今はラカーア島に戻りニコニシティにあるポケモンセンターでアイとビデオ通話をしている。
『タヒョウ、今どこいる?』
「ええと、ニコニシティです。」
『え?ニコニコシティ?』
「違います!ニコニシティです!」
『だからなにぃ?ニコニ……コニ…?』
「ですから違いますよ!ニキョニクウォ………もう、後で図鑑のマップで調べてください!ラカーア島にありますから。」
『はいはい、それより見て見て!ジャ~ァン!!』
「ひゃっ!な…………なんですかそのポケモン……。」
アイが画面越しに自慢げに見せているのはクワガノン。
進化したことをタヒョウに伝えずにはいられなかったようだ。
だがでんきタイプが苦手なタヒョウは驚いて腰を抜かしてしまった。
『も~う、ホントタヒョウってでんきタイプ苦手だよね。』
「仕方ないじゃないですか……急にこんなのを見せられたら驚くに決まってます。」
『こんなのって言わないでよ!カッコイイでしょ、クワガノン。大峡谷で進化したんだよ!』
『ガノン!』
「そ……そうですか(恐怖しかない……)。ただ、コリンクみたいに慣れれば大丈夫です!」
『そう?じゃあ、コリンク達の回復終わったからそろそろ切るね。』
「はい。分かりました。」
『バイバ~ァイ!』
「さような……」
らと言おうとした所で電話が切れた。
「………ハ~ァ…。」
そして暗くなった画面を見つめ大きなため息をつき横目ででんきタイプが描かれているポスターを見つめた。
(アイさんがいてくれたら大丈夫なのに………。でんきタイプ……。いやいや、わたしは誇り高きコールシティジムリーダー!苦手なポケモンがいてどうする!!)
そう決意していると足元から
「デネ!」
と鳴き声が聞こえた。
「ん?」
足元を見るとデデンネがこちらを見上げ構って欲しそうにしていた。
「ひゃっ!!」
ただデデンネはでんきタイプを持つポケモン。
タヒョウは飛び上がるように驚きそのまま固まってしまった。
「すみませ~ぇん!」
そのときどこからか女の人の声が聞こえた。
恐らくデデンネのトレーナーであろう。
「こら!デデンネ、勝手にどこかへ行っちゃダメでしょ!!」
「デネ?」
女の人はデデンネに注意しているがデデンネには自分がなぜ怒られているのかが分からず首を傾げている。
女の人はデデンネに呆れた様子を見せた後タヒョウの方を向き謝った。
「もう………ごめんねきみ、この子、好奇心旺盛ですぐどこかへ行っちゃうんだよ。」
「い………いやいやいや……!ぜ~ぇんぜんだだだだいじょ……だいじょ~ぉ…ぶどぅうぇす!!」
ただタヒョウはいきなり現れたデデンネに驚きパニック状態に陥っていた。
「本当にごめんね。ほら、いくよデデンネ!」
「デネ!」
女の人はデデンネを肩に乗せタヒョウに小さく手を振りポケモンセンターから出て行った。
「……………。」
タヒョウはその様子を目で追い女の人が見えなくなると急に額をテーブルに打ち付け頭を抱えた。
(うわ~ぁ!!ばかばかばか!何やってんだわたし!あんな可愛いポケモンにビックリするなんて!しかも何!?だいじょ~ぉ…ぶどぅうぇす!!って!あの人絶対引いてたよ!わたしもこれでももうジムリーダーなのに………。誇り高きコールシティの……ってさっきから誇り高きってなに超恥ずかしいことを考えてるんだわたし!!うぅ………どうか守り神様!この台詞を通りがかりのエスパーとかなにかに聞かれていませんように!!)
とまあ、こんな感じの事を考えていると
「ティーオ………。」
背後からポケモンの鳴き声が聞こえてきた。
「ひゃぁっ!!」
ビックリして後ろを振り向くとそこにはネイティオがいた。
ネイティオはタヒョウを無表情でじっと見つめている。
タヒョウもポカンとした顔でネイティオを見つめ返している。
そんな時間が数秒間経ち
「…………………ティ…。」
「……!!!!」
ネイティオは真顔を貫き通したままテレポートをして逃げて行った。
「はわ……わわわわわ……。」
タヒョウは赤面したまま固まり、恥ずかしさと混乱で何がなんだか分からなくなっていた。
「うぅ………。」
そしてゆっくり前を向き直し背を曲げ、テーブルに肘を着き手で顔を覆ったと思ったら
「うおおおおおおおっ!!!」
と周りの目が集中するくらい大きな声を出して立ち上がり、再び座ってまた顔に手を当て同じ姿勢になった。
(あぁぁぁぁぁぁぁ!!恥ずかしい!!絶対あのネイティオわたしの脳内反省聞いてたじゃん!!あんな冷めた目でわたしをみやがって!もうやだ……まるで何かアレみたいじゃん…。ほら、なんかの、そう、アレみたいじゃん!!あぁぁぁ!もうやだぁぁ!!…………うぅ………ここでこの言葉を出すのは止めておこう……。世界観にそぐわない………。けど一回だけならいいかな…………しにたぁぁぁぁぁい!!!たいにたいにたいにたいにたいにたいにたいにたいにた………………)
「おまちどおさまでした!あなたのポケモンは皆、元気になりましたよ!」
「………ありがとうございます……。」
「またのお越しをお待ちしています!」
「はい……。」
ポケモンの回復が終わりジョーイさんからボールを受け取りしまって、ポケモンセンターからトボトボ出ようとすると
「お待ちください!お客様!!」
とジョーイさんが声をかけてきた。
「………?」
「お客様、元気がないようですね。」
「あぁ……はい………。」
「先程も何か雄叫びというかうなり声を上げてたりしてましたし。」
「は……はい。(うわぁ、わたしそんなことしてたの!?超恥ずかしい!!)」
「何かお悩みがありましたらこの街を出てすぐ近くにある思い出の丘という所に行ってみたらどうでしょう!」
「思い出の丘……?」
「はい!景色も綺麗ですし空気も澄んでいるので、きっとリラックスできますよ!」
「あっ………はい……分かりました…………ありがとうございます。」
