「はーい、皆さんこんにちは! よーこ先生ですよ~!」
「ルーミーです。」
「今回も二人で皆さんの疑問に答えていきますね!」
「任せて。」
「では、今回のお題はこれです!」
~狐の妖怪って実際凄いの?~
「狐妖怪である私自身が断言します、めちゃんこ強いです!」
「説明になってない。」
「小難しい説明なんていらないのです! 強さが全て、この世は弱肉強食!」
「――狐は妖怪の最上位種。 強大な妖力と高い知能を持って人間社会に隠れている。 手練れでも5人はいないと討伐は難しい。」
「5人がかりでも負けませんけど!?」
「その強大な妖力で、神域(かむかい)と同質の結界を形成する事も可能。 本当に危険な妖怪。」
「これで皆さんも狐がどんなに偉大か理解して頂けたでしょう!」
「――いつか私一人で狩る。」
「何か物騒な言葉が聞こえたような……」
「気のせい。 今回はここまで。」
「皆さんあでぃおす!」
「またね。」
「遂に辿り着いたぞ、帝都に!」
ここに一人の少女――いや、見た目で言えば幼女が帝都の地に足を踏み入れた。 しかし彼女は明らかに人間ではなかった。 金色の狐の尾と耳を持っているのだから。 極めつけは、ミニスカのような袴の巫女服だ。
しかし、これだけ目立った見た目と衣装でも行き交う人達は誰も見向きもしない。 それは彼女が妖怪で、本来ならば認識する事も出来ない存在だからだ。 妖怪自身が姿を隠す限り、普通の人間には見る事は出来ないのだ。
「妖力渦巻く無法地帯……確かに、”主様”が言っていた通りの危ない場所じゃのう。 やはり連れ帰ねばなるまいな。」
――幼女は歩き出す。 彼女の目的はただ一つ、自身の大事な人を連れ戻す事。 妖力を辿れば見つかるのは簡単だ。 問題は邪魔者が現れるかどうかだ。
「待っておるのじゃぞ、姉様!」
―前回のあらすじ―
不安定なあまてるちゃんの力、そして菊梨の謎の行動、あらゆる出来事が彼女を追い詰める。 そんな彼女を救ってあげられるのは私だけ。 そう、あの狐じゃなくて私だけなの。 私だけが彼女の事を分かってあげられる、私だけが彼女を守ってあげられる。 だから、今度こそ私は……
そんな事を、私は二人で裸になって眠るベッドで考えた。 ――ふふ、私の一歩リード。
姉様の居所はすぐに見つける事が出来た。 夜空を見上げ、月を眺める姉様の姿は神々しく、まるで女神のようにさえ見えた。 見つめているだけで心臓が高鳴るのを感じる。
「姉様ぁ!」
思いっきりダイブして抱き着こうとするが、横に回避されてしまう。 そのまま屋根の上に思いっきり顔面直撃……
「な、なんで避けるんじゃ!?」
「一瞬身の危険を感じまして……
「気づくのが遅すぎなのじゃ!」
「ごめんなさい、考え事をしていまして。」
ぎこちない笑顔を向ける菊梨。 ふと、裾から覗く両腕の傷に目がいく。 ――ありえない事だ。 姉様が小さいとはいえあんな傷を負う事は絶対にありえないのだ。
「その傷はなんじゃ。」
「――
「姉様は昔から嘘が下手じゃな。」
「……」
――二人の間に沈黙な流れる。 絶対に何か隠している、ここに留まらせるのは危険だ。
「やはり、姉様はここにいるべきではないのじゃ!」
「
「それでも、この帝都は危険なのじゃ! どうして分かってくれない!?」
「だってここには、
姉様が頑固なのは昔からだ。 一度言い出したら絶対に自分の意見を曲げない。 まぁ、それも含めて姉様が大好きなのだが。 でも今は――
「手紙に書いてあった女か――許せぬ。」
「梨々花……?」
「姉様はわしの物じゃ……やはり危険要因は排除する。」
「――貴女、何を言っているか分かっているの?」
「分かっておるとも! わしはその女を殺すと言っておるのじゃ!」
――その時、背筋も凍る程の冷たい感触が走る。 それは愛する姉から発せられた殺気だった。 その視線だけで自らが3回程殺される幻覚を見てしまう程だ。
「貴方が、
「っ!?」
心のどこかで姉妹には手を出せまいという驕りがあった。 しかし、それは自身の甘えで――本気で殺そうとしているのだ。
「なんで分かってくれぬ! 姉様のバカバカ!」
「待ちなさい梨々花!」
――耐えきれなくなってその場を逃げ出した。
「わしはただ、昔のように姉様と暮らしたいだけなのじゃ……」
駆けている間も、涙は留まる事を知らずに流れ続けた……
―――
――
―
「はぁ……」
公園のベンチに蹲ったまま朝を迎えてしまった。 いつの間にか人間達が、アリの行列のように大量に歩き回っている。
「バカ……」
泣きすぎたせいか、目は真っ赤に腫れ上がっている。 動く気力も湧かず、無駄に時間だけが過ぎていく。 妖力を隠しているから、この場所を姉様が見つけるのは時間がかかるだろう。
「ねぇ君、何してるの?」
