ふぉっくすらいふ!   作:空野 流星

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エピローグ NEXT FUTURE

 ――それは、長い長い誓いのキスだった。今までの道程が瞼の裏に浮かぶ――私が経験してきた事、私じゃない私が経験してきた事、これから起こりうる事。多くの思いが交錯し、私は今この場所に立っている。

 教会の鐘の音がカンカンとけたたましく鳴る。まるで私達の門出を祝福するかのように……

 

「むきぃ~! 留美子ちゃん!! お嫁にいかないで!! お母さんとずっと一緒って言ったじゃない!!」

「司令、そんな事は一言も言っておりませんし、私も聞いておりません。そもそもで、司令が雪さんと約束した事でしょうに」

「研究に協力する代わりに留美子をくれなんて……でも許す!! 幸せになるのよ!!」

 

 安倍天照は副司令に慰められながら、ピーピーと泣き叫んでいる。流石の留美子もその姿には苦笑いを浮かべている。

 私は手にしたブーケを放り投げる――多くの女子達が群がり争奪戦が始まる。しかし、その軌道は無関心な優希の手元にスポリとハマった。

 

「あっ……」

「よしっ! あまてるちゃん、あたし達も式を挙げるぞ! 今すぐにだ!」

「留美奈、それは流石に気が早いんじゃないのか」

「そんな事ねぇ! そもそもで、留美子に先を越された時点であたしは――」

 

 それは、本当に平和な風景だった。誰もが笑いあい、傷つく事の無い世界。やっと、ここまで辿り着いたのだ。本当に、本当に長かった……

 二人でヴァージンロードを歩きながら、この場にいない二人の人物の顔が浮かぶ。一人は坂本妙、私の義母さんだ。私が京都に向かっている最中、神楽との戦いで入院中だったうえ、魂だけで京都で激戦を繰り広げた代償――今は青森の実家にて自宅療養となった。近々、帝都支部司令代理である和樹さんが後を継ぐ予定らしい。私も結婚式が終わったら、おばちゃんの介護のため青森に帰省するつもりだ。

 そして、もう一人――

 

「菊梨、来なかったわね……」

「私達の事、祝福してくれないのかな……」

「そんな事ないよ! だって、式の前にも確認して……」

 

 そう、本来ならば今日は三人での結婚式の筈だった。法律的にもアウトな事例だが、そこは取引として天照様に無理を通してもらって、今日の会場だって準備してもらった。3人で家族になる事に、菊梨も同意してくれたのだが……

 教会の扉を潜ると、長い階段下に白いオープンカーが一台駐車していた。

 

「あっ……!」

「へい、お嬢さん方――乗っていきませんか?」

 

 その車の運転席には、白無垢に身を包んだ菊梨が座っていた。

 

「菊梨っ!!」

 

 私はドレスの裾を掴んで階段を駆け下り、周りの目も気にせず菊梨に抱きついた。

 

「まぁ、そんなに私(わたくし)が居なくて寂しかったですね。思ったよりも車の準備に手間取ってしまいまして……」

「ばか! 来ないと思ったじゃない!」

「申し訳ございません……」

「ばかっ! ばかばか! 菊梨のばかっ! 淫乱! 露出狂!」

「ちょっと!? それは流石に言い過ぎです!」

「ごちそうさまです」

 

 そんなやり取りを見て留美子は微笑むと、後ろの座席にゆっくりと座る。

 

「ほら、ご主人様? 離れてくれないと運転出来ないですよ?」

「ご、ごめん……」

「では、行き先はどこにいたしましょう?」

「行き先は帝都までかな。いや――」

 

『私達の未来へ!』

 

 掛け声に合わせ、菊梨はアクセルを全開に踏み込む。物凄い音を立てながら車は長い道を爆走し始める。

 

「ところで、いつの間に車の免許なんて取ったの?」

「――とってませんよ?」

「はっ?」

「えっ?」

「無免許で車なんて持ち出すなぁ!!!」

「あぁん! 久々のご主人様のハリセンに私(わたくし)感じてしまいます!」

「ちょっ!? 前見て前!!」

「もう、勘弁してよぉ!!!」

 

 そう、私達の波乱万丈なふぉっくすらいふは、これからもずっと続いていく。ずっと、ずっと――

 

 

 

 

 

ED『ふぉっくすらいふ』

 

作詞:空野流星

 

歌:橘瑠璃

 

貴女と出会ったのは偶然じゃない、きっと運命だった。

あの日から、私の物語は色付き始めた。

手と手が触れ合った時、鼓動は早まり私は貴女に釘付け。

そう、もう欠ける事の出来ない存在になったのだから。

 

共に歩く道が、ずっと先まで暗闇を照らす道標。

握りしめた手は、これから先も絶対に離さないで。

そうさ、これが私達の物語。

私達だけの、ふぉっくすらいふ。

 

喧嘩する日もあったね、当然な事だけど。

共に抱き合い、涙を流す日もあった。

尾と尾が触れ合った時、全身に電流が走る。

そう、もう私にはずっと貴女が必要なのだから。

 

共に生きる道が、ずっと先の未来を照らす道標。

抱きしめた温もり、これから先も絶対に話さないで。

そうさ、これが私達の運命。

私達だけの、ふぉっくすらいふ。

 

1年、10年、100年後も、貴女は変わらずにいてくれますか?

ずっと、ずっと愛して、共に生きていてくれますか?

きっと、朽ちる日が来ても、最期まで共にいてくれますか?

そうだと、私は、ずっと信じている――永遠に!

 

共に歩く道が、ずっと先まで暗闇を照らす道標。

握りしめた手は、これから先も絶対に離さないで。

共に生きる道が、ずっと先の未来を照らす道標。

抱きしめた温もり、これから先も絶対に話さないで。

そうさ、これが私達の物語。

私達だけの、ふぉっくすらいふ。

終わらない、永遠のふぉっくすらいふ。

 

 

 

 

 

 

-帝京歴???年-

"今回の妖怪人間発生事件ですが、世界最年少退魔師である雪音ちゃんと美雪ちゃんの二人によって無事解決されました!"

"いぇーい、ママ見てる!!"

"雪音ちゃん、そんな事言ったらママさんが困るよ!"

"凄腕なのは間違いないですが、小学生らしい一面も垣間見れましたね。では、次のニュースを――"

 

 リモコンでテレビの電源を切り、用意したお茶とお菓子をお盆に乗せて階段をゆっくりと登る。角を右に曲がってまっすぐ通路を進み、子供部屋の扉を通り過ぎて一番奥の部屋までやってくる。

 部屋の扉には、"仕事中、入るべからず"という札が立てかけてあった。それを通路の横に置き、静かにドアノブを撚る。

 

「あらあら……」

 

 そこには、まとめられた今週掲載分の"鋼鉄の聖女ジャンヌ"の原稿と、ソファーに寝っ転がって爆睡する雪の姿があった。

 菊梨は笑顔を浮かべ、お盆を机の上に置くと雪が眠るソファーに腰掛けた。

 

「本当に、色々な事がありましたね……」

「んぅ――もう食べられにゃい……」

「一体、ご主人様はどんな夢を見ているのでしょうか。このままご一緒したい所ですが、そろそろ買い出しに出た留美子ちゃんが子供達を連れて帰ってくる時間ですしね」

 

 菊梨はそのまま顔近づけ、眠る雪の唇に自らを唇を重ねる。

 

「では、また明日まで――おやすみなさい」

 

 そう言って、部屋を出た菊梨は静かに作業部屋の扉を閉めた。

 

~おしまい~

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