~アサギ邸宅~
アサギ「んぶっふぅう!? げっほ・・・な、何事よこれ?!」
さくら「お、お、おお・・・お姉ちゃん!? 華奈ちゃん一体今度はなにしたの!?」
アサギ「私が知りたいわよ!? と、とにかく確認しに行くわよ」
さくら「うん!」
~ふうま邸宅~
小太郎「ぶっ! ぶふっ・・・ぐ、み、みそ汁が鼻に・・・ふぐぅう」
骸佐「あっちぃいいいい!!? おい小太郎! なにしやが・・・なんじゃこりゃああ!」
天音「若! 骸佐! 朝から粗相をして何事ですか! 炒め物のおかわりは今・・・な、なんですかこれ」
時子「あの絵柄・・・間違いなく華奈のよね・・・ええー・・・何事が起きたのか・・・連絡しましょう」
権左「まーた華奈殿がやらかしたか。つーか、ノマドのボスフットワークが軽いこって」
~船坂家・別荘~
きらら「ちょっとおおお! ママ、なにしたのよ一体!?」
拳志「あーっはははっはははは! また大将がやらかしたなこれ。間違いねえ。この絵本の絵柄は間違いなく大将だ!」
ジョー「ヒューッ♪ 一躍大将が舞台デビューたあ俺も鼻が高いねえ。団子鼻だが串がついて鼻が高くなりそうだ」
望月「うまいこと言ったつもりでござるか。それじゃとがった鼻、鷲鼻じゃないでござらんか。とりあえず、部隊の場所の下調べと、潜入の用意をするべきでしょうか?」
あやめ「頭が痛い・・・」
不知火「我が弟子ながら自由過ぎるわね・・・いや、この場合はブラックのほうが自由なのかしら?」
静流「華奈さんも自由さゆえの悪戯したけどブラックも負けじと自由なお礼のお返しを下に一票」
窮鼠「多分それだろうなあ。姐さんも今回は家出は都が豆鉄砲喰らった顔してるんだろうな。飯食ったら見に行くかあ」
「あーもうあーもう!」
「おのれブラック・・・! 私までキャストにするなんて・・・」
「華奈さん。ナディアさん。どうします・・・?」
朝っぱらから酷いニュースに頭を抱える始末。ナディアさんも若アサギさんも困惑と怒りを混ぜまくってどうしたものか状態。電話もさっきから鳴りっぱなしだし。本当に面倒なことになりました。
「あ、華奈さん! もうなにしたのよ今度は!」
「イヨォ~ッ大将。今度は絵本作家からの役者デビューか?」
「華奈ちゃん! 政府からもまたあの舞台に参加してほしいとメールが来ているんだけどどうなっているの!? いや本当に訳が分からないわ!」
どたどたと押し込んで入ってくる皆さん。いや私こそどうしてこうなったとしか。とりあえず事情を説明させるために皆さんを席に誘導して、ナディアさんにお茶を出してもらうことに。
「はぁー・・・なるほどね。祝いついでに少しのいたずら心を入れたらあちらが見事に返してきたと」
「ええ。全く・・・とりあえず、政府の内容から見るにこれは逃げられませんし、一度打ち合わせに参加してきますよ。私の任務自体は拳志と静流さんに任せます。いいですか?」
「了解。しっかし、舞台ねえ・・・華奈さんの場合は演技もそれなりにできるけど、面倒な話を・・・ノマド側の政治家もついでに一度あぶりだしてしばいておくべきかしら?」
実際、この情報の詳細を調べない限りわかるものもないですからね。私とナディアさんが外れる間も、長期間時間が削られることも想定しておいて対策を練ることにしました。下手すれば私とナディアさん、舞台を芝居の方に長く括り付け、その護衛や対処のためにうちの戦力も使えなくなるのは困りますもの。
イングリットさんとエドさんは考えていなさそうですが、偽朧とフュルスト辺りはそれを見て動きそうなので油断もできない。
「うーん・・・一応、第二九郎隊は動かせねえか? アサギ」
