「はーい皆さんこんにちは! 皆大好き、教えて、よーこ先生のお時間ですよ!」
「第四章でも、皆さんの疑問にズバット! 答えていきますよ! では、今回の質問は――」
~青森ってどんな所?~
「これはだいぶ前にも軽く説明しましたね。 帝都領域の北部にある青森という雪国です。」
「正確には帝都から700km離れたド田舎で、交通整備もあまりされていない未開発地区です。 その地区の中心となる陸奥町がご主人様の故郷ですね!」
「霊的土地として有名な霊峰”恐山”も坂本家所有の土地のようで、何やら社があるご様子。 何かしらの逸話があるそうですが、それはまた後程という事だそうです。」
「そ・ん・な・こ・と・よ・り・! 親族の方々にはしっかりと挨拶せねばなりませんね……私とご主人様の結婚を認めてもらわねば!」
「では今回はここまで、皆さんあでぃおす!」
「――楽勝っしょ!」
一仕事終えたアタシは、夜の商店街通りをスキップで歩いていた。 行灯袴をスカートのようにひらめかせ、上機嫌で家へ向かって進む。
何故中学生が深夜に出歩いているのか、そう疑問に思う人もいるだろう。 それは最もな意見だが、それが適用されるのはあくまで普通の中学生だけだ。
アタシの一族、坂本家は古くから退魔士の家系だ。 私にもその血が色濃く受け継がれている。 アタシはその力を使って、夜に妖怪退治をして回っているわけだ。
アタシは手に持ったバニラアイスをひと舐めして、なんとも言えない顔になる。
「悪くはないけど、やっぱコンビニのアイスじゃダメだわ。」
アタシは観念してアイスにかぶりついて飲み込む。
「――明日かぁ!」
それは、アタシが上機嫌な理由だ。 私の大好きなあの人がこの陸奥町に帰ってくるのだ! 小さい頃からずっと一緒で、ずっと慕ってきたアタシのお姉ちゃん!
「雪姉ぇ! 早く帰ってこーい!」
アタシの声は、夜の商店街に反響して響き渡った。
―今までのあらすじ―
三妖と、それを率いた艷千香との戦いに決着がついた。 奴らは晴明と裏で繋がっており、私の霊力を狙っていたのだ! おかげで、学祭の演劇練習と戦いの負荷は私を大きく蝕んだのだ。 菊梨が本気の三尾
残った謎は私の失われた過去、そして――抜け落ちた最近の記憶である。
―帝京歴785年 12月23日―
「はぁ、腰がバッキバキだわ。」
700kmの新幹線の旅を終え、私達は青森地区に足を踏み入れた。 首都から北東の辺境に位置するこの地区は、人の出入りも少ないド田舎。 しかし、私にとっては子供時代を過ごした大切な場所だ。
私は凝り固まった身体をほぐすように両腕をブンブンと振り回した。 菊梨は着替えやお土産が詰まった旅行鞄を両手に携えて辺りを見渡す。
「結構かかりましたね。」
「鉄道が通ってなかった頃はもっと不便だったわよ……それに比べたらだいぶマシね。」
昔はこの陸奥町まで鉄道が来ていなかったため、家まで車で長距離移動を強いられていたのだ。 それに比べたらここまで電車で直で来れる時点で楽なのだ。
「まぁ冬休みは2週間程あるし、だいぶまったり出来るわね。」
「ですね――そういえば、お迎えは誰も来ないのですか?」
「う~ん、確か愛子が来るって連絡あったけど……」
ホームに降りた時点ですぐ出口がある小さな駅を出て辺りを見渡すが、人一人もいない悲しい状況だ。
見えるのは一面に広がる畑くらいである。
「いつ見てもザ・田舎って感じね。」
「
「そういうもんなの?」
正直私には分からない感覚だなぁ~
迎えが来ないとなると、このまま二人でおばちゃんの家に向かえばいいのかね。
「雪姉ぇ~!」
「ん――遅い!」
懐かしい凛とした声が聞こえる。 右手を振りながらこちらに駆け寄ってくるセーラー服の少女――あの特徴的なくせ毛は間違いなく愛子だ。
「マジごめん! アイス食べてたらゆっくりしすぎた!」
「また氷室さんのとこ行ってたな!」
「いいじゃん! 雪姉ぇも好きっしょ?」
