「皆さんこんこんわ! 今回の教えて、よーこ先生のお時間です!」
「さて、今回のお題はこれです!」
~とんでも狐、葛の葉とは!~
「前回お話した使者、それが葛の葉なのです!」
「え、どうして神様に様付けしないのかって? だってあの人は……ねぇ? 神様とは言ってもトラブルメーカーでいつも問題を引き起こすんですよ。」
「保名様が亡くなった時だって派手に暴れまくってそれはもう地上は大変でしたよ。 帝都と京都の同盟軍が満身創痍で鎮めたくらいですし。」
「あぁ、今は大人しくしてるそうですよ? どこにいるかまでは知りませんけど。」
「では今回はここまで、皆さんあでぃおす!」
―前回のあらすじ―
原稿の気分転換にロボコンへと参加する事となった雪、しかしそのサークルは貧乏神に取り憑かれていたのだった! 雪は貧乏神が熱に弱い事を思い出し、熱気によって追い出す手段に出る。 結果、貧乏神を追い出して見事優勝する事が出来たのであった!
坂本邸の前に見知らぬ老人が立っていた。 見た目は80歳くらいであろうくらいには皺だらけで、手足も細く枯れていた。 狩衣を纏い、明らかに異質な存在である。
「随分派手にやらがしでんねが。(随分派手にやらかしてるわね)」
老婆は弱っている結界をなぞり、その力を増幅させる。 これで元通り外界から妖怪や幽霊が入り込む事は出来ないだろう。 逆に言えば中に妖怪なんかがいる場合”絶対に出られない”という事でもある。
「伝説の”狐”、わで勝てるかわがらんげど、可愛い娘のためだ!(伝説の狐に、私の力で勝てるか分からないが、可愛い娘のためだ!)」
意を決して老婆は玄関を開け放った。 今ここに、神話レベルの戦いが起ころうとしていたのだ……
―――
――
―
私と菊梨、留美子は仲良くリビングでショートケーキを頂いていた。 やっと締め切りから解放され、あとは7月のコミマを待つだけの状態である。 だからこそ優雅なこの時間をたっぷりと――
「ぶふっ!」
ついケーキを口から噴き出してしまった。 乙女にあるまじき行為だが、あんな爆発音が響いたら誰だってこうなるだろう。 間違いない、玄関の方で爆発音がしたのだ!
「ご主人様!」
「何か、やばい。」
2人も異変をキャッチする。 私はつい右手にもったフォークを構えて立ち上がる。 法治国家の帝都で爆発事件となれば、相手はまともではない。 まずは現状確認のためにも玄関に行かなければならない。
「だめですよ、間違いなく殺られます。」
「そこ! あっさり殺られるとか言わないの!」
「私が行く。」
留美子は
先頭留美子、次いで私に最後尾に菊梨という3人パーティで前進する。 あ、こういう時こそ警察に電話すればいいのか……
「この霊力、只者ではありませんね。」
「何それ、なんか陰陽師的なのでも来てるわけ?」
「そこまではわかりませんけど。」
リビングのドアを小さく開き、留美子が玄関を確認する。
「っ!!」
――躊躇なく発砲した。 容赦ないというか、確実に相手も殺しにいってますよね? こういう場合って正当防衛は適応されるのかなぁ、等という別な心配が頭をよぎる。 だが、それは杞憂に終わった。
「かぁぁぁつ!」
物凄い怒号が聞こえた。 それと同時に留美子の顔が恐怖で歪むのが見えた。 普段から感情に乏しい留美子がこんな顔をするなんて初めて見た。 それ程相手はヤバイという事なのだろうか?
留美子はすぐにリビング側に撤退し、シャツの裏側に隠れている手榴弾のような物を取り出す。
待って、あなたここを戦場にするつもり? というか、それ爆発したらガチでやばい奴ですよね?
「手段は選べない、相手は化け物。」
「ちょっ、待って!」
安全ピンを抜いて玄関へと投擲する。 ついに我が家が戦場になってしまうか、短い平和だったなぁ……
「って、爆発しない?」
「嘘……」
私は恐る恐る玄関の様子を覗いた。 そして思い出した、今日がどんな日であったのかを。
「――おばちゃん!」
「かっ!」
おばちゃんの目の前で空中で静止した手榴弾は、よく分からないパワーで分解され粒子になった。 まさに、光になれぇぇぇ! ってやつだ。
「ゆぎぃぃ!」
「おばちゃん!」
私とおばちゃんは1年ぶりの再会に互いに抱きしめ合っていた。
彼女の名前は
私とした事がうっかりしていた、そういえば今日家に来るという約束だったのだ。 最近の忙しさからつい失念していたのだ。
「ご主人様、一体何が――」
「きぇーっ!」
おばちゃんは袖からお札を取り出して菊梨目掛けて投げつける。 菊梨は慌てて避けるが、掠った頬に血が滲んでいた。
「ちょっと待っておばちゃん!」
「あれが”狐”が、わの力滅するべ!(あれが狐だな、私の力で滅してくれる!)」
そうか、私が前に狐の退治をお願いしたから菊梨を狙ってるんだ!