「難しいわね・・・それに、やっぱり潜入や練度は第二九郎隊設立前からいた華奈ちゃんの部隊には負けるもの」
「りょーかい。あーあやめちゃんと俺も一応動けるようにしておくかあ。魔界都市もまた騒がしくなりそうだって時にまったく、あのおっさんは」
その後は再度内容を煮詰めていたら夜になったので私の家で集まった皆さんと一緒に野菜カレーを食べました。そろそろ暑くなってきましたし、夏バテ予防にゴーヤーと、豚肉も買っておきましょうかねえ。
「・・・・・なるほど。つまりは一度だけの、本当にお遊びみたいなものですか。よかった・・・」
「さすがに何度も講演するにはいろいろと手間なのでな。それに私も君も俳優ではない。本職を長くないがしろにするわけにはいかないだろう?」
エドさんとさっそく打ち合わせに来た私達。ナディアさんも一緒に来て話してみると商業もしない、一部の人のみで行う一回こっきりの舞台とのこと。一応、一部の動画サイトなどで配信はするそうですがそれだけ。ツアーとかもしないというもの。まあ、言っちゃえば金持ちの道楽で行う軽いお芝居、レクリエーションに近いものですからね。これ。
「ふぅん。で、私たちがメインキャスト。振付とかダンスのアドバイザーに・・・」
「私よ。よろしくね? っふふ」
私は基本魔女の役。ナディアさんは助手役と一部の踊りのシーンを見る。で、その補助に来たのがカリヤさん。何でも私たちが参加すると聞いてカオスアリーナを有給使って休んできたそうです。元気ですねえ。
「はあー・・・で、台本の確認ですが、お二人・・・騎士と王子を祝福するシーンではこの歌を挟むそうですが、私が歌うってことでいいです?」
「ええ。大トリ。絵本でもここは一番盛り上がりそうなシーンだと思いましたから」
「そ、そうですか・・・とりあえず、歌に関してはこちらで練習しておきますのでそれ以外のシーンの練習から進めましょうか」
とりあえずのキャストを見てみても、一部の俳優はまあまだしも、メインがナディアさん、私、イングリットさん、エドさん。表の世界ではナディアさんは教師。私が引きこもりの資産家。イングリットさんはノマドの秘書。エドさんはそのCEO。裏の顔を見ても大概ですし、ほんと傍から見てもぶっ飛んでいますよねえ。
スタッフの方も一応まだ募集していたので私の部隊とガチホモオーク3兄弟。アルベルタさん。サタケさんを忍ばせておいていつでも事が起きたらすぐさま動けるようにしておきました。
「ナディアさーん・・・助けてください・・・・~~・・・」
「ちょっ!? 華奈、どうしたのよ!?」
打ち合わせが終わり、二人でオカマバー、スイングボールの裏で飲みながら私はナディアさんに抱き着いていました。ああ・・・・甘い香りと柔らかさが癒される・・・
「私、歌・・・あんまり上手じゃないんですよ・・・歌に関してのちょうどいい霊薬とか、ありませんか?」
そう。今回のお芝居に至っての問題点。それは私の歌唱力の無さ。子守歌とか、童謡とかはともかく、普通の歌なんてカラオケでも少し上手と思われるくらい。そんな私が世界的大企業の催す舞台の大トリで歌わないといけない。しかもかなり重要なポジションを演じながら。
私も一応表の顔では引きこもりとはいえ資産家。対魔忍の、私の部隊、家の資金のためにいろいろしている中エドさんに表立って泥を塗ることを世界中に配信されればそちらの動きも今後は大変になるかもですし、そういう意味でもますます気が抜けない。
「うーん・・・あ、うちの領地で霊薬を作るのが得意なダークエルフがいるんだけど、最近アミダハラのあるお店にいくつか薬を売ったみたい。その中にあるかもだし、見に行かない?」
