こちら対魔忍特別諜報室   作:零課

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アクション対魔忍の前に挟んでおきたいイベントがあったので急遽そちらに変更。華奈の現在の状況的にこれならいけそうだと思いました。


蜘蛛姫との出会い

 「ハアッ・・・ハッア・・ハッ・・・-・・・ハァー・・・」

 

 

 夜。魔界都市の一角ヨミハラ。その一角を走る影。その陰の息は乱れ、手で傷口を抑えていることから手負い、それも相当なものになることは容易に想像できる。

 

 

 「クッ・・・忌々しや・・・口惜しや・・・っ」

 

 

 その傷では戦うことの危険さと、意味のなさを知っているからだろうか。足を躓き、情けない姿になろうとも生きるために、追っ手を撒くためにひたすらに走り続けていく。

 

 

 しばらくして、細い路地裏がいくつもあるせいでまるで迷路のようになっている場所に入り込み、気配を感じなくなったからか壁にもたれかかり、息を一つ吐く。

 

 

 「ここまでくれば追っても撒けたであろうか・・・・我としたことが息を乱して逃げ惑うなど・・・」

 

 

 その影は褐色の美しい肌に白い髪を長く伸ばした美少女。若しくは養女に見える女性。白い露出の多い衣装に身を包んでおり、赤い瞳と醸し出す空気もあって魔族とわかるものも多いだろう。

 

 

 「忌まわしくはあの米連の連中よ・・・しかし、日本ではやつらも鼻が利かぬか。ようやくこれである程度は落ち着けるというもの」

 

 

 彼女は米連から追われ、逃げて日本にたどり着いたもの。流石に異郷の地ともなれば米連本国のような執拗な追跡もなく、こうして身を隠せている。

 

 

 「だが・・あの憎たらしい女・・・水使いめ。あのような真似を・・・!」

 

 

 しかし、それでも思い返せば米連との戦闘で傷つけられた傷の痛みが増す。

 

 

 「まだ体がうまく動かぬ・・・あの水使いだけを殺すのならできたが・・・余計な消耗をしたうえで残りの連中とぶつかるのは得策ではないし・・・水使いも侮れば命とりな相手・・・これが今は正解か・・・くぅ・・・」

 

 

 米連本国での対魔族を主とした部隊との戦闘。自分の実力は疑うべくもないがそれでも倒せなかった米連の戦士たち。特に自分に大きな手傷を負わせた米連の水使い。あれに負わされた傷のせいで身体が動かない現状、無理をしてでもあの場で倒しておき、相手に警戒と用意を指せる時間を作らせて逃げるべきかとも思い返すが、それをすればより容赦のない追撃が米連国内で行われるのは明白。

 

 

 相手のホームグラウンドでそれを行っていたらむしろ今以上の消耗。若しくは不覚を取り命がなかっただろうと考え、情けないが今の状況がむしろ最良だと考えて深く息を吐く。一か八かは好かない。戦闘は好きだが望むのはこちらのゆるぎない勝利。

 

 

 それができる状況を作るまではこの傷の借りを返すこともできないし、目的も果たせない。

 

 

 「これからどうしたものか・・・水使いにそれ以外のやつらもおいそれとは追ってこないが日本・・・奴らが協力者をここで集める可能性もある。とどまりすぎるのも危険・・・」

 

 

 「うっひょー! こんなとこに超美人ちゃんがいるじゃねーの」

 

 

 「・・・なんじゃ、男?」

 

 

 ひとまず、ここからも一度離れて身体を休める。そうしようと思っていた矢先に聞こえる男の声。

 

 

 「ねえねえお姉ちゃん。こんなところで何してんの? こんな暗がりに一人でいたら怖い男に食べられちゃうぞー」

 

 

 「はあ・・・」

 

 

 見るもまあ軽薄な態度に神経を逆なでする声。苛立ちもするが見方を変えればちょうどいい。

 

 

 「ふん」

 

 

 「あ? なんだこれ、何かが絡みついて・・・むぐぅうう!?」

 

 

 女性の陰から地を這い伸びていた糸が一息に男の全身へ絡みつく。

 

 

 「あまり活きはよくなさそうだが腹の足しにはなる。我の養分となることを光栄に思うがよい!」

 

 

 男を繭のように包んでいた糸から生命エネルギーが流れる。体を蝕んでいた痛みや傷がいえていく。ある程度補給を終えると指を軽く動かし、糸を瞬く間に解く。

 

 

 その中から出てきた男はまるで別人のように痩せこけて気を失い。それを見向きもせずに女性は舌なめずりをしながら移動を再開。

 

 

 「まずい・・・だが贅沢は言えぬ。これでも腹の足しにはなるし、回復までは仕方あるまい・・・我慢の時よ。それに・・・」

 

 

 言動のみならずまずいとくれば少し苛立ちもするがこれも雌伏の時と考えがまんと自分に言い聞かせる。それに、悪いことばかりをあの餌になった男は与えたわけではない。

 

 

 「都合のいいことに我の容姿をみて無知蒙昧な男どもが寄ってくる。うまくやれば早く回復できよう」

 

 

 糸を貼らずとも餌から寄ってくるというのは都合がいい。自身の傷や気配すらも無視してやってくるあのあほは一人ではないだろう。

 

 

 「しばらくはここにとどまり、エネルギーの補給に努めるとしよう」

 

 

 うまくいけば水使いとぶつかる際の予備のエネルギーも確保できる。そう考え女性は笑みを深め裏路地の奥深くへと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「早くしろ! 小太郎もゆきかぜも事の大事さを分かっているのか!?」

 

 

 「わ、わかっているわよ! でも準備の時間がなかったのに万全の準備じゃこうなっちゃうじゃない!」

 

 

 「さすがに急すぎるぞ!? いつもならもう少し時間が・・・!」

 

 

 「それにしたってやりすぎだおめえらは! も少ししゃきっとしてくれよ!」

 

 

 「これ・・・時間間に合わないよねえ・・・」

 

 

 「うへえ・・・華奈先生とお姉ちゃんの頼みの任務で遅刻は勘弁だよー」

 

 

 夜、五車から急いで移動している私達。緊急の任務とはいえ、待ち合わせの時間をオーバーしそうな状況には焦らざるを得ない。ことはつい先ほど、アサギ校長と華奈先生からの話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「心願寺紅。以下5名到着しました」

