ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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第三十六話 猿女 留美子の消失

 無機質な瞳が私を見下ろしている。 ”ソイツ”は私を床に落ちているゴミとしか見ていないのだ。

 

 

「――化け物!」

 

 

 私は苦し紛れにそう吐き捨てるしかなかった。 化け物というのは比喩ではない、目の前にいるのは少女の姿をした化け物なのだ。

 

 

「……」

 

 

 ”ソイツ”は何も答えない。 表情も変えず、起こしたアクションと言えば私を右手で指差したくらいだ。

 

 

「ぐがっ!?」

 

 

 ――唐突に襲ってきた圧迫感。 見えない何かに思いっきり首を絞められる感触、喉からは酸素を求めてヒューヒューとか細い音を漏らしている。

 視界がチカチカと点滅して、自身が生命の危機にある事を自己主張している。

 

 

「……」

 

 

 その瞳はやはり無表情で私を見下ろしている。

 

 

”そんな目で私を見るな!!”

 

 

 どんなに足掻いても、自らに迫る死を振り払う事は出来ない。 化け物には絶対に勝てない――

 

 

「さよなら。」

 

 

 私が最後に聞いたのは、化け物の別れの言葉だった。

 

 

―――

 

――

 

 

 

「くはぁ!!」

 

「やぁ、おはよう艷千香。」

 

 

 目覚めた場所はどこかの施設のようだった。 まるで昔の施設のようで心がざわつく。 そして、ベッドの隣に立つのはあの男だった。

 

「晴明……? 私は――」

 

「君は坂本 雪に敗北した。 まぁ予想通りではあったがね。」

 

「そんな、私が……」

 

 

 私は力を手に入れた。 我が家の秘術と晴明の技術を掛け合わせて、この若い肉体を手に入れた。 多くの霊力を吸い取って力を維持し、私は高みへと登り詰めたはずなのだ!

 

 

「ふむ、まだ気づかないのかね?」

 

「何を……?」

 

 

 ダメだ、その言葉を聞いてはいけない――私は本能的にそう感じた。 きっとその言葉を聞けば私は……

 

 

「君の大嫌いな少女が、あの坂本 雪だという事に。」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 そんな事分かっていた。 気づかないフリをして、全て終わらせてしまえば過去を乗り越えられると思っていた。

 なのにあの女は私の幻術を破り、たった1撃で私を気絶させたのだ。 ありえない――ちょっと霊力が高い一般人には絶対にありえない!

 

 

”さよなら”

 

 

 ――あの冷めた化け物の瞳が脳裏に浮かぶ。 絶対に抗えない圧倒的強者、あの化け物に私は何度も!?

 

 

「毎回虫の息だったね、君は。」

 

「あぁぁぁぁ!!!」

 

 

 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!

 

 

「なら、どうするか分かるね?」

 

「殺す!!」

 

「――よろしい。」

 

 

 あぁ、もう私の夢は終わりなのだろう。 頭の中は死への恐怖で埋め尽くされ、意思は生への渇望で満たされている。 それはある意味、晴明にとっての都合の良い駒であって、私の気持ちは微塵も残ってはいなかった。

 もし、誰か私のこの思いに気づいているのならば――私を、殺して(たすけて)

 

 

「やはり、彼女も失敗作だったね。」

 

 

―前回のあらすじ―

 多少のハプニングも起きたけど、なんとか無事演劇をこなす事が出来た私達。 戻ってきた菊梨の衣装にも驚いたが、何より驚いたのは留美子の大胆告白だ。 そのせいなのか、私と留美子の仲は学校中へと広まってしまった! 心中複雑だが、もはや公認カップルとしての立場は確立されてしまった。 これはもうどうしようもない事なのだ。 というか君達、百合っプルについての言及は無いのかい!?

