こちら対魔忍特別諜報室   作:零課

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~コートララ・館・外~


紫「アサギ様! ご無事ですか!?」

アサギ「え、ええ。この新スーツと、エミリーの手当のおかげでいくらか楽よ」

紅「それは幸いです。急ぎましょう。雑魚たちは対処できてもあれは無理です」

ゆきかぜ「私は雑魚散らしする?」

桜花「私は・・・炎で影を消されそう・・・」

小太郎(ドローン)『桜花はかすかな影を使いつつ雑魚を散らしてくれ。ギランボ、アスタロト相手にはアサギ校長や紫先生、紅レベルじゃないとちょっと厳しい』


熱中症には気をつけよう

 「ほーらほら。逃げないと駄目よー?」

 

 

 「うぐっ・・・く、そ!」

 

 

 「はーい。ここも弱い!」

 

 

 「ぐっは・・・がぁっ!」

 

 

 紅がアスタロトの炎の鞭をいなしつつもスーツの中で蒸し焼きにされそうなほどの熱に呻き、その隙をついて襲い来るギランボの拳を紫先生が戦斧で受け止めるがそれでも抑えきれずに衝撃に苦悶の表情を浮かべる。

 

 

 「離れなさいよ!」

 

 

 「うわああぁっ!?」

 

 

 それを救助するために、距離を取るためにゆきかぜの雷撃弾の雨あられ。消耗を考えない威力を込めた雷撃ゆえにアスタロトは炎の壁で対処。ギランボは避けていく。それでも流れ弾の雷撃弾は当たれば放電して炎の壁を吹っ飛ばし、そして取り巻きの魔族、モンスターたちを蹴散らしていく。

 

 

 「影盾! 影槍!」

 

 

 桜花も負けじと影の不意打ちや影の盾に槍と多種多様な攻撃を用いて敵を倒し、スーツに忍ばせていた予備の武装を持って対応する。

 

 

 じりじりと逃げつつの撤退。米連の基地の方はどうにか安全権を確保しているのでそこまで逃げるルートを用いているのだが・・・

 

 

 「あら。逃げる速度早いわね? じゃあこうして・・・」

 

 

 「きゃっ!?」

 

 

 「エミリー! くぅ・・・逃げる速度さえも掌ということ・・・ガハッ!?」

 

 

 一定以上の速度を増すとアスタロトが炎を使ってアスファルトを溶かすほどの熱を使って足場を奪い、あるいは地面の熱を奪い取って沿岸部ゆえのここの足場を一部崩落させてこちらの撤退を鈍らせ、その隙にギランボたちが襲い来るのだ。

 

 

 エミリーさんが足を取られ、とっさにスウが手を取って退却方向に投げ飛ばすがギランボの拳をもろにもらい、吹っ飛ばされて地面を転がる。ジュウジュウと焼け付く地面の熱にすぐさま体を起こすスウだが、顔についた赤い跡が痛々しい。

 

 

 「アサギ校長。凍結グレネードは・・・」

 

 

 「ないわ。今回はゾンビ、モンスター用のワクチンがほとんどだったし・・・せいぜいこれね」

 

 

 「了解です。紫先生。救援の方はあとどれくらいで・・・」

 

 

 「ここのポイントに来てくれればすぐに対応できると言っていた」

 

 

 『・・・そこのポイントから少し先に行けば、ちょっと使えるかもという場所がある。そこで戦える用意が出来ればいいのだが』

 

 

 殴られた腹を抑えつつ苦無や手裏剣でアスタロトたちをけん制していくアサギ校長に近寄り武装の予備を確認していく紅と紫先生。

 

 

 逃げ続けるだけでは米連の基地に逃げ込んで軍団戦に持ち込んでも危ういし、何よりギランボの存在。商人と言っていたが、米連の平気で生まれたモンスターたちを取り扱うと言っていたし、ここに親ノマド派、桃知の存在もないとは言い切れない。

 

 

 下手すれば前の獄炎と悪夢の権化のようなコンビに加えて背中の銃弾を気にしなければならないというのは駄目だ。

 

 

 コートララに行くと決まった時点で反撃、何らかの形で利用できないかと目星をつけていたポイント。そこに行く前に紅たちが押してくれていた救援要請コールに応えて対応できると言っていたポイントがある。そこで救援部隊と連動して時間を稼ぎつつ、その間にでも作戦を伝えられればいいのだが・・・

 

 

 「でかいのが来るぞ!」

 

 

 相手はそれを許してくれるか怪しい。遊び、嬲るという意思があるし、ギランボとアスタロトは華奈先生たち船坂家最高幹部組に因縁と興味を持っている。それを引き出すためではあるが、一部残せばいいやと考えているのか攻撃も容赦がなくなってきた。

