ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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教えて、よーこ先生!


「はーい皆さんこんにちは! 皆大好き、教えて、よーこ先生のお時間ですよ!」

「センセー! 4章ラストなのにアタシの出番がここしかないんですけど!」

「う~ん、そればっかりはどうしようもないですね。 ここで出来るだけアピールしておくのです。」

「アタシは必ず戻ってくるからねー! 皆、忘れないでよ!」

「ではでは、今回のお題は……」


~結婚するのに性別が関係ないって本当?~


「皆の世界では違うわけ?」

「同性婚はほぼ認められていないそうですよ。」

「ウッソー! ありえないし!」

「まぁ、価値観は人それぞれ世界それぞれって事なのでしょうね。」

「流石に遅れすぎっしょ、今時。」

「いつかは皆さんの世界でも同性婚が当たり前になる時代が来るかもしれませんね。」

「アタシはそんな世界行きたくなーい!」

「はーい、愛子ちゃんどうどう……そんなわけで物語も佳境ですが、このコーナーはいつものテンションで続けていきますので安心して下さいね。」

「アタシの出番はー?」

「恐らくもう無いかと。」

「いやぁぁぁぁ!!」

「では皆さん、あでぃおす!」


第四十八話 明かされた真実、動き出す運命

「覚悟は――宜しいですね?」

 

「もちろんよ。」

 

 

 私と菊梨は、おばちゃんの部屋にやって来ていた。 その理由は一つ――最後のピースを開くためだ。

 氷室さんから預かったこの鍵が、その扉を開けてくれる。

 机の目の前に置かれている小物入れ、これこそが鍵の使用先なのは間違いなかった。

 

 

「菊梨、私の記憶が完全に戻ったら話があるんだ。」

 

「えぇ、お待ちしております。」

 

 

 私は覚悟を決めて、小さな鍵を鍵穴へと差し込んだ。 ――ガチャリと鍵の開く音がする。 恐る恐る蓋を開くと、そこにはいつもと同じ封筒が収められていた。

 私はその封筒を手に取って中身の手紙を取り出した。 きっとこれが、最後の手紙だろう……

 

 

”よくぞここまで辿り着いた、お前はついに真実を知る権利を得たのだ。

 しかし最後に問いたい、ここで引き返す気はないか? 今ならまだ引き返せるぞ。”

 

 

 引き返す……か。

 その選択肢はいつもちらついていた。 何も知らずに平穏に日々を送るのが一番ではないかと……

 

 

「でも、私は――前に進むって決めたから。」

 

 

 だから私は振り返らない、自身の過去と対面する。 覚悟は既に――出来ている。

 

 

”それでも真実を求めるというならば、私はこれ以上止めない。

 このまま手紙を読み進めれば、お前にかけてある記憶の封印が解かれるようになっている。

 だからこれだけは最後に言わせて欲しい、お前の過去に何があっても私は義母なのだと。

 それだけは信じて欲しい……”

 

 

「……っ!?」

 

 

 突如として襲ってくる頭痛、それは決壊したダムから水が押し寄せてくるのと同じで、私の過去の記憶が一気に流れ込んできているのだろう。

 瞼の裏が痛みに合わせてチカチカする、最早座っている事すら困難な状態にあった。

 

 

「ご主人様!?」

 

 

 意識が飛ぶ直前、菊梨の声を聞いたような気がした……

 

 

―前回のあらすじ―

 氷室さんと共に旅行に出かけた私達だったが、そこで再び問題が発生する。 上級コースを堪能していた私と氷室さんは、急な吹雪で取り残されてしまったのだ。

 そこからはもう大変で……氷室さんに急に迫られるし、菊梨と氷室さんがバトり始めるしでやばすぎ!