 

 

 

 

 

「で、どうして急に素直になったのかなぁ?」

 

「――別に。」

 

「顔を赤らめながら言っても説得力が全くないぞ!」

 

 

 などと昼間っから乳繰り合っているわけだが――実際の所、留美子がこの問いに答えてくれたことはない。 少し前まではあれだけ距離を空けようとしていたのにだ。

 

 

「ぅぅ……」

 

「私は本気で聞いてるんだけど?」

 

「……」

 

 

 ――やはりだんまりだ。 むしろ好きだからこそ答えて欲しいという気持ちが何故伝わらないのか。

 私は留美子の両肩を掴んで、むりやりこちらを向かせる。

 

 

「いい加減隠し事は無しにしてよ。 どうしてしばらく身を隠してたのとか、秋子ちゃんに稽古つけてたり――何か考えがあったんでしょ?」

 

「ごめん、どうしても言えない。」

 

「なんでさ! 私に言ったら問題でもあるわけ?」

 

 

 留美子は一瞬、何か考え込むように視線を泳がせた。 その顔は無表情に見えるが、ほんの少しだけ悲しげにも見えた。

 

 

「――明日、私の家まで来て。」

 

「その時に話してくれるのね。」

 

 

 留美子は黙って頷いた。 私は彼女を信じて、今は納得するしかなかった。 きっと、今度こそ全てを話してくれる……

 

 

「ごめんね。」

 

「謝るくらいなら今すぐ話なさいよ~!」

 

 

 私は留美子の両頬を抓ってぐにぐにと動かす。 彼女は痛いと小さな抗議の声を上げつつも、顔は笑っていた。

 

 

「ほれほれ~! ここがいいんか!?」

 

「あまてるちゃん――お、おじさんくさい。」

 

「問答無用! お前は今日から私のカキタレになるのだぁ!」

 

 

 こんな幸せな日々がこれからも続いていく、この時の私はそう思っていたのだ……

 

 

―――

 

――

 

 

 

―帝京歴785年 11月3日―

 

 朝から留美子の家へとやってきたが、彼女は黙って私の手を握って歩きだした。 向かった先は何の変哲もない遊園地、あの時とは違って普通の場所であった。

 その後は特に何を話すわけでもなく、普通の恋人同士のように色々な乗り物を満喫し、アイスを食べながら笑い合った。 いつもとは違う平穏な一日、菊梨も気を利かせて私の前には姿を現さなかった。

 

 

「夕日――綺麗だね。」

 

「そうね、なんだか久々に平和な一日を過ごしたかもしれない。」

 

 

 私達の手はしっかりと握られ、周りの目など何も気にしてはいなかった。 留美子は観覧車を指差し、最期にアレに乗りたいと言った。 もちろん断る理由も無く、私は彼女の手に引かれるままについていく。

 

 

「観覧車なんていつぶりだろ? 全く記憶にないや!」

 

「私は初めてなんだ。」

 

「そうなんだ? 子供の頃に乗ったりしなかったの?」

 

「乗りたかったけどね……」

 

 

 あぁそうか、きっと留美子は天照(あの人)と一緒に乗りたかったんだ。 そんな夢を抱きながら、留美子は彼女の世話を続けていたのだろう。

 

 

「――待って。」

 

「うん、やばいのがいるね。」

 

 

 ソイツは自身の気配を消す事も、殺気を隠そうともしていなかった。 ただ真っ直ぐに、その殺意を私に向けているのは理解できる。

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

「染野――艷千香?」

 

 

 理性を感じない血走った瞳は、真っ直ぐ私を睨んでいる。 呼吸は荒々しく、一歩踏み出す度にその身体は大きく左右に揺れた。 明らかに正気ではない彼女は、ゆっくりと私に近づいてきている。

 

 

「お前さえ、お前さえいなけえば……」

 

「リベンジしに来たってわけ? お供もいなくなって正面からって事ね。」

 

 

 艷千香はまるで私の声が聞こえていない様子だった。 留美子は私の前に立ち、艷千香に向かって霊銃(レイガン)を構える。

 

 

「留美子、まさか殺すってわけじゃないよね?」

 

「いいえ、コイツはここで殺すべき。」

 

「相手は人間でしょ? 殺すのは妖怪――」

 

 