「そうですね。では善は急げで。あ、ローズさん。お代はこれでそれじゃ、行きますよ」
「あら。了解よ華奈ちゃん。今後もごひいきにね~」
ジュースのおかわりを持ってきてくれたローズさんに札巻きを渡しておいてから縮地で即移動。そしてつきましたはノイおばあさんのお店の前。
「あ、華奈さーん。いらっしゃいませ。今日は何をお求めですか?」
「少し霊薬の類を。ノイおばあさんはいますか?」
「あら、華奈ちゃん。久しぶりねえそれと霊薬かい? これまた珍しいものを欲しがるわねえ」
ノックをしてはいればリリスさんがエプロン姿でまぶしい笑顔でお出迎え。週一くらいで私たちの学校で修業をさせていますがそれ以外はここでバイトをしているので看板娘と評判。客足が少し増えたそうです。まあ、悪い虫にホイホイついていきそうになることもあるリリスさんですがそこはノイおばあさんと使い魔がどうにかしてくれているようです。
そして部屋の奥からいつも通り元気そうなノイおばあさんがこんにちは。
「ええ。少し入用でして・・・そうですね・・・歌を上手に歌えるようになる霊薬なんてないですか?」
「ちょっと色々あって必要なの」
「ん? ああ・・・例のニュースの事でかね? なら、ナディアちゃんの領地の薬師から届いた霊薬がある。あそこはナディアちゃんの踊りのきれいさに惹かれてか芸術方面の商品が多くて飽きないよ」
私が欲しがる霊薬ですぐに察してくれたノイおばあさん。そして出してくれたのは小瓶に入った綺麗なピンク色の液体。
「霊鳥の喉薬。その原液。基本はこれを数十倍に薄めて使うものだけど、効果は一曲だけ。いくつか予備を渡しておくからそっちの使いやすいようにするなり、そのまま飲んで演技中に効果が切れないようにしておくといい。副作用はなかったし安心だよ」
そう言っていくつかの小瓶を出してくるノイおばあさん。相変わらずいいチョイスをしてくれます。
「助かります。では、お代はこれで。では少し試してみて・・・・」
お代にといくつかの高額紙幣と宝石を渡しておいて、原液を一滴飲んでみてテスト。効果は問題なさそうです。歌い始めた途端自分の声とは思えませんでしたから。
「ふぅ。これならどうにかなりそうです。さてさて、あとは曲と歌を覚えて・・・ああ、リリスさん。今度夏ということでバーベキューやカレーパーティーをしますよ。よければどうぞ。それとお小遣いです」
「え!? あ、ありがとうございます! それと、お芝居頑張ってください!」
財布に残っていたお金を全部リリスさんに渡しておき、頭をなでなでしてナディアさんと縮地で五車に戻りました。その後は防音加工のした部屋で歌を覚えつつ、振り付けの練習に。そういえば、伊吹さんも忍術のせいで趣味の楽器演奏での騒音が困っていると言っていましたし、今度船坂家の屋敷が完成した際に私の別荘に防音の演奏部屋に客室を改築するか、屋敷に用意しておきましょう。
「ふぅ・・・ようやく70%の所までは覚えてきましたね。イングリットさんもお疲れ様です」
「ええ。芝居というのは、思った以上に大変だな。見る立場だったが、新鮮な気分だよ」
「思った以上に動きは悪くないし、貴女も踊りをしたら? 意外といい練習になるわよ?」
今日も今日でお芝居の練習です。予定よりも早く進んでいるので余裕もできていますし、イングリットさんもなんやかんやエンジョイしているようです。ナディアさんともまだまだぎすぎすしている部分はありますがそれでもどうにか協力は出来ていますし、劇の雰囲気も悪くはないです。
「さて・・・もう少し確認をしてから私も加勢しましょうか。ナディアさん。その際は踊りをお願いします」