 

 

 「お疲れ様です、紅さん。皆さんも腰かけてください」

 

 

 「私たちを呼んだけど、どうしたの?」

 

 

 「それと・・・私達だけ? いつもなら、こうほかのメンバーもいたけど」

 

 

 「ほかの皆は任務で忙しかったから私達だけとか? この前のあれもあったし」

 

 

 「おかげでボーナスはたくさんもらえたけど、大変だったわよね・・・ふうまちゃんも指揮官として出ずっぱりだったし」

 

 

 「とりあえず、話を聞こうぜ。どんなことかはまだわからないしよ」

 

 

 私たちを出迎えた華奈先生とアサギ校長。この前の騒ぎからひと段落しつつも、本当に私たちも出向くことが増えたこの頃。一応前もっての連絡や既に下地を整えてからの出撃だったが、今回は本当に急。私と同じ考えだろうか小太郎もいい予感はしないと顔に出ている。

 

 

 「そうですね。大体そんな感じなのと、本当に緊急を要することだからです。実は米連からの捜査の協力要請が届きました。それで、表向きは紅さん達が動いてほしいのですよ」

 

 

 「後ろでは華奈ちゃんたちが動くからね。ちょっと今回の件は相手も問題があるのよ。それも含めると、華奈ちゃんと一緒に動けるし見極めもできる貴方たちになったの」

 

 

 「・・・あの・・・私たちが見極めが出来るほど経験は現役の方々にはまだ劣るかと」

 

 

 米連からの協力要請。流石にそれに学生の私たちだけで表向きは動く。華奈先生たちのサポートもあったほうがいいのではないかと思ったが、その際にアサギ校長がさっと顔を逸らしたのでああ・・・と内心思う。恐らく前回の件で怖くなって信頼できる方を選んだというかなんというか・・・

 

 

 「紅ちゃんたちは場数の質と華奈ちゃんの教育がある分信頼できるの」

 

 

 「後はまあ・・・実際に皆さんの忍術や小太郎君、紅さんたちの経験がものを言うかもしれませんので。とりあえず、事情を説明しましょう」

 

 

 それからの説明はざっくりいえば米連の魔界の門から出てきたアラクネ族との戦闘。その際にアラクネ族の姫。蜘蛛姫アネモネ。物量作戦を得意とするほかに狡猾で下手な力攻めをしない強者。それによって状況が押し返されつつも米連の戦力の一人、アクア・ミストレスによってどうにかアラクネ族を撃退。アネモネも追い詰めたのはいいのだが結局日本で一戦交えた末に後を見失ってしまった。

 

 

 ホームでないことに加えてアネモネの引き際の良さのせいでその後の足取りをつかめずに此方への協力要請。

 

 

 まあ、下手に眷属で民間人も巻き込む策を使われては米連国内のいざこざを日本国に持ち込んだあげくに大惨事を引き起こす。そうなればそれをネタに米連への評価の下降や米連内での政治での面での影響。日本からの苦情は避けきれない。これを避けるための早期解決を選んだ末にこちらに依頼をしたという感じだ。

 

 

 「現在はアクア・ミストレスをリーダーとしたチームで捜索していますが、以前手掛かりなし。まずはアクア・ミストレス・・・本名レティシア・ベルメールと合流して合同任務当たってください」

 

 

 「それと・・・予想以上にあちらの行動が早くてね。もう東京に向かっているの。2時間もすれば彼女も東京に着くわ。急いで移動して頂戴」

 

 

 二時間・・・二時間!? いくらなんでも急すぎる。流石にこれは一同驚きを隠せない。

 

 

 「さ、流石に急すぎませんか先生!?」

 

 

 「い、今から急いでも時間が・・・! でも、でも準備はしなきゃだし・・・」

 

 

 「申し訳ありません。どうにもあちらも精鋭を送ってきているゆえに大丈夫と意気込んでいたようですがいざ逃げてみた際に足取りがつかめずに焦ってこちらに頼んだ様子で・・・代わりにまあ、色々いつもよりは手厚い報酬と口利きが出来たのでこれで勘弁してください・・・」

 

 

 「ごめんなさい・・・でも代りに今回の任務に関してはみんなの内申点アップとか、次第によっては次回の実習試験を免除も考えていたり休暇も用意するから、頑張って頂戴」

 

 

 いろいろとあれな話をしている二人だが、その急な中でも部隊を動かして裏方を用意したり私たちにここまで報酬を用意した任務はそれこそギランボの時ぐらい。表情を見ても少し疲労がうかがえる当たり、色々気づかれも今回は酷かったのだろう。下手をすれば国際関係に関わりかねない一大事。

 

 

 さすがにこれ以上何かを言う気にはなれず口をつぐむ。

 

 

 「わかりました。では、指令をお願いします華奈先生。アサギ校長」

 

 

 「ふふ・・・では。ふうま小太郎を隊長に、副隊長に心願寺紅を任命して第一部隊に任命します。華奈は第二隊長として裏で小太郎君たちのバックアップを。米連との協力で蜘蛛姫アネモネの捕縛を遂行されたし。では、出動」

 

 

 「「「「了解しました!」」」」

 

 

 任務を言い渡され早速動き始めるみんな。特に弾丸や武装の面で準備が必要な小太郎と勝気だが時折心配性な部分を見せるゆきかぜはその準備のために一番に校長室を出て走っていく。

 

 

 「行ってらっしゃいませーあら? 紅さんはいかないのですか?」

 

 

 外に出てひらひらと手を振る華奈先生。先生も第二チームのリーダのはずなのにこの余裕。恐らくはこの短時間で仕込みを済ませていることや縮地で必要ならすぐ動けることからの余裕か。それとも私たちの前ではできる限り優しくしていたいという考えからか。

 

 

 私の方に向いて首をかしげるそのしぐさに少しどきりとしつつ、私はそばによる。

 

 

 「えっと・・・・あの、できればなんですが、私は試験の免除とかじゃなくて・・・別の報酬をおねがいしたいです・・・」

 

 

 「ふむ? お金ですか? 最近ゲームの情報が出ましたしそれとか。新作はどうにも5の機体でないと遊べそうにないですしねー」

 

