ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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教えて、よーこ先生!

「はーい皆さん、こんこんわ! 教えて、よーこ先生の時間ですよ!」

「さて、今日のお題はこれです!」


~帝京戦争ってなぁに?~


「帝京戦争っていうのは、800年前にあった帝都と京都の全面戦争の事です!」

「この戦いはなんと15年も続いたそうですよ! 勝った方がガイアの支配権を手に入れられるわけですし、必死だったんでしょうね。」

「結局お互いに疲弊して決着はつかずに泥沼化していたんですけど、そこに和平を結ぶ救世主様が現れたわけです!」

「これは次回説明しますね! では皆さん、あでぃおす!」


第六話 ついに覚醒! これが私の霊剣だ!

―前回のあらすじ―

 突如秋奈町を襲った妖怪、かまいたち! 町の女性のスカートを守るため、かまいたちの野望を砕くために私と菊梨は戦い――勝利した! 更にはかまいたちの罪を許す懐の広さも見せつけて主人公としての格を見せつける私であった。

 でもこれ、バトル物じゃないからね!

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった。」

 

 

 それは1時間前に遡る。

 

 

「いいですか、これからの事を考えるならばご主人様を鍛える必要があるのです。」

 

「修行イベントですかね、そういうのいる?」

 

「必要です! ご主人様のためです!」

 

 

 凄い剣幕で迫ってくる菊梨。 その隣で留美子も何度も頷く。 何故彼女まで私の家に来ているのか不可解なのですが。

 

「あまてるちゃんは、色々引き寄せるから、護身のため。」

 

「そうです! いつでも(わたくし)達が守れるわけではないんですからね。」

 

 

 この二人が一緒にいない状況……? そんな状況を想像してみるが、全くビジョンが浮かんでこない。むしろ絶対ないと言い切れる。

 

 

「ご主人様、今ありえないとか考えませんでした?」

 

「そ、そんな事ないわよ! うんうん、絶対ない!」

 

 

 怪しむように睨まれる。 疑い深い狐さんですなぁ、アハハ。 鋭すぎてこえーわもう!

 

 

「ではそろそろ始めましょうか。」

 

「アレ?」

 

「そうです、アレの修行です。」

 

「あの、アレって言われても分からないんですけど。」

 

「”霊剣”です!」

 

 

――

 

 

 

 から1時間経過しました。 何故か座禅を組まされて瞑想タイムですよ。 これで眠れる力が目覚めるんですかね。

 

 

「集中力が途切れてますよ!」

 

「ご、ごめん!」

 

 

 再び瞑想に集中する。 暗闇と静寂が全てを支配していき、外界から自分がシャットアウトされた錯覚に陥る。 何もない、自分もない、無だけが存在する場所。 ここから光を探せと菊梨は言っていたが、どうしろと言うのだろうか……

 

 まずは感覚を広げてみようか?

 

 辺りを見渡すかのように意識を広げてみる。 やはりどこまでも先は闇しかない、光なんてものはどこにも存在していない。

 やり方が間違っているのだろうか? それとも何か――

 

 ――突然鈴の音が聞こえた。 その音の発生源を探そうとするが、まるで乱反射しているかのように四方から聞こえてくる。

 

 

『だめよ。』

 

 

 今度は声だ。 鈴の音と一緒に人の声がする!

 

 

『貴女は――のよ。』

 

 

 何故だろう、とても懐かしいような、それでいて胸を締め付けられるような感覚。 でも私の記憶には無い声だ。

 

 

『――なんだから大丈夫。』

 

「あなたは、誰?」

 

『菊梨が待っているわ。』

 

「えっ?」

 

 

 急に意識が引っ張られる。 目の前に一瞬人影が見える。 私はその人物に手を伸ばすが――届かない。 瞬間、その人影が微笑んだような気がした。

 

 

「あっ……」

 

 

 ――光だ。 なんだ、こんな近くにあったんじゃん。

 その光に気づいたのは、私が手を伸ばした時だ。 自分の腕が光っているのが確かに見えたのだ。 まるで腕全体を覆うように、光の膜が見えたのだ。

 

 

「ご主人様!」

 

「えっ?」

 

 

 急に現実に戻された。 目を開くと、互いの息が当たるくらいの距離まで菊梨の顔が迫ったいた。 それに割り込むように留美子も顔を近づけていたけど。

 

 

「少々深く入り過ぎていましたので心配しましたよ。」

 

「それどういう意味?」

 

「深層意識的なの。」

 

「な、なるほど。 そうだ菊梨、光が見えたよ!」

 

 

 私は二人から少し距離を置いて右手を掲げる。 目には見えないが、あの光の膜が覆っている感覚は確かにある。

 

 

「流石ですご主人様! では、その光を手のひらに収束させてみてください。」

 

「集めろって? うーん、こんな感じかな……」

 

 

 手に平に、集めて――思ったようにうまく集められないな。

 

 

「全身から、ゆっくりと集める。」

 

「――うん。」

 

 

 時間はかかるけど、少しずつ集まってきているのが分かる。 これが私の霊力ってやつなのかな?