「わかっているわ。全く、あれが紅の妹とは思えないわ。ブラックの娘と思えばまあわかるけど」
ただまあ、その端で聞こえてくる剣戟の音。そして、今回はその音を出している元凶を抑えるためと、とあるエドさんの親切から私たち以外のメンバーも参加させています。
「そこを退きなさいよムシケラぁあああっ!! ふぇりからお父様を奪った泥棒猫たちを殺す邪魔しないでよぉお!!」
「くぉおおっ!? くぅう! なんだこれ。紫先生張りに重いぞくっそ・・!」
「うるせえガキだなあ! 姉貴と親父を見習えってんだこのマセガキ!」
華奈先生たちがエドウィン・ブラックやイングリットと芝居の稽古をしているという華奈先生じゃなければ嘘といいたくなるような状況。それが起こった原因は元はイングリットとブラックの結婚から。それを快く思わないらしい、俺、小太郎と骸佐で食い止めて、鎌の連撃を振るう目の前の桃色ツインテ少女。フェリシアがいよいよ堪忍袋の緒が切れてイングリットを殺そうとしていたのを抑え込んでいる。
正直討魔剣士のものをもとに作ったこの剣、骸佐の「猪助」くらいの業物、刀剣じゃないと普通に武器ごと砕いて殺されそうな勢いを何度も止めるのは本当に骨だ。もう手が痺れてくるし、背丈ほどの大鎌を軽々と振り回すこの子を必要以上に傷つけてもダメだし、その上で足止め。きついというものじゃない。
「あああぁあ! うざったいうざったい!! あいつなんかにパパが微笑むのも、何もかもがぁああ!」
「そんなギャーギャ―吠えてちゃあブラックも愛想つかすだろうが。こんなきれいな顔怖くゆがめてよぉ・・・暴れるだけで万事解決できると思うんじゃねえぞ!」
「!」
そしてまあ、この吠える声と狂気。気に食わないから邪魔者を殺すのはまあ、世紀末な魔族や裏の世界を知れば納得だし、その実力もあるからわかる。が、色恋でそれだけは駄目だろうと思いきり剣をたたきつけ、ひるんだすきにフェリシアの手をつかんで投げ飛ばす。
「だな・・・ラァッ! てめえも磨けない女が誰かを落とす玉にも宝石にもなれねえよ」
そこに待っていましたと骸佐がよく華奈先生に授業で喰らっている大ぶりな、ホームランしそうなほどのいいスイングで追撃を仕掛ける。フェリシアも大ぶりな一撃ゆえに受け止めるも、床を転がっていく。その過程でここのホールの床が鎌で傷つくけど、大丈夫かな・・・俺のお小遣いで弁償とか無理だぞ。
「けふぅ・・・うるさいうるさい!」
「あのなあ・・・そんなホイホイ周りを壊したり、気に食わないからって暴れるだけじゃ男は振り向かねえよ。ブラックと同じ男の俺が言うんだ。聞けよ」
それでもかすり傷一つなく、すぐに身を起こして魔力を吹き出すフェリシアに話を持ちかけてみる。先生の稽古の邪魔をしたくないし、今は別室でかつてその体質からブラックに目を付けられて目の前のフェリシア、そして紅を生まされた心願寺楓さんも紅と幻庵さんと話をしている。
こんなうるさく気の張り付ける剣戟を聞いては稽古も対面も気が散るだろうととにかく引き伸ばさないと。
「お前は怒ってばっかだけどよ。他の・・・楓さんも、イングリットも、色恋じゃねえがブラックに興味を持たれている華奈先生もそればかりじゃねえだろ? 優しかったり、気遣いが出来ていたり、色んないい部分を見せるだろ? 我儘だけじゃだめだ。振り向かせるくらいにいい女になって見せろよ。親父を惚れさせるくらい、素敵なレディーに」
「・・・・・・・それが出来たら、パパはふぇりに振り向いてくれるの?」
骸佐の見事な言葉に一度戦闘を止めてくれたフェリシア。多分、立場と強さと凶暴さでだれも真っ向から意見を言わなかったんだろうなあ。ブラックは忙しいだろうし、そうじゃなくても暇していても子供が本気で迫るとは考えていなさそうだし。