 結局は全ておばちゃんの計画通りで、もう何なのよって感じ! でもこれで最後の鍵は手に入った。

 後は……

 

 

 

 

 

「さようなら祖父上、神になるのは私一人だけだ。」

 

 

 男が私の横で笑っている。 高らかに、誰かに誇るように、まるで狂気に憑りつかれたかのように……

 

 

「ふふっ、ふふふ!! やはり私の研究は間違ってはいなかった! あとは最後の段階に……」

 

 

 そう、この男は安倍晴明。 この飛行機事故を企て、神を生み出そうとする傲慢な男。

 飛行機は黒煙を上げながら地面へと落ちていく。 あれは私がやった、この男の命令通りに。

 

 

「さて、そろそろ帰ろうか。」

 

「……」

 

 

 そう、この時私は初めて疑問を持ったのだ。 多くの命を奪った自覚とその意味を――

 

 

――

 

 

 

 ”私達”はとある研究所で生まれた。 それは晴明の考案した計画を成就するための研究、神を生み出すための場所だ。

 私達はデザイナーベイビーと呼ばれる存在、神の血を使い生み出された存在だ。

 

 流れ込んできた記憶は忠実にその情景を再現する、それはまるでタイムスリップしたかのような錯覚を私に起こさせた。

 辺りは真っ白い小奇麗な壁ばかり、他には何もない。 まるで生活感を感じない閉鎖的な場所、だからこそ研究所なのだろうが。

 こんな場所で生活していたなんて考えると頭が痛くなってくる。

 

 

「帰ってきたようね。」

 

「何か用か?」

 

 

 声に反応して過去の私が振り向く――見覚えのあるピンク髪、そこにいたのは染野 艷千香だった。

 そうか、彼女もまたデザイナーベイビーの一人だったのだ。

 

 

「決まってるでしょ! リベンジよ! 今度こそ私が勝つわ!」

 

「――下らない。」

 

 

 この研究所では実力が全てだ、以前にコイツと私の模擬戦形式の試験があったのだが、死ぬ手前まで痛めつけた。 どうやらそれを根に持っているらしい。

 怪我の跡が見られないのは、おそらくは”スペア”と交換したのだろう。

 

 

「人形女のくせに言う事聞かない気!?」

 

「――今はそんな気分じゃないんだ。」

 

「何よそれ、アンタどこかで頭でもぶつけたんじゃない?」

 

 

 人形女、どうやらそれが昔の私のイメージらしい。 確かに今とは違って感情をあまり表に出さない感じはするが、なんというか――もっと別な理由があったような。

 

 

「他の奴らに構ってもらえ、私は今一人になりたいんだ。」

 

「ふん! 勝手にすれば!」

 

 

 一人になって、何を考えるというのだろうか? そんな事を私はした事がない。 ただ言う事を聞いて、その通りの事をしていればいい。 それだけで良かったはずだ。

 なのに私は、あの飛行機を落とした時に言いようの無い不快感を感じた。 襲ってくる吐き気を無理矢理抑え込んだが、あんな経験は初めてだった。

 

 

”なんじゃ、さっきからギャーギャーと喚いておる奴は。”

 

「なんだ、声が……誰かいるのか?」

 

 

 その声は突然頭の中に響いて来た。 辺りには誰もいないし、先程の艷千香も既に姿を消していた。

 この真っ白な空間にいるのは、確かに昔の私だけだった。

 

 

”ほう、妾の声を聴きとれるのか――お主が初めてじゃのう。”

 

「誰だと聞いている。」

 

”そう敵意を向けるな。 妾は玉藻、ここに囚われている者同士仲良くしようぞ。”

 

 

 気の抜けた感じで声の主はそう言った。 正確には頭に直接聞こえた。 どんな原理かは知らないが、テレパシー的なものが使えるのだろう。 そのような能力を持つ者も、玉藻という名の者にも覚えがないが。

 

 

”悩みがあるのじゃろ? 相談に乗ろうか?”

 

「――必要ない。」

 

”不愛想じゃのう、もう少し愛想よく出来んのか?”

 

「そんな事に意味があるのか?」

 

”当然じゃろ! 世の中を渡っていくには必要な事じゃ! ――すまない、外を知らないんじゃったな。”

 

 

 外……か。 そういえば、今まで気にした事もなかったな。 外の世界、自由な世界――そこには何があるのだろうか。

 私達には絶対に得られないもの、だから考えた事も夢見た事もない。

 

 

「外の世界とは、どんな場所なんだ?」

 

”そうじゃの~ 毎日が楽しくて、誰にも束縛されず……何より飯が美味い!”