 

 

 巨大な火の玉をゆきかぜの真似をするようにいくつも打ち出してくる。一つ一つが小さな火山弾。あるいは炎の山のようなそれが来てしまう。

 

 

 「桜花! 熊を出せ! むぅうんっ・・・・らあぁああぁっ!!」

 

 

 「了解むっちゃん! 影熊! 一緒に・・・ぶん投げて!!」

 

 

 それを対処するために紫先生が地面に大きな亀裂を戦斧で作り、そこに斧を差し込む。桜花も紫先生に応えていく形で影熊を出し、一緒に亀裂に熊の手を入れさせて一気に力を入れることで道路をえぐりだして超巨大な岩石の壁を使い炎の玉を受け止める壁とする。

 

 

 「ふぅう・・・旋風・・・断崖陣!!」

 

 

 さらに紅が放つ旋風陣を複数横並びに放ち巨大な風と斬撃の壁となって炎と熱波を凌ぐ。

 

 

 「ナイス紅! っ! 甘いっての!!」

 

 

 完全に攻撃をしのぎ切ったとはいえ、岩石に特大火炎弾。そして更には斬撃と風で舞い上がり、かき混ぜられるせいもあって互いに視界を防がれてしまうがそこを利用、焔の鞭に乗って上空から奇襲を仕掛けるギランボにソナーを発動させていたゆきかぜが雷撃を。それも岩石と旋風で巻き起こった静電気を利用して威力を増す雷のサークルを作って封じ込めようとしていく。

 

 

 「甘いのはそっち! 桜花ちゃんだっけ? も甘いの!」

 

 

 ただ、ギランボも本当に依然とはレベルが違いあっさりと、ゆきかぜ独力の出力ではなく周りの状況も利用しての特大級の雷撃の包囲網すらあっさりと突き破り、影熊でフォローを出す桜花も片手で影熊をまた受け止めて桜花事蹴りで吹っ飛ばす。

 

 

 「龍槍・・・!」

 

 

 「んっー・・・気迫はいいけど、キレもないし感情でバレバレ。君ほんとにエリート?」

 

 

 「ガッ!? アガッ・・・ぐっ・・・ぐふ・・!」

 

 

 「スウちゃん!」

 

 

 「おおっと♬ リーチの差に慣れていないわね。ああ。それとも焦っている?」

 

 

 影熊と雷撃の死角からもぐりこんだスウも気功を両手だけに集中した、いつも以上に攻撃と速度に振り切ったラッシュを打ち込むがそれさえもギランボは全てを体裁きだけでよけきって最後は打撃を籠手で受け止めて壊し、スウの腕をつかんで何発か拳を見舞う。

 

 

 重く、何か折れた音を聞かせるギランボにアサギ校長が切りかかるが予備のコンバットナイフ。スウを手放したギランボが後ろに軽くジャンプしてしまうだけであっさりとよけられてしまう。

 

 

 「・・・ふぅん。ギランボは許しちゃうけど、あれを凌いじゃうのね・・・じゃあ、これはどうかしら?」

 

 

 『くっ・・・・!? 紫先生、紅、桜花、ゆきかぜ! とにかく小技でもいい、ちょっとでもいいから打ちまくってくれ!!』

 

 

 アサギ校長がスウを抱えて移動するがスウの口からは血がこぼれており、おそらくあばらも何本かいったのだろう。しかし、あちらからすれば及第点だったようで先ほどの巨大な火の玉を上空に幾つか浮かべ、そして、それに加えて太さだけでちょっとした大樹張りの炎の鞭が4本。

 

 

 これは先ほどの壁だけでは凌げないし、鞭が壁を越えて襲う。俺の指示はもうがむしゃらの悪あがきにしか見えないだろう。俺の指示に従って影、飛ぶ斬撃、雷撃、地面をえぐって吹き飛ばす無数の石礫。それもギランボがアスタロトの前に立って叩き落とし、対処できずに吹っ飛んだのはせいぜい雑魚くらい。

 

 

 「・・・これでおしまいかしら。じゃあね」

 

 

 先ほどのあがきからこれかと露骨に気落ちした表情のままアスタロトは炎の鞭と火の玉を全て降り注がせ、あたりは炎一色。ではなく、直後に起きたのは大量の白、水蒸気。アスタロトたちが俺たちのいたであろう場所には俺たちはおらず、数十メートル後ろから突然現れたように見えるだろう。

 

 

