ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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教えて、よーこ先生!


「はーい、皆さんこんにちは! よーこ先生ですよ~!」

「今回も楽しく先生と一緒にお勉強しましょうね!」

「では、今回のお題はこれです!」


~雪ちゃんの田舎ってどんなとこ?~


「はーい、実は私も気になって調べちゃったんですよね!」

「ご主人様の実家があるのは、帝都領域の北部にある青森という雪国だそうですよ。」

「そこには霊峰”恐山”があって、観光地としても有名だそうです! 是非行ってみたいですね。」

「ご主人様のおば様は、そこでイタコという職を営んでいるそうで、かなりの資産をお持ちのご様子…… 道理で帝都に土地と家を持っているわけですね。」

「ご主人様にとっては義理の親という事になりますが、お互い凄い霊力を持っているんですよねぇ…… 私もあの時はヒヤヒヤしましたよ。」

「では今回はここまで、皆さんあでぃおす!」


第十五話 結成、ゴーストバスター隊!

「諸君……我々は再び危機に直面してしまった。」

 

 私達さぶかるのサークルメンバーが集う中、羽間先輩が真剣な面持ちで語り出す。

 

 

「実はだな……新たな売り子を雇ったせいで、予算を少々オーバーしてしまたのだ。」

 

「なん……だと……」

 

「というわけで、新たな売り子を雇うための資金が必要だ。」

 

 

 机の上に両手を組むポーズ、所謂ゲン〇ウ的ポーズだ……眼鏡も光ってるし。

 

 

「先輩、それって必要なんなんですか? 元々菊梨と留美子が売り子やるって話だったんじゃ?」

 

「実は留美子が不参加になってしまってな、そのための補充要員なのだよ。」

 

「なるほど、それでか…… それでいくら必要なんです?」

 

「10万だ。」

 

「……は?」

 

 

 えっと、1日だけでなぜ10万とかふっかけられてるんですかね! 完全にぼったくりじゃないですか!

 

 

「流石に高すぎでしょ! 一体どんなレイヤー拾ってきたんですか!」

 

「我が校の優希君だが。」

 

「あぁ、そういう事ですか……」

 

「私が鏡花ちゃんにオススメしたのよ。」

 

 そう言って笑顔の大久保先輩、チョイスは悪くないけど彼女には一つだけ問題があるのだ……

 彼女の彼氏であるとある男性の問題なのだが、今は説明する必要はないだろう。

 

 

「というか、その10万は大久保先輩のポケットマネーでどうにかしてくださいよ。」

 

「ごめんなさいね、今回だけはダメなの。」

 

 

 何故ダメなのか、という突っ込みは飲み込む。 しかしそんなお金をどうやって用意しろと言うのだろうか。

 

 

「というわけで雪君!」

 

「は、はい!?」

 

「君には幽霊退治で稼いでもらう!」

 

「はぁぁ!!」

 

 

 予想の遥か斜め上の答えが舞い降りたのだった。

 

 

―前回のあらすじ―

 久々のお出かけで胸躍らせていた私だったが、そーんな甘い裏には仕掛けがあったわけで…… なんと、私を餌にした女郎蜘蛛の捕獲大作戦だったのだ! いいように使われる私……やっぱ、つれぇわ…… 私に平穏が訪れる日はいつになるやら。 そんなこんなで今回も面倒な事に巻き込まれそうな予感……!

 

 

 

 

 

「ゴーストバスターズ! とか超絶ださすぎるですけど!」

 

「まぁまぁご主人様、機嫌を直して下さいまし。」

 

「留美子も用事でしばらく京都だし、ほんともう!

 

「どうどう……」

 

 

 ゴーストバスター隊とかいうセンスの欠片も無い名前を羽間先輩に与えられ、こうして学校の寮へとやってきたわけだが……正直めんどくさい。

 

 

「で、ここが依頼された開かずの間ってわけ?」

 

「そのよう……ですね、間違いないです。」

 

「確かに中から気配を感じるけど、そんなにヤバそうなのとは思えないわね。」

 

 

 その辺にいる浮遊霊に毛が生えたレベルと言ったところだろうか。 そこまで脅威性は感じないが、依頼されたのならばこなすしかない、なんと言っても10万円がかかっているのだ。

 

「ドアは普通に……開いてるわね。」

 

「おかしいですね、鍵をかけてないのに開かないと報告があったのですけど。」

 

 

 ドアノブを回して扉を開くと、ソレと目が合ってしまった。

 

 

「……」 

 

 

 お下げ髪の眼鏡少女がベッドの上に座っていた。 足が半透明で、いかにも幽霊ですと自己主張しておりますよ。

 

 

「もしかして、私の事見えてます?」

 

「うん、ばっちりと。」

 

「……」

 

「……」

 

「お待ちしておりました!!」

 

 

 急接近してきたかと思うと、私の両手を握りブンブンと上下に振る。 当然私の手をとれるわけがなく、一人で上下運動を繰り返している状態なのだが。

 

 

「ちかっ、近いからぁ!」

 

「ずっと待ってたんです! 私を成仏させてくれる人を!」

 

「成仏って……アンタ何したわけ?」

 

「実は……」

 

 

 彼女は水野彩芽、帝都大学に通っていたが、成績不振に陥り自殺してしまったというのだ。 それで地縛霊となりこの部屋を占拠してしまったらしいが……

 

 

「それで、どうしたら成仏できるわけ?」

 

「それが、分からないんです。 そもそも、この部屋に縛られる程強い思いがあったわけでもないし。」

 

「うーん、ヒントは無しか…… これは厳しいわね。」

 

「ご主人様どうします?」

 

 昔の事を知ってそうな人なら、やはりここの寮長のおばあさんを訪ねるべきか? それくらいしか思いつく相手はいないし。

 

 

「唯一の希望にすがってみるとしますか。」

 

 

―――

 

――

 

 

 

「水野彩芽? どこかで聞いた事があるねぇ。」

 

「なんでもいいんです、覚えている事があれば!」

 

「……確か10年くらい前だったかね、部屋の窓から飛び降りたって。」

 

「ほほぅ、10年前ですか。 それで?」

 

「それだけじゃ。」

 

「……ありがとうございます。」

 

 

 ダメだこりゃ…… 全く役に立たないじゃないの!