「菊梨、援護するから下がって。」
「頼みますよ留美子さん!」
留美子はおばちゃんに向かって発砲を続ける。 弾丸は全ておばちゃんに接触する前に何かに阻まれて光の粒子になってしまう。
そうだ、多分これは結界だ! 家に使っている結界と同じようなものを自分の周囲に展開しているんだ!
「ご主人様を返してもらいますよ!」
菊梨は大きく跳躍し、結界に向かって思いっきり鉄拳をぶちかます。 初めて視認できるレベルに結界が輝く。 おそらくはかなりの高負荷に耐えようとして起こった現象であろう。
「はじめでだが、こげなやばないぎものだど知らなかったべ。(初めてだが、ここまでやばい生き物だったとは知らなかった。)」
「おばちゃん違うの! 菊梨は!」
「ちぇすとぉ!」
結界が砕けた! そのタイミングを逃さず留美子が
「まだまだ!」
「ふん!」
菊梨がハイキックをかまし、おばちゃんはそれを左腕でガードする。 既に右手には数枚のお札が握られており、投げつけると今度は炎の渦が発生した。
「なんなんですかこの人は、本当に人間なんです!?」
「間違いなく化け物。」
二人は後退して一度態勢を立て直す。 この二人を一人で相手出来るおばちゃん、化け物だ。
「いい加減にして!」
私は3人の間に立って両手を広げて立ちはだかった。
「おばちゃん、話を聞いて! 二人も一旦落ち着いてよ!」
「どげ! なのためだ! これだど狐殺れねべ! (どけ! お前のためだ! これだと狐を殺せない!)」
だめだ、二人は警戒しつつも静止しているが、おばちゃんは頭に血が上って説得は不可能だ。 こうなったら落ち着いてもらうしかない。
「こんのぉ――分からず屋ぁ!」
私は右手に霊力を集中させる。 そう、今こそあの技の出番だ! 渾身の力を込めておばちゃんに叩き込む……
「うぃぃぃたぁぁぁぁぁぁ!」
なんとなく叫びながら攻撃するのはお約束というやつだ。 私の霊剣――霊ハリセンがおばちゃんの頭部に炸裂する。 それと当時に、張り詰めたおばちゃんの霊力が霧散するのを感じた。
「おめ、なんでそんな……(お前、なんでそんな……)」
「え?」
「霊力はづがうなんてあれほど!(霊力は使うなとあれほど!)」
ナニ、なんで私怒られてるの? おばちゃんが今まで見た事のないような鬼の形相で私を睨んでいた。
―――
――
―
なんとか停戦条約は結ばれた。 おばちゃんがぶち壊した玄関の扉は、その日のうちに業者が修理に来てくれた。 疲労が溜まっていた留美子を先に帰らせ、おばちゃんには菊梨との事をゆっくり丁寧に伝えた。 確かに最初は迷惑していたが、今は一緒に暮らしたいと思っている事をだ。
「ん……」
おばちゃんは菊梨が現れた漆塗りの箱を見つめていた。 気になるから見せてくれてと頼まれた持ってきたのだが、おばちゃんの表情は硬いままだ。
「因果だ…… なを守りたいだげなのになぁ。(因果だ…… お前を守りたいだけなのになぁ。)」
「おばちゃん、その箱が何か知ってるの?」
「知ってる、でもいえねべ。(知っている、だが言えない。)」
おばちゃんは静かに箱をテーブルに置いた。
「ごめんなさいご主人様、こればっかりは
「どうして隠すのさ、私って信用ない?」
「違うんです!」
菊梨が声を荒げる。 その目には薄っすらと涙が滲んでいる。
「
「いつか、話してくれる?」
「はい、その時が来れば……」
私は黙って頷くしかなかった。 今は追及してはいけない、そんな気がしたから。
「よし! 今日はなのすぎなのづくる!(よし! 今日はお前の好きな物を作ってあげよう!)」
「ほんとに? やった! 私肉じゃがが食べたいな!」
「ちょっと! それは
そう、今はこれでいい。 こんな時間が続けば、それでいい……
―次回予告―
「静かに振り続ける雨、そこに少女はいた。」
「傘もささずに雨に濡れたままの巫女少女。」
「彼女の思いは二度と届かず、ずっと漂い続ける。」
「あぁ、少女の見つめる先にあるものは……」
「次回、ふぉっくすらいふ――第九話 少女の思いは雨と共に流るる。」
「それは、ほろ苦い青春の煌き。」