 大量の水が巻き起こり、水が熱を吸ってくれるのと熱で皮膚から水分がなくなり、パサついていた肌につく水蒸気、そして熱を奪ってくれることに少し気力を取り戻せた一同。

 

 

 「水?」

 

 

 「このタイミングだと・・・救援部隊。で、これほどの水を用意できる、私やアスタロトでもわからないほどの幻影・・・ああ、来たのね」

 

 

 一瞬で半径数百メートルをミストと爆風で包むことしばらく。アスタロトの炎の熱を活かして出した風でミストを払うと俺たちをかばうように薙刀を構えた美女。

 

 

 「お待たせ皆。大丈夫かしら?」

 

 

 「ママ!」

 

 

 水城不知火。船坂家最高幹部にして幻影の対魔忍が来てくれたのだ。

 

 

 『ありがとうございます不知火さん。本当に助かりました』

 

 

 「いいのよ。私はあくまでも一員。小太郎君。策はあるかしら?」

 

 

 そして、会話できる時間を用意できるように沿岸部の水を利用して数百、千近くもの水の分身を作り出してアスタロトたちを取り囲み、あるいは超局地的鉄砲水を起こしては動きを止め、ギランボですら見事な伍、什を組んだ水の分身に食い止められてしまっている。

 

 

 『はい。もう少し先の方に行けば使えそうなものが一つ』

 

 

 「そ。ならそれでいきましょうか。私と一緒にすぐ用意と打ち合わせをしましょう。この情報を持ち帰りつつ米連の調査員を救助成功、桃知、および使用した魔薬のサンプルになりえるものを生きて持って帰れれば大金星よ」

 

 

 「そ、そうは言いますが不知火様! あのギランボとアスタロトは強敵です! 不知火様だけで足止めは」

 

 

 紫先生の言うとおりだ。今は虚を突いているのとアスタロトが軽く相手しているだけだから足止めになっていると思えるし、何より策を弄さず、巣を、罠を張らずともああも強くなっているギランボが相手では幻影によるフェイント、ごまかしがあっても厳しい。

 

 

 こちらは負傷者や消耗しているメンバーも多い。スウ、紅、アサギ校長の疲労とダメージは大きいし、ゆきかぜも先ほどから常時ソナーと雷撃を発射し続けて疲労の顔が見えている。

 

 

 紫先生は近接戦以外ではアスタロトと何もかも相性が悪く太刀打ちできない。ジリ貧になるのは確定だと皆が思った。

 

 

 「ああ。大丈夫。私が足止めじゃないの」

 

 

 「え・・・?」

 

 

 目の前でどんどん不知火さんの水の分身が蒸発していく中に聞こえるエンジン音。

 

 

 「私の役割はみんなのサポートと安全に作戦を行えるように側にいること。ギランボ、アスタロトを止めるのは」

 

 

 そしてちょうど分身がすべて消えると同時に今度は激しい銃撃音が響いていき、幾つもの銃弾がギランボ、アスタロトに叩き込まれる。そこらの銃弾ではないサイズと威力、何よりその数。ガトリングガンだろう。このエンジン音は知っている。その武装もまた知っている。

 

 

 「われらが隊長。華奈ちゃんよ」

 

 

 銀色の流星がガトリングガン。ケルベロスの放つ弾丸の雨を凌ぐことに意識を向けていたアスタロトに吸い込まれるように飛び込んで前輪をアスタロトの胸に叩き込んで吹っ飛ばし、横にいたギランボもおまけだとケルベロスで殴られて吹っ飛ぶ。

 

 

 二人の魔族をあっという間に数十メートルも吹き飛ばし車体を横にして停止したホワイトファング。そこに乗っているのはやはりというか、スーツに身を包んだ華奈先生だった。

 

 

 「ふぅー・・・やれやれ。アスタロト相手は予想外でしたよ。魔界でも指折りにノマド関連とは馬が合わないと言われていましたし・・・皆さん大丈夫ですか?」

 

 

 バイクを止め、後ろの荷物入れからドリンクと鎮痛剤だろうか? を持ってきて紅たちに投げ渡し、アサギ校長と桜花に忍者刀を渡していく華奈先生。相手はかつて華奈先生も追い詰めた魔族に加え、こと攻撃力だけでいえばスネークレディーは愚かエドウィン・ブラックにも匹敵しうると言われれるアスタロトだというのに焦りも緊張も見えない。

 

 

 しかも、何時も使用している4振りの刀も持ってきていないというのに。

 

 

 「はい・・・ぐ・・・・」

 

 

 「肌が火傷して・・・痕にならないように桐生さんに頼みましょう。後ナディアさんにも・・・皆さんよく頑張りました。あともう一息。お願いできますか?」

 

