「はーい皆さんこんにちは! 皆大好き、教えて、よーこ先生のお時間ですよ!」
「助手の愛子じゃん!」
「今回もテンションマックスでやっていきますよ!」
「今回のお題はこれじゃん!」
~ガイアついてもっと詳しく知りたい!~
「というわけで、今回は更に詳しくガイアについて説明していきますね!」
「まずガイアは、大きな5つの大陸に分かれています。 ユーラシア大陸、アメリカ大陸、アフリカ大陸、南極大陸、そして日本大陸ですね。」
「アタシらの舞台になってるのが日本大陸だね!」
「そうですね、ただ皆さんの知っている日本とは比較になりませんよ!
なんといっても皆さんの知っている日本の面積の20倍以上はありますからね。」
「うそっ、そんな小さいとこ住んでるわけ?」
「名前は同じでも別世界ですからね。
それぞれユーラシアとアメリカが帝都傘下、アフリカが京都傘下に入っています。」
「あれ、南極は?」
「あそこは氷しかありませんからね、一応京都の領土内って事になってますが。
昔登場したメイド喫茶の店長、エレーナさんはユーラシアの出身ですね。」
「へぇ~、世界って広い。」
「愛子ちゃんは授業でやってる内容ではないのですか?」
「……」
「皆さんも、勉強はしっかりやりましょうね! では、あでぃおす!」
「はぁ、今年ももうすぐ終わりか……」
「呑気にしていて大丈夫なのですか? 無期限でこっちにいられるわけではないのですよ?」
「分かってるって!」
あれから数日、次の試練のヒントは一向に見つからないでいた。 どんな泣き言を言っても現状が変わる事は無く、時間だけがむなしく過ぎていくだけだ。
「だって蔵から見つかったのはあのコトリバコだけだし、他に手紙も見つからないしさぁ。」
「神域に封印されたコトリバコは、あのまま蔵に寝かせておけば浄化出来ますが……確かに他に次に繋がるヒントはありませんでしたね。」
「でしょ? おばちゃんもさ、もっと分かりやすくしてくれればいいのに!」
「ご主人様は楽観的すぎるんです!」
気づけば明日は大晦日、時計も日付変更を知らせるような時間帯になっていた。 今日はもう寝てしまってもいいのではないかとさえ思える。
「あれ……?」
「どうなさいました?」
「愛子、こんな時間にどこに行くんだろ。」
最近はやけに敏感になってしまったと自分でも感じる。 特に意識したわけではないのだが、愛子の霊力が離れていくのを感じ取ったのだ。
「――そうですね、日課だと言っていた妖怪退治でしょうか?」
「私が帰ってから行くのは初めてじゃない? 最近ずっと一緒にいたし。」
折角だし、こっそりついていって様子を見るのも面白そうかもしれない。
そんな事を考えている私を横目に、菊梨は呆れたように肩を竦める。
「ご主人様、あまり趣味がいいとは言えませんよ。」
「妹分の成長を見守るのも姉貴の役目だと思わないかい?」
「いいえ、思いませんね。」
「やけにはっきり言うわね!?」
「これでも妹が一人いる身なもので。」
「菊梨に妹がいるとか初耳なんだけど。」
そんな他愛のない会話をしつつも、しっかりと出かける準備を進めていく。 菊梨もなんだかんだと文句は言っているが、本人もついてくる気のようだった。
「それはまぁ……まだ必要な時ではないかと。」
「何それ、私は会ってみたいけどな。」
「――街が一つ消えますよ。」
「何か言った?」
「なんでもありません!」
さーて、追跡開始といきますか!
―前回のあらすじ―
私の大活躍により、コトリバコは見事に神域へ封印された! これにはおばちゃんもきっと天国で驚いている事だろう。 私は確実に成長しているのだ、それも圧倒的なスピードで!!
しかし、しかしだよ諸君。 何故私は正統に評価されないのだ!? これだけ強くなったんだから菊梨も少しは褒めてくれてもいいのに!
