「はーい皆さんこんにちは! 皆大好き、教えて、よーこ先生のお時間ですよ!」
「新人の愛子でぇーす! テンションアゲアゲでいくよ!」
「今回は、新人の愛子ちゃんと共にやっていきまーす! ではでは今回のお題は――」
~第二回質問コーナー!~
「ぱちぱちぱち!」
「では、皆さんから頂いたお便りを読んでいこうと思います!」
「じゃあアタシが――」
”晴明さんってラスボス感出してるけど、結構かませっぽいですよね? 前も雪ちゃんにしばかれてたし。 あの人本当に強いんですか?”
「はっきりと言いましょう、そんなに強くないです。 彼が優れているのは政治的駆け引き等の頭脳と知識ですね。」
「頭キレるだけの男とかちょーうける! だっさー!!」
「まぁ彼が何か仕掛けてくるのは間違いないですが……次行きましょう!」
”先輩二人組の出番をもっと増やして下さい!”
「脇キャラなんだから無理っしょ!」
「――そんな事言ってると、足元をすくわれるかもしれませんよ?」
「え……?」
「では、次がラストですね――」
”○○○は本当に消えてしまったのですか?”
「なにこれ、文字が潰れて読めないんだけど。」
「これはノーコメントってわけにはいきませんよね――正直に言いますと消えておりません。
皆さんの記憶からは強制的に消されましたが、彼女の魂は――うん、これくらいにしておきましょうか。」
「ちょー気になる!」
「まぁ次回のお楽しみという事で! では、皆さんあでぃおす!」
「すぴ~」
「ぐっすりと眠ってますね。」
「雪姉ぇが自由なのは昔からだから。」
家の片付けをし、先程まで歓迎会をしていたのだが――主役はこの通り夢の中というわけだ。 布団の上で毛布も被らずに大の字で寝転がっている。 そしてその表情は、なんとも幸せそうなだらしない顔である。
「少し気になったのですが――皆さん、ご主人様に何かよそよそしい態度のように感じたのですが。」
「それは仕方ないよ、雪姉ぇのお世話してたのはおかさん(大きい母さん、祖母の事)だけだったし。 多分身内で親しかったのはアタシだけ。」
「そうですか……」
あくまでも養子という立場であり、他の親族達にとっては目の上のたんこぶのような存在だったのだろう。 しかも、その出生が普通でなければ尚更――
「そうだ、折角だし雪姉ぇの話聞かせてよ! 本人が寝てるならいくらでも話せるっしょ!」
「いいですよ! でもその前に――ご主人様の幼い頃のお話が聞きたいです。」
「おっけー、なら雪姉ぇとアタシの出会った時の事教えたげる。」
―前回のあらすじ―
青森よ、私は帰ってきた~! なんて叫びつつ、冬休みに帰省した私とそれに便乗した一匹。
去年は来られなかったのと、おばちゃんの墓参りを兼ねているのだが――本当の目的は別にある。 それは自分の失われた過去を知るという事だ。 きっとここになら、記録としての紙媒体が残っているのではないかという可能性に賭けたというわけだ。
まぁおばちゃんの事だから、私が帰省するのを見越して何か準備してそうな気もするんだけどね。
―帝京歴776年―
今日もアタシは最低の気分だった。 いつもの事と言ってしまえばそうなのだが、今日は特に荒れていた。
”狼女、こっちくんなよ!”
”化け物は一人で遊んでろよ!”