 

 「華奈ちゃん・・・ありがとう。でも、大丈夫?」

 

 

 「ふー・・・ママに華奈さんが来てくれて嬉しい・・・後ろ!」

 

 

 紅やみんなの状況をしっかり確認して任務が終わった後のことを話す華奈さん。しかし、あの衝撃を。1トン近いバイクが600キロ以上の速度で突っ込んできての攻撃ですらこの時間しか稼げないのか飛び込んできたギランボと炎の鞭。

 

 

 「爆心掌! ほいっ!!」

 

 

 ギランボには半歩下がって上からの打撃をよけ、着地した瞬間に掌での打撃で吹き飛ばし、炎の鞭には氷結グレネードをまとめた収束手りゅう弾をぶん投げて爆発させてしまい対処。

 

 

 「がっふ・・・ぐ・・・ぉ・・・身体が・・・く」

 

 

 「いいじゃない・・・私をここまでコケにした人間は初めてよ・・・!」

 

 

 「ほぉ。対魔族用の呪詛、および強酸徹甲弾でしたがこの程度の効きでしたか。流石は音に聞こえし獄炎の女王。そして、ギランボ。ノマドの御用達商人になれるとは大したものです。アスタロトはまだわかりませんが」

 

 

 憤怒の形相。ドローン越しにでも感じる威圧をどこ吹く風といなし、対峙する華奈先生。この歳になっても、背丈を追い越しても尚この人の頼もしさは衰えない。

 

 

 ゆきかぜたちもずっと流しっぱなしの汗が少し落ち着き、気持ちも楽になっているのがわかる。

 

 

 「行きなさい。任務の依頼先もアスタロトとギランボの名前を出したら生還して島の状況を伝えればいいと言っていますので、この二人を撃退する策を用意してきてください皆さん」

 

 

 「華奈さん! 私も」

 

 

 「いいえ、いってください紅さん。足手まといという意味ではないです。私一人でこの馬の足止めは済むので気にせずということですから。これも使って」

 

 

 「・・・わかり、ました・・・」

 

 

 「いくぞみんな。早く撤退と用意をしてしまうことが華奈の負担を減らすと思え!」

 

 

 紫先生の発破を受けて走り出す皆。華奈先生からもらった援助物資を確認しつつ俺は移動しつつこれから行うギランボ、アスタロトに一矢報いる。追い返すための柵を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「んっ・・・あー・・・! よしよし。行ってくれましたね。で、お二人も待ってくれてどうもです」

 

 

 「久しぶりね華奈。結婚してから綺麗になっちゃって~強さに武装も増してずるいわ~」

 

 

 「貴女が地獄の番犬・・・あいつが面白い人間だと言っていたけど・・・なるほど。わかってきたわ」

 

 

 ほうほう・・・改めて感じることですが・・・なるほど。強い。ギランボも軽く魔人化、もしくは重力とドレインを使うエドさんくらいの強さはありますし、アスタロトも攻撃性能、再生力がかなりのもの。

 

 

 1発でオーガも戦車も貫通できる特殊徹甲弾に強酸と呪詛を塗り込んだものですらすぐ回復してきますし、全く魔族の頂点に立つ連中はどいつもこいつもチートじみているのを生きものながら持っているのだからすさまじい。

 

 

 「まあ、良縁に恵まれましてね。そしてアスタロトもどうも。しばらく私の相手になってもらいましょう」

 

 

 ただまあ、相手が何だろうとも関係ない。ふざけた強さだろうと関係ない。

 

 

 「えーと・・・いつもの刀を使わずに? それともこのバッグだけでやるの? ガトリングも使わずに?」

 

 

 「・・・・・武器があるなら出しなさい。その上でひねりつぶして、まあいい女だし観賞用、ディナーくらいには招くし、あいつらいたぶるにはいい材料でしょうしね」

 

 

 私の恩人に師匠に恩人に教え子、嫁に愛人とまあ一気に大切な人を嬲ろうとしていたし、痛めつけていたのだ。理不尽だろうと勝手だろうとやり返させてもらうし、こちらも遊び相手に、テスト相手になってもらおう。

 

 

 「やってみるといいでしょう。魔界の頂点ってだけで調子乗ってはいけませんよ?」

 

 

 「言うじゃないの。なら・・・喰らいなさい!」

 

 

 いうが早いかアスタロトは即座に私の四方から炎の鞭、巨人の使うような特大級もいいものを出して振り下ろす。

 

 