「いえいえ!ポケモンだけでなくトレーナーのことも元気づけなくては一流のジョーイなどとは言えませんから!」
「はっ……はあ……。(自分で一流って……。人のことは言えないが………。)」
「では、またのご来店をお待ちしています!」
そう言われたタヒョウはニコニシティを出てポケモン図鑑の地図と道にある看板を頼りに思い出の丘まで辿り着いた。
「ここが思い出の丘か……。(案外遠かったな。)」
ほとんど何もなく草花が風に揺れ、崖から見える海はキラキラと輝いて見える。
「ふ~ぅっんん!ぱあ!!空気が美味し~い」
タヒョウは体を伸ばして大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせていた。
「確かにジョーイさんが言ってた通り、リラックスできそうだな(遠かったけど)!」
辺りを見渡し、どこへ行くかを決めていると
「あれ~ぇ!君、さっきの子じゃん!!」
聞き覚えがある声がしてきた。
「ん?」
声がした方を振り向くとさっきの女の人が立っていた。
肩にはちゃんとデデンネが乗っている。
「あっ!さっきの人!(とデデンネ!!)」
「いやはや、また出会えるとは偶然だね~ぇ!」
「あ………はい……。(苦手なタイプの人だ……色んな意味で……。)」
「私はロミ!さっきの街でマッサージ店を経営してるんだ!!この子は電気マッサージを手伝ってくれるデデンネちゃん!」
「デネ!」
「君は!?」
「あ……はい………えぇと……タヒョウと言います。(初対面でいきなり名乗り出すとか………わたしも名乗っちゃったけど。)」
「へ~ぇ、タヒョウちゃんか!なんか面白い名前だね!」
「あぁ……えぇ………ありがとうございます…。(面白いって褒め言葉かな?)」
「ふふっ、それじゃあ立ち話もなんだし、あそこに座ろうか!」
「えっ……あ………はい。(ヤバい、捕まった…!長話させられる!)」
ということなので不格好に倒れている倒木に座り込み話しを再開した。
人見知りがあるタヒョウにとっては逃げ出したい程の憂鬱であるが。
じろじろとデデンネのことをチラ見しすぎているのを気付いたのかモンスターボールの中に戻してくれた。
「けど凄いね、まだ小さいのに島巡りだなんて。」
「わたし……もう十歳です……!」
「あれ、ゴメン!!小さいって言われるの気に障った!?」
「いえ!そういうわけではないですが…!(無論その通りです!わたしは誇り高き……)」
「そうだ!島巡りしてるのならバトルもできるんでしょ!」
「あ……はい。」
「それじゃあバトルしようよ!!」
「それでは……はい、喜んで!(本当に急だな……ていうか引き受けちゃったよ………。)」
二人は立ち上がりお互いにバトルができる位置まで動いた。
「タヒョウちゃん!」
「はい、なんでしょう!」
「君、今ポケモンいくつ持ってる!」
「えっと………四匹です!」
「じゃあルールは4対4のシングルバトルで先に三勝したら勝ちね!」
「分かりました!(勝手に決まっちゃったよ………でもジムリーダーとして実力を存分に見せるチャンス!)」
ロミは余裕そうな笑みを浮かべボールを手に取った。
「さぁ、私からね、エテボース!」
「エボッ!!」
ロミが最初に出したのは手のような二つの尻尾が印象的なエテボースだ。
「さぁエテボース!揉みほぐしちゃって!!」
「エボォォ!」
エテボースは尻尾を拳のように握り素振りをしている。
かなり好戦的な様子だ。
タヒョウはジムリーダーらしくその様子を観察し
「(相手はエテボースか……。あの尻尾、マッサージで鍛えられてるのか並のものじゃないな。だったら)いけっ!メテノ!!」
「テノ!」
最適だと思われるポケモンを選んだ。
タヒョウが繰り出したのはメテノ。
隕石の様な姿(りゅうせいのすがた)をし、HPが半分になると姿が星の様な形(コア)に変わる珍しいポケモンだ。
メテノVSエテボース
「私から行くわね!エテボース!くすぐる!!」
「エボッ!」
エテボースは尻尾を構え、メテノに向かって走った。
「メテノ!飛んで!!」
「テノォ!」
メテノは空中に浮き、くすぐるから避けた。
「へぇ、なかなかやるじゃん!」
「このくらい当然ですよ、褒めるに値しません。」
「ふふっ、言うね~ぇ!エテボース!くさむすび!」
「エボォ……ボッ!!」
エテボースは力一杯に両手を地面に打ち付けた。
そうすると大きな蔓が二本現れ、メテノに向かってグングン伸びて行った。
「メテノ!かわして!」
「テノ!」
メテノはくさむすびから避けようと空中を逃げ回るが今はまだりゅうせいのすがた、体が重く思うように動けない。
「テェェ……!」
とうとうくさむすびに捕まってしまいメテノは締め付けられてしまった。
「どう?エテボースちゃんの特別マッサージは?気持ち良すぎて壊れちゃうんじゃない?」
「エボッ!」
ロミはまだまだ余裕な素振りを見せている。
やはりバトルにはかなり自信があるみたいだ。
「くっ!(確かにあのくさむすびは強烈だ……!気持ち良いのかは知らないけど…。)」
「テ……ノォォ…!」
くさむすびの締め付けはだんだんきつくなってきている。
その度にメテノのHPが減り殻がだんだん割れてもきている。
「さぁどうする?このまま降参しちゃう?」
「いいえ、ピンチに見える状況でも……必ずチャンスになるんです!!」
「テェェェ!!」
「メテノ!からをやぶる!!」
「テェェェェ………ノォォォォッ!!」
メテノの特性リミットシールドが発動し、身体を纏う殻は割れ、あかいろのコアの姿になった。
殻が無くなったので体がほんの少しだが小さくなり一瞬だけ拘束が解けた。
メテノはその一瞬を使いくさむすびから逃れることができた。
「へ~ぇなかなかやるじゃん!こんな方法でくさむすびから解放されるなんて!」
そのやり方にロミは驚きながらも称賛している。