朝に母親に怒られて機嫌が悪かったアタシは、いつも馬鹿にしてくる男子二人組をボコボコにしてやった。 当然こちらも無傷というわけにはいかず、腕や足に引っかき傷をつけられてしまった。
それを見た母親は野蛮だとか、もっとお淑やかにしろとか文句を言うだけ言ってアタシを放置した。
「やってらんない。」
私を大事に思ってくれているのは、きっとおかさんだけだ。 生まれながらに持つ霊力を皆蔑むが、おかさんだけは褒めてくれる。 だからこうして、おかさんがよく来ている恐山に足を踏み入れているのだ。
この山には狐狼神社と呼ばれる社が存在する。 坂本家はその管理を任されており、おかさんは手入れのために毎日この山を訪れているのだ。
一人で山の中に入るのは初めてだが、何度も連れてきてもらっている場所なので迷う事はない。
「流石にこの辺は妖怪が多いな~」
360度どこを見渡しても小物妖怪がうじゃうじゃいる。 物珍しそうにアタシを眺めてくるが、決して襲ってきたりはしない。 人に悪戯する程度で、害を与えるような妖怪ではないからだ。
それに小物は、自分より強い者に手を出したりはしない。 それが私の自尊心を満たしてくれる。
「う~ん、おかさん来てないのかな?」
社の近くまで来たのだが、おかさんの姿は見当たらない。 相変わらず妖怪達が私の様子を伺っているくらいだ。
――いや、妖怪達に妙な動きがあった。 まるで何かを避けるかのように散っていく。
私は普段とは違う妖怪達の動きに戸惑うが、その理由はすぐに判明した。
「……」
背筋を駆け巡る寒気――それは生物の本能的な反応、すなわち恐怖だ。 今まで感じた事の無いような圧力、それだけで身体は硬直して動けなくなる。
「こんにちわ。」
「こ、こんにちわ。」
ゆっくりと歩み寄ってきたのは、アタシよりも少し年上の少女だった。 赤い着物に長く黒い髪――まるで座敷童のような風貌が更に恐怖を駆り立てる。
その瞳は冷たく、まるで全てを見透かされているかのようにも感じる。 それと同時に、何か寂しさも感じた。
「貴女――確かおばちゃんの孫だよね?」
「ななな! なんのこと!?」
上手く言葉を紡げない。 しかし、しっかりと答えなければ殺されるのではという恐怖も同時にある。
人形のような少女は首を傾げてこちらを見やる。
「どうしてそんなに怯えてるの?」
「こ、怖くなんてないよ!」
「貴女も私が怖いの? 私が化け物だから?」
「あ……」
この時、一つだけアタシは理解した。 きっとこの子も自分と同じなのだと。
「怖くない、だってアタシも化け物だもん。」
「へぇ、貴女も化け物なんだ。」
人形のような少女が初めて笑顔をみせた。 その姿は年相応の少女に見える。
「うん、今日も幼稚園で化け物って言われたもん!」
「それでどうしたの?」
「むかつくから喧嘩した!! 頭叩いて噛みついてやった!」
「ふふっ、意外と可愛い化け物さんね。」
私なら――と、少女は右手の人差し指を私の背後に向ける。 その瞬間――そこにいた妖怪が唐突に爆発四散した。
「こうするけどね。」
「ダメだよ!」
アタシは少女の腕を強めに掴む。 何がいけないのかと、少女は首を傾げている。
「おかさんが、妖怪も人間も同じ生き物なんだから無暗に殺しちゃダメって言ってた! だからダメ!」
「――知らなかった。 今度からは気を付ける。」
「うんうん!」
「お詫びにいいとこ連れてってあげる。」
「いいとこ?」
「着いてからのお楽しみ。」
少女はアタシの手を引っ張りながら歩き始める。
「そういえば、名前は?」
「孫なのに聞いてないの? 私は坂本 雪。」
そういえば、前におかさんが言っていた気がする。 遠くからやってきたアタシのお姉ちゃんみたいな存在がいるって。 もしかして、この少女がそうなのだろうか?
「少しだけ――でも名前まで知らない。 あと、孫じゃなくて愛子って名前があるから。」
「愛子……ちゃんと覚えた。」
それが坂本 雪――雪姉ぇとのファーストコンタクトだった。
―――
――
―
「ついた。」
連れてこられたのは商店街通りだった。 母親と何度か足を運んだ事があるが、特に”いいとこ”という認識はない。
「あら、また来たのね。」
「いつもの宜しく。」
氷室惣菜店と看板が掲げられた店で店番をする女性に何かを注文する。 しばらくするとソフトクリームを両手に持って女性が中から戻ってきた。
「お友達連れなんて珍しいわね。」
「ただの腰巾着。」
「誰が腰巾着よ!!」
アタシの突っ込みを華麗にスルーし、受け取ったソフトクリームをアタシに押し付けてくる。
「お詫び。」
「あ、ありがと……」
惣菜屋で何故ソフトクリームなのか、という疑問はあったがその美味さにそんな疑問は消え去った。 アタシは完食し終えるまで夢中で貪り続けた。
「美味しい!」
「私のお気に入りなんだ。 支払いは後でおばちゃんがしてくれる。」
なんて恐ろしい子! というか自由にさせ過ぎでしょおかさん!