 それよりも早く私の持っていた金属製のキャリーバッグに私の生体データ承認をさせていくと同時にバリアを展開。それで炎の壁を防ぎつつ足で踏んで開き、即座にトランスフォームするように変形して私の体を覆っていく。

 

 

 アーマーを支え、私の体を覆う基礎の骨組みがまずしっかりと張り巡らされ、そこから金属の板が装甲となって私の体を覆い、武骨な金属片がアーマーとなり、しっかりとロックされていく。

 

 

 つま先から爪の先、そして頭もすっぽりと覆い隠し、余計な隙間を消しつつも機動性を残した柔軟かつ現代の甲冑鎧。テロリストどもが使うような粗悪品の前進パワードスーツではない。芸術品かつ機能性の最高の武者甲冑に携わっていた対魔忍の技術と現代の最高峰の技術を使い試行錯誤の果てにできた私の武装。奥の手の一つ。

 

 

 炎の鞭の火炎が収まり、バリアが解除されると同時に余剰エネルギーがスーツのバッテリーに吸収されていき、ようやくそのお披露目だ。

 

 

 「・・・はぁ?」

 

 

 「あっはははははははは!! ま、まさかのそれ!?」

 

 

 「ふふ・・・かっこいいでしょう?」

 

 

 公安の組織であり、人ならざるものと、時には神話の住人とも戦う対魔忍。ならばこのパワードスーツが一番だろう。仮面ライダーG3-X システムも再現しつつ性能は段違いの人が戦う力を具現化した鎧。アスタロトは私の変身? に首を傾げ、ギランボはハロウィンの際に子供たちを誘拐する際に色々リサーチして知っていたのでしょう。爆笑していました。

 

 

 まあ、性能は伊達じゃないですがね。

 

 

 「何かと思えばただのパワードスーツ・・・そんなものなんか・・・・っ!!?」

 

 

 「そんなものが、なんですか?」

 

 

 またすぐに油断していたアスタロトさんに一気に接近してからの拳の一撃。バキベキと骨が折れて筋肉がぶちぶちと切れていく感触を拳から感じる。その後にあっという間に吹っ飛んで廃屋に吹っ飛び煙を上げた。

 

 

 「はあっ!?」

 

 

 「どうしましたか? ライダーの変身後のパワーは伊達じゃないの知っているでしょう?」

 

 

 「ふっ・・・シッ!」

 

 

 その光景に驚くギランボのそばに移動していけばギランボも立て直しが早くすぐさま籠手をうまく活かしてのラッシュを放つ。早い。前よりもスピードが何枚も上だし、パワーも感じる風切り音からわかる。風圧だけで少し押されてしまう程に。

 

 

 でも、その速度でも今の私に、G3-Xのバトルアシスタントシステムも合わせれば楽々避けられる。人魔合一も、愛刀も使わないでもいい。

 

 

 「ふっ・・・はっ! セェイ!!」

 

 

 「アガッ!? ぎっ・・・ごほぅお!」

 

 

 右ストレートに合わせてきたギランボのクロスカウンターを右腕を曲げて潰しつつほぼ同時にカウンターに合わせたカウンターをあごに打ち抜き、そしてこのパワードスーツ装着時についている専用のコンバットナイフで横隔膜当たりに合わせてナイフを振り抜き、その勢いを利用してタックルで吹っ飛ばす。

 

 

 ・・・・・・感触が軽いですしナイフにも手ごたえ無し、さっきのラッシュの際にレベルを計ってすぐに合わせてきましたか。もう少し緩急つけたほうがいいですね。

 

 

 「こん・・・のぉお!!」

 

 

 「手数勝負で呆れていたのにそれをするとは」

 

 

 一方で赤い髪を振り乱しながら無数の火炎を四方八方から降り注がせるアスタロト。これも専用の連射式ハンドガン。スコーピオンを2丁抜いて全部撃ち落としていく。討魔剣士や白い通り魔で鍛えている技術。そんで今まで包囲されての戦いが常。これくらい軽い軽い。ついでにリロードのおまけつき。

 

 

 「それならこれで・・・!」

 

 

 手数で駄目なら質量と炎の、いや、アスファルトを溶かして巻き込むそれは溶岩の大波。赤々と光る灼熱の溶岩が迫ってくる。

 

 

 「何のこれしきっ!!」

 

 

 でも、耐熱性、断熱性だってある! 大型魔族や忍術を移植された敵側の連中。そういうやつらも戦うことを想定したスーツ。みことさん謹製の強さを、人の技術を舐め過ぎですアスタロト!