 自分で言おうとした言葉を飲み込む。 殺すのは妖怪だけ、そんな話はおかしいではないか。 ならば逆に、妖怪ならば殺してもいいのかという疑問が生まれる。

 今までだって、余程悪さをしている妖怪しか殺していなかったはずだ。 多分、私が唯一妖怪を殺したのは――留美子と共に引き金を引いたあの鬼だ。

 人間だから、妖怪だから、そんな線引きで決めていい事じゃない。 私は手を広げて留美子の前に立ちはだかった。

 

 

「私の仕事だから、どいてあまてるちゃん。」

 

「ダメだよ、そんな簡単に殺すなんて決めつけちゃ。 確かに艷千香は悪い事ばっかりしてきたけど、更生させる事だって出来るはず!」

 

「――お前が」

 

 

 艷千香から強力な霊力が発せられる。 それは強大ではあったが、物凄く歪で繊細な感覚――触れたら砕けてしまいそうな脆さも感じられた。

 

 

「私をこうしたのはお前だぁぁ!!」

 

「あまてるちゃん!」

 

 

 時間の流れがどんどんゆっくりになっていく。 いや、もしかしたら私の思考速度が速くなっているのかもしれない。 前にも似たような事があった気もするが、その件については今は深く考えない。

 飛び掛かろうとする艷千香、霊銃(レイガン)の照準を向けて今にも引き金を引こうとする留美子。 今、私が出来る行動は――

 

 

「っ!?」

 

 

 ――左肩に激痛が走る。 留美子の撃ち出した銃弾が貫通したせいなのを理解し、私は形成した霊剣(ハリセン)を飛び掛かろうとする艷千香に叩き込んだ。

 

 

「どうして……」

 

「留美子に、人殺しをさせたくなかったから。」

 

「――ごめんなさい。」

 

 

 近くのベンチに座らされ、留美子は自分のポーチから包帯を取り出すと、慣れた手つきで手当てを始める。

 艷千香はうめき声を上げながら地面を転げまわっている。

 

 

「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる。」

 

「どうしてこんな状態に……」

 

 

 先日戦った時は、確かに頭のおかしい奴だったけどここまで酷くはなかった。 明らかに何かが壊れてしまったような様子だ。

 

 

「殺さないと、お前を殺さないと私がまた殺されちゃうのぉ!」

 

「えっ……?」

 

「もう死ぬのは嫌なの! 嫌嫌嫌嫌嫌! やめて! 殺さないで!!」

 

「何わけわかんない――」

 

「がぁぁぁぁぁあああ!!!」

 

 

 あまりにも酷い惨めな姿だった。 彼女にとっての幸運は、留美子が咄嗟に神域(かむかい)を展開した事によってこの醜態を晒さずに済んだ事だろう。

 私はベンチから立ち上がり、叫びながら転げまわる艷千香に近づく。

 

 

「あまてるちゃん!」

 

「大丈夫、艷千香はもう戦えない。」

 

 

 そう、彼女はきっと最初から訴えていたのだ。 私がもっと早く気づいてやればよかったのだ。 こんなにもストレートに自己主張していたのに……

 伝わってくるのは彼女の感情だ。 怒りの中に隠れた悲しみ、死を拒んでいるようで求めている。 本当に、彼女を救う方法はソレしかないのだろうか?

 彼女は言う、早く楽になりたいと。 私は答える、他にも方法がある筈だと。

 

 

”多分そんなものはない、私は晴明に壊されてしまった”

 

 

 彼女は冷静にそう答える――ここでもまたその名前だ。 奴は一体、どれだけの人間を巻き込んで?き乱せばいいのだろうか。

 もしかしたら、彼女もまた犠牲者だったのではないか?

