところ。
「む?」
「・・・時間か」
電話の着信音が鳴り、それを聞いた瞬間エドさんが嫌そうな顔をしながら何かつぶやきながら魔人化を解いていつものナイスミドルに戻ったので私も一応手出しはせずにしつつ、周囲へも警戒。
それでもエドさんは戦おうとせず、スマホで誰かと、多分声からしてイングリットさんと軽くやり取りをかわしてから電話を切って、こちらに向き合う。
「すまない。仕事の時間でな。今日はこれで失礼しても?」
「ええ。構いませんよ。此方もいい収穫を手にできましたし、ただ、あそこまで楽しんだ戦闘をえらくバッサリと切りますねえ。久しぶりの楽しい時間だったのでは?」
「うむ。楽しい時間、最高の時間だったとも。ただ、楓とイングリットをあまり待たせてしまうのもね。娘とも遊ぶ約束をしているのだ。おじさんもいろいろ予定がぎっしりで」
「そりゃ、ノマドのCEO、家庭を持っていればそうなりますよ・・・では、今回はこれで終わりと」
互いに完全に戦意がなくなり、武器を収めたところで私も人魔合一を解除し、いつもの状態に。しかし、意外とパパさんしているというのがまた新たな情報ですね。何気に。
「そうなるな。ごはん、酒もおいしかったよ。ああ、それとだ、帰る際に土産を買いたいのだがここら辺ではいいものはないかな?」
「では、ここから少し離れたところにある漁港。質のいい魚介類が売っているんですよ。近くの店なら多分今頃水揚げされて店に並ぶ頃合いですし、買って帰っては?」
「そうするか。ではまた。今度は紅との結婚の際にでも会うとしようか?」
「対魔忍に襲い掛かられて結婚式どころじゃないでしょうに。ええ。それでは」
そう言ってひらひら手を振りながら悠々と帰っていくエドさん。潜伏していた護衛の皆さんもエドさんに近づいていきますし、これで話し合いは終了。と。
「・・・・・・・・・・・あぁー・・・・・疲れましたあ・・・」
私も気が抜けたのでへたりこみつつも、あたりに潰れてしまった鍋や器具を見てだらだらと片づけを開始。その後にすぐさくらさんや時子さんたちが来て片づけを手伝いながら説教や人魔合一について散々聞かれてしまいました。忍術を二つ持っているのかとか、二段階の忍術だったのかとそりゃあ様々。
眠気と疲れと駆け付けてきながら説教や心配の声をかけてくる皆さんに応えながら片づけを終えたところで私はもう限界となってぐらりと砂浜に寝そべって寝てしまいました。
今回の話し合い、エドさんからすれば元対魔忍でもなく、今は好き放題できるようになったのに何でここにいるの? な華奈の真意を聞くため。魔界では早々見られないスタンスと華奈の底力で思い切り遊べてご満悦。
華奈も華奈でアサギとこっそり磨いていた技を披露。左目はゲッターのあの目になっていると思ってくれると幸いです。華奈曰くゲッターモード。アサギよりはまだ深くできていないために上り幅が小さいですが元の忍術もあってパワーに関してはアサギ以上です。アサギはさらに一段階上の状態と考えてくれると幸いです。
アサギの場合アレを単独て手にしていたんだからやっぱり天才ですよねえ。さすが最強の対魔忍。
愛した人たちのために支えて一緒に歩む道を選んだ華奈。紅にきらら、ほかにも多くのメンバーに大丈夫と判断すれば教えていくことでしょう。
ライダーだと、アギト、クウガあたりと凄く仲良くなれそうですよね。一緒にスーパーの特売に行ったり、家庭菜園の事で相談したり、旅の途中の名所を語らっていたりしていそうです。
エドウィン・ブラックの能力と奥の手、人となりの情報をゲット。多分トップシークレット、アサギ、アスカ、朧辺りは土下座してでも欲しい情報かも。
難産、へたくそな話かもですが読んでくれてありがとうございます。
華奈のヒーロー、戦士の在り方ってどれに近いと思います?
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