 

「……」

 

”どうじゃ? 興味が湧いてこないか?”

 

「――少し。」

 

”ふふ、良いぞ。 やっとらしさが出てきたのう。”

 

 

 不思議と、その声には親近感が湧いた。 なんと言うか、菊梨と一緒にいる時に感じる温かさに似ている気がする。

 

 

”あいつへの嫌がらせにもなるじゃろうし、妾がなんとかしてみせよう。 まぁ、それまでに気持ちを固めておくが良い。”

 

「あぁ。」

 

 

―――

 

――

 

 

 

 それから少しだけ時間が立った。 私に出来た小さな亀裂は、徐々にその思考を蝕んでいった。 まるで私が私ではなくなっていくような、そんな感覚だった。

 私は壊れてしまったのだろうか? 私はもう、以前の私ではない……

 

 玉藻との会話はあの日からずっと続いていた。 彼女はひたすらに外の世界についてを熱く語り続けた。

 まるで私に、外の世界への興味を持ってほしいかのように。

 

 

”どうじゃ、そろそろ決心はついたか?”

 

「どんな答えでも連れ出すつもりなんだろう?」

 

”分かっておるなら話が早いのう。”

 

 

 やはりこちらの意見を最初から聞くつもりはないようだ。 恐ろしい程に強引な人である。 いや、相手は本当に人間なのかさえ怪しい所だ。

 

 

”根回しは終わらせておるよ――ただその前に、お主にやってもらう事がある。”

 

「やってもらいたい事?」

 

”なぁに、この研究所を吹き飛ばすんじゃよ。”

 

「――中々大胆な事を頼むんだな。」

 

”ここはあってはならぬ場所、跡形も無く吹き飛ばすのがよかろう。”

 

「成程、つまり一緒に逃げ出すという計画なわけだ。」

 

”何を言っておるんじゃ? 妾ごとに決まっておろう!”

 

 

 コイツ、今さらりと恐ろし事言わなかった!? いやいや、そんな楽しげに自分の事吹き飛ばせなんて言う人なんかいないでしょ! この人おかしいでしょ!

 ついつい自分の記憶に突っ込みを入れてしまった。 それ程までに、この会話相手は異質なのだ。 人間の常識が全く通用しないレベルである。

 

 

”兎に角じゃ! ロックは解除してあるから、妾の誘導通り進むのじゃ。”

 

「全く……」

 

 

 彼女が言った通り、部屋の扉が静かに開かれた。 普段は研究員が入ってくるまで絶対に開かない扉が、まるで外へと誘うように淡い光を放っている。

 私は躊躇なく扉を潜って廊下へと躍り出る――何故か人の気配がない、進むなら今だろう。

 声の導くままに真っ白な廊下を駆けて行く。 度々現れる扉は私を阻む事なく道を開けていく。

 

 

”よし、右の大きな扉に入るのじゃ。”

 

「分かった。」

 

 

 私の身長の3倍もあるように見える大きな扉を潜って、部屋の中へと入る。 その部屋も他と同じように、真っ白な広い空間が広がっていた。

 違う箇所があるとすれば、いくつものガラスケースが綺麗に並べてある事だった。 それぞれのガラスケースはオレンジ色の液体に満たされており、それはさながら水槽のようだった。

 手前にあるガラスケースに近づくと、プレートのような物が張り付けられている事に気づいた。

 

”染野 雅”

 

プレートには名前が書かれていた。 オレンジ色の液体に目を凝らしてみると、何かが蠢いているのに気づいた。

 水槽のようなガラスケース中に浮かんでいたもの――それは人の臓器だった。 しかもそれは鼓動し、生きている事を自己主張している。

 

 

"神を作るための生贄じゃよ"

 

 

 神を生み出すための器、つまりは退魔士の女性を使った生きた機械なのだ。 そう説明する声は怒りと悲しみを孕んでいた。

 

 

”そうやって生み出された子供がお前達じゃ。 三つ左隣の装置を見てみよ?”