 

 

”さあ殺しなさい。 私は死んで天国に、貴女はあの男の支配する地獄を生きる。”

 

 

 それでも彼女は、私を睨む事を辞めなかった。 きっと、私が忘れてしまった私を知っているのだろう。 だからこそこんなにも恨みを込めて睨んでいるのだ。 そしてその理由も語る事もなく――

 

 

「留美子、一緒に背負ってくれる?」

 

「――当然。」

 

 

 留美子は短く答えると、震える私の手を取ってゆっくりと霊銃(レイガン)を握らせた。 その冷たい感触に背筋がゾクりとする。 この冷たい塊が、簡単に人の命を奪うのだ。

 

 

「死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない!」

 

「ごめん、これ以外に助ける方法がないから。」

 

「死にたくない! 死にたくない! 殺して! 死にたくない! 死にたくない!」

 

 

 私達は、ゆっくりと、引き金を――

 

 

「さよなら。」

 

 

―――

 

――

 

 

 

 私達は無言で観覧車に乗っていた。 楽しかったはずのデートは、重苦しい空気に包まれてしまっていた。

 こうなってしまうと、聞こうと思っていた事も上手く口に出せない。

 

 

「きっかけは、身体が入れ替わったあの日だった。」

 

「――え?」

 

 

 急に留美子が口を開いた。 表情は暗く沈んだままだが、今言わなければならないという強い意志を感じた。

 

 

「お互いの一部の記憶を共有したあの日、私はありえない記憶を見た。」

 

「ありえない記憶?」

 

「帝京歴786年 2月 18日 この世界が終わる。」

 

 

 流石に考えもしない答えで私の思考が停止した。 そもそも帝京歴786年って来年の話ではないか。 私と記憶を共有したという前提がおかしくなる。

 

 

「あまてるちゃんは何故か未来の記憶を持っていた。 そして、あまてるちゃんはその記憶を覚えていない。」

 

「うん、全く身に覚えがないね。」

 

「だろうね――だから私単独で計画を進めたの。 晴明への牽制と私の代わりになる人物の選出。」

 

 

 留美子の代わり……? なんでわざわざそんな事を――

 

 

「訪れる絶望の未来、それを防ぐには私が消える必要がある。」

 

「ちょっ、冗談はよしてよ。」

 

「菊梨が消え、そして私があまてるちゃんを――そんな未来にするわけにはいかない。 だから私の後任として秋子を育てた。 私がいなくなってもあまてるちゃんを守れるように。」

 

 

 観覧車が丁度一番上に辿り着く。 留美子はその時を待っていたのか、何かの符をポーチから取り出した。

 

 

「私だってずっとあまてるちゃんと一緒にいたい。 でも、それがあまてるちゃんを不幸にするならば私は――」

 

「そんな事あるわけないでしょ!? 何かの間違いだって可能性も!」

 

「あまてるちゃん、きっとソレは絶対的な運命なんだよ。 貴女もきっと心のどこかでは気づいてるはず。」

 

「そんなわけ……」

 

「私は運命に抗う。 だから――」

 

 

 留美子は突然観覧車の扉を開け放ち、そこから手にした符を放った。 それは風に乗って町中に散らばっていく。

 

 

「これで皆の記憶から私の存在が消える。」

 

「何て事してるのよ!?」

 

「もう後戻りは出来ない。 それに私の身体も――」

 

 

 一瞬留美子の身体が半透明になるが、 頭を振って見直すと元に戻っていた。

 

 

「酒呑を封印した時の事、覚えてる?」

 

「お、覚えてるけど。」

 

「あの術は強力だけど、大きな代償が必要なの。」

 

 

 大きな代償……?

 

 

”でもね、私には一つだけ方法があったのさ――その鬼を封じる手がね。 それは人間の命を代償とした強力な封印術だ。”

 

 

 おばちゃんの言葉を思い出し、自らがやった事と同じだという事に気が付いた。 ならばあの時、その命を代償にしたのは――

 

 

「そう、私の命を使った。」

 

「なんでそんな大事な事!」

 

「言ったら、あまてるちゃんはやってくれなかった。 あの時はあれがベストだった。 どうせ消えなければいけないなら、せめてあまてるちゃんのために命を使いたかった。」

 

 

 更に留美子の身体が透明になっていく……死した体をずっと無理に動かしてきたのだろう。 術の効果で皆留美子を忘れ、彼女自身も今消滅しようとしている。 誰一人として、彼女が生きていた事を忘れてしまうのだ。

 

 

「嫌っ、私は忘れたくない!」

 