「へへん!このくらい序の口です!!さぁ、いきますよ!メテノ!!」
「テノォ!!」
作戦が上手く成功し二人の勢いが増してきている。
「メテノ!スピードスターです!!」
「テェェェ……ノォッ!」
メテノはスピードスターを次々とエテボースの周りに着弾させ視界を奪った。
「エテボースちゃん!みずのはどう!斜め上に撃って!!」
「エェェェ……!」
エテボースはみずのはどうを出すため両手に力を込めはじめた。
「すてみタックル!!」
「テノッ!!」
メテノはその隙を付きかなりの速さですてみタックルをくらわせた。
「エテボースちゃん……!!」
「エェ……ボォォォ………。」
かなりのスピードとパワーがあるすてみタックルの直撃をくらったエテボースは一たまりもなく一撃で戦闘不能になった。
「やったよ!メテノ!!」
「テノォ!!」
二人は勝利の喜びに浸り、お互いに微笑み合っている。
「よくやった、落ち込むことはない。」
ロミはエテボースをモンスターボールに戻した。
「いやはやビックリしたよ、まさか私のエテボースちゃんを一撃で倒しちゃうとはね!」
「なぁに、リミットシールドとからをやぶるで攻撃力とスピードを上げたすてみタックルです。これで倒れきゃおかしいくらいですよ。」
「ほ~ぉ、子供のくせに結構やるじゃん!」
「ポケモンバトルに大人も子供も関係ありませんよ。勝ちたいと願い、努力する者が勝つのです。」
チャレンジャーを試す為、相手が予想できないバトルをする。
その中でチャレンジャーに言葉を残す。
ジムリーダーでよくやることだ。
タヒョウはいつもの癖がでてきてしまっている。
「子供のくせに生意気なこといっちゃって~ぇ、さぁタヒョウちゃん!次はタヒョウちゃんが先手ね!」
ジムリーダーと言うことをしらないロミはまだ子供なのにませたことを言うタヒョウを面白く、そして可愛いげに思い、まだまだ余裕げなことを言っている。
だが少し顔付きが変わりキリッとした。
「はい!戻って、メテノ。」
「テノ!」
タヒョウはメテノをモンスターボールに戻し別のモンスターボールを手に取った。
「次はあなた、ヒドイデ!!」
「ドイデ!」
タヒョウが出したのはヒドイデ。
頭の毒針と十本の触手が特徴のポケモンだ。
「へ~ぇ、ヒドイデね。ナットレイ!マッサージ開始!!」
「ナットォ!」
対してロミが出したのはナットレイ。
ずっしりとして丸く刺々しい体に三本の触手が特徴のポケモンだ。
ヒドイデVSナットレイ
「相手はナットレイか……。」
「ドイデェ…。」
今度は先攻のタヒョウ。
相手をじっくり観察し作戦を立てようとしている。
「……タヒョウちゃん。早く攻めてきなよ。」
だがなかなか攻めてこないタヒョウにロミは注意した。
「うわっ!すみません!えっと………(ナットレイはくさ はがねタイプ………ん?はがねタイプ………)」
「ドデ?」
タヒョウはとりあえずなにかワザを出そうとナットレイのタイプを思い出したがなにかおかしい。
あたふたした顔でじっとヒドイデを見つめている。
「どうしたの~ぉ?タヒョウちゃん!」
「うぅ………(どうしよう…ヒドイデのワザはどくどく、どくびし、ベノムショック、ベノムトラップ。はがねタイプは全部効かないよ……。)」
「ドイデェ………。」
タヒョウの気持ちが伝わっているのかヒドイデもかなり心配そうだ。
「ヒドイデ……。」
そのときとある言葉が脳裏に浮かんだ。
[タヒョウが不安だとタヒョウの
ポケモンも力を上手く発揮できないよ。]
[ジムリーダーたるもの、狼狽せず、冷静でいよ。]
以前旅をしたときに聴いた言葉だ。
タヒョウはその言葉を思い出し、覚悟を決めた。
「ヒドイデ………やれるだけやってみよう!」
「ドイデ!」
「ヒドイデ!どくどく!!」
「ドッデデデデデデ!!」
ヒドイデは頭の角から無数にどくどくを発射した。
「…………ナット…。」
だがナットレイははがねタイプをもつ。
そのためどくどくは効かなかった。
「………?」
ロミもタヒョウの行動に疑問を感じていた。
「タヒョウちゃ~ぁん!ナットレイのタイプ知らないの~ぉ?(メテノの指示とか、結構できる子だと思ったけど、やっぱりこのくらいか?)」
タヒョウの実力を薄々感じてきているもののとりあえずロミはまた余裕げに嫌みっぽくタヒョウを挑発した。
「……………。」
だがタヒョウはロミの言葉を聴きもせず、真剣な表情でフィールドを見ている。
「………(なんだろう、この子から伝わる…あの殺気は……!)ナットレイ!ミサイルばり!!」
「ナァッ……トゥウォウ!!」
ナットレイは全身の刺を光らし、そこから無数のミサイルばりをヒドイデ向かって発射した。
「ヒドイデ!どくびし!」
「ドッデェ!」
ヒドイデもどくびしをミサイルばり向かって発射し、相殺してワザを防いだ。
「ふぅ……(なんとか防げた………。)」
「やるじゃん……タヒョウちゃん…!」
「ドデェ……。」
「ナット!」
真剣なタヒョウにつられてロミも集中しだしている。
その気持ちもポケモン達に伝わりヒドイデとナットレイも攻撃的な体勢をとる。
一触即発の雰囲気だ。
「(一気に決めるか…)ナットレイ!パワーウィップ!!」
「ナッ……トォォ!!」
ナットレイは触手を伸ばし緑のエネルギーを纏わせパワーウィップをしかけてきた。
「ヒドイデ!ベノムショック!!」
「ドッ…デェ!!」
ヒドイデもパワーウィップ目掛けベノムショックを発動し、打ち消すことができた。
「…………!(アレは……!!)」
そのとき、触手に纏うエネルギーが消滅し、ほんの一瞬だが足裏の小さな穴が見えた。
「ちっ!弾かれたか……!(やっぱりただものじゃない……しっかりナットレイちゃんの攻撃に対応をしている。)やるね!タヒョウちゃん!」
「ナットォ……。」
ロミはタヒョウがかなりの実力者と確信し、嫌みっけなく称賛的に言った。
タヒョウはその言葉にあまり反応せずニヤリと笑いボソッと何かを言い出した。