 集められた光は、ついに手のひらで発光を始めた。 それだけ強い力が集まっているという事だろうか。

 

 

「そのくらいで充分ですね。 それを手のひらから放出してください!」

 

「よし――おんどりゃぁぁぁ!」

 

 

 力を一気に解放させる。 手のひらがピリピリと痛みを感じる。

 

 

「見よ! これが私の霊け……ん?」

 

「……」

 

「……」

 

 

 三人同時に沈黙した。 確かに出たには出た。 そう、霊剣は出たのだ! だがどうだ? この剣はおそらく何も切り裂く事は出来ない。 絶対に無理だ、そう断言出来る。

 

 

「あのさ、こういう失敗とかありえるんですか先生方?」

 

『絶対無い。』

 

 

 二人は声を揃えてそう答えた、絶対に無いと……

 

 

「じゃあこれはなんなのよ!」

 

 

 私の手に握られた霊剣は、ハリセンの形をしていたのだ。

 

 

―――

 

――

 

 

 

 結局、あれから何度試しても出てくるのはハリセンだった。 これは前例にない事だそうで、本来ならば放出された霊力は自動的に剣の形になるらしい。 だからこそ直し方も分からないわけでどうしようもないそうだ。

 

 

「一応これ、霊剣としては機能してるのよね?」

 

「そのはずです。 妖怪や霊体にダメージを与えられるはずですよ。」

 

 

 なるほど、目の前に丁度いい試し斬り相手もいるわけだし。

 

 

「チェストぉぉぉおお!」

 

 

 私は思いっきり菊梨目掛けて霊剣(ハリセン)を振り下ろした。 最強の妖怪ならこの程度で死んだりはしないでしょ!

 ハリセンアタックが炸裂したと同時に綺麗な音が響いた。 なんだろう、凄い快感!

 

 

「ご主人様何するんですか!」

 

 

 菊梨は涙めになりながら叩かれた頭を擦っている。 やはりだ、何か沸き上がる感情がある。 間違いないこれな――

 

 

「切り捨てごめぇぇぇ!」

 

「ひぃ!」

 

 

 きもちぃぃい!

 

 勇者はSに目覚めた! なんていうテロップが出てきそうだ。 菊梨の表情が、正直言うと凄いそそるんですよ! いやぁ知らなかったなぁ。

 

 

「ざまぁ。」

 

 

 留美子がその光景を見ながら毒を吐いた。 協力しているようで、やはりは敵同士と言った所か、彼女にとっては望ましい光景のようだ。 まぁ、私には関係ない事だけどね!

 

 追加で2発程叩いたあと、この霊剣(ハリセン)に感謝した。

 ありがとう、これで私も戦えるよ! ナニと戦うかは知らないけどね! とりあえず目の前にいる狐へと対抗手段として非常に重宝しそうだ。

 

 

「そうだ、結局あの人影ってなんだったんだろ。」

 

「何か見た?」

 

「そうなのよ。 瞑想の最中にね、鈴の音と声がして――」

 

「――ご主人様。」

 

 

 背筋にゾクりと悪寒を感じる。 菊梨はこんな冷たい視線を飛ばすような狐だっただろうか? とても冷ややかで、今にも人を殺しそうな程の殺気を放って――

 流石の留美子も菊梨の豹変に霊銃(レイガン)を抜いていた。

 

 

「その人影、何か言っていましたか?」

 

「あ、あの――菊梨さん?」

 

「言っていましたか?」

 

 

 違う、いつもの菊梨じゃない。 多分私達は殺される、そんな予感を感じさせた。

 

 

「わ、分からないわよ! 何言ってたか聞き取れなかったし――そうだ! ”菊梨が待っているわ。”とか言ってた!!」

 

(わたくし)が、待っている……?」

 

 

 唇の上に人差し指を置いて何か物思いにふけ始めた。 徐々に殺気が霧散して、いつのも菊梨の感じに戻っていく。

 

 

「まさか、でもそんな事……」

 

「菊梨?」

 

「いえ、なんでもないんです。」

 

 

 確かにいつもの菊梨に戻ってはいたが、その表情はとても悲しそうだった。

 それにしても今のは一体、なんだったのだろうか?

 

 菊梨はまだ、私に隠し事をしている。 そんな疑問を感じさせた一面だった。

 

 

―田舎のおばちゃん、今日も私は元気です―




―次回予告―

「ついに始まった締め切りとの戦い。 最早私に自由など無く、戦場を戦い抜くしか生きる術はない。」

「などと申しておりますが、自由人のご主人様を止められる物は誰もいねぇです!」

「書き上げた原稿は、哀れにも先輩に破り捨てられてしまうのだった。」

「インクこぼして真っ黒、捨てるのは当たり前。」

「と、ともかく! 私はこの戦場を生き抜かねばならないのよ!」

「ご主人様、何やらお客様がきたようですよ。」

「え?」

「第七話 燃えよロボ魂(こん)、その闘志を燃やせ! に、カームヒア!」

「あんた、誰よ?」

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