「ここ、中学校か……」
「ご主人様はここに通われてたのですか?」
「――まぁね。」
愛子の後を追って辿り着いたのは、私も昔通っていた陸奥中学校だ。
正直な話、あまり良い思い出は無い。 クラスメイトからの嫌がらせや罵倒は日常茶飯事、私にとって味方はおばちゃんと愛子だけだった。
「中にいるのは確かのようですね。」
「うーん、おそらくは体育館だね――行ってみようか。」
私は軽々と校門の格子を飛び越える。 菊梨も私に続いて飛び越えた。
「あれ、いつから私人間辞めたんだ。」
「数々の修羅場を越えてご主人様を成長なされたという事ですね。」
「いやいや、普通人間にこんな跳躍力無いでしょ!?」
「愛子ちゃんもこれぐらい普通にやってましたが?」
「あれか、退魔士として覚醒すると脳を100%使えちゃう系の能力か。」
「もう、そういう事でいいのでは?」
「私は人間を辞めたぞー!!」
「騒いでいないで、さっさと行きましょうね。」
「分かってるわよ!」
全く、この駄狐はノリというものが分かってない! こういうのは夫婦の阿吽の呼吸というものが大事なのだよ。
「ご主人様、お顔が赤いですがどうしましたか?」
「ん、なんでもない!」
まさか、夫婦という用語で恥ずかしくなるとは……死んでも菊梨にはバレたくないぞ!
私は誤魔化すように早走りで体育館の方へと足を向ける。 後ろでクスクスと笑い声が聞こえてきたが聞かなかった事にする。
「体育館の入口は――開いてるわね。」
この時間なら鍵が掛かっているはずなのだが、引き戸は何の抵抗もなく少し力を入れただけで動いた。
引き戸形式というのが懐かしさを感じさせるが、私は気にせず中へと侵入する。 木造の体育館は、少し木の香りが漂っていた。
明かりは点いておらず、まず視界に入ったのは二つの影であった。 一つは発している霊力から愛子だというのはすぐに分かった。 しかし、問題はもう一つの影の方だ。
なんと言えばいいのだろうか? その影からは気配というものが全く感じられなかった。 本当にそこに存在しているのか疑わしい程希薄なのだが、得体の知れない圧力のようなものを感じる。
「せぇぇぇい!」
「……」
一瞬、強烈な妖気を発したかと思うと、愛子は体育館の端まで吹き飛ばされていた。
カラン、と乾いた音が体育館に響き渡る。 どうやら愛子が手にしていた竹刀が地面を転がったようだ。
「くっ……」
「その程度の力量では、未だ我の領域へは至らず。」
「愛子、大丈夫!?」
私は愛子の元に駆け寄り外傷を確認する――擦り傷や打撲等は見受けられるが、軽傷だ。 いや、軽傷で済むようにされていたと言うべきか。
「雪姉ぇ……なんでここに?」
「気になって後付けてたのよ。 それよりも――」
――月明りが体育館内を照らす。 その影の正体は軍服姿の男性だった。 その圧倒的な圧力に、私は呼吸出来ずに固まってしまう。
「今日は来客が多いな。」
「随分私の妹分を可愛がってくれたみたいだけど、貴方は何者?」
「雪姉ぇ……」
「愛子は黙ってて。」
男はニヤリと唇の端を吊り上げると、先程と同じように一気に妖力を爆発させる。
私は咄嗟に転がっていた竹刀を拾い上げ、男の一太刀を受け止めた。
「ご主人様!」
「ほぅ……」
「質問に答えなさいよ!」
私は男の刀を押し返して竹刀を構える。 再び男の纏っている妖気が静かになった。
「我はこの地に祀られていた。 しかし、我の許可無く人間達は塚を移動させてこの建物を作ったのだ。」
「何よそれ、体育館を立てる前にそんなものあったなんて聞いた事ないけど。」
「だって、おかさんが今まで神域に封印してたし。」
「術士が亡くなって封じが弱まってしまったのですね。」
身のこなしから、かなりの使い手だという事は容易に想像出来る。 しかし、今ここで引けば確実に殺られる気がした。
「つまり、こいつは倒せばいいってわけね。」
「ご主人様、それならば
「菊梨はそこで見てなさい! 成長してる私の実力を見せてあげる。」
根拠なんてどこにも無い、ただの強がりだ。 それでも、一人で勝たねばならないという感情が湧いて来たのだ。 それは強者を前にした高ぶりか、または最近の成長からくる慢心か……
「いいだろう、来い……」