 

 

 溶岩の津波に身を突っ込み、突破してのジャンピングパンチでアスタロトを吹っ飛ばす。

 

 

 「うっそで・・・ごっ!?」

 

 

 「まだまだ! 行きますよ!!」

 

 

 そのまま手首を少し曲げて今度はレーザーの鞭を縦横無尽に振り回してアスタロトさんたちに追撃を仕掛けつつ、胴体に巻き付けて上空に放り投げる。

 

 

 ふわりと空に舞う二人の上位魔族その二人の脚を私がジャンプして掴み、思いきり前の方で交差させるように腕を振りぬけば二人で頭突きをする構図の完成。

 

 

 「「ッッ~~~~~!!?!?!??!」」

 

 

 「そのまま・・・・・アトラクションのおまけですよ~~~~~~~~~~らあっ!!」

 

 

 悶絶して声にならない声を出す二人を気にせずにもう一度がっちりと、一応スカートのすそをつかみつつ片方づつ足をつかみ直してから超高速ジャイアントスイング。散々吹っ飛ばして、そこから互いの、高位魔族ゆえに固い固い頭をごっつんこさせてからすぐさまシェイク。

 

 

 勢いをそのままに投げ飛ばして二人ともアスタロトの熱のせいで崩れて見えた地面に着弾。爆音ともうもうと土煙が上がるのを見つつ手首に仕込んでいたレーザーウィップのエネルギーがキレたのでカードリッジを排莢。

 

 

 「ぐぅぁー・・・あったまガンガンする・・・」

 

 

 「ゲホッ・・・くそ・・・何なのよ・・・何なのよ貴女!!」

 

 

 「船坂華奈。人間で、しがない教師です」

 

 

 『先生! 仕込みと用意、小休憩が終わりました!』

 

 

 すぐさま復活して立ち上がるも頭のダメージが抜けていない。下手に切り裂かれたり銃弾でハチの巣にするよりもやはり魔族はこういう格闘戦のダメージがいいかもですねえ。ウルトラマンたちが最初に格闘戦でダメージを与えて逃げられないようにしてから光線を放つのは正しかった。

 

 

 次はケルベロスとG3-Xランチャーでもぶち込もうかと思っていたら小太郎君たちの方も用意が出来たようで通信が入る。ちょうどいい。もうちょっとダメージの置き土産を与えてから小太郎君たちにバトンタッチしましょう。

 

 

 『了解です。ではーあのビルの方ですね? そっちに吹っ飛ばしますので早いところしばきまわしてください』

 

 

 『え? ふっとば・・・りょ、了解です!』

 

 

 「いい加減にしなさい人間がぁあああ!!!!」

 

 

 「ぐ・・・アスタロト! それ以上は馬鹿するな!」

 

 

 あたりの土も金属も全てが溶岩になってしまうほどの凄まじい熱。アスタロトの怒りはあたりを溶岩地獄、獄炎の世界に変えていく。怒るだけでこれだ。スーツが無ければ私もちょっと厳しいものがある。ハンターさんからドリンクをもらって踏ん張りたい所さんだ。

 

 

 でも、このスーツには熱さを感じない。熱ゆえの警告も出ていない。うん。みことさんは本当にいいものを作ってくれました。

 

 

 「殺す! 本気で殺し! そのスーツを引き裂いて消し炭に!!!」

 

 

 「ふー・・・少し、頭を冷やしましょうか? それと、大人しく。チャージ」

 

 

 まさしく小さな太陽となって襲い来るアスタロトにスコーピオンに装てんした特殊弾。魔界の氷結の術式と科学の合体で作った氷結弾丸の強化版を発射。眼、肩、心臓目掛けて放つそれはアスタロトの放つ炎に防がれるも溶けつつ爆ぜて氷の爆風がアスタロトの前で起こり、小さな穴が開く。

 

 

 怒り心頭。対魔忍に優位取っていたのにこれなので冷静さが消えたのでしょうね。ただ何が起こるかわからないのですぐに人魔合一を使えるようにしつつさらにスコーピオンを連射。熱の壁のほんの一部だけかすかな穴をあけ、スーツの肩の部分に仕込んでいた静流さん、夜空さんお手製の麻痺毒を仕込んだ麻酔針を発射。

 

 

 「うぐっ・・・!? ぐあっ!? こんな氷ごと・・・がぁ・・・あっが・・・あああ・・ああ・・・!?」

 

 

 後半の銃弾は全てヒットして目や喉、体の一部がコンマ数秒だけと凍りつきそうになり、炎で溶かされる。けれどもすでに毒は仕込んだ。動きが止まる一瞬。先ほどチャージを頼み、足元に貯め込んだエネルギー。G3Xシステムを基盤にあれこれ使えそうなのを詰め込んだ浪漫システムの数々。それほどに遊びと応用が利くパワードスーツだからこそやってみたかったこと。