「……なんじゃ?」
目の前に一人の少年が立っていた。 非力な妖力に犬のような耳――恐らくは
「人間にいじめられたの?」
「誰が人間なんかに! わしは狐様じゃぞ!」
「へぇ、そうなんだ。」
山彦は明らかに馬鹿にしたような感じだった。 確かに今は妖力を抑えているが、この立派な耳を見て分からないとはなんと無知な弱小妖怪なのだろう。
「お主こそ、ここで何をしておるんじゃ?」
「僕はここで発声練習をしてるんだ。 いつでもやまびこを返せるようにね。」
「しかし、この辺に山など無いではないか。」
「人間達が作った”びる”とかいうのがその代わりになるのさ。」
「ふぅーん。」
彼なりに変化した環境に適応しようとしているのだろう。 嫌なら住処を変えればいいだけだろうに、何故この土地に拘るのか理解できない。
「移住しようとは思わんのか?」
「考えた事ないや、僕はこの土地で生まれ育ったから、きっと外では生きていけないよ。」
「そうか……」
もしこの妖怪に今の帝都の危険性を説明しても、きっとこの土地から出ていく事はないだろう。 そう――姉様と同じなのだ。
ベンチからゆっくりと立ち上がり、思いっきり自分の頬を叩く。
「よし! わしはそろそろ行くぞ!」
「そっか、気を付けてね狐さん。」
「あぁ、お主もな。」
山彦に背を向け、その場を後にしようとしたが――目の前には姉様が立っていた。
「探しましたよ梨々花。」
「姉様……」
姉様の疲れた顔を見れば、寝ずにずっと探してくれていたのが分かる。 結局は迷惑をかけただけなのだ…… 結局、何をしたかったのだろう?
「姉様……わしと一緒に帰ってはくれぬか?」
「梨々花……」
姉様は優しく抱きしめてくれた。 久しぶりの温もりに身体を預ける…… いつものように優しく頭を撫でてくれるたび、無意識に涙が溢れ出した。
「寂しいのじゃ…… ”主様”はいても、姉様はいないから……」
「ごめんなさい。 でも
「”新参者”との約束なんて守る必要があるのか!?」
「それだけじゃないの。 あの娘はね梨々花、
「嫌じゃ、嫌じゃぁ…… わしは寂しい……」
いくら駄々を捏ねても無駄なのは分かっていた。 それでも泣かずにはいられなかった。 だって、姉様がお役目を終えて出て行ったあの日から――私の心にはずっと大きな穴が空いたままなのだから。 この穴を塞げるのは姉様以外いないのだから……
「ごめん、ごめんね…… でも、寂しくなったらいつでも遊びに来ていいから。」
「いくぅ…… ”あるじさま”におねがいして、またくるぅ……」
「うん、梨々花はいい子ね。」
でも、わしはいい子だから、姉様の言う事を聞くしかなかった。
「大好きよ梨々花。」
「わしもぉ!」
だからもっと、強くなるしかなかった……
―――
――
―
梨々花を送り届けて帝都に戻る頃には、既に夜になってしまいました。
そんな事を考えながら家路を急ぐ。 家の玄関前まで到着し、結界に変化が無いかを確認する――何も問題はなさそうで、
――今は大丈夫ですが、早めに留美子ちゃんには例の件を伝える必要があるかもしれません。 もし
「あら、留美子ちゃんも来ているのですね。」
玄関に留美子の靴が置いてあるのを確認する。 しかし、家中の電気は消されており、物音一つ聞こえない――嫌な予感が脳裏をよぎる。
「まったく、電気なんて消して二人で何を――」
――見てはいけないモノを見てしまった。 ソレは自らが一番望んでいた”行為” 気配を殺し、壁を背にしてその場に硬直してしまう。 二人の息遣いが廊下まで聞こえてくる。
「留美子っ!」
「あまてるちゃん!」
こんなのイケナイ、今すぐこの場を離れるべきだ。
しかし身体は、理性とは真逆の行為に耽っている。 長い時を生きても、所詮は雌の本能には逆らえないのだ。
「あまてるちゃんは、私が絶対守るから……」
「うん……」
「だから、ずっと一緒に……」
思考が真っ白になる中、二人の会話が鮮明に聞こえてくる。
「あまてるちゃん、愛してる……」
”愛してる”という言葉だけが、ずっと頭の中で反響し続けていた……
「私だって、ご主人様を愛していますのに……」
そのつぶやきは、誰の耳にも届く事は無かった。
―次回予告―
「赤ちゃんはどこから来るの~♪」
「ご主人様ご機嫌ですねぇ、どうかしたのですか?」
「いやぁ、卵を孵化させようと頑張ってるのよ。」
「卵って…… 一体何の卵なんです?」
「なんでも、幸運を呼ぶ鳥の卵らしいよ! しかもタダで譲って貰っちゃってさあ!」
「またそんな怪しい物を! 捨てて来て下さい!」
「そんな事出来るわけないでしょ! この子は私が育てるの!」
「次回、第二十一話 赤ちゃんはどこからくるの?」
「もう! どうなっても私(わたくし)は知りませんからね!」