ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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教えて、よーこ先生!


「はーい皆さんこんにちは! 皆大好き、教えて、よーこ先生のお時間ですよ!」

「助手のルーミーです。」

「今回も、ビシッ! っとみんなの質問に答えていきますよ! ではでは行きましょう!」


~第一回質問コーナー!~


「ぱちぱちぱち」

「はい、元気の無い拍手をありがとうございます。 では、お便りを読んでいきますね!」

”ずばり、菊梨さんはレズなのですか? それとも男性にも興味はあるんですか?”

「いきなり踏み込んできましたね……正直に言いましょう、どっちもいけます!」

「見境なし。」

「だまらっしゃい! 今の私はご主人様しか見てないんですぅ!」

「じゃあ次。」

”留美子ちゃんがもっと感情出してる所が見たいです! もっと雪ちゃんとイチャラブしてください!”

「これ、燃やしていいです?」

「自嘲しろ女狐。」

「いやん! 殺意を込めて銃を向けないで下さいまし!」

「やっぱりあまてるちゃんのために滅するべきかも……」

「というわけで今回はここまで!」

「質問はメッセージから送って貰えたら採用されるかも。」

「お待ちしておりますね! では、皆さんあでぃおす!」

「またね。」


第三十四話 ピクニックに行きませう

「皆、お疲れ様。」

 

 

 今日の稽古を終え、羽間先輩の周りへと集まっていく。 先輩は額の汗を拭うと眼鏡の位置を人差し指で調整した。

 

 

「いよいよ、今週末が本番となる。 今日の通し稽古でも問題ないし、本番も100%の力を出し切れば大成功となるだろう。」

 

「衣装も完成しましたので、近いうちに衣装合わせましましょう。」

 

「そうだな……それは明後日にしようか。」

 

 

 コホン、っと羽間先輩は咳払いをすると、一度頷いて口を開いた。

 

 

「というわけでだ! 明日は息抜きとしてピクニックに出かけるぞ!」

 

「……ピクニック?」

 

 

 流石にそれは突拍子もないというか、まるで小学生のようだ。 息抜きという意見には概ね賛成だが、それならば休みという事でいいのではないか?

 

 

「自然に身を置いて心を和ませるのを目的としている。 尚、全員強制参加なのでそのつもりで。」

 

「先輩、ちなみにどこに行くんですか?」

 

 

 羽間先輩はやれやれと肩を竦めると、しょうがないとばかりに説明を始める。

 

 

「この帝都内で自然に溢れた場所なんて一つしかないだろう?」

 

「――それって忌影山の事ですか?」

 

 

 ”忌影山”

 

 帝都の首都北部に聳え立つ標高100メートル程度の小さな山だ。 国の方針で、その山の周辺は自然がそのまま残されている。

 あれ、なんでそんな方針にしてるんだっけ……?

 

 

「その通りだ! ピクニックには最適で、学校からもそんなに遠くないだろう?」

 

「確かに電車で15分もあれば行ける距離ですけど……」

 

「というわけで君達に拒否権は無い! 各自の判断で準備をしてくるように。」

 

 

 何故だろうか、私の中で”忌影山”という名前が妙に引っかかっていた。 別に山に興味があるタチでは無いのだが……

 

 

「ご主人様、バナナはオヤツに入りますかね?」

 

「遠足かっ!? お決まりのボケをどうもありがとう!」

 

 

 ――菊梨はいつもの調子である。 多分私の考え過ぎだろう、ここ最近は色々とありすぎたせいで変に勘ぐってしまうようだ。

 

 

「留美子?」

 

 

 ここにも難しい顔をしている者がいた。 彼女のしかめっ面を見ていると、私も同じ顔をしていたのではと笑いがこみ上げてくる。

 私は留美子の両頬をつまんで軽く引っ張る。

 

 

「ふぃひゃい。」

 

「うん、これで少しはマシな顔になった。」

 

「……」

 

「――悩んでるなら、私にも相談しなさいよね。」

 

 

 しかし、留美子は私の問いに答える事はなかった……

 

 

 ―前回のあらすじ―

 綺羅廻展覧会に招待された私は、菊梨の目を盗んで会場へとやってきた。 しかし、彼女の正体は染野 艷千香という元退魔士で、私の霊力を狙っていたのだ! 彼女の術で私は幻覚を見せられ、助けに来た菊梨は結界内部へと閉じ込められてしまった。

 指輪の力でなんとか現実に戻って来れた私は、油断している艷千香に全霊力を込めたロングハリセンをぶちかましてやったのだ。 結果的に逃げられはしたが、私の完全勝利だと宣言出来るであろう!

