ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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教えて、よーこ先生!

「このコーナーも、私が占拠するから宜しく。」

「今回のお題は、これ。」


~八咫烏の化学兵器第二弾~


「今回紹介するのは、もう一つの私の愛用武器。」

「正式名は”多目的可変型霊剣具現装置”、私は大通連って呼んでる。」

「これの便利な所は、本来とは違う形に霊剣を具現化出来る事。 柄の両側から霊剣を具現化したり、柄を分離させて二刀にする事も可能。」

「ほとんど霊銃(レイガン)で片付くから、最近出番が無くて埃被ってるけど。」

「また、機械があれば他の装置も紹介する。」

「じゃあ、あでぃおす。」


第十二話 枕返しが見せるモノ

―前回のあらすじ―

 ご主人様と留美子ちゃんの馴れ初めのお話でした、はいおわり!! え、真面目にやれですって? 恋敵の話をおさらいする必要なんてありませんよ! しかも、今回も私の出番は無いって言うじゃありませんか! もうやってられません! (わたくし)、実家に帰らせていただきます!! あぁもう! 責任者出てきて下さいまし!

 

 

 

 

 

「ねむっ……」

 

 

 私はゆっくりとベッドから身体を起こした。 二人の長話に付き合ってられず先に寝たはずなのだが、まだ寝足りない感じだ。

 周りを見渡すが、菊梨も留美子も姿が見当たらない。 時計を見ると11時を過ぎているし、今日は二人共大学に行ったのだろうか?

 

 

「あの世話焼きがねぇ。」

 

 

 そう呟くが、答える相手は誰もいない。 なんだか、いつもよりも部屋が広く感じる。

 怠い身体に喝を入れて立ち上がる――少しフラつくが、動けない程ではない。

 

 

「――何か食べるものあるかな。」

 

 

 フラフラと廊下を歩いてキッチンに向かう。 壁に寄りかかりながらゆっくりと一歩、また一歩と進む。

 

 

「ただいま――って何してるの!」

 

「あ、おかえり。」

 

 

 声の主は留美子だった。 私の姿を見るなり、買い物袋を投げ捨てて駆け寄ってきた。

 

 

「どうして大人しく寝てないの!」

 

「いやぁ、お腹が空きまして。」

 

 

 あれ、留美子ってこんなに感情的になるキャラだっけ? 私の知っている留美子はこう、もっと大人しくて無表情で……

 

 

「もう! そんな動き回れる身体じゃないのに! 心配させないでよ!」

 

「うん、ごめんね。」

 

 

 なんだろう、何か違和感を感じる。 ここは自分の家で、いつもと同じはずなのに何かが――決定的に欠けているような。

 留美子の肩を借りてリビングへ入り、ソファーに深く腰掛けた。

 

 

「お昼ご飯作るから待っててね。」

 

「何作るの?」

 

「オムライスよ。」

 

「やった!」

 

 

 私は小さくガッツポーズをする。

 

 

「そういえば、菊梨はどこ行ったの?」

 

「えっ?」

 

「だから菊梨は?」

 

 

 留美子は答えない。 キッチンにいるため表情は見えないが、何か重苦しい空気を感じる。 一体どうしたというのか。

 

 

「留美子?」

 

「あまてるちゃん、もしかして寝ぼけてるの? 顔でも洗ってくる?」

 

 

 なんだかはぐらかされている気がする。 私はもう少し踏み込んでみる事に決めた。

 

 

「そうじゃなくて、菊梨がどこにいるか聞いてるのよ。」

 

「流石に、その冗談は笑えないよ?」

 

 

 留美子の声が震えているのが分かる。 まるで、触れて欲しくない話題のような反応だ。 何故そんな反応をするのか、私には分からない。

 

 

「何? 二人で私をびっくりさせようって魂胆なわけ?」

 

「――今日のあまてるちゃんはおかしいよ。」

 

「それは留美子の方でしょ! いつもと何か違うし。」

 

「えっ?」

 

 

 多分これ以上の問答は無駄だ。

 

 

「もういい、自分で探しに行く。」

 

「待って!」

 

 

 私はゆっくりと立ち上がって玄関に向かう。 留美子は慌てて私の元へと駆け寄り、背後から抱きしめてきた。

 

 

「――放して。」

 

「行かせない。」

 

 

 しっかりとホールドして放す気は無いらしい。 ――やっぱりおかしい。

 

 

「あまてるちゃん、昨日何があったか覚えてる?」

 

 

 急に留美子がそんな事を聞いてきた。

 

 