 

「……」

 

 

 ――ドクンドクンと鼓動が早まるのを感じる。 もう気づいていた、私もここで生まれたのならあるはずなのだ――ソレが。

 

 

”大西 恵”

 

 

 プレートにはそう刻まれていた。

 

 

 過去を見ているだけだというのに、胃液がせり上がってくる感覚に襲われる。 しかし、過去の私は微動だにしない、怒りも悲しみも感じられない。

 

 

”どうじゃ、初めて母親に会った気分は?”

 

「何も感じない。」

 

”じゃろうな……お主は失敗作じゃからの。 その力を引き出す事に成功したが、デメリットして力を行使する度に感情を失う。 最終的に訪れるのは――死じゃ。”

 

「初めて知った。」

 

”晴明の奴も気づいておらんからのぅ。 お主が成功作だと思い込んでおる、だからこそお主がこの施設を破壊して他の子供達を皆殺しにすれば全て解決するのじゃ。”

 

「晴明の目的は達せられない、そういう事か?」

 

”その通りじゃ――そして、お膳立ては全て出来てある。”

 

 

 奥に続く小さな扉が開かれる。 その先にはよく分からない機械の柱がいくつも並べてあった。

 

 

”どうしても起爆するのに外部からの操作が必要でな、それがお主の仕事じゃ。”

 

「……」

 

”他の同じ境遇の子供や親を皆殺しにし、自分の親すら手にかける――酷な事じゃが必要な事なのじゃ。”

 

「別に、私は何も辛くも悲しくも無い。」

 

”今は――のう? いつかお主は痛みも悲しみを知る事が出来るようになる。 そして、今日という日を思い出す事になるのじゃ。”

 

 

 それはまるで予言のように、私の胸に深く染み込んでいった。 実際、”今”の私がその言葉を聞く事を彼女は知っていたのだろうか?

 部屋の奥へと進み、よく分からない計器に繋がれたキーボードを操作する。 モニターには最終確認の警告画面が表示された。

 

 

”さぁ、自由への片道切符は目の前じゃ。”

 

「――本当にいいんだな?」

 

”無論じゃ。 これが最善の道じゃからの。”

 

 

 その声からは恐怖は感じない、むしろ解放される喜びが感じ取れるくらいだ。 彼女もまた、晴明の犠牲者なのだろう。 逃れられない運命(さだめ)から脱するための選択――なのだと。

 だからこそ、私はゆっくりと緊急用の自爆ボタンを押す。 全てを終わらせるため、私が罪を――背負う。

 

 大きな爆発音と共に研究所は燃え上がる。 研究者も、子供達も、ガラスケースの人間だった者達も――何もかも平等に焼き尽くす。 それは公平は神の裁き、奢れる人間への天罰なのかもしれない。

 泣き叫ぶ声が聞こえる、家族の名を呼ぶ者がいる、呪詛を吐き出す者がいる、まさにここは地獄だ。 地獄を再現したかのような混沌(カオス)だ。

 

 そんな風景を、一人脱出した私は眺めていた。 胸に刻むように、じっと幼い瞳で見つめながら……

 

 

「君が、大西 雪ちゃんかい?」

 

「――誰だ?」

 

 

 声を掛けて来た女性からは、敵意を感じなかった。 きっと彼女が言っていた準備の最終工程、私の迎えなのだろう。

 

 

「そうか、君が恵の娘か……」

 

 

 その女性は涙を流しながら私を抱きしめた。 もう大丈夫だ、何も怖い事はない。 そう何度も囁きながら私の頭を撫でる。 それはよく分からない行為だったが、少しだけ妙に温かい気持ちになった。

 そうだ、これが坂本 妙との初めての出会いだったのだ。 そして私は、そのままおばちゃんの養子になって青森に行く事に――

 

 あの日で、全てに決着がついたと思っていたんだ。

 

 

”愚かな事だよ、私のもう一つの計画に気づかないなんてね。”

 

 

 意識が現代に引き戻される最中、誰かの声が聞こえてくる。

 

 

”二つの神の血を混ぜ合わせた真なる神子、お前こそが新たな時代の神となるのだ。”

 

 

 そうだ、何も終わってはいない。 あの日全てに決着がついたのなら、何故艷千香は生きていた? 何故晴明は研究を続けている?