「泣いて謝っても許さないから!」
私は床を蹴って男との距離を縮める。 半年前の自分が嘘のようにあり得ない速度の踏み込みを見せる。 それは明らかに人間の領域を超えた速度であった。
男も一瞬焦った表情を見せるが、すぐに刀を構え直して私の攻撃を受ける。 本来ならば刀相手に竹刀で殺陣なんて不可能だが、私の霊力を込める事によって霊剣と同じような状態を再現しているのだ。
「先程の小娘よりは良いぞ。」
「まだ余裕ってわけ? それじゃあ――」
――回転からの横薙ぎ、更に切り上げ、袈裟斬り。 相手に反撃の隙を与えないように連続攻撃を続ける。 流石に男もこれには防ぐしかないようだ。
「前から続けていた
霊剣を使えるようになってからというもの、毎晩1時間程稽古の時間が設けられていた。 普段はべったりの菊梨だが、なんというか――稽古の時は鬼と化すのだ。
かなりの辛い稽古だったが、その成果が今現れている。
「偉そうにしてたわりには守ってばかりね!」
「……」
「流石雪姉ぇ! これなら余裕じゃん!」
「いいえ、このままでは……」
休まず私は連撃を繰り出し続ける。 しかし、徐々に変化は現れていた。
「――ふん!」
「しまっ!?」
それは疲労だ。 疲れが徐々に私の動きを鈍らせていたのだ。
男はその鈍った動きに隙を見つけて打ち込んでくる――咄嗟に受けようとするが、意識が乱れた竹刀は柄から上が切り落とされてしまう。
「なかなか楽しめたが――ここまでだ。」
「ご主人様!」
「雪姉ぇ!」
まるでスローモーションのようにゆっくりと男の刀身が私に振り降りて来る。 恐らく菊梨と愛子が私の元に辿り着く頃には綺麗に真っ二つになっている事だろう。
”そっか、私死んじゃうのか……”
不思議と恐怖は無かった。 むしろ心地いいというか、頭の中がとてもクリアになった感じだ。 雑念も何も無く、死という一つの概念にだけ意識が集中している。
”ご主人様には、その境地に達してもらいますからね!”
あぁ、そうか――これが菊梨が言っていた……
「むっ!?」
「……」
私は、男の刀を白刃取りで受け止めていた。 この場にいる全員が固唾を飲み、呼吸する事を忘れていた。
「私の――勝ちね!」
そのまま霊力を込めて腕を捻る――バキン! という大きな音を立てて、刀を叩き折った。
「間違いありません、あれこそ明鏡止水の極意。」
「し、知ってるの菊梨っち!?」
「なんのわだかまりもなく、澄みきって静かな心の状態――その境地に至る事で全ての動きを見切る事が出来る。」
――何も恐怖を感じない。 ただ思うままに動けばいいだけ。
右手に
「見事、だ……」
男は倒れる事なく、そのまま光の粒子となって消滅していった。 どこかその表情は救われたような笑顔にも見えた。
―――
――
―
「これが二つ目の試練だったわけか。」
体育館の準備室には、先程の男を祀っていると思われる小さな神棚があった。 そこに置かれていたのは、私宛のあばちゃんからの手紙であった。
「さて、読むわね――」
”この手紙を見つけたという事は、一つの試練を乗り越える事が出来たようで嬉しい。
さて、この試練は順不同で用意したため、雪がいくつの試練を終えたか私には分からない。 しかし、 一番見つけやすいこの手紙に他2つの試練の場所を記しておこうと思う。
一つは家の蔵に封じている物、もう一つは恐山の禁足地にて隔離された者だ。
無事に試練を終え、私の部屋にある箱の鍵を手に入れる事を期待している。”
「はぁ、ここがスタートだったわけね。」
「まぁ、でもこれで次の試練の場所も分かったわけですし。 前向きに考えましょう!」
「そういう事にしときますか……じゃあ、帰ろっか!」
天国のおばちゃん、私は少しずつ真実に近づいています。
―次回予告―
「見えた! 水の一滴!」
「ご、ご主人様が金色に輝いてます!」
「ばぁぁぁぁくねつ!」
「おっと、それくらいにしときましょうご主人様。」
「ご、ごめん! ついロボットアニメとなると気合が入っちゃってね!」
「雪姉ぇ昔から好きだもんね。」
「愛! 勇気! 友情! 嫌いなわけがないじゃない!?」
「さてさて、次回! 第四十三話 はっぴーにゅーいやー!」
「ついに新年を迎えちゃうのね!」
「絶対見るっしょ!」