「私も忘れられたくない、でもね――これは全部あまてるちゃんのため。 私の一族、天鈿女命の系譜はずっと天照大御神の血筋を守ってきた。 それが天皇の系譜――あまてるちゃんの身体に流れる血。」

 

「劇に出て来た名前だよね? それに、私が天皇の血筋って!」

 

「お互いに思い合っても永久に結ばれない関係。 それでも私は、貴女に恋い焦がれ続けた。 だから今は幸せ、やっと私の願いが叶った。」

 

「これからでしょ私達!? だから消えるなんて言わないでよ!」

 

「晴明の計画とあまてるちゃんの過去、私が調べられなかった事に運命を切り開くヒントがあるはず。 だから恐れないで……」

 

 

 留美子は不器用な笑顔を向けると、目を瞑って観覧車の外へと身を投げ出そうとする。

 

 

「貴女なら、きっと運命を――」

 

「留美子っ!!」

 

 

 勢いよく伸ばした左手は、透明になった彼女の身体を突き抜ける。

 

 

「あぁ、やっぱり……忘れられたくないな。 愛してる――雪。」

 

 

 彼女は音もなく、地上に到達する前に消えて行った。 全ての人々の記憶からも……

 何も掴めなかった左手は、虚しく突き出したまま硬直していた。 その薬指に嵌められたシルバーリングに、乳白色の輝きを放つ宝石が埋め込まれていた。

 

 

「あぁ……」

 

 

 とても悲しいのに、何故だろう? どうして私はこんなに悲しんでいるのだろうか。

 何か、とても大事な事が抜け落ちてしまったような……

 

 

「私、なんで泣いてるんだろ……」

 

 

 その問いに答える者は、誰もいなかった。

 

 

―――

 

――

 

 

 

「例の物を無事回収しました。」

 

「ご苦労様、実に良い仕事ぶりです。」

 

 

 晴明は姿見えぬ女性から鳥かごのような物を受け取る。 その中には、鳥の代わりに光の玉のようなものが閉じ込められていた。

 

 

「貴女にはまだ利用価値がありますからね、退場してもらっては困るのですよ。 あぁしかし、あの実験体は本当に失敗作でした。」

 

 

 晴明は鳥かごをデスクの上に置くと、雄弁に語り出す。

 

 

「妖怪を使役する事に特化して調整したのですが、本体が脆弱過ぎて全くダメですね。 彼女相手では全く歯が立たない。 まぁ、テストを行っていた頃から何度も敗北していたのですから仕方ありませんが。」

 

 

 何度も殺され、潰された光景を思い出し、晴明は口元を歪める。

 

 

「彼女の覚醒を促すという仕事はしっかりこなしたわけですし、良しとしましょうか。」

 

「――晴明様。」

 

「おや、なんですか?」

 

「次の任務は是非私に!」

 

 

 晴明は右手を額に当て、何か考えるような素振りをして――再びニヤリと笑った。

 

 

「いいでしょう、貴女もそろそろ仇討ちがしたいのでしょう?」

 

「――はい。」

 

「貴女に敗れるならば、それは彼女が失敗作という証拠。 いいでしょう、殺す気でやりなさい。」

 

「ありがとうございます!」

 

 

 あぁ、また楽しい事になりそうです。

 晴明は鳥かごに対して笑ってみせる、まるで嘲笑うかのように……

 

 

「さて、貴女の身体を用意しなければいけませんね。」

 

 

 そう言って、晴明は暗闇の中へと姿を消した。




―次回予告―

「はい、第三章も無事終わりましたね!」

「妖怪に襲われたり、キチガイ退魔士に襲われたり散々だったわ!」


「そのおかげでご主人様もだいぶ逞しくなられましたね!」

「ふっふっふ! もう私一人でも戦えるかもね!」

「そして足元を掬われるわけですね……」

「いっつも一言多いよの駄狐!(スパーン!)」

「きゃいん!」

「次回からは第四章 帰省、青森珍道中が始まるよ!」

「次回、第三十七話 帰って来たぜ、我が故郷!」

「これからも2人で頑張っていくので応援宜しくお願いしますね!」

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