「何言ってるの、昨日は3人で冷やし素麺を食べたでしょ?」

 

「やっぱり……」

 

 

 留美子は私の返答を聞いて何かに気づいた様子だった。

 

 

「どうしたのよ?」

 

「今日は帝京歴786年3月17日、あまてるちゃんが言ってるのは半年以上も前の話だよ。」

 

「――嘘でしょ?」

 

 

 状況は、私が思っていた以上に深刻だった。

 

 

―――

 

――

 

 

 

「枕返し?」

 

「うん、その時私も話を聞いたから間違いない。」

 

 

 つまり現状をまとめるとこうだ。 私は枕返しのせいで未来の世界に飛ばされてしまった、私と留美子の記憶の差異はこのためだ。 そして、当時の私が戻ってきている事を考えて、無事に戻れる事は保障されている。

 

 

「じゃあ大人しく待ってれば帰れるってわけね、良かったぁ。」

 

「話はそう単純じゃないかもしれない。 この世界は”将来ありえるかもしれない世界の一つ”であって、この世界の結果が必ず当てはまるとは言い切れない。」

 

「つまり、このまま帰れない事もあるって話?」

 

「うん。」

 

 

 はっきり言ってくれる。 ならば何か解決策を見つける必要があるわけで、尚更菊梨にも相談したい。

 

 

「菊梨にも協力してもらおうよ、二人じゃ限界があるし。」

 

「それは、出来ないのよ……」

 

「さっきも言ってけど、菊梨がどうしたのよ?」

 

 

 長い沈黙が二人の間に流れる。 どう話すべきかと視線を泳がしながら――やがて覚悟を決めたのか小さく頷いた。

 

 

「菊梨はね、もういないのよ。」

 

「いないって……」

 

「そう、死んだのよ――1週間前にね。」

 

 

 死んだ? 菊梨が……

 

 

「う、うそよ…… あんな殺しても死なないような、妖怪がそんな簡単に死ぬわけ!」

 

「私の目の前で死んだから間違いないよ。」

 

「目の前で……?」

 

 

 そうだ、妖怪が簡単の死ぬわけがない。 あるとすれば、それは――

 

 

「私が、殺したから。」

 

 

 ”ワタシガコロシタカラ”

 

 その言葉が脳内に響き渡る。 その言葉が冗談ではないのは表情を見れば分かる。 瞳も真実だと語っている。

 

 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!

 

 

「嘘だって言ってよ!」

 

「本当だよ、最後にあまてるちゃんの事を頼むって。」

 

「何よそれ! 絶対こんなのおかしいわよ!」

 

 

 私は怠い身体に鞭を打って駆け出す。

 

 

「待ってあまてるちゃん!」

 

 

 背後で呼び止める声が聞こえるが振り返らない。 玄関を飛び出し、行く当てもなく走り続ける。

 

 

「こんな未来間違ってる、あっちゃいけないのよ!」

 

 

 ひたすら走る、右へ左へ、無我夢中で走って走って、まるで何かから逃げるように――

 ――そして違和感気づく。 私は一度足を止めて辺りを見渡す。 そうだ、”人が一人もいない”のだ。

 

 

「どうなってるのよ!」

 

 

 秋奈町駅の前の通りなのに、人もいなければ車も止まっていない、電車も走っている様子もない。 まるで時間が完全に止まってしまっているかのような静寂が、世界を支配していた。

 

 

「嫌っ、誰か助けてよ…… 留美子、菊梨――」

 

 

 私は道路の真ん中に座り込む。 孤独感が胸を締め付け、絶望が心を支配していく。 私の知らない留美子、人のいない秋奈町、ここは私の知っている世界じゃない。 早く帰りたい、帰してよ……

 

 

「何を泣いているんです?」

 

「ぁ……?」

 

「全く、ご主人様は(わたくし)がいないとダメダメですね。」

 

 

 私は慌てて振り向いた。 ――そこには見知った姿の狐がいた。

 

 

「もう、涙と鼻水でぐちゃぐちゃですよ、これで拭いて下さいまし。」

 

 

 そう言ってハンカチを差し出してきた。 私は容赦なくそのハンカチで涙を拭って鼻をかんだ。

 

 

「あらあら、ご主人様ったら。」

 

「菊梨っ!」

 

 

 私は彼女の存在を確かめるように抱きしめた――この暖かさは間違いなく生きている証だ。 やっぱり死んだなんて嘘だったんだ。

 菊梨は優しく私の頭を撫でる。 まるで子供をあやすかのように……

 

 

「ご主人様、よーく聞いて下さいね。」

 