 

 「それではなく・・・あの、終わった後に・・・また、私を愛して・・・・仕込んでください・・・」

 

 

 そして頼むのは夜のおねだり。最近、ご無沙汰だったのもあるのだが・・・少し前に激しいものを味ってから病みつきになりそうだった。静流先生もスイッチを入れた華奈先生の攻め、調教はモノが違うと言っていたが・・・本当にあれは一度味わうと抜けられない。

 

 

 「もう・・・ここは学校ですよ? ふふ・・・でも、わかりました。ではこの追加報酬はサービスであげますので頑張ってきてくださいね? それじゃ・・・ん・・・頑張ってきてください」

 

 

 「ちゅ・・・ふ・・は♡ はい、行って来ます!」

 

 

 華奈先生も一度驚きつつもすぐに艶のある笑顔になって私を抱きしめてキスをしてくれた。甘くて、先ほどまで飲んでいたのだろうか、ココアの香りを感じた後にそっと離れた。最高の気付け、元気をもらった私はすぐに小太郎たちを追いかける。さっさと任務を終えて、先生と楽しむために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふふ・・・さてさて、一応は皆さん乗ってくれてよかったです」

 

 

 「華奈ちゃんもなかなかやるわね。実際は華奈ちゃん自身も動けるのに小太郎君たちだけで動かしているし」

 

 

 紅さんたちを送り出してから校長室に戻り、おかわりのココアを淹れつつアサギさんと軽い談笑。そう。実際に小太郎君たちには米連がらみということと時間で焦らせているが実際は私が率いて動いても問題ないけどもわざと分けて動いてもらいました。

 

 

 情報の急さに関しては本当だったし、任務内容も同じ。なのでちょうどいいということで次のステップ。小太郎君をリーダーにしてまた動いてもらい同じ対魔忍、日本の組織内という故の甘さもない米連の戦士相手に認めてもらえる動きや振る舞いが出来るかどうかを見極めつつ経験を積んでもらうことも目的。

 

 

 「アスカさんたちと組むことが多いでしょうけど、それ以外にも「G」やそれ以外の組織とも動くことは今後もあります。その際にアスカさんたちとのノリでやってしまうと大変ですからね。それをわかりつつ、どれほどいい動きや案を提示できるか」

 

 

 「それに、ふうまの頭領の名をあげていくにはちょうどいいと」

 

 

 「ええ。ちょっと悪い話ですが時子さんや比丘尼さんたちに頼んで今のふうまの評価を五車内で調べたら小太郎君に関してはもう少し名をあげたほうがいいかなあと」

 

 

 小太郎君たちの評価を念のためにと調べてみると「配下は強く忠義者が多い。次世代も強いものが多い。が、時子は頭領の座を望まず小太郎も優秀だが頭領としての動きは優秀だが当主、リーダーとしての動きはまだ甘い」という意見が多かった。

 

 

 恐らくは私の部隊でサブリーダーとして動いていたこともあっての評価でしょうけど、同時に小太郎君の年代で今の対魔忍当主のしていたことも評価の負い目になっているかもです。

 

 

 アサギさんはカリヤさんの撃退とカオスアリーナからの生還、ついでに救援に来た対魔忍たちと一緒に大取物をこなし、アスカさんは四肢を失い里も壊滅したのに米連で見事復活を遂げて現在も活躍、戦力を立て直している。私は私で第二九郎隊設立と諜報、救援部隊を用意したりといろいろしている。で、全員が現役。

 

 

 時子さんも時子さんでふうまの反乱から手を引いて戦力温存をしたうえで隷属時代のふうまを支えてまとめた実績と自身の強さがあるで尚更小太郎君にはもう一つ実績を積まないと甘く見られる可能性がまた出てきた。

 

 

 一応幾つかの任務でリーダーはさせているのですがまだそれでは足りないのでしょう。そこに来たこの協力要請。此方が動ける対民もばっちりなのでまさに渡りに船の状況。

 

 

 「本当なら学生、卒業もまだ先の小太郎君にこの重責は止めたいのですがね・・・まったく・・・」

 

 

 「でも、裏でサポートはしっかりしているんでしょ?」

 

 

 「もちろんです」

 

 

 急な要請ではあるけどこちらも用意出来る手は多い。だからこそ今回小太郎君をリーダーにまた据えての任務。米連がらみ名の知れた魔族。これなら小太郎君にリーダーの素質があることがわかるでしょう。

 

 

 「では、私はそろそろ動きます。情報もまとまってきているでしょうし、何時でも動けるようにしますから」

 

 

 「分かったわ。華奈ちゃんも気を付けて」

 

 

 「ええ。アサギさん。では行って来ます」

 

 

 私も次の動きをするためにココアを飲んでからアサギさんに手を振って校長室を出る。さてさて、諜報にあてていたメンバーと情報のすり合わせと私でも探せるものを探さねば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くそっ! さすがに時間かけすぎだ!! もう間に合わない・・・」

 

 

 「待ち合わせの時間にあと20分・・・おい、どーすんだこれ!?」

 

 

 先生からのキスを貰って元気充実。したのはいいのだが・・・ゆきかぜや小太郎の準備が予想以上に手間取ったことやその焦りから来る移動手段の段取りミスもあって私たちは早速任務開始すらも遅れかねないというひどい状況になってしまった。

 

 

 というか、ゆきかぜは何で投げナイフや苦無まで持っていこうとしたんだ? 鹿之助程投擲武器は得意ではないだろうに。そして小太郎は武器を持ち込みすぎて鞄が破れたりで散々だったし・・・

 

 

 「はぁー・・・私が先に行って情報のすり合わせということで時間を稼ぐからみんなは急いで追いついてくれ。小太郎。イヤホンのスイッチを15分後にオンにしてほしい。こっちの会話を聞こえるようにするから」

 

 

 さすがにこれ以上は下手に送れることはできない。しょうがないので私は移動中の車から出て人魔合一を発動。あれ以降能力を使いこなし始めて赤いエネルギーの翼と瞳も赤くなるほどに発動。

 

 

 「紅。頼む。こっちもすぐに追いつくから」

 

 

 「分かった。それじゃあ。行ってくるぞ」

 

 