「………見つけた……反撃の糸口!!」
「ドデェ!?」
「おっ!どんなの?タヒョウちゃん!!(絶対さっきの聴いてなかったな、あの子。)」
「秘密ですよ!誇り高きコールジムの実力!見せてあげます!!(よし!決まったぁ!!)」
「ド……ドデェ!!」
タヒョウは拳を前に突き出し、勇ましい表情で少しカッコつけて言った。
ヒドイデは少し反応に困ったがつられて勇ましい表情になった。
「へ~ぇ!見せてみなよ!反撃の糸口という奴を!!(タヒョウちゃん、何かポーズ決めてる!カワイイ!!)」
「ヒドイデ!毒刺をばらまいて!!」
「ドッデッ!」
ヒドイデは頭の毒刺をフィールドに向けて無造作に飛ばし始めた。
「………何をする気?(あの毒刺、無限にでてくるんだ……。)」
「ナットォ……。」
毒刺はフィールド全域に落下するもナットレイには一本も当たっていない。
まるで故意に避けているようでもあった。
「(もういいかなぁ……)ヒドイデ!ストップ!!」
「ドイデェ……。」
毒刺がだいたいフィールド全てに落ちるとヒドイデに毒刺を飛ばすことをやめさせた。
ワザではなく身体の一部を使った攻撃だ。
ヒドイデの体力の消耗はかなり激しい。
「(ヒドイデはかなり疲れてる……罠かもしれないけど、ここは攻めよう!)ナットレイ!ジャイロボール!!」
「ナァァァ………トォ!!」
ナットレイは身体を高速回転し地面の毒刺を払いながらヒドイデに向かって突撃した。
「ヒドイデ!地面に向かってどくどく!!」
「ドォッデェ!」
ヒドイデはナットレイの進行方向に向かいどくどくをばらまいた
「ナナナ……ナットォ………!?」
そのどくどくにスリップし、ナットレイはバランスを崩し、転倒してしまった。
「ナットレイちゃん…!?………パワーウィップ!!」
「ナットォォ!!」
ロミは瞬時に判断し、倒れても使えるパワーウィップを指示した。
「(よし……来た…!)ヒドイデ!ベノムショック!!」
「ドォッデ!」
ヒドイデはさっきのようにベノムショックでパワーウィップを防ぎだナットレイの触手が無防備になり
「いけ!」
「ドデッ!!」
その触手に付く足裏の小さな穴に毒刺を飛ばした。
「ナァッッッ!!?」
「ナットレイちゃん……!!」
毒刺はきれいに穴の中に入った。
全身に毒がまわりもがきまわっている。
触手にばらまいた毒刺が刺さり更にダメージを受けている。
「よし……決まった…!」
「ドイデ!」
「決まった…………けど……コレ……(何?この感じ……………。)」
タヒョウは作戦が決まったが気分が高まらず逆に目の前の光景を見て顔を曇らせた。
(うまくいったのに………全然嬉しくない…!)
「ドデ……。」
その気持ちもヒドイデに伝わり、活気を失っている。
「くっ………ナットレイ!10まんボルト!!」
「ナアアァ…………トゥウォォォォ!!」
ナットレイはもがきつつも10まんボルトを四方に発射。
「ドデェェェェ…!!」
ヒドイデは無抵抗のまま10まんボルトに直撃し、その場に倒れ込んだ。
「…………あっ!ヒドイデ!!」
「ドデ~ェ……。」
気付けばヒドイデが戦闘不能になっていた。
「ふぅ………戻って、ナットレイちゃん…。ボールの中でゆっくり休んでてね。」
バトルの決着がついたらロミはすぐにナットレイをモンスターボールに戻した。
このような毒でもモンスターボールの中に居れば自然に治るのだ。
「………ごめんね……ヒドイデ………酷い事に付き合わせちゃって……。」
タヒョウもヒドイデに謝罪の言葉をかけながらモンスターボールに戻しロミを真っすぐ見つめ目が合うと
「ごめんなさい!!」
と頭を下げ必死に謝った。
「えっ………いや、いいんだよ!これはバトルだし、終われば毒は治るんだから……!」
「いいえ……大切なポケモンに…あんなことをしてしまい……あんなの……ポケモンバトルとは言えません!!」
「ホント…大丈夫だよ!タヒョウちゃんがしたことは悪い事じゃない!ナットレイもきっとボールの中でモモンのみを食べながら何事もないようにくつろいでるよ!」
「ですが…!ヒドイデの毒は獲物を捕らえるもののもので、別固体ですけど……一回刺されてそのまま気絶したこともあるくらいで………」
ロミは必死になだめようとするがタヒョウは頭を下げたまま謝り続けている。
「もう!」
見兼ねたロミはタヒョウの肩を掴み
「ほらほら、顔上げて!いつまでもウジウジしてたら、お姉さん怒っちゃうよ!!」
と言いながら無理矢理タヒョウの体を起こした。
タヒョウは少し震えながら驚いたような表情しウルウルした目でまばたきもせずロミを見つめ聞き取れないくらい小さくかすれた声を出している。
「もう、だいじょ~ぉぶ!ねっ!泣かないで!ほらほら、スマイルスマイル!!(泣き顔もカワイイ!)」
ロミはそういいながらタヒョウの目の位置に合わせて姿勢を低くしてほっぺたをつまみ、口角を上げさせた。
「……な………ないてないですよ……………。」
それを振り払うように顔を背け、横目で見ながらちょっと怒ってるように言った。
それに対してロミは立ち上がり、
「もう!強がっちゃって~ぇ!」
とタヒョウを見下ろしながらまたおちょくるように言った。
「強がってないです!!」
それに反応しタヒョウはロミの顔を見上げながら必死に反論する。
「ふふっ……(やっぱりタヒョウちゃんカワイイや!!)でも凄いね、流石ジムの子だ!!」
ロミはとりあえずタヒョウを元気付けるためにわざと話を変えた。
「えっ?…………あっ!!(あぁぁそういえばあの時言っちゃったよ!)」
「ねえねえ!門下生の中で何番目位に強いの!?」
「えっ?………はっ!(そういえば、ジムリーダーって言ってなかったなぁ……………めんどくさいから言わなくていいや……。)」
「ねぇ、どんくらい!」
