「皆、今日は私が代理役。」
「今回は、コレ。」
~霊銃(レイガン)ってどんな武器?~
「霊銃は帝京歴760年に正式採用された、対霊・妖用兵器。」
「私の霊力を弾丸にするから弾は必要ない。」
「デザイン元はベレッタ・モデル92、性能も同じくらい。」
「他にも、組織の兵器はいっぱいある。」
「また機会があれば教えてあげる。 あでぃおす。」
―前回のあらすじ―
強敵と書いてともと呼ぶ。 なーんって事はありませんが、仕方なく休戦となりました。
そ・れ・に、デートの約束も出来ましたしね! あぁもう楽しみでございます!
「諸君、状況はかなり厳しい。 7月のコミマまで残り3か月を切った。」
「そうですわねぇ。」
「なのにだ、この状況……」
「私と、鏡花ちゃんしかいませんわね。」
「雪達はどこいった!」
部屋の中に、鏡花の悲痛な叫びだけが響いていた。 それを眺めながら、葵は優雅に紅茶を飲んでいた。
―――
――
―
「今、羽間先輩の声が聞こえた気がした。」
新刊の締め切りが近いのに、遊園地になって遊びに来てるせいかな…… しかし、こうしなければ前回の件は収まりがつかなかった。
そうだ、必要な犠牲なのだ。 ――うん、新刊は間に合わせるから許してね先輩達。
「お待たせ。」
「おはよう留美子。」
あら珍しい、今日は私服なのね。 しかし短いスカートだなぁ、アレ下着見えちゃうんじゃないの。
「あまてるちゃんのエッチ///」
「いやいや、そういう勘違い起こす発言はやめよ!?」
「――ご主人様?」
あれれ、背後から死線を感じるなぁ、視線じゃないよこれ!
「ああー! さっさと中に入るわよ!」
「もうご主人様!」
逃げるが勝ちってね! 命がいくつあっても足りないわ。
―――
――
―
「ご主人様! どれに乗りますか!」
「うーん、どうしようかねぇ。」
メリーゴーランド、コーヒーカップ、なんて平和な乗り物ばかり。 やっぱり小さい地元の遊園地じゃこんなもんか。 もうちょい遠出すればよかったかなぁ。
「というか、あまてるちゃん。」
「なぁに?」
「なんでいつもと同じ格好。」
留美子が痛い所をついてくる。
だって仕方ないじゃない、普段の休日は引き籠りなんだからぁ! 大学行く用の服と、コスプレくらいしか家にはないのよ! あ、あと皆には内緒な趣味でのゴスロリ服も少々……
「それは聞かないで。」
「ふっ。」
「今鼻で笑ったでしょ!」
「大丈夫、そんな事で嫌いにならない。」
「なんかすごい傷つくんですけど。」
菊梨の買い物に付き合った時に何か服を買うべきだったか。 ――また菊梨の視線が痛い。
二人っきりで話すのは危険だ。
「あれ~、あの着ぐるみ何かなぁ!」
丁度視界に入った、ブサイクなクマの着ぐるみを指さす。 私の代わりに犠牲になってくれ!
「えぇ、可愛いですよあの子。」
「うん、可愛い。」
なんで私の意見が完全否定されてるんですかー! しかも何故かクマの着ぐるみはこちらに近づいてくる。 ブサイクというかなんというか――
目は左目がなく、右手は解れて綿が飛び出ている。 ってか、なんで綿が赤色に染まってるんですかねぇ?
「……」
なんだろう、普通じゃないよね。 二人も流石に真剣な雰囲気に変わっている。
「タノシンデネー!!」
頭に響いてくるような声――間違いなくこの世の者ではない。 そして臨戦態勢に入る二人。
こういう時は――
「よーし! 観覧車に乗ろうか!」
私は二人の手を引いて走り出す。 こんな場所で暴れ出したらどうなるか分からない。
――
―
「ふぅ……」
「あまてるちゃん、どうしたの?」
「ご主人様、顔が真っ青ですよ?」
「うん、なんか見ちゃいけないモノを見てしまってね。」
オフの時くらいそっとしておいてよぉ…… 私が何したっていうの! ――あぁ、確かに悪い事はしてたな、ごめんなさい先輩達!!