 

 

 アスタロト目掛けてダッシュをし、そのまま上空にジャンプ。装着の際に使用したバリアを空中に発生させ、それを足場に使用。更にエネルギーの一部を使用して空中で加速。そこから放たれるエネルギーを収束させた強力無比の一撃。

 

 

 「ライダーキィッック!!!!!」

 

 

 G3-Xのエネルギーとスペック全てを集めた強力なキックはインパクトの瞬間にエネルギーを爆発させてアスタロトはわたしでもちょっと目で追いかけるのが難しいほどの速度でぶっ飛んでいく。アスタロトが着弾して何か爆発した後に遅れて音が聞こえ、そこから少し離れた場所から小太郎君たちの賑やかな声が聞こえる。うん。無事反撃の作戦を遂行できることでしょう。

 

 

 「さて・・・まだやります?」

 

 

 「いやー? 今回は降参。面白いもの見せてもらえたし、どうせ本気じゃないでしょ?」

 

 

 戦闘音をバックにしつつ復活していたギランボにも対応するために戦闘態勢を取るがギランボは両手をあげて降参の姿勢を取る。とはいえ、相手は手練手管を用いるのが得意な魔族。油断はせずに意識を研ぎ澄ませる。

 

 

 「どうですかね? もしかしたらこのスーツの下はボロボロかもしれないですよ~」

 

 

 「声の感覚からも偽る感じがしないもの。力量が読めないし・・・あいつを抑えるための体力は欲しい」

 

 

 おそらくアスタロトの事だろうか。まあ、私も今回で倒せるとは思わなかったですが、抑えるとは。

 

 

 「ああーいいたいことは分かるよ? あいつ暴走させれば確かに勝ちの目はあるかもだけど、変にここを壊しすぎてもダメだと言われているからさ。あと・・・まだまだ札を残している相手に焦りすぎても貰いが少ないってね」

 

 

 「ではまあ、この後にアスタロトと共に引いてくれると」

 

 

 「代わりにそっちも引いてくれないかな? 私も島を壊し過ぎたくないのと、華奈も中華連合、米連の人員は愚か、教え子たちや大事な人達を傷物にしたくないでしょ?」

 

 

 互いに引くことで終わろうと。確かに私は救援任務を終えればいいですし、依頼主もエミリーさんの救助とサンプル回収。アスタロトにギランボ、SSが最低。SSSランクにも匹敵していいであろうノアという魔族。それらから被害を抑え、無事に帰還できたうえで情報を渡せれば問題はない。

 

 

 あちらもあちらでなにやらあるようだけども手を引いてくれるという。変に欲張っても得るものは私達にもないし・・・このスーツも先ほどのライダーキックでエネルギーを40%使った。長期戦は望ましくない。なら受け入れるのがいいだろう。

 

 

 「ええ。では、そちらのノアと一緒にアスタロトをなだめて帰ってください。本当はもう2,3発殴るか、ケルベロスでワンマガジンぶち込みたいくらいには怒っているんですから」

 

 

 「嫌われたわねえ。私は結構気に入っているのに・・・はいはい。とっとと退散するわよ。あーあー・・・見事に怒っていそうねアスタロト・・・」

 

 

 しばらく続いていた爆発の連鎖。その後に起こった超特大級の火柱とそれを相殺する放電。ほぼ同時に膨れ上がる強力な気配が二つ・・・アサギさんと紅さんが人魔合一を使って対処したと思われる。うんうん。見事に小太郎君の策が決まりましたか。

 

 

 ぶつくさ言いながら溶けるように消えていくギランボ。気配が完全に消え、G3-Xシステムでも安全を確認してからみんなに追いつくためにホワイトファングに乗る。

 

 

 「・・・・?」

 

 

 「・・・・・・?」

 

 

 バイクのエンジンをかけようとしたらノアという、小太郎君のドローンの映像でも見えた少女が歩いてきて私ではなくバイクの荷物入れに目を向ける。

 

 

 そこに入っているのは栄養補助バー。・・・・・欲しいのでしょうか?