「ええと………だ……だいたい、下らへんですかね………。(オウシン地方のジムの中ではね。)」
「へ~ぇ、タヒョウちゃんのジムってレベル高いんだね!あんなに強いのに、もっと上だと思ったけど!」
「え……あっ………はぁ………。(そんなに凄かったかな……!へへへ。)」
強かったと自分の実力を褒められたタヒョウは少し嬉しそうに下を向きモジモジしている。
「ふふっ。」
それを見たロミは安心して優しい笑みを浮かべた。
「さぁ!タヒョウちゃん!!次のバトル行こうか!!」
「はい!!」
元気一杯に次のバトルへ誘うロミにタヒョウは満面の笑みで答えた。
とそのときだ
「デネェ!!」
「うわっ!」
急にデデンネがモンスターボールから出てきてタヒョウは腰を抜かしてしまった。
「あっ!こらデデンネ!勝手に出てきちゃダメでしょ!!」
「デェネ!デネデネ!!」
ロミはトレーナーの指示なくボールから出てきたデデンネを叱り付けたが当の本人は動き回って全く聴いていない。
「ううっ…………。………!」
デデンネに驚き座り込んだタヒョウはじっとデデンネの様子を伺い何かに気づいた。
「デェネ!デネネェ!!」
「だから!静かにしなさい!!」
ロミはお説教を全く聴かずに動き回るデデンネを荒々しく顔の前に持ち上げ、大声で叱った。
「ちょっと待ってください!!」
「何!?タヒョウちゃん!!」
「デデンネは何か伝えようとしています!」
「えっ!?ホントなの!?デデンネ!!?」
「デ……デデネェ…!」
デデンネはさっきの大声にフラフラしながらゆっくり頷いた。
「うわっ!ゴメンゴメン!!」
「デネ!!」
ロミはデデンネをゆっくり降ろした。
その瞬間、デデンネはまた辺りを動き回り、いきなり止まったと思ったら今度は小さな手で上の方を指した。
二人は指定された方向をゆっくりと見上げた。
「なに………アレ…!」
「……!(アレって……!)」
そこにはまるで別次元に繋がっているかのように歪んだ空間が広がっていた。
「……………!ウルトラホール……!!」
その空間は強力でいて凶悪な生命体、ウルトラビーストが現れる時空の穴、ウルトラホールである。
前に何度か見覚えのあるタヒョウはこれから起こるであろう戦闘に向けて身構えた。
「………!?タヒョウちゃん、アレ知ってるの!!?」
「………はい……。ウルトラホールです………。」
「…………!?ウルトラホールってもしかして!!」
「はい。近頃話題になっているウルトラビーストの出入り口です……。」
「………アレが……ウルトラホール!」
ウルトラホールのことはラーロア地方のテレビなど様々なメディアで毎日のように取り上げられている。
だが詳細は公開されておらず、実際に見たものしかウルトラビーストの存在すら知らない。
だがタヒョウのウルトラホールを見詰める鋭い目付きと握り締めた拳を見てロミも身構えた。
ウルトラホールはどんどん広がりついにはまばゆい光を放ち始め、穴の中から一体の生物が降ってきた。
「なにアレ!?」
「わかりません……。わたしも初めてです…。(見たことのない種だ……いったいウルトラビーストは何体いるんだ…!?そもそも……アレはウルトラビーストなの……?)」
その生物はタヒョウも初めてみるものだった。
全身からは眩い光を放ち、いくつかの黒いコードを束ねたかのような姿をしており手足や尻尾に当たる部分はプラグのような形になっている。
いままで見たウルトラビースト同様、かなり奇形な姿をしていてまるで異世界からの侵略者のようだ。
その生物はこちらを見下ろすように体を伸ばし、喋りだした。
『………ワレ……デンジュモク……。ウルトラビースト………イチイン……。キサマ……ポケモン………クレ…!!』
「デンジュモク?ウルトラビースト?ポケモン……くれ………?タヒョウちゃん…!なんなのアレ!!」
「………ウルトラビーストです。」
「ウルトラ……ビースト……?」
「はい。ウルトラビースト……突然ウルトラホールから現れ、目的も分からずポケモンを奪い去る謎の生命体です…!」
「ポケモンを奪い去る…!!謎の生命体!?なんかそう……ヤバいヤツじゃん!!」
ウルトラビーストの存在、そして目的を聴いてロミは激しく動揺をしている。
「はい。ですから、直ちにこの世界から駆除をしなければなりません。」
だがタヒョウは以前に別種のウルトラビーストに会い、その恐怖を知っている。
だからそれを危険な存在、いてはならない害を成す存在だと思い、まるで殺し屋のような目でデンジュモクを見つめている。
「タヒョウちゃん……。なんか恐いよ……。」
その殺気はロミにも伝わり不安そうにタヒョウを見つめた。
それをよそにタヒョウはモンスターボールを手に取り、思いっ切り投げた。
「行って下さい…!メテノ…!!」
「テノ!!」
ボールから出したのはメテノ。
殻は元に戻り、HPも十分回復しているようだ。
「メテノ…!すてみタックル……!!」
「テノッ…!!」
メテノはいつもより少し反応が遅れながらすてみタックルで攻撃した。
『………!?』
不意な攻撃にデンジュモクはバランスを崩し、倒れ込んだ。
「よし………。」
「タヒョウちゃん………凄い……!(ウルトラビーストの体制を崩しちゃうなんて………!でも……タヒョウちゃん……………さっき私とバトルしたときのあのよくわからない感じ、全然感じないよ……。)」
「メテノ…!!止めだ…!ウルトラビーストを駆逐しましょう…!!ストーンエッジ!!」
「テェェノ!!」
メテノは体の前にストーンエッジを作り上げ、デンジュモクに向かって飛ばした。
ストーンエッジがデンジュモクに当たりかけたそのときだ。
『……………!!』
デンジュモクは束ねた触手をしならせ目にも止まらぬスピードでストーンエッジをかわした。
「くっ………どこ行った…!?」
超スピードで駆け抜けたデンジュモクはタヒョウ達からの視界から消えている。