 そこからはすぐにビルの屋上に飛び移り、ビルからビルへと駆けて待ち合わせ場所の空港に。いくらなんでも任務での遅刻、しかも米連との協力で送れるのはご法度。下手すれば五車の運営にもかかりかねない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ・・・・・せっかくあと一息の所まで追い詰めたのに、日本に来て見失ってしまうとは」

 

 

 日本の魔都・東京。そこにある空港に降り立つなり女性は溜息を吐く。美しい銀糸の髪を短く切りそろえ、美しい美貌の持ち主。対魔忍のようなスーツに身を包みメリハリの付いた豊満かつ鍛えられた肢体を見せる美女。

 

 

 「日本の地理には疎いし・・・逃げた方角だけではお手上げ・・・」

 

 

 彼女は米連の戦士であり、魔界の奥地にある広大な湿地帯を支配するというアラクネ族の姫アネモネと戦った一人であり、主戦力。アネモネを追い詰めたのはいいのだが物量に押し返され逃亡を許してしまう。自身のふがいなさ、追い詰めていた故の油断もあったことを思い返せば恥ずかしさすら覚える。

 

 

 「いや・・・しかし、手傷は与えたし、次は確実にとらえられると思うしかないか・・・対魔忍の協力を取り付けたそうだし・・・しかし、誰が来るのだろう」

 

 

 不幸中の幸いは大きな手傷をアネモネに与えたこと、この追跡に日本の対魔忍を急な頼みであっても用意してもらえたことだろう。そして、誰が来るのか。実力のある魔族との情報を与えたそうだし、対魔忍最強と呼ばれるアサギだろうか? それともその秘書であり最近やりたい放題している華奈か?

 

 

 そう考えてやめる。あの二人でなくてもいい。蜘蛛姫を探り当てられる力量の持ち主であれば。

 

 

 「・・・む。もし。よろしいですか?」

 

 

 そう考えていると私の前に一人の女性が現れた。黒いスーツに身を包んだ金髪の髪をツインテールにしている美しい女性。だが・・・学生ほどの女性がこちらを見て歩いてくる。

 

 

 「なんでしょう?」

 

 

 「こちらの情報と一致していますね。アクア・ミストレスとお見受けします。私は心願寺紅。此度の協力任務の副隊長を任されたものです」

 

 

 頭を下げてくる少女の言葉を聞いて一瞬驚いた。蜘蛛姫の危険さを伝えたはずなのだが、来たのは少女。まだ学園に通っているであろう年ごろの子供を、しかも一人。若干の不満と拍子抜けした気分を覚えてしまう。

 

 

 「米連所属、アクア・ミストレス・・・いや、レティシア・ベルメールだ。心願寺紅殿。落ち合う時間よりも10分早いが助かる。しかし、貴殿一人か?」

 

 

 「ありがとうございますレティシア殿。いえ。他にもメンバーはいますが先に私が先行してそちらとの顔合わせと早めの情報のすり合わせをと隊長に頼まれまして。蜘蛛姫の危険さや回復しているかもしれないと考えれば早い行動が一番。どうか協力をお願いします。そして、歓迎します」

 

 

 少し、不安を覚えたが紅の差し出してきた手を握り返して分かる。相当に鍛えられた・・・米連でもサイボーグや肉体手術で強化された兵士はいるがそれ以上の力強さを感じる。若いが、かなりの手練れ。見た目から不満を覚えていたことを反省し、拍子抜けしていた自分の気持ちを切り替えていく。

 

 

 「ああ、ありがとう。若いが頼りになりそうだ。よろしく、紅殿。それと、私のことはレティシアでいい。そのほうが呼びやすいだろう?」

 

 

 「では、レティシア。隊長たちはまだ情報の用意と合流次第動けるようにするための準備で少し遅くなりそうです。なのでこちらで現状持っている情報とそちらの持っている情報のすり合わせをしましょう。・・・・ただ、込み入った話はこれ以上ここでするのもよろしくない。空港を出てから移動し、その中で話しましょう」

 

 

 ほかのメンバーはまだ見ていないが、これなら大丈夫かもしれないと私は評価を一段階上にあげる。

 

 

 

 

 

 

 「ふぅ・・・それで、小太郎。どうだ?」

 

 

 「ああ。この町で動く方がいいだろう。それと、第二部隊と合流するにはここがいいとも言っていたしな」

 

 

 どうにか待ち合わせ時間にも間に合わせ、こちらの遅刻もどうにかできたことに内心安堵していると小太郎たち二もどうにか合流を終えた。

 

 

 「それと、こっちでも一応調査は済んだけど・・・やっぱり増えているわね」

 

 

 「うん。行方不明の報告が増えているよ。ここ最近の魔界都市は落ち着いていたからこの数は少し多いほうかも」

 

 

 その間にゆきかぜと蛇子も第二部隊・・・先生たちの部隊との情報を貰い人の行方不明の情報が増えていることを伝えていた。

 

 

 「日本の事は詳しくないから助かるが・・・この情報だけではまだ蜘蛛姫を見つけることは難しいだろう? あいつは狡猾だし、見切りも悪くない」

 

 

 「ふふー大丈夫だときっと。先生たちの下調べだし」

 

 

 「それに、何らかの痕跡さえ見つかれば蜘蛛姫とやらに着くための糸を手繰り寄せられるかもだしな。今はいろんな情報を集めたほうがいい」

 

 

 「あははっ骸佐君うまい。蜘蛛だけにってこと~?」

 

 

 学生だけのメンバーでレティシアも少し不安げだが、部隊を分けて動いていることや、実際に実績もある。ギランボの事も経験している分。狡猾な相手を捕まえるためにはちょっとしたことでも調べていくほうがいい。相手は魔族。人ではできないような方法を用いることだってあるだろう。

 

 

 「冗談ではないぞ・・・私のメンバーも探しているのだが何分手掛かりらしいものがないからな・・・母国なら人海戦術も使えるのだが」

 

 

 「異国ですし、今回は事がことです。勝手が違いますししょうがないです」

 

 

 「それにしたって今回は探すのがとにかく面倒そうだね」

 

 

 「そのために部隊を二つも、しかも先生が動いたんだろうねえ。そうじゃないとふうまちゃんや紅ちゃんたちを動かさないし」

 

 