「うん。」

 

「この世界の(わたくし)は、確かに死にました。 でもそれは必要な事だったのです。」

 

「でも、菊梨はここにいるじゃない。 こんなに温かいのに!」

 

「この姿は幻でしかないのですよ。 そもそも、この世界そのものが(わたくし)なのですから。」

 

「なによ、それ。」

 

 

 菊梨は微笑むと言葉を続ける。

 

 

「この世界は、(わたくし)がご主人様を守るために命を代償として構成したモノ。 言わば(わたくし)の胎内のようなものです。」

 

「意味わかんないよ、私を守るとか。」

 

「そうする必要があったのです。 だから(わたくし)は満足しているのですよ?」

 

「それで菊梨が死んだら意味ないじゃない!」

 

「――だからこそです。」

 

 

 菊梨は私を真っすぐと見やると、吐息がかかるくらい顔を近づける。

 

 

「この未来を回避するためにも、ご主人様は帰らなければならない。」

 

「でも、あくまで可能性の一つの世界なんでしょ?」

 

「本来ならばそうです。 でも、この世界は歪められてしまった、あらゆる可能性が殺されてしまった。」

 

「可能性が殺された?」

 

「だから、必ず辿り着いてしまうんです、今という未来に。 それを変えるにはご主人様の力は不可欠なのです。」

 

 

 そんなの分からないよ。 急に未来を変えるとか言われても、一般人の私に何をしろっていうのよ!

 

 

「大丈夫ですよ、きっとご主人様なら――」

 

「菊梨?」

 

 

 ――菊梨も涙を流していた。

 

 

「ではそろそろ……」

 

 

 そう言って菊梨は更に顔を近づけ、そっと唇を重ねる。 私も拒否せずに受け入れる。 そういえば、キスするのはあの時以来かな?

 

 ――優しいキスは、涙の味がした。

 

 

―――

 

――

 

 

 

「ねむっ……」

 

 

 私はゆっくりとベッドから身体を起こした。 二人の長話に付き合ってられず先に寝たはずなのだが、まだ寝足りない感じだ。

 周りを見渡すが、菊梨も留美子も姿が見当たらない。 時計を見ると11時を過ぎているし、今日は二人共大学に行ったのだろうか?

 

 

「あの世話焼きがねぇ。」

 

 

 そう呟くが、答える相手は誰もいない。 なんだか、いつもよりも部屋が広く感じる。

 怠い身体に喝を入れて立ち上がる――少しフラつくが、動けない程ではない。

 

 

「――何か食べるものあるかな。」

 

 

 フラフラと廊下を歩いてキッチンに向かう。 壁に寄りかかりながらゆっくりと一歩、また一歩と進む。

 

 

「ただいま――って何してるんです!」

 

「あ、おかえり。」

 

 

 声の主は菊梨だった。 私の姿を見るなり、買い物袋を投げ捨てて駆け寄ってきた。 横にいた留美子は、その買い物袋を拾い上げる。

 

 

「慌てすぎ。」

 

「ご主人様のピンチなんですよ!?」

 

「だ、大丈夫だって。」

 

 

 菊梨は涙目で私を抱きしめながら頬ずりをしている。 留美子はヤレヤレという感じのポーズだ。

 

 

「真っ昼間かお熱い事で。」

 

「もう、菊梨放してってば!」

 

「いーえ放しません! ごしゅじんさまぁぁ!!」

 

 

 こうして、今日もいつもの2人と1匹の日常が始まる。 もしも、いつかこの生活が無くなったら――私達は何処へ向かうのだろうか? どんな未来を歩むのだろうか? そんな未来を見たような気もするが、夢の中の出来事など儚く消えていく程度のものでしかなかった。 でも私は、これからもこの生活を大事にしたい、そう思った。

 

 

―田舎のおばちゃん、今日も私は元気です―

 

 

 

 

 

第一章 狐の嫁入り編 完




―次回予告―


「はい皆さんお疲れさまでした!」

「何です、この最終回チックな締め方!」

「第一章のラスト、それっぽくなってるだけ。」

「ほら、一応区切りってやつよ、意味深な所が多いけど。」

「まぁ、私(わたくし)の出番がまた増えるならいいですけど!」

「ふぉっくすらいふ! はまだまだ続きますからね!」

「第二章 夏のコミマ編 も宜しく。」

「次は新キャラ登場らしいよ!」

「次回、第十三話 お隣さんはPAD長!」

「地球の未来にご奉仕するにゃん♪」

「皆さん、これからも応援宜しくお願いしますね!」
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