タヒョウは辺りを見渡し、必死にデンジュモクを探している。
そのとき
『キサマ……ポケモン………オソイ…。』
「…………!!」
突然、デンジュモクはタヒョウの背後に現れ、囁きかけるように言った。
その余裕ぶりにタヒョウは大きな焦りと小さな恐怖を感じた。
「メテノ…!からをやぶる…!!」
「テテテ……ノォッ!!」
メテノはからをやぶるを使いぼうぎょ、とくぼうを下げ、こうげき、とくこう、すばやさを上げた。
「(スピードを上げれば、デンジュモクについていけるかもしれない…!!)いけ…!すてみタックル…!!」
「テノッ!!」
メテノはさっきと同じようにデンジュモクに向かいすてみタックルを仕掛けた。
『……オナジ…コウドウ……タイショ………カンタン……。』
そういうとデンジュモクは手を突き出し、静かに電気を走らせた。
「……テノッ…!!」
メテノは危険を察知したがもう遅かった。
『…ジュウマンボルト……!!』
デンジュモクが放つ10まんボルトはメテノを直撃し、メテノを包む殻は、粉々に砕け散った。
そのままメテノは地面に力無く墜落し、戦闘不能へとなっていた。
「…………!!」
あまりの強さと不意に現れた苦手なでんきタイプの攻撃にタヒョウは恐怖と絶望しかなかった。
「タヒョウちゃん………大丈夫……?」
「………………………。」
ロミの声も届かずタヒョウは無気力に膝をつき、うずくまり震えだした。
その様子をみてロミは肩に乗ったデデンネと顔を合わせ
「………デデンネ……いくよ…!」
「デネ!!」
真剣な表情になりデンジュモクを見つめ作戦を考え始めた。
「(俊敏な動き……放った10まんボルト………恐らくアイツは……でんきタイプ!でんきタイプには……弱点の………)デデンネ!あなをほる!!」
指示と同時にデデンネは地面に飛び込み、勢いよく穴を掘りはじめた。
『タオシタ………ポケモン……カイシュウ……。』
その間にもデンジュモクは倒されたメテノを連れ去ろうと手を伸ばしている。
メテノに手が掛かりそうになったそのときだ。
突然メテノの下にサイズぴったりの穴が空き、メテノはその穴にシュッと落ちて行った。
『…………?……エモノ………キエタ……?』
不意な出来事にデンジュモクは動揺を隠せない。
「今だ!デデンネ!!」
「デネェ!」
動揺をしていて無防備なデンジュモクに透かさず、デデンネはあなをほるで攻撃した。
『…………!??』
デンジュモクは足元からの急襲に体勢を崩した。
「つばめがえし!!」
「デネェェッ!!」
デデンネはデンジュモクが体勢を整えるヒマを与えない程の猛スピードのつばめがえしで攻撃し、
すぐさま距離を取った。
「あなをほる!!」
「デネッ!」
そしてすぐにまた地面に潜り、一切無駄のない攻撃を仕掛けている。
『…………キサマ……ポケモン……ツヨイ………。ダカラ………ワレニ……クレ…!!』
デンジュモクもロミとデデンネの実力を認め、本気に成り出している。
「シグナルビーム!!」
「デネ!デェ……ネッ!」
デデンネは離れた距離から地上に出てシグナルビームを撃った。
『……オソイ………。』
デンジュモクはまた身体をしならせて超スピードでシグナルビームをかわした。
素早い動きには目がついていけずまたもやデンジュモクを見失ってしまった。
「デネ……。」
デデンネは不安そうに辺りをキョロキョロ見渡している。
「デデンネ!落ち着いて!!」
「デッ!デネェ!!」
ロミの言葉で落ち着いたのかデデンネは目を閉じ、精神を集中させた。
ロミも一緒に目を閉じ精神を集中させている。
(そう……その感じ………デンジュモクはきっとどこかに隠れてる。流れる風に、たなびく草花………太陽に照らされる岩の影……!いた!!)
ロミとデデンネは同時に目を開けた。
どうやら二人ともデンジュモクの居場所が分かったようだ。
「来るよデデンネ…!」
「デネ…!」
だが、デンジュモクがいつ来るのかはわからない。
あの超スピードに適応できるよう細心の注意を張り巡らしている。
再びデデンネは目を閉じ、デンジュモクの周りの空気を感じている。
「…………………デネ!」
デデンネの耳がピクッと動き、その瞬間、デンジュモクが動いた。
もの凄いスピードでデデンネの後ろにまわり、攻撃の体勢を取っている。
「今だ!あなをほる!!」
「デェェネ!!」
デデンネはまるでデンジュモクの位置を把握できているように慣れた動きで振り向きデンジュモクに向かってあなをほるのエネルギーを直接ぶつけた。
『…………!!?』
さすがのデンジュモクもこれには耐え切れず、力無くのけ反り地面に倒れそうになった。
「よし!」
「デェネ!」
二人とも勝利を確信した。
だがそのときである。
デンジュモクは地面スレスレで体を思い切り反転させ、デデンネに向かって触手を伸ばした。
「デネ……!?」
「なっ…!?」
勝利をしたと思い込み、油断をしてしまい、デデンネはデンジュモクの触手に捕まってしまった。
「くっ………デデンネ!パラボラチャージ!!」
「デェェェ……」
デデンネはデンジュモクから抜けだそうと攻撃体勢に入ろうとした。
だが
『ヤラセナイ……。』
デンジュモクはデデンネを捕らえた触手をもっと締め付けた。
「デネ……!」
デデンネは苦しさからワザを出すことができない。
「デデンネ!!………(なにか……なにか方法はないのか……!?)」
デデンネの小さな体を巻き付かれてはなにをすることもできない。
それでもロミは諦めず、必死に対抗策を探っている。
だが、もはやそんな猶予は一時もなかった。
『………サイミンジュツ……。』
「デッ!…………デ……ネ……。」
デンジュモクはデデンネにさいみんじゅつをかけ、デデンネは深い眠りについてしまった。
「あっ………しまった…!」
このままだとデデンネが連れ去られてしまう。
他のてもちのポケモンもさっきのバトルで体力を消耗しきっている。