 実際に先生が最初から裏方で動くということはそれほどに情報がいつも以上に必要ということだろう。そして、待ち合わせの街について歩くことしばらく。ふいに排水管を叩く金属音が聞こえる。

 

 

 「誰だ!?」

 

 

 「大丈夫ですレティシア。味方ですよ」

 

 

 その後に闇から出てきたように現れるのは袴姿に腰に忍者刀を穿いた狐の面をかぶった女性。

 

 

 「皆様お疲れ様です。そして、レティシアさんですね? 銀閃妖狐とお呼びください」

 

 

 「銀閃妖狐・・・確か対魔忍華奈の幹部の中でも実力者といわれている戦士か・・・」

 

 

 銀閃妖狐・・・若アサギが変装しているクオンが出てきた。

 

 

 「では早速ですが情報です」

 

 

 「何がわかったの?」

 

 

 「ええ。まず、ゆきかぜさんたちが調べてくれた行方不明事件だけでもそうですが、ヨミハラでこれ以外にも意識不明事件が頻発しています。ここ数日だけでも20件以上。少し前の魔界都市ならいざ知らず、流石にこの魔界都市でも最近のデータをはるかに超えるペースですね」

 

 

 「そんなに!?」

 

 

 「ふぅむ・・・ヨミハラは地下都市ゆえにやりやすいだろうがそれでも多い・・・」

 

 

 「確かに、これは多いですね」

 

 

 私たちも任務で何度も足を運んだヨミハラ。地下にあるゆえに監視の目も届かず、出口も限られているゆえに対魔忍やほかの組織もおいそれとは足を運べない場所。魔界の門があるゆえに人さらい、意識不明事件は起こりやすいが、それにしたって多い。

 

 

 学生ながら多くの任務をこなし、華奈先生のまとめた統計データを思い出すだけでもこれは異常。

 

 

 「それが蜘蛛姫に関わっているの?」

 

 

 「はい。ここからが興味深い点ですが・・・意識不明となったものはどれもこれも命に別状はないですがひどく消耗、体力を消費したようで医者の見立てによると1、2か月ほど安静にしてようやく意識を覚ますほど。中には、まるで別人のように痩せこけたものもいるようです」

 

 

 「うわ・・・凄い・・・本当にげっそりとしている・・・」

 

 

 クオンの見せてくれる写真のデータは確かに誰もがやせこけ、中にはある程度太り気味の青年が栄養失調の病人と思えるほどに変化しているものもある。

 

 

 「新種の魔薬の可能性は?」

 

 

 「念のためにそちらの当たりましたが最近出回っているものからはこのような症状を持ったものもないですし、意識不明となったものの身体からはそういった薬物反応は検出されませんでした」

 

 

 「で、その意識不明者はどうやって倒れていたの? 一応、ヨミハラは人も多いし、密度もまあ高い場所は高いし目撃情報とかは?」

 

 

 「それに関しても監視カメラのハッキング、こちらの持っている情報から見てもごく一瞬、気が付けば倒れていたものが大半です」

 

 

 次にカメラの映像のデータを私達の端末に送る。何かに向かってい歩いているものや、ぶらぶらしているものなど何気なく見える男性らが一瞬固まったと思えば次の瞬間には痩せこけて倒れていたり、気を失っている。

 

 

 薬物などの症状でないのならこれほどの急変、ある程度は魔族の仕業と考えてもいいのもしれない。

 

 

 「ちょっと目を離した間に? それは怖いかも・・・」

 

 

 「それと、新情報です。現場に残されたもので興味深いものがあったのですよ」

 

 

 新たに聞こえる女性の声。それに一同が振り返ると、スーツに身を包んだ華奈先生が微笑んで手を振る。

 

 

 「華奈先生!」

 

 

 「貴女が船坂華奈・・・お会いできて光栄です」

 

 

 「私もですよレティシア・ベルメールさん。で、その情報ですが、現場の7~8割ほどの場所、半径10メートル以内にこれが残っていたのと・・・妖狐。映像のここをアップに」

 

 

 「はい。これですね」

 

 

 今度は華奈先生とクオンからうつされる映像。それには白くねばねばしていそうなものと、カメラの映像にきらりと光る糸・・・? のようなものが映し出されていた。そして、それを見てレティシアの視線が鋭くなった。その後何度も頷き、何か納得するものを得たように見える。

 

 

 「ふふ・・・やはり、合っていましたか?」

 

 

 「ええ。これは奴の糸。何度も戦闘中に見たし、データも残っているからわかる。これを使い大将から生命エネルギーを吸収できるのだ。これを使い罠を用意しておそらくは生命エネルギーを奪いつつ隠れているのだろう」

 

 

 「・・・うん。でも、これってやばいわよね? 生命エネルギーでお腹が膨れるだけじゃないわよね? 一応、ヨミハラの医薬品店とかで行方不明、意識不明事件を調べたらなかったし、万引きとかの報告もない。もしかしたら・・・」

 

 

 「生命エネルギーを治療に回せるかもしれねえってことか・・・」

 

 

 それだけではない。先ほどレティシアと打ち合わせをした際にアネモネは影から眷属を大量に出したと言っていた。そのエネルギーで眷属を強化したり、数を増やす際の糧に使えるかもしれないのだ。そして、人が意識不明になるほどに吸い尽くしている。これを何十人も。どれほど回復しているか見当もつかない。

 

 

 「それだけではないですね。アネモネはエネルギーがある限り不老不死と言われています。なので・・・時間をかければかけるほど・・・」

 

 

 「やばいってことじゃないの!?」

 

 

 「早く捕まえなければいけない・・・が・・・」

 

 

 「ヨミハラだもんね・・・」

 

 

 そう。それなりにヨミハラも広いうえに隠れやすい場所も多い。出入口が限られている分まだ東京キングダムに比べればマシだが潜伏に専念すればそれこそ捕まえられるのに時間がかかる。潜伏場所は絞れたが、ここからどうしたものか。

 

 

 「ふむ・・・万全な状況にさせないために、一つ搦め手を使うか」

 

 

 「ほほう」

 

 

 「搦め手? どんなものだ?」

 

 