「大丈夫だろ。俺たちの知り合いには姉弟で付き合っていたり親子そろって正妻2号と愛人に迎え入れた人がいたり、女同士で子供を身ごもった人がいる。フェリシアも親子の壁とかそれを乗り越えるくらいのいい女になればあのブラックも振り返るかもしれねえぞ」
・・・言っていて、周りの男女関係、もしくは女同士の関係に色々末期なものを感じるけど、みんな合意の上なのでしょうがないと飲み込む。持っていたフェリシアの鎌も虚空の中に消え、戦意も微塵もなくなった。
「分かった・・・じゃあ、ふぇりは帰る。名前、教えて? 骸骨の人と片目の人」
「ふうま小太郎。華奈先生の弟子だ」
「二車骸佐。同じく華奈先生の弟子。そんでこいつの相棒で将来の右腕だ」
「そう・・・ありがと。じゃあね」
そう言ってフェリシアはすたすたと何でもないように帰っていく。華奈先生からいろいろ怖いと聞いていたが、それをどうにか抑えられたのは幸い。はぁ・・・すげえ疲れた。壁紙も傷つけちゃったし、護衛任務ということで大丈夫・・・だよな?
「はぁ・・・つっかれ・・・た・・・あれで紅より年下ってどうなってんだ」
「吸血鬼として血もすすったり、ああいう力を使い慣れているんだろ。ただ、技量は紅に負けるな」
気配が完全に消えたことで床に座り込む俺。骸佐の言う通り、魔力も何もかもが遠慮もなく振るう。魔の力を振るうことになれているからこそ振るう力が紫先生に匹敵するほどのものなのだろう。ただ、その動きは筋力でカバーしているが素人のもの。フェイント、技量含めたものなら紅に軍配が上がるし、人魔合一を制御し始めた紅ならきっと勝てる。
ただまあ、紅と比べれば流石に鍛えているとはいえ身体一本で、傷つけずに抑えるというオーダーは俺にはきついわけで。
「筋肉痛になっていそうだ・・・俺もまだまだ強くならないとなあ」
「また先生にしごかれてくるか? あの身体中包帯だらけになったように」
「おい、二人とも大丈夫・・・みたいだな。ありがとう。こっちもいろいろ踏ん切りがついたよ」
近くの自販機からジュースを買って飲んでいると紅がこちらに歩いてきてふうと息を吐く。楓さんとの話は終わった。それに、どうもいい結果なようだ。踏ん切りというあたり楓さんがすぐ戻ってくる。という訳じゃなさそうだけど。
「そっか。それじゃあ、楓さんは取り戻すのか?」
「ああ。ブラックの虜になっていたが、同時に私達への想いもあった。だから約束してきた。私達が勝てばこちらに戻ってくる。それまではブラックものとで妾として過ごすと言っていた」
「ふぅん・・・それなら、尚更強くならないとな。俺たちも、幼馴染の願いはかなえたいもんだ。お、ジュース当たった。ほら紅。お前も飲め。幻庵さんの分もおごるからよ」
紅はスポーツドリンクを飲み、幻庵さんの分のお茶も買っておきながら三人で頷く。いつかブラックとも渡り合う、倒すほどに強くなる。少なくとも華奈先生に負けないほどの強さを手にしよう。そう話しながら一息つき、十数年越しに娘に会えて感極まって泣いていた幻庵さんにもお茶を渡してから残りの時間は華奈先生たちを待ちながら警備。その後は迎えて帰宅になった。
しかし、ブラックを倒すとしたら当然フェリシアも立ちはだかるわけで。もしかしたらあの言葉で女磨きもしたらより面倒な敵になるかもなあと少し思いながら寝ることに。あ、あと俺と骸佐のいい鍛錬になったと言い放つあたり、華奈先生は時折アバウトなのか計算高いのかわからなくなる。
「うわぁ・・・満員御礼ですよ。これ・・・はぁー・・・しかも動画配信。無駄に緊張します」