そんな考えも関係なく、雪はマイペースにソフトクリームを舐めている。 なんというか、そのギャップが可愛いなとも思う。
「あ、狼女だ!」
「化け物が何してんだよ!」
「あんたら!」
そんな私達の前に現れたのは例の二人組だった。 私と同じで手足に引っ掻き傷が生々しく残っている。
雪は最後のワッフルコーン部分を平らげると、指についたアイスを舐めとった。
「愛子、こいつらが言ってた奴ら?」
「こいつらだよ!」
二人組はこちらを見ながらニヤニヤと笑っていた。 おそらくは新しい玩具を見つけたような、そんな感じの心境なのだろう。
「なんだよ、狼女にも友達なんていたんだな。」
「ってかコイツお化けじゃね? 化け物と相性抜群だな!」
「――よく囀るガキだな。」
雪が指を鳴らすと、突然二人組が手に持っていたラムネのガラス瓶が砕け散る。 二人は小さな悲鳴を上げてその場に尻餅をついた。
雪は飛んできたビー玉2個をキャッチすると、二人の目の前で粉々に砕いてみせた。
「次はお前達の番だな。」
『うわぁぁぁぁ~!!』
振り返りもせずに一目散に逃げだす二人組……
「それでも男か、情けないな。」
「――カッコイイ。」
「ん?」
「雪姉さんて呼ばせて下さい!」
雪姉ぇに憧れたのはその時だ。 その圧倒的な存在感に私は惹かれたのだ。
――
―
「う~ん、今のご主人様と比べるとまるで別人ですね。」
「まぁそこはちょっち理由があってね……でも、根本的な所は変わってないっていうか。」
「――確かにそれは分かります。」
「お、流石菊梨っち! わかってんじゃん!」
「菊梨っち……?」
女子トークは大いに盛り上がり夜は更けていく。 ある意味、話の中心人物が爆睡していたのは幸せであったかもしれない。
「はぁ~、アタシもそろそろパトロール済ませて寝よっかな。」
「頑張り屋さんなのですね。」
「おかさんの代わりに、アタシがこの町の平和を守らないとね!」
「気を付けて下さいまし。」
「ありがとね! じゃ、明日は恐山に行くからさっき教えた場所に雪姉ぇと一緒に来てね!」
二人は別れを惜しむように手を振り合った。
菊梨は電気を消すと、静かに雪の布団の中へと潜り込んで頬に軽くキスをする。
「おやすみなさい、ご主人様。」
―――
――
―
「それがこの、狐狼神社ってわけ。」
「へぇ、そんな由来があったのね。」
長い説明が終わり、私はほっと胸をなでおろした。 話の半分も頭に入ってこなかったが、とにかく悲しい話だというのは理解出来た。
恐らくは昔おばちゃんに聞かされたであろう話だが、全く数ミリも覚えてはいない!
「ううっ、なんて悲しいお話なのでしょう……」
「ちょっと泣きすぎでしょ!? ハンカチいる?」
「ありがとうございます……チーン!」
菊梨は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。
――正直感化されすぎではと思う。 悪い奴に簡単に騙されそうだと不安になってくるな。
「というか、おかさんから何度も聞かされたっしょ?」
「ごめん、まったく思い出せない!」
「まぁ雪姉ぇらしいけど。」
「うっさい!」
「そうだ、さっきの話に余談があるんだよねぇ。」
「何よそれ?」
「亡くなった母狐のお腹の子供、生きてたらしくてね――取り出してみると人間の赤ん坊が出て来たらしいよ。」
「まじで……?」
「さぁ? 昔の話だから知らないよ。 なんでもその赤子が私達のご先祖様って言われてるらしい。
一族の霊力の強さもそれが由来だ~っておかさんも言ってた。」
「もし本当なら凄い話ね……」
「二匹の愛は継承されたという事ですね! なんという奇跡!」
「はいはい、貴女は少し落ち着きなさい。」
軽く頭を撫でてやると、私にがっちりとしがみついて泣き始めてしまった。
なんだか状況を悪くさせてしまった気分だ。
「じゃ、アタシは用事があるから後はごゆっくり~」
「ありがとね愛子。」
「明日アイス奢ってね~」
「仕方ない、どの道挨拶に行く予定だったしね。」
「やった!」
思わず愛子はガッツポーズをする。 そもそもアンタ、地元にいるんだからいつも食べてるんでしょうが!
そう言ってやりたい気持ちもあったが、大事な妹分を喜ばせるためならいいかと思った。
――引っ付いた菊梨を無理矢理引き剥がす。
「ほら、お参りするんでしょ?」
「しますぅ!」
二人仲良く手を繋ぎながら拝殿に向かって歩き出す。
「この神社はね、縁結びのご利益があるのよ。」
「しかも狼と狐、異種間の縁結びにうってつけですねご主人様!」
「ふふっ、確かにそうね……」
この二匹と同じように、私達が歩む道は険しいのかもしれない。
多くの障害が私達の道を阻むだろう……かつての友が立ちはだかる事もあるかもしれない。
それでも――私達は前に進むと決めたから。 この長く険しい道を、二人で……
「ご主人様!」
「なによ菊梨?」
「――愛しています。」
「ふふっ、私も――愛してる。」
二人だけの境内で、私達は唇を重ねた。
―次回予告―
「何、なんで二人共ニヤニヤしてるわけ?」
「だってねぇ?」
「ですよねぇ?」
「あぁもう気持ち悪いじゃない! 私にも教えなさいよ!」
「ほんと雪姉ぇって――」
「本当にご主人様って――」
『可愛いよねぇ。』
「あぁもう! なんかむかつく!」
「次回、第三十九話 VSターボばあさん! 紀野埠峠の死闘!」
「白い流星が峠を駆ける!」
「Dont miss it!」
「だから私にも教えなさいってば!」