 何か思いついた小太郎が語った作戦はシンプルながら面白いもの。レティシアの話からアネモネのダメージは大きく、今も回復に専念していると仮定。そしてアネモネの容姿から下手にに動けば目立ってしまう。奴隷娼婦にしようとする輩やアラクネ族の姫ゆえに名を知っている連中から目を付けられ、そして追っ手にばれるかもしれない。狡猾な彼女がそんなリスクを冒してまで動くようなことをすることな少ない。

 

 

 ならばどうやって餌を用意しているか。ここで影から出せるという眷属や行方不明者を傀儡にした連中を自らの目として自身は潜伏している。なら、その眷属や従者を通して居場所を探し、挑発するというもの。

 

 

 そのために若さくら・・・桜花の影遁を使う。傀儡となっているものや眷属を見つけ、そこから桜花の影遁で影に潜り込んで追跡。その際に思いきり馬鹿にしてやってアネモネを引きずり出してこちらのメンバーで叩くというもの。

 

 

 「これは良い案です。実際、今は下手に時間をかけるよりも早くたたきたいですし、それにこれでもし逃げてもヨミハラから逃げてくれれば衛星やほかのメンバーも動きやすくなる分尚更やりやすい」

 

 

 「それに、私の方でもメンバーを出口に配置していますので何らかの動きがあればすぐに伝えられます。移動手段のトレーラーも用意していますので試してもよろしいかと」

 

 

 「妙案があるわけでもなし・・・私も小太郎の策に乗ろう。しかし、クオンに華奈。ヨミハラにいつの間にこのような用意を・・・」

 

 

 私たちも小太郎の作戦に賛成を示し、華奈先生とクオン、レティシアも納得。そしてそのバックアップの用意の良さにレティシアは少し驚いていました。まあ・・・うん。本当に用意の良さが河南先生たちの特徴だしね。

 

 

 「じゃ、俺とさ・・・桜花で挑発と敵の場所を探る」

 

 

 「ふふ。任せて♪」

 

 

 「それじゃ、私と骸佐ちゃん、紅ちゃん、ゆきかぜちゃんでふうまちゃんが誘導した場所で叩く」

 

 

 「そして私とクオンさんでバックアップに回ります」

 

 

 「物量に押し返されたといいますし、不測の事態に備えつつ、囲めるように動けるよう対処しましょう」

 

 

 そしてメンバーの割り振りは挑発、追跡の小太郎と若さくら・・・桜花。差し込んでから叩くメンバーは私、骸佐、蛇子、ゆきかぜ。バックアップと逃げ道を塞ぐ役割は華奈先生と若アサギことクオン。

 

 

 「それなら私もバックアップに入る。私を見てアネモネが警戒してすぐに撤退を選んでは困る」

 

 

 バックアップにはさらにレティシアが追加。一番戦闘経験があるし、華奈先生曰く「うちの幹部レベル」と言わしめる実力者。問題はない。むしろありがたい配置だ。

 

 

 「よし・・・なら、作戦開始。まずは現場に行くぞ!」

 

 

 「「「「了解っ!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 「ふむ・・・ここのほうが近いですね・・・行きましょう」

 

 

 小太郎君が面白い作戦を出してくれたので私が先に回収していたアネモネの眷属らしき蜘蛛の糸を入れたパックの匂いを覚えておいてヨミハラの中を歩く。こういう時少しでも手掛かりがあれば鼻で追跡出るので便利ですねえ。私の忍術。

 

 

 「本当に分かっているのか・・・?」

 

 

 「華奈先生の嗅覚は警察犬以上ですからね。確か、トリュフだって見つけられるとかなんとか」

 

 

 「それは便利だな・・・嗅覚での追跡か。そういう道具でも用意してみないか米連でも打診してみるか?」

 

 

 後ろでは皆さんを隠れさせつつ何やら言われている様子。早い所見つけたいものです。魔界都市、地下都市ともなればいろいろ匂いがきつくて・・・うぇ・・・

 

 

 「む? あれは・・・あたりですね」

 

 

 しかしまあ、我慢して探せば当たりを発見。100メートル先にいる男の怪しい動き・・・はまあヨミハラなのであるかもですが、肩の上に乗っている蜘蛛は普通のものではなく、匂いもあちらから感じる。首元にも私の視力でないとわかりませんが糸を首に掛けられている。いつでもこれで首を絞めるなりちょんぱしてやれるということでしょう。

 

 

 「皆さん、少し失礼」

 

 

 それからあとを追跡すれば男と同じような連中が集まり新しい餌になるべき男を取り囲んでいる。

 

 

 「眷属を発見、新しい餌を囲んでいますね。これ以上被害を出したくないのと、あちらはエネルギーを求めているのならこの傀儡を倒すほどの力量を見せれば新手を送り込むでしょう。それに逃がしても私が追跡できます。いいですね?」

 

 

 「了解。それじゃ俺は桜花と準備をしておきます」

 

 

 「こちらもちょうどいい狩場を用意したので大丈夫です」

 

 

 あちらも準備は出来ているようなので早速傀儡と眷属をサクッと撃退。何割かは逃げられるようにしたのですが蜘蛛姫も何かを感じたのかすぐに眷属は撤退。代わりに大量の新手が動く音と匂いが。

 

 

 「来ましたね。小太郎君、桜花さん。用意を。私は移動しますので」

 

 

 「はーい♪ 私にお任せを♡ 影遁の術・・・!」

 

 

 それが来る前に若さくらさんの忍術で陰に潜み、その中に小太郎君も手をつないで一緒に影の中に。本当、便利な忍術ですねえ。

 

 

 若さくらさんと小太郎君が影の中に入ったのを見届け、私は一度移動。しばらく後に眷属と傀儡となった人達が周辺を探し、しばらくするとまたどこかに移動。

 

 

 「うまくいったようですね・・・」

 

 

 私も一度高い所に移動してその眷属たちの様子を望遠鏡で観察していると一つの廃倉庫とみられる場所に集まっていました。そこで響く声とそれを頼りに見てみれば情報通りの容姿をしている蜘蛛姫アネモネが何やら悔しそうにしている様子が。

 

 

 どうにも傷は完治せず、まずい食事ばかりだったので私、まあどうにも上質な餌を取り逃したことにご立腹のようです。私の耳に聞こえるレベルですがまあ怒気がこもっている。

 

 