 

 

 

 

 

「ハイハイ、分かってました――こんな事だろうと思ってましたよ!」

 

 

 嫌な予感は確かにしていたのだ。 ただのピクニックなんて羽間先輩が企画するわけがないのだ。

 私は頭を抱えながら己の甘さを嘆いていた。 その理由は、私の目の前に聳え立つ巨大な銅像にあった。

 

 

「11代目天皇、安倍(あべ) 玄徳(げんとく)様の銅像だ。 彼は歴代でも一際輝く存在で、帝都の大結界計画や都市部開発等の皆が知る話にも深く関わっている。」

 

 

 まさかこんな時までお勉強タイムになるとは予想の斜め下過ぎた。これならばサボって家で寝ておけばよかった……

 

 

「そして現天皇の祖父に当たる人物だが……そこ、何を欠伸している!」

 

「ふぇ?」

 

 

 そして間が悪い事に、徹底的瞬間を羽間先輩に目撃されてしまったようだ。 ここで一つ言い訳させてもらうが、勉強が出来るのと勉強が好きなのは全くの別ものだ! 私は前者にカテゴライズされる勉強出来ても大嫌い人間なのである!

 

 

「大事な私の抗議中に欠伸とはいい度胸だな?」

 

「そそそ、そんな事ないですよ? なんといいますか、ちょっと寝不足でして……」

 

「問答無用だ! 私がマンツーマンでたっぷり語ってあげよう。」

 

 

 先輩は私の手をがっしりと掴み、引きずりながら博物館の中へと歩みを進める。

 

 

「菊梨、留美子、助けてぇ!」

 

「たまには良いのではないでしょうか?」

 

「……がんばって。」

 

「この裏切り者めぇぇ!!」

 

 

 私に手を差し伸べる者は一人もいなかった。 大久保先輩ですら笑顔で手を振るだけだ……

 

 

「何、そんなに嘆く事はない。 私とたっぷり楽しい時間を過ごそうではないか。」

 

「先輩、何か別の意味に聞こえますよその発言。」

 

「ほほう、それはどういう意味でだ?」

 

 

 足を止め、先輩はニヤニヤと私を見下ろしている。 もしかしたら、私はとんでもない地雷を踏んでしまったのかもしれない。

 いや――これは菊梨に汚染されすぎたせいで決して私の意思ではない! 私の脳内がピンクなんてそんな事は決してない!

 

 

「どういう意味かと聞いているぞ?」

 

「別に深い意味は!」

 

 

 面白そうに先輩が顔を近づけてくる。 この位置だと案内板や銅像が影となり、私達の様子は皆には見えていない。

 

 

「確かに私は可愛い子を虐めるのは好きだが……君はそれをどこで知ったのかな?」

 

「いやいや、何を急に言い出してるんですか!」

 

「もしかして葵から聞いたのか? なら少しお仕置きしてあげないとな。」

 

 

 いつもとは違う、何か興奮したように少し息の荒い先輩に恐怖を覚える。 というか、もしかして――

 

 

「先輩達って、付き合ってるんですか……?」

 

「……」

 

 

 ――興味本位とはいえ口に出してしまった。 まずい、これは非常にまずい!

 

 

「よし、ひとまず中に入ろうじゃないか。」

 

 

 眼鏡の位置を調整し、急に冷静になったかのような表情に戻る。 私は少し拍子抜けに感じたが、立ち上がって後に続いた。

 

 

―――

 

――

 

 

 

 博物館は木造の建物で、どこか懐かしさを醸し出していた。 ガラスケースの中にはあらゆる展示品が並べてあるが、それを眺めている者は一人もいなかった。

 

 

「父は政治家として安倍 玄徳を補佐する地位にいた。 だから私も子供の頃によく会っていた。」

 

「そ、そうだったんですか。」

 

「しかしある日、彼らを乗せた旅客機が墜落事故を起こしたんだ。」

 

「……」

 

 

 墜落事故? そんな事あったっけ……?