そう言って左手に持ったソフトクリームを私に差し出した。 気温が低いおかげで、まだ思った程ソフトクリームは解けてはいなかった。
「うむ、任務ご苦労。」
私はそのソフトクリームを受け取り、ゆっくりと舐めとる――すると口の中に懐かしい甘さが広がった。
「所で雪姉ぇ、その隣にいる妖怪は式神?」
「あー、似たようなもんかな。 やっぱり愛子には分かっちゃうか。」
「かなり妖力を抑え込んでるみたいだけど、隠し切るのは無理っしょ。 肌にビリビリ来るし。」
学校では全くバレる様子はなかったが、やはり愛子のような霊力を持つ者には分かってしまうようだ。
「
「なんであんたはそういう勘違いされる紹介をするのよ!」
即座に
「やっぱそうなんだ、そんな気がしてたんだよね。」
「そこも信じ込まない!!」
「てか霊剣じゃんそれ! いつの間に!?」
愛子は目を輝かせながら私の手にしている
「そんなに珍しいの?」
「アタシもまだ使えないんだよね! 折角だし出し方教えてよ!」
「うーん、時間がある時にね!」
私はアイスを舐めるのを再開しながら歩きだす。 これから挨拶周りもあるし、何よりもおばちゃんの家を片づけねばならない。 しばらくは拠点となるのだから当たり前である。
「ん、あれって……」
「砂かけ婆ですね。」
家に向かう田舎道を歩いていると、木の枝に老婆が座っていた。 通りすがりの小学生に砂をかけては下品な笑い声を上げている。
その姿に私と愛子は見覚えがあった。
「まーたあの婆さん! この前お仕置きしてやったのに!」
「昔からいるけど相変わらずなのね。」
愛子が私に目で合図を送ってくる――間違いない、昔のアレをやるつもりだ。
私はゆっくりと頷き、敵に向かって駆け出す。 愛子は手にした符を一枚、砂かけ婆に向かって投げ放った。
「雪姉ぇ!」
「わかってる!」
私は
「必殺! 狐狼双破!」
昔と同じように技名を叫んで、思いっきり砂かけ婆に
まぁ、昔は拳を叩き込んでたんだけどね。
「流石雪姉ぇ!」
「愛子も相変わらず完璧ね!」
砂かけ婆は気絶して木から転げ落ちた。 襲われていた小学生はというと――
「うわぁ、変な事叫んでるおばさんがいる!」
「逃げろ~!」
まぁ……こうなるよね。 普通の人には妖怪は見えないわけで、一般的に見れば頭おかしいのは私の方になるわけだ。
「でもおばさんはないよね……?」
「大丈夫ですご主人様、アレは子供の仕様みたいなものです!」
「うん、分かってるよ。 分かってますとも……」
それでも心は痛いのよ~!
そんな悲痛な叫びは、私の心の中だけに木霊した。
―――
――
―
「……」
――やっとこの場所に来ることが出来た。
私は花や線香を持って共同墓地へとやってきた。
「ごめんね、遅くなって。」
「ご主人様……」
坂本 妙の名前が刻まれている。 私の大好きな
「私ね、覚悟決めてここまで来たんだよ。 きっと私は、自分の過去と向き合わなきゃダメだって。」
「……」
「きっと
自然と涙が溢れてくる。 この冷たい墓石と対面して初めて大事な人を失くしたと実感させられる。
私が何を問うても、冷たい墓石は何一つ答えてくれない。
「だから、最後にもう一度だけ――頼らせてもらうね?」
菊梨はそっと私の肩を抱いてくれる。 そんな何気ない優しさが、私の心を優しく包んでくれる。
「ごめん、大事な事言い忘れてたね――」
私は涙を拭い、無理矢理笑顔を作ってその言葉を紡いだ。
”ただいま!”
―次回予告―
「さぁさぁ、始まりましたよ第四章!」
「ていうか~アタシの独壇場だし。 狐は呼んでない的な?」
「ええい、ここは私(わたくし)とご主人様の不可侵領域です! 狼娘はお呼びじゃないです!」
「言ったな狐娘! この場で退治するし!」
「いいでしょう! 相手になってあげます!」
「犬猿の仲ならぬ狐狼の仲って奴? 喧嘩してる二人は放っておいてー―次回、第三十八話 孤独な狼とお人形。」
「次回もぉ!」
「お楽しみにぃ!」
「おぉ、クロスカウンタ―!」