 そこに現れる若さくらさんと小太郎君。挑発の言葉がまあうまいことうまいこと。それで流石にアネモネもブちぎれて襲い掛かっていきました。小太郎君たちもやはり強い生命エネルギーがあることで回復と腹を膨らませること。同時にあの二人相手でもすぐに倒せるほどには回復しているということ。

 

 

 ・・・やっぱり、あの作戦をしてよかったですよ。ちまちま探していては本当にやばいほどの魔力を有していますし。これで不完全とはまあ・・・

 

 

 「先生。私は何時でも行けます」

 

 

 既に配置についている若アサギさんとレティシアさん。したでは小太郎君と若さくらさんが影や銃弾で応戦しつつアネモネと眷属にけん制しつつポイントまで逃げています。

 

 

 眷属の数が多いですし、これは米連の精鋭が跳ね返されて逃亡を逃がすのも納得。この手数に加えてあのサイズの蜘蛛の特性を活かせばそりゃあ並みの魔族、魔獣よりも厄介でしょう。

 

 

 「もう少し引き付けてからです・・・・・・・・行きましょう」

 

 

 そうこうしていると小太郎君たちを追いかけるアネモネと眷属を分断するために私と若アサギさん、レティシアさんで分断。

 

 

 「おのれぇ・・・・! くそっ、逃がさぬぞ人間っ!!」

 

 

 それでもまだ小太郎君を追いかけるアネモネ。一番面倒な私たちを小太郎君たちのエネルギーで回復してから潰すつもりのようですが、相当な挑発で頭に血が上って判断が鈍っているようです。逃げることではなく潰す手順を考えるあたりや自身だけで突出していることを見ても分かる。

 

 

 ただまあ、同時にその物量で小太郎君たちをとらえて回復。そこからゲリラ戦術と物量。蜘蛛の強みを活かした戦いをしたらそれも可能であろうあたりとんでもない。

 

 

 「クオンさん、レティシアさん。まずはこちらを十全につぶします。此方にはまだ使える札を用意していますし、今切りました。後ろは気にせず今は前の眷属を倒すことに集中を」

 

 

 「了解です」

 

 

 「もちろんだ!」

 

 

 「HYAAAAAAAAA!!!」

 

 

 目の前で金切り声のような、恐ろしい叫びをあげながら巨大な蜘蛛の爪や糸、牙が襲い掛かる。

 

 

 「アクア・スラッシュ!」

 

 

 「二刀・隼斬り!」

 

 

 「飛燕!!」

 

 

 それを水の槍、手の動きが残像として残るほどの高速の剣戟、飛ぶ斬撃で一掃。同時にレティシアさんは水をあたりにばらまき、用意を済ませていく。

 

 

 ひとしきり戦い、それでも尽きない眷属を一網打尽にするためにレティシアさんの切り札を使用。

 

 

 「これでおしまいだ。アクア・スナッチ!!」

 

 

 大量にばらまいていた水を使いまるで網のようにアラクネ、眷属たちを縛り付けて一か所に集め、動きを封じる。

 

 

 「双蛇・とぐろ巻き!」

 

 

 「光華突閃!!」

 

 

 そこに私が眷属を渦を巻くように斬撃を飛ばして竜巻の中に入れたようにして斬撃で刻み、その斬撃の中、台風の目の中に若アサギさんの隼の術を活かした超高速の刺突の斬撃を飛ばして残らず殲滅。

 

 

 「あちらも終わったようですね・・・」

 

 

 「では合流して、一応備えますか。これも演技の可能性もありますから」

 

 

 「ああ。相手は蜘蛛姫、何があってもおかしくない」

 

 

 一応、若紫さんに弓での援護射撃を頼んでおいたのでそれがやんでいる当たり大丈夫そうではありますが、こういう油断を突くかもですので警戒を解かずに移動。

 

 

 しかしそこでも決着はついているようで、アネモネ最強の配下を呼んだらしいのですが紅さんたちと協力して退治。力を使い切って満身創痍のアネモネも私たちが来たことでここまでということでおとなしく捕縛。任務を完了しました。

 

 

 

 

 

 

 「ありがとう。ふうま、紅、華奈。そして皆さん。貴殿らの協力に感謝を」

 

 

 帰り支度を終え、空港に来た私は見送りに来てくれた紅や華奈たちに腰を折りながら礼をする。

 

 

 「ふふ。いえいえ。私達はなすべきことを成しただけです」

 

 

 「それにレティシアの実力も見事。本当に助かりましたよ」

 

 

 「ふふっ・・・私も役に立てたのなら何よりだ」

 

 

 学生たちだらけの任務に不安もあったがふたを開ければその不満もない。作戦も手早さもよく、実力もある。彼らがいたからこそあの蜘蛛姫を一日足らずで捕まえることは出来なかっただろう。

 

 

 「ねえ、アネモネはどうするの?」

 

 

 「米連特製の牢に入れて本国に移送。それからのことはお上の仕事さ」

 

 

 「そっか。次に逃げられたら捕まえられる自身もないし、気を付けてね?」

 

 

 「実際・・・強かったものね、手負いの上であれだったもの」

 

 

 その手負いとはいえ上位、支配階級の魔族を相手に立ち回り、捕らえた彼女たち。しかし慢心せずにむしろ手負いである相手であることを理解した上で警戒も怠らない。いい戦力だ。

 

 

 「安心しろ。二度と逃がしたりはしない」

 

 

 「なら助かる。本当にやばかったしよ・・・」

 

 

 「ふふふ。骸佐君盾になり続けたせいで蜘蛛の糸だらけでしたものね」

 

 

 「糸に巻かれて死ぬんだよおっ!! ってなりそうなくらいだったもんね。あれが忍術で好きに消せる鎧でよかったね~」

 

 

 「シャレになってねえぞゆきかぜ!」

 

 

 愉快な会話に花を咲かせていたが、時間を見ればもう飛行機の時間。

 

 

 「そろそろ時間のようだ。私はこれで失礼する」

 

 

 「了解です。そちらも後処理が大変でしょうけどお気をつけて。機会があればまたお会いしましょう。レティシアさん」

 

 

 「そうだな・・・その際はぜひともふうまの部隊、それを育てた華奈の部隊に所属してみたいものだ。手練れも多く愉快と聞いているし。・・・・では、さらばだ。日本の対魔忍。地獄の番犬とその教え子たちの皆」