(どうする………このままじゃ……デデンネ…………そしてメテノも……………。)
激しい焦りと無力感がロミを襲った。
そのときだ
「クモォ!!」
タヒョウが腰に付けるモンスターボールから、クズモーが出てきた。
「クモ………!」
クズモーは何かを訴えるようにタヒョウを厳しい目で見つめている。
だがタヒョウはクズモーを見返すもののすぐに目を反らしながらつぶり、また震え出してしまった。
「………タヒョウちゃん………。(恐いんだよね………なにか…私が言ってあげないと………。)」
ロミはタヒョウを元気付けようと必死に言葉を探したが、なかなか出てこず、ただタヒョウを見つめる事しかできなかった。
「クモッ!!」
クズモーはタヒョウを説得しようと怒鳴り声をあげ、鋭く睨みつけた。
「………クズモー……。」
「……クモッ…。」
タヒョウは目をうるうるさせながらクズモーを恐る恐る見返した。
クズモーは厳しい顔をしながら頷き、目をメテノの方に向けた。
つられるようにタヒョウもその方向を見た。
「…………!!メテノ!」
そこには穴から取り出したメテノを捕らえたデンジュモクの姿があった。
「…………(やるしかない……!)クズモー、アクアテール……!」
「クモォ……!」
タヒョウは震える体をなんとか起こし、指示を出すも震えは止まらず、顔も強張っている。
それに影響されるようにクズモーもいつもより動きにキレがない。
『ヒョウテキ………ツイカ……。』
クズモーはデンジュモクにすぐ気付かれてしまった。
『………エナジーボール…!』
デンジュモクはすぐさまエナジーボールを放った。
「………クモッ…!?」
クズモーはエナジーボールに直撃し、無気力に地面に倒れ込んだ。
「……ーー………!!?(アレ………なんで……声が……!?)」
タヒョウは何かを叫んだつもりであったが声が出ない。
タヒョウの震えは止まらない。
唾を何度も飲み込みだりズボンを掴んだりしても収まるどころかどんどん激しくなってきている。
(なんでなんでなんでなんで…………やるしかないと決意もした……クズモーに指示も出せた………なのに………なんでなの!?……………全然……勇気が出てこない……!!)
タヒョウは思わず目を閉じてしまい、その衝撃でさっきまで歯を食いしばりながら我慢していた涙を滝のように流してしまった。
もうタヒョウには戦う気力も感じられない。
それに影響されるようにクズモーもモンスターボールの中に戻ってしまった。
デンジュモクはデデンネとメテノを抱え、ウルトラホールに戻ろうとしている。
「タヒョウちゃん………(もうだめなの…………いや、ここは一か八かやるしかない…………。)」
ロミはモンスターボールを手に取り、
「待て!このプラグ野郎!!」
と叫んだ。
『……………キサマ……ワルグチ………ユルサヌ……!』
デンジュモクは振り返り、デデンネとメテノをウルトラホールの真下に置いて、戦闘体勢を取った。
「(よし来た……後は………決められるかどうか……)エテボース!治療開始!!」
「エボッ!!」
ロミは真剣な表情でエテボースを繰り出した。
エテボースはファイティングポーズを取り、気合い十分だ。
「(タヒョウちゃん……目を背けないで、私のバトル…しっかり見て…!)エテボース!みずのはどう!!」
「エェェェ……ボッ!!」
エテボースはみずのはどうをデンジュモクに向かって発射した。
とくせい、テクニシャンの影響でワザの勢いも申し分ない。
『…ムダダ………デンジホウ!!』
だがデンジュモクはでんじほうでみずのはどうを適確に貫き、更にその奥にいるエテボースにも向かいにいった。
「かわしてエテボース!」
「エボ!」
エテボースはその場で跳ねてでんじほうをかわした。
『……アマイ……。』
だがそれに合わせるようにデンジュモクは一瞬でエテボースに近づき、
『……パワーウィップ……!』
「エボッ…!?」
パワーウィップでエテボースを地面に打ち落とした。
「エテボース!!」
「エ……ボ~ォ…。」
やはりデンジュモクの実力はかなり高い。
打ち落とされたエテボースは戦闘不能になっていた。
「戻って、エテボース。」
ロミはすぐにエテボースをモンスターボールに戻し、また別のモンスターボールを手に取った。
「(絶対に負けられない…!タヒョウちゃんを勇気付けるために……!!)ナットレイ!!」
ロミはナットレイを出し
「ミサイルばり!!」
と、すぐさま攻撃の指示を出した。
「ナァァ……トォッ!!」
ナットレイは突然の指示にも戸惑う様子をみせず、ミサイルばりを発射した。
『……………!!?』
デンジュモクは奇襲に反応できなかったのか、ミサイルばりに直撃した。
『ムダ……。』
だがデンジュモクは攻撃に一切怯むことなく、ただこちらを見つめるように立っている。
「………ロミ……さん……。」
タヒョウも響めきに気づき、少し顔を上げてバトルの様子を見始めた。
「やっぱり効かないのか………。(でも、諦めずに何度もやれば……!!)ナットレイ!もう一度ミサイルばり!!」
「ナトォ!!」
ナットレイは体中の棘を光らせミサイルばりを発射しようとした。
『…オソイ………。』
だがデンジュモクは猛スピードでナットレイに接近、ミサイルばりが発動する間もなくパワーウィップで攻撃した。
「ナットォォ……!」
「ナットレイ!!」
デンジュモクが使用するパワーウィップの威力は凄まじく、平均体重が110キロもあるナットレイが簡単に吹き飛ばされてしまった。
だがデンジュモクもとくせい、てつのトゲで少しダメージを受けている。
「大丈夫!?」
「ナッ………トォォ……。」
ナットレイはロミの声援を受けなんとか立ち上がり、
「ナットレイ!こっちもパワーウィップ!!」
「ナットォ!!」
触手を伸ばし、パワーウィップを放った。
『キサマ………ワザ……ツウヨウ…………シナイ…!』