 

 

”さあ、早く目を覚ましてくれ可愛い我が子――優希よ。”

 

 

「あまてるちゃん。」

 

「貴女は――誰?」

 

 

 記憶が折り重なる空間、見知らぬ少女がそこに立っていた。 美しい銀色の髪は、何故か懐かしさを感じさせた。

 

 

「貴女は全てを知った、もう立ち向かわなくてはならない。」

 

「晴明と決着をつけなきゃなね。」

 

「私も、いつまであまてるちゃんの力を抑えられるか分からない。 限界を越えれば、その力は再びあまてるちゃんの心と身体を蝕んでいく。」

 

「最後には廃人か……今までは貴女が抑えていてくれたんだ。」

 

「だって、守るって――決めたから。」

 

 

 何故思い出せない、私はこの娘を知っているはずだ。 あんなにもずっと一緒にいて、共に時間を過ごしたというのに……

 彼女の、彼女の名は――

 

 

「る……み……こ……?」

 

 

 名を聞いた少女は――静かに微笑んだ。

 

 

―――

 

――

 

 

 

「楽しかったですわね。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

 二人の女性――鏡花と葵は新幹線の中で景色を堪能しながら帝都への帰路についていた。 雪達と一緒に帰る予定だったが、葵にどうしても外せない用事が出来てしまったのだ。

 

 

「また遊びに来たいですわねぇ。」

 

「……」

 

「鏡花ちゃん?」

 

 

 鏡花はいつも以上に神妙な面持ちだった。 いつもとは違う親友の表情に、葵は少しだけ胸を高鳴らせる。 そしてそれは、彼女の心をほんの少しだけ後押しした。

 

 

「ねぇ鏡花ちゃん、ちょっとだけ聞いて欲しいのです。」

 

「――どうした?」

 

「私――ずっと言いたかった事がありますの。」

 

 

 葵は覚悟を決め、大きく息を吐き出してから言葉を紡ぐ。

 

 

「私、大学を卒業後に結婚を考えていますの。」

 

「――それは初耳だな。 一体相手は誰なんだい?」

 

「……です。」

 

「ん?」

 

「貴女です!」

 

 

 それは彼女の精一杯の勇気、ずっと秘めてきた思いの放出。 付き合っていたとはいえ、鏡花が結婚まで考えていたかは分からない、それでも葵は――彼女と結ばれたいと思っていたのだ。

 

 

「ふふっ――そうか! 私とか!」

 

「鏡花ちゃん?」

 

「あはは! いや、とても嬉しいんだよ、君がそこまで私を思っていてくれたなんてね。」

 

「それじゃあ!」

 

「勿論さ、私に拒む理由なんてない。」

 

 

 そう、鏡花に拒む理由はなかった。 それは彼女にとって、想像以上に”嬉しい誤算”だったのだから。

 

 

「ちなみに、その話はもう親には?」

 

「えぇ、あとは鏡花ちゃんの答え次第ですわ。」

 

「そうか、ならば話は早そうだ。」

 

「――え?」

 

 

 鏡花は立ち上がると、懐から”ソレ”を取り出して葵へと突きつけた。 それは人を傷つけるための兵器――拳銃だ。

 

 

「嬉しい、私も君が愛おしいよ葵。」

 

「きょうか……ちゃん?」

 

「君にも手伝ってもらうよ――私の復讐をね!」

 

 

 その引き金は、ゆっくりと絞られて――銃声を響かせた。




―次回予告―

「私は記憶を取り戻し、その運命の歯車は確実に加速した。 私達は晴明の野望を止められるのか、そして世界の命運はいったい!?」

「そ・の・ま・え・に、帰ったら大掃除が待っておりますよ。」

「そうだった、ずっと青森にいたもんね。」

「次回からは再び舞台は帝都に、悪の野望を打ち砕く私達のお話が始まりますのでお楽しみに!」

「次回、第四十九話 雪ちゃんの凱旋 にスイッチオン!」

「楽しみにしていて下さいまし!」

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