 部屋を出て私は頭を抱える。 これで完全に振り出しに戻ってしまった。

 

 

「何か思い出さないわけ、自分の事でしょ?」

 

「うーん、さっぱりですね。」

 

「一発どついてやろうか。」

 

 私はハリセンを形成して構える。 こいつなら霊体へ打撃を与える事が出来る。

 本能的に察したのか、首を横にブンブンと振って拒否している。

 

「なら少しは考えなさいよ、自分の事なんだから。」

 

「ごめんさいごめんなさい!」

 

「はぁ…… 菊梨、面倒になったらコイツ焼いちゃってね。」

 

「はい、お任せください!」

 

「ほんと止めて下さいってば!! あぁ、もしかしたら私の部屋に何かヒントがあるのかも!」

 

「確かに、あの部屋に縛られているならヒントは残ってるか…… ひとまず部屋に戻るわよ。」

 

 

 とりあえず開かずの間へと戻って部屋を調べてみる。

 

 

「教科書とかは全部当時のままなのね。」

 

 

 伊達に開かずの間なって呼ばれていたわけではなく、事件後の状態がそのままになっている感じである。

 

 

「ご主人様、これ見て下さい!」

 

「何か見つけたの!?」

 

「これです!」

 

 

 そう言って持ってきたのは――

 

 

「誰が成人コミックなんて探してこいなんて言った!(スパーン!)」

 

「あぁ~ん/// だってベッドの下から出て来たんですもん……なかなかマニアックですし。」

 

「中身まで読んでるし、駄狐は……」

 

 

 ほんと、もう少し真面目にやって欲しいものである。 この調子じゃ今日中に終わらないじゃないの……

 その時、先程の寮長のおばあちゃんが部屋に入って来た。 お盆の上には美味しそうなメロンフロートが乗せられている。

 

 

「色々調べて疲れただろう、少し休みなさい。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

 根を詰めても仕方ないか、少し休んで頭を切り替えよう……

 

 

「いざ、いただき――」

 

 

 メロンフロートを受け取ったその瞬間だった……私の身体は水野彩芽に奪われていた。

 

 

「いただきまぁす!」

 

「ご、ご主人様?」

 

 

 物凄い勢いだった。 獲物に飛びつく獣のように荒々しく平らげる。

 

 

「そんなに美味いんかい?」

 

「はい! とっても!」

 

 

 水野彩芽は目を輝かせながらメロンフロートを完食した。 それと同時に私の身体に自由が戻る。

 

 

「あれ、戻って……?」

 

「ご主人様、見て下さい。」

 

 

 菊梨が指さす方向を見ると、光輝く水野彩芽の姿があった。

 

 

「あれ、もしかして私?」

 

「なんでメロンフロート食べて成仏するわけよ……」

 

「そうだ! 確かあの日はデザートがメロンフロートだから舞い上がっちゃって…… その勢いで窓から落ちちゃったんでした!!」

 

「コイツ…… 成仏する前に私が叩き潰してあげるわ!!」

 

「ご主人様落ち着いて!」

 

 

 ハリセンを構えて暴れる私を、背後から羽交い絞めにして菊梨が止めに入る。

 

 

「ありがとうございます、これで成仏できそうです!」

 

「待ちなさい!! あと私のメロンフロート返してよー!」

 

 

 消えゆく幽霊には、全く無駄な叫びであった……

 

 

―――

 

――

 

 

 

「羽間先輩、例の資金が準備できました……」

 

「よくやってくれた雪君、これで無事に彼女を雇えそうだ。」

 

「……もう二度とごめんですからね。」

 

「何を言っている、今後も暇があればゴーストバスター隊として働いてもらうからそのつもりでいろ。」

 

「……」

 

 

 はぁ、そんな事だろうとは思っていましたよ。 やっぱ、ほんとつれぇわ……

 

 

「もうやだぁ……」

 

「まぁまぁ、明日はきっといい事がありますよ!」

 

「そんな慰めなんていらないわ…… どうせ私は不幸の星の元に生まれてきたのよ……」

 

「もう、元気だして下さいまし。 そうだ、この前のメイド喫茶いきましょ? ね?」

 

「うん、そうするぅ、癒してもらおう……」

 

「あぁでも…… 浮気だけは許しませんからね?」

 

「は、はい……」

 

 

―田舎のおばちゃん、今日も私は元気です―




―次回予告―


「レディースえーんどジェントルメン! 今宵は狐のマジックショー!」

「急に何を言い出したかと思えば……」

「はーい、このシルクハットから、狐が一匹……狐が二匹……」

「スヤァ……」

「ちょっとご主人様! 効果出るの早すぎじゃありません!?」

「Zzz……」

「もう…… 次回! 第十六話 店長(マスター)に秘められた思い。」

「イリュージョンを見逃すな……スヤァ。」

「イリュージョンというか、催眠術ですね……」

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