 

 

 「・・・もらいます?」

 

 

 「うん・・・貴女は食べられないし」

 

 

 「そうですか。口の水分取るので水と一緒に食べるんですよ?」

 

 

 チョコ味の栄養補助バーをあげてからすぐに頭を下げてから手を振りつつ帰っていくノア。うーん。私も捕食対象として見ていたけどそういう気配を感じないし、感じる気配も異質。最低でもssランクが最低ラインですかね。さてさて、みんなの所に向かいましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「これが人間か・・・分かったわ。今日は引いてあげる。でも、今日の借りはちゃんと返すから」

 

 

 駐車場で戦い、車の爆発と土煙、粉塵を活かしての炎ではなく煙と衝撃、音でのかく乱をしてアスタロトを焦らし、ゆきかぜの本気の雷撃をぶつける。あちらの予想をはるかに超えた雷撃でのダメージ。少しの回復をしたことでアサギ校長と紅が見せた最大の攻撃で切り刻むというダメージ。

 

 

 アスタロトはここに文字通り吹っ飛んで来た時点で血反吐吐き散らすほどボロボロだったが、更にこれでダメージを負い、最初に遭遇した時のような美しさ、芸術品のようなそれは汚れ、怒りを思いきり出して暴れていたがそれをギランボが止めに入り、これ以上暴れるのなら『契約を破ることになりかねない。私も抑えに回ることになる』と話せば歯を食いしばってから気持ちを落ち着け、戦闘態勢を解いた。

 

 

 「伝言よ。華奈に今度はしっかりとデートかディナーの約束を取り付けると言っておいて。眠気は覚めたはずなのに、今すぐシャワーでも浴びて眠りたいわ・・・」

 

 

 「私もよ・・・じゃねー・・・ああぁーーメンドクサイ~~」

 

 

 そういいつつ炎のカーテンに包まれたと思えば消えるアスタロトとギランボ。ギランボもダメージを負っているあたり、相当な激闘を華奈先生と繰り広げられたのだろう。

 

 

 「はぁ・・・はぁ・・・も、もう今日は忍術使えません・・・・・」

 

 

 「衰えている・・・のかしらね・・・もうバテバテ・・・」

 

 

 ようやくアスタロトがいなくなったことで皆緊張の糸が切れ、特に紅とアサギ校長が刀を杖にどうにか立っているほどにへとへとだ。

 

 

 「し、しかし一応桃知の細胞などのサンプルは回収・・・ミス・エミリーも救出・・・魔族たちの情報も付いてきて人的被害なし・・・儲けものといえる・・・後は華奈だが・・・」

 

 

 「ああ。大丈夫みたいよ? ほら」

 

 

 紫先生の言葉でみんな華奈先生の事が心配になる。ギランボもいたとはいえ負けたかもと不安があったのだが、不知火さんが指さす方向を見ると安心した。

 

 

 バイクの音、そしてようやく見えてくる車体に・・・仮面ライダーが乗っていた。しかも改造人間とか超能力者のライダーではなく警察で作った設定のG3-Xが。緊張の糸が切れた後にこの光景もあってみんな多分驚いていると思う。不知火さんを除いて。

 

 

 「皆さんお疲れ様です。帰りの飛行機は用意しているのでそれに乗って帰りましょうか」

 

 

 「え。あのー・・・どちら様で」

 

 

 「え? 華奈ですよ? これパワードスーツです。今のところ私専用ですが」

 

 

 頭部の装甲を解除して見せた華奈先生の顔にみんな驚き、この後合流して一緒に帰る俺、骸佐は思わず興奮して写メを取りまくり、女性陣も何か頬を赤くしていた。

 

 

 エミリーさんはなんか限界オタクみたいな感じになってオーバーヒートと疲労もあって気絶。みんなでスポドリと冷えたパイナップルをむさぼりながら華奈先生の新武装と、アスタロト、ギランボ相手に大立ち回りの際に撮影していたドローンの映像を見て楽しみ、その後は泥のように眠りについた。

 

 

 夢の中で特撮のヒーローと一緒に変身して戦う夢を見た俺だが、多分みんな似たような夢を見ていると思う。報告書とか後始末を終えたら稲毛屋でソフトクリームを賭けてもいい。




 華奈の今回のパワードスーツ 装着は劇場版アイアンマン2のアイアンマンスーツマークⅤを最初の手順を踏んでから自動装着+全方位バリア発生。見た目は仮面ライダーG3-X をややごつめ(主に胸のあたり)にした感じだと思ってくれれば幸いです。


 武装とかはG3-X、アイアンマンのいいとこどり&華奈のアレンジ入りという魔改造というかキメラにもほどがある出来。実はこっそりドローンを幾つか飛ばしていて性能の映像と脆い部分はないかとチェックしていたりしています。


 コートララのアスタロトとの戦いはぜひこの形にしたいなあと考えていたので無事に完遂できて満足です。事故満足感甚だしいのは承知ですが、対魔忍のエネミーに全身金属鎧のパワードスーツがいたのでやるっきゃねえやと。

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