デンジュモクはそう言い放ち、同じようにパワーウィップを放った。
パワーウィップは互いにぶつかり合い、激しく攻め合った。
だがその時間も束の間だった。
次第にナットレイの方に押し込まれてしまい、とうとうパワーウィップがナットレイにヒットしてしまった。
「ナット~ォォ……。」
「ナットレイ!!」
パワーウィップに直撃を喰らったナットレイはすぐさま戦闘不能になってしまった。
「ありがとう……戻ってやすんでて…!」
ロミはデンジュモクにナットレイがさらわれないようすぐにモンスターボールに戻した。
「やっぱり………無理なのですよ………あんな化物に勝つのは…。」
タヒョウが諦めたような口調で言う。
(後一匹………この子で決着をつけなちゃ…。)
ロミはそう思いながらも最後のポケモンのモンスターボールを手に取るのを思い止んでいた。
「はぁぁぁ…………ふーぅ。でも、この子でやらなきゃ………。デデンネとタヒョウちゃんが……。」
ロミは大きく深呼吸をした後、踏ん切りをつきモンスターボールを手に取った。
「(お願い力を貸して!)ドレディア!!」
ロミが出したのはドレディアだ。
本来、頭に大きな花飾りを咲かせ、下半身は葉っぱのドレスのようになっている可愛らしくも美しいくさタイプのポケモンだ。
だが、このドレディアは大分様子が違う。
頭の花は枯れており、ボールから出た時からずっと険しい顔でロミのことを恨んでいるかのように睨み続けている。
過去になにかあったのだろう。
「お願いドレディア……!私があなたにやった事を…………許してなんて言わない……。
だけど、今は……今だけは!力を貸して!!」
ロミは冷たい視線で見詰めるドレディアに対し、必死に語りかけている。
だが、ドレディアはずっと睨み続けたまま動かない。
「お願い………ドレディア……。力を貸して………………お願い…。」
ドレディアはロミの瞳からゆっくりと滴る涙を見て、視線をロミから外し、小さくため息をついてから戦闘態勢を取った。
想いが届いたことにより、ロミは少しだけ安心し、まだ激しくバクバクなる鼓動を抑えるために一旦深呼吸をし、目を閉じた。
「……………(ごめんね、ありがとう、ドレディア。)………ドレディア!エナジーボール!!」
「レッディィィオッ!!」
ドレディアはロミの指示と同時にエナジーボールを発射した。
『ダレデモ…………オナジ……!』
デンジュモクもドレディアに対抗するようにエナジーボールを発射。
互いのエナジーボールは空中で競合い、爆発した。
『………パワーウィップ……!!』
デンジュモクは爆発に怯みもせず、爆発で生じた煙の向こうからパワーウィップを放った。
「ドレディア!いあいぎり!!」
「レダァ!!」
ドレディアは刀のようなエネルギーを纏わせた両手を顔の前で交差させ、パワーウィップをギリギリの所で防いだ。
「ふぅ……危なかった………。」
『ムダグチ…………タタクナ!』
デンジュモクは攻撃の手を緩めずにでんじほうを放った。
「………!!避けて!」
「レディア!!」
ドレディアは体を捻り、なんとかでんじほうを避けた。
「レダッ!」
一瞬でも油断をしたロミに、ドレディアはまた厳しい目で見詰めた。
「うぅ……!そ、そうだね、安心している暇なんてないよね。」
「レディッ!!」
「ドレディア!いあいぎり!!」
「レッダァ!」
ドレディアは再び、両手に刀の様なエネルギーを纏わせ、デンジュモクに向かって行く。
『………デンジホウ……!!』
デンジュモクも自身に近づけまいとでんじほうで迎撃。
「レダッ!!」
それにも怯まずにドレディアはいあいぎりででんじほうを切断。
その勢いを保ったまま、デンジュモクに迫って行く。
『…エナジーボール!』
デンジュモクも臆せずに、エナジーボールで更に迎撃を施した。
「こっちもエナジーボール!!」
「レッダゥゥル!!」
ドレディアも両手の葉からエナジーボールを繰り出し、デンジュモクのエナジーボールを破壊。
破壊の衝撃で爆煙が生じながらも、ドレディアは煙を振り払い、ただひたすら走って行く。
『チョウシ…………ノルナ!ジュウマンボルト!!』
デンジュモクは止まらぬ勢いで自身に迫るドレディアに向かい凄まじい威力の10まんボルトを発射。
「ドレディア!一気に決めるよ!!リーフストーム!!」
「レダッ!レイ………ダァァァ!!」
ドレディアは自身の周りに鋭利な葉っぱを巻き起こし、嵐のように飛ばした。
リーフストームは10まんボルトの勢いを殺し、デンジュモクに向かい飛んでいく。
『ワレ………コウゲキ……クラワヌ!デンジホウ!!』
デンジュモクは自身に向かうリーフストームに向かって、今までになく大きなでんじほうを放つ。
リーフストームとでんじほうは空中で激しく競り合い爆発し、途轍もなく大きな爆煙を生じた。
「行けぇ!ドレディア!!いあいぎり!!!」
「レッダァァァ!!」
『………!!?』
ドレディアは爆煙の中でも怯まず突き進み、遂にいあいぎりをデンジュモクに当てる事に成功した。
煙の中であったためデンジュモクは受け身が取れず、かなりのダメージを負った。
「………凄い……。」
煙が晴れ、倒れ込むデンジュモクが見えた。
何度も迎撃されても諦めずに攻撃を繰り返し、かなりの威力のダメージを負わせた事にタヒョウは感激している。
『グッ……………。ドコイッタ…。』
デンジュモクは立ち上がりドレディアを探すも、姿が見えない。
ただ、どこかで芳しい匂いが漂っていた。
「ふふっ。私達の目的は、お前を倒すことじゃない。」
『………ナニ?キサマ………ナニ……イウ?』
「ウルトラホールの下の方、見てご覧。」
『……?』
デンジュモクは言われた通りに、ウルトラホールの真下を見た。
だが、そこには何も無く、ただ草原が広がるばかりだった。
『ナンダ……………ナニモナ……………ン?』
そう、