「私はむしろ人間界で踊り子、役者として出るとは思わなくて今も驚いているわ」
フェリシアさんを撃退して以降も続いた稽古。なんやかんやどうにか何事もなく、カリヤさんがますますこっちに接近する以外は日々演技と歌の練習。合間に魔界都市で任務をしたり、汚職をした政治家を動画の素材になれる映像と音声を作るようなおしおきをしたりで過ごしていました。
そしていよいよ始まる演劇。なんやかんやちょこちょこ宣伝とかを小規模ながらしていたことや動画配信。そしてキャストが役者というよりは有名人とか社会的立場で豪華すぎるあまりに注目も集まる始末。
金持ちの道楽と冷やかしに来た人や、ネタになる話故に配信して再生数と動画サイトの宣伝に仕えるともくろむ人達、はたまた純粋な狂気や好奇心。エドさんやイングリットさんらのファン、役者さんのファン。そしてノマド、私たちの部隊、対魔忍たちの護衛とけん制のための人員。
チケットの値段もあくまで好奇心のある人の身に絞るためにリーズナブル。(代金の分はグッズや休憩時間のフードサービスで還元するとか)ということもあってこれらが日本最大規模の劇場にひしめいているのですからまあすごいもの。演じることは慣れていますが、はてさてどのようになるか。
「・・・そろそろ始まるわ。華奈。喉薬。用意しておいてよ?」
「わかっています。ん・・・んぐ。あ、アセロラ味」
霊鳥の喉薬を飴状に固めたものを口の中に仕込んでおいて準備もOK。舞台ではエドさんが挨拶を終えて舞台裏に。いたずらっ子が仕掛けた悪戯をはまるか見守るような顔していますよもう。
ナディアさんはそれを見てまだ慣れないのか不思議そうな顔をしている間に幕が上がりました。さてさて。任務をこなすために演技、偽造工作、だまくらかしをしてきた私の技術は無事に皆さんを楽しませることができるかどうか。
華奈さんたちの護衛ということでお館様と私、時子は演劇のチケットを手に、あとやたらサービス精神旺盛な還元のグッズを手に舞台にいつでも飛び込めるように構えていました。
拳志さんも鹿之助君もいつでも会場を停電、コントロールできるようにしていますし、静流さんも痺れ毒、笑気毒をセット。お館様も拳銃とナイフ。きららも三節混をカバンの中に仕込んでいます。他にも全員が武装を忍ばせ、同じく会場で私たちをけん制しつつ警護しているノマドの連中に備えている。
そして始まる演目でしたが。正直な話。予想以上の出来でした。エドウィン・ブラックもイングリットもそこらのドラマに出てくる役者も裸足で逃げ出すほどの演技。動き。騙し騙されの裏の世界に生き、自身の場合は親すらも騙し、すり抜けながらふうま一門を謀反に参加させないように尽力した経験をもってしてもそれが演技かわからなくなる程。
同時にその演技を。時間をすごくイキイキと楽しんでいる節もあるあたり。あの冷酷非情。頭脳明晰、けた違いの力を持ち、暇を持て余していると有名な魔王とそのそばを守る堅物の騎士とは到底思えないのだ。
ほかの役者、ノマドの護衛と思わしきメンバーもレベルが高いがそれを見ても尚頭一つ抜けたレベル。そして、その中でもなお自然体で振る舞うのはフードと化粧で老婆に化けている華奈さんと少し前まですぐ喧嘩をしかねないほどに仲の悪い二人相手に笑顔でいつづけて踊りと言葉で場に明るさと華を添えるナディアさん。
二人の主役に助言と華を添える一人。その中で顔も見せずに、肌のかすかな変化を見極めていかねば若いか老いているかもわからない。地味な一人。その周りにいる人々。
ただ、その地味な一人が主役を演じているブラック、イングリットを祝福し、ローブを外して歌を歌い始めた時、舞台を新たな空気で呑み込んだ。
「~♪ ~~♡」