 

 

 笑顔で手を振り、振り返らずに搭乗口へと歩いていく。何というか、予感がするのだ。また会うことがある。それも結構な厄ネタをどちらかから引っ提げて。

 

 

 

 

 

 

 

 米連との任務を終えてから早数日。紅さんとの約束の追加報酬で気絶させまくるほどに激ししたり、特別休暇の追加に小太郎君とゆきかぜさんと若さくらさんが大喜びしていたりしたのを見てほっこりしていました。

 

 

 「おい華奈よ。我はこれからここに住めばいいのか?」

 

 

 「そうですね。それとまあ、事情を説明してくださいませ」

 

 

 私は目の前で私の別荘を見つつ興味を見せているアネモネと命令書を交互に見ている。

 

 

 「アラクネ族の秘めたる我の住居としてはちいと小さいが・・・まあ、住めば都。ともいうか」

 

 

 「あ、アネモネちゃん。久しぶり。どうしたの?」

 

 

 「おお、ナディア。久しいの。綺麗になっておる。ここの生活は充実しておるのか?」

 

 

 「うん♪ 毎日が楽しいよ? 娯楽も多いし。あ、華奈。私が案内していくけどいい?」

 

 

 「あー・・・私も一応そばにいますので、案内はお願いします」

 

 

 命令書にはアネモネの引き取りと住居の手当てをするようにとの旨が。米連に引き渡したこの数日後にこれは流石に内容が理解できても混乱は収まらない。

 

 

 「で、司法取引をしたのでいいのですよね?」

 

 

 「ああ。我は永く時を生きている上に領地も永く収めている。ゆえに魔界での基盤もしっかりしているゆえに情報や文化もよく知っている。なのでこの知識を与えることで自身の身柄の保護を得たまでのことよ」

 

 

 「よくもまあ、身柄の保護はいいとして同盟相手とはいえ日本、しかも新顔の私に預ける判断をしたものです。そしてそれを通す手腕」

 

 

 「ふ。我は生命エネルギーを喰う。ならば活動が活発なそちらの部隊で敵のエネルギーを喰えるであろう? 此方にだって保護される場所を選ぶ権利くらいはある。特に米連では魔族と手を結ぶことを選ぶ派閥も多い故にそこをちょいと利用すればすぐよ。

 

 

 それに加え、そちらは米連でも噂になっておるぞ? 多くの魔族を撃退、封印した日本きっての精鋭。後、我はそちらに会うために行動していたのだがそのせいであの水使いにぶつかってな」

 

 

 思わぬ発言に少し驚く私。私会うために?

 

 

 「ふーん? でも、アネモネちゃんが会うほどの事って何があったの?」

 

 

 「魔界と人間界がつながってからというもの、魔界の実力者の動きが激しくての。更にはここ最近淫魔族の王が討たれたというのにまたあの竿師、ものぐさ女どもがまとまりを見せた行動を見せたり、アスタロトなどの実力者も不明。そこに日本の対魔忍と手を結んでそちらに居ついているナディアに、アミダハラのあのノイ・イーズレーンにエウリュアレー、力は失えどいまだ威光とカリスマ、知識を持っているジャークとも友好を持っている華奈。

 

 

 こやつはさほど過激な思想は持たず、益や友誼を手にできるのであれば手を結べる存在。魔界の領地だけでは足らない部分が出来るまえに手を結び、領地の安泰を計るほうがよかろう?」

 

 

 どうにもアネモネさんは私の存在を使い自身の領地の安寧と淫魔族やほかの魔族の動きを探り、対処するために来ていた様子。というか夢魔、もとい淫魔族がまた組織立った動きをしているというのが・・・単体では飽きっぽい、まともな動きをする面々は今はいないはずですが・・・・彼女以外。

 

 

 「考えれば、私の領地もオカマ魔女とジャークの領地を合併しているから結構広くなっているしそうなるか」

 

 

 「左様。それにナディアだけではなくメイアなどの実力者もいることや善政を敷いていることもあり今や魔界でも有数の領地の広さと実力を持つ。ならばそちらと改めて同盟を結びつつ、人間界に出ている実力者を狩っていくほうがよかろう」

 

 

 「なるほど。では、今後もまたよろしくお願いします。そちらの力を戦力にできるのは大変助かります」

 

 

 「うむ。それに我を奸計にはめた小太郎に最強の眷属を屠った紅だったか? あれを育て、なお敵わない華奈の実力も気になっておるのでな。必ずや友人、もしくは配下に加えてやる。覚悟しろよ?」

 

 

 そういってにっこりと笑うアネモネさん。いやあ、油断できない人が来たものです。

 

 

 ちなみに、あとで生命エネルギーは血液でも大丈夫らしいので私の血を少しあげたところ最高レベルのご馳走ということで月に一度少しあげることになりました。

 

 

 同時に眷属を通じて魔界の情報をもらえたりはしますし、便利ですが同時に警戒しないとですねえ。

 

 

 ちなみに、アサギさんにこの命令が来た際にアサギさんは即決で私の方に行くことを了承したそうです。本人曰く「実際に抑え込める戦力と頭脳がそろっているのはここしかいないから」と言いながら謝っていました。まあ、こちらも新しい知恵袋と諫言役が来てくれたのでいいですよと言っておき、一緒におでんを食べに行きました。まだまだ暑い季節ですが、美味しかったです。

 




華奈とナディアのネームバリューは魔界でも響いている様子。まあ、オカマ魔女とかやたら大物とぶつかっている上に噂も多数ありますからね。しかも友人も多数。


そろそろアクション対魔忍時空に行くために動かないとということで小太郎にも難度の高いミッションを与えていきます。裏では華奈たちがサポートしますが実働の経験を積ませるために。


というか本当にアクション対魔忍でアサギを実働部隊の一人として海外に動かすあたり本当に思い切った判断していますよねえ。しかも次の総隊長と言われている紫も一緒に行動しているわけですし。

華奈のヒーロー、戦士の在り方ってどれに近いと思います?

  • ウルトラマン
  • 仮面ライダー
  • こち亀
  • クレヨンしんちゃん
  • スーパーヒーロー戦隊

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