 ズキン、と大きく頭に痛みが走る。 まるで思い出す事を拒否するかのように――

 

 

「――生き残りはいなかった。 天皇も、その子供も――私の父も皆死んだ。」

 

「先輩……」

 

「だから私は、父の意思を受け継いで政治家になろうと思ったのさ。 父が果たせなかった夢を私が……」

 

「それで、この場所に?」

 

「あぁ、この山はその旅客機が墜落した場所だ。 慰霊碑と共にこの博物館が建てられたのさ。」

 

 

 そんな大事故があったのに、何故私の記憶からすっぽりと抜け落ちていたのだろうか? こういうのは毎年ニュースで取り上げたりもするだろう。

 まるで何かが、私から意図的に遠ざけているかのような……

 

―ザッ―

 

 何かの映像がノイズ混じりに脳内に映し出される。 灰色の風景、飛行機、笑う男、そして――私。

 

 

「っ……」

 

「雪どうした? 顔が真っ青だぞ?」

 

「ちょっと、立ち眩みで……」

 

 

 先輩は私の身体を支えながら、優しくベンチへと座らせてくれた。

 先輩の話を聞いたせいなのか、それとも……

 

 

「――もしかして、雪も何か事件に関わっているのか?」

 

「え……?」

 

「もしそうなら済まない……過去の傷を抉りたいわけじゃなかったんだ。 ただ私の覚悟を語りたくてな。」

 

「大丈夫です、ほんとにフラっときただけですから。」

 

 

 ダメだ、これ以上は考えるな。 これ以上掘り返したら脳が焼き切れてしまうかもしれない。 それでも先程の灰色の風景の映像は再生され続ける。 徐々に鮮明に、はっきりと……

 

 

”さようなら祖父上、神になるのは私一人だけだ”

 

 

 あぁ、間違いない。 この声は――私の隣で笑っているこの男は……

 

 

「安倍……晴明……」

 

「え?」

 

 

 この男が晴明なら、この小さい私は――何をしている? いや、()()()()()()

 落ちていく飛行機、笑う晴明、そうだ――私は!

 

 

「しっかりしろ雪! くそっ、救急車を!?」

 

「大丈夫です、ここは(わたくし)が……」

 

 

 私がやったんだ! あの事故を起こした! 私の力で!

 

 

「ご主人様、少しだけお眠り下さい……」

 

 

 違うの菊梨、悪いのは私――なんだよ?

 一気に全身の感覚が希薄になっていく。 激しい感情の奔流も、視えていた映像も、全てが朧気で薄く……

 

 

―――

 

――

 

 

 

「祖父上。」

 

「……」

 

 

 ここは天皇の住まう皇居。 警備や身の回りの世話全てを式神にやらせるのが彼のポリシーであり、人の気配は彼以外無い。 そんな彼の前に一人佇むのは一匹の妖怪だった。

 

 

「艷千香が失敗したようですが、飼い犬としてのフォローはしないのですか?」

 

「全てはお前の計画通りだろう晴明。」

 

「えぇ、全くその通りです。」

 

 

 彼はまるで全てを見透かしているかのような笑みを浮かべてそう答える。 いや、それは間違いだ――彼は全てを知っているのである。

 

 

「お前は遂にバークライトの真理に到達したのだな。」

 

「お蔭で多くの犠牲を払いましたがね。 おっと、その犠牲の一人でしたね……祖父上は。」

 

「よくも本人の前で言えたものだ。」

 

「飼い犬となった貴方は私には逆らえない、だからこそですよ? 私が神となる瞬間を見届けられるだけありがたく思うがいい。」

 

「……」

 

 

 晴明の術で無理矢理この世に呼び戻された玄徳は既に人間ではなかった。 ただ人の形をした式神というだけの存在――傀儡だ。

 

 

「そろそろ、どちらを器とするか決めなければなりませんね。」

 

「どうするのだ。 一人は覚醒の兆しを見せているが、本命は定時連絡を見る限り使い物にならないのではないか?」

 

「逆ですよ? あの子の力は意図的に隠されているのです。 まるで誰かが干渉するようにね。」

 

「それもアカシックレコードの記述通りか。」

 

「坂本 雪、そして――榛名 優希、もっと私を楽しませて下さいよ。」

 

「……」

 

 

 玄徳は心底思った――こんな事ならば、あの日にこの子を殺しておくべきだったと。 呪われし痣を持った孫に情けなどかけるべきではなかったと。

 しかしもう、時を戻す事は出来ない……運命は全て決してしまっているのだと。




―次回予告―

「ついに始まった学祭!」

「しかし、そこに介入する一つの影が……!?」

「果たして、私達は無事に劇を演じられるのか。」

「次回、第三十五話 嵐を呼ぶぜ、波乱の学祭!」

「絶対運命、黙示録」

「私(わたくし)の新衣装も登場しますよ!?」

「次回もお楽しみにね!」
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