透き通るような、美しい声、それに負けないほどの美貌。黒の王子と女騎士。それとは相反する白の輝き。真の姿となった魔女の心からの祝福と踊りは黒の魅力と響き合い、更にそれの周りを桃色の弟子が踊りでさらに輝かせて一枚の絵を作り上げる。
「————♬ ~~~♩ ・・・♪」
そして物語の最後は怒涛の勢いで続いていき、王子と騎士の結婚。その時もどこからか聞こえる歌声は優しく二人と二人を祝う人々の耳に残り、後に国の有名なわらべ歌となり、同時にその歌が広まるきっかけとなる国王夫妻の若き頃の物語がつづられて物語は終わった。
最後の当たりは思わず引き込まれ、ノマドのエージェントと一緒に拍手を送っていました。お館様も同じことをしていましたが。今回は流石に怒れず、一緒にその場を離れて華奈さんのそばを固めることしかできませんでしたよ。
「すいませんすいません! 人込みは酔うので勘弁してください! もう限界なんです! もう解散なんです!」
舞台が終わり、舞台上でのあいさつも終わった後。皆さん予想以上の拍手と盛り上がりを見せてくれたのはいいのですが、控室に待っていましたと言わんばかりの記者やファンになってくれた皆さんの津波がドーン! ぶっちゃけ疲れとぼろを出したくないこと。表の私は引きこもりの人込み苦手の半ばニートな資産家なので今回は頼みこまれ出て来ただけでこれ以上はご勘弁ということでナディアさんに頼んで入ってきた皆さんを押し出して、スタッフに化けたうちのメンバーのみ残しておかえり願いました。
「はぁー・・・つかれました。喉は鍛えられましたし、いい鍛錬でしたが、お芝居とカラオケはもうおなかいっぱいです」
「私は意外と楽しかったわねー。カリヤと一緒にいろいろ踊りの話をしたり練習できたのは充実していた分尚更」
実際、ナディアさんはどちらかと言えば舞台の上でみんなを魅了させる方の人間でしょうしねえ。今は五車で副担任をして対魔忍の卵やうちの部隊と鍛えているんですから予想外でしょう。
「しっかし、これ、どうなるのかねえ。大将。ナディアちゃん。動画の評価を見てもどれも高評価。歌も踊りも絶賛されているし再生数もすごい。また呼び出されねえか?」
「それに備えている自分がある意味憎いです・・・エドさんに頼んで断ってもらいましょうか」
のど飴でドーピングしていて歌に関しては自分の実力じゃないというのに。もう。それと私は対魔忍と教師出会って役者でも歌手でもないのに。
今日はもう考えたくないのでエドさんに電話で帰ることを伝えてから裏口からこそこそ退散。その後は私とナディアさんは車の中でぐっすりと寝込んでしまいました。
起きてからは呆れるレベルの舞台についての通知やメール。テレビもネットニュースも動画サイトもそればかりでしばらく現実逃避するようにゲームと解説動画を見ていましたよええ。
華奈、また無駄に有名になる。 フェリシア、レディに化けるヒントを貰う。
しばらくは任務以外ではテレビも見ない日々が続くでしょう。
華奈のヒーロー、戦士の在り方ってどれに近いと思います?
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ウルトラマン
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仮面ライダー
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こち亀
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クレヨンしんちゃん
-
スーパーヒーロー戦隊