「その冗談、笑えない。」
「全くです。 だってここは――」
「ん、ここは?」
何故か沈黙する菊梨。 ナンデス、ナンデスカ。 押し黙ったら怖いじゃないですかぁ!
「――廃墟じゃないですか。」
「え?」
廃墟? ここが?
ちょっと待った、確かに私はここをネットで調べて、住所だってスマホのナビで確認して来たのに。
「ご主人様の趣向だと最初から思っていたのですが。」
「私もそう思ってた。」
「お二人さん、最初から分かってたの。」
同時に頷く二人。 知らなかったの、私だけかよぉ! これが人のする事かー! ――まぁ狐と人でなしですけどね。
観覧車の窓から外を眺める。 案の定、人じゃないモノが蠢いていた。 うーん、これ観覧車に乗ったままで大丈夫かなぁ。
「あまてるちゃん、ここやばいかも。」
「ですよね。 もしかして落ちちゃうとか? アハハ……」
「はい、落ちますね。」
留美子は観覧車の扉を蹴飛ばして霊銃を構える。 あの、下ですごい音しませんでしたか?
「ご主人様、私の背中に!」
「ずるい、でも今は我慢する。 代わりに突破口は私が開く。」
なんて頼もしい二人なんでしょうか。
私は菊梨の背中におんぶされる形でしがみついた。
「神様仏様お狐様、お守り下さい。」
「いきます!」
二人同時に観覧車から飛び出す。 わぁ、お空を飛んでるみたいぃぃ――!! さながら天然のジェットコースター! 問題は、私がジェットコースター苦手だという事だ。 ――このまま意識失うのもありかな?
ごめんよ、私には無理でした、ほんとにごめんよ…… 私は抵抗する事なく意識を手放した。
―――
――
―
「――知らない天井だ。」
なんて事はなく、自室のベッドで目が覚めた。
「ご主人様! 心配しましたよ!」
「ごめんごめん、ちょっと気持ち悪くなっちゃって。」
「えぇえぇ、あの後盛大にリバースしてましたとも。」
「うそん。」
いやだ、ゲロインなんて汚名は……
「というのは冗談です。」
「あはは、ですよね。 そういえば留美子は?」
「私達二人の愛の巣に入れるとお思いですか?」
菊梨さん、顔が怖いですよ。 その笑顔は狂気が含まれてますから。
「そこはノーコメントで……
でもごめんね、せっかく楽しませてあげようと思ったのに。」
「いえ、
楽しかったのか。 なんというか、それなら良かったのかな?
「でも、一つだけ不満な事があるのです。」
「何ですかな?」
「ご主人様、目を瞑って下さい。」
「んー?」
よく分からないが言われたままに目を瞑る。 待て、こういう流れってアレじゃないの? ほら、リア充がよくやるやつ、えっと――
思考している間に、その行為は実行されていた。 唇に柔らかい感触、それが菊梨の唇だと理解するのにさほど時間はかからなかった。 抵抗する間もなく、固く閉じた唇は開かれて菊梨の舌が口内に――
「すとっぷ、すとーっぷ!」
「あん、いけずぅ。」
私は正気に戻り、慌てて菊梨と距離を取った。 今のはほんと、マジで危なかった。
「あんたは何やってるの!」
「接吻ですよ。 デートには付き物ですよ?」
「それはそうだけど、いやだって私達は女同士だから、だからこういうのは良くないと!」
明らかに挙動不審で言葉を上手く紡げない。 だってこんな、私の、私の……!
「夫婦なのですから当然ですよ。 愛の前に性別なんて壁にもなりません。」
「だからもう!! 私のファーストキスを返してぇ!!」
―田舎のおばちゃん、今日も私は元気です―
―次回予告―
「ご主人様のファーストキス頂きました! やったぜ。」
「菊梨、貴女キャラ変わってない?」
「あら嫌ですよ、そんな事ありませんよ?」
「狐、まじ怖い。」
「でもご主人様、次回出てくる妖怪の方がもっと怖いですよ?」
「えっ、次は妖怪が出てくるわけ?」
「はい、とっても怖いやつが!」
「もう勘弁してよぉ。」
「第五話 スカート捲り妖怪かまいたちの恐怖!」
「どういう事なの……」
「次回もお楽しみに!」
「ハッキシ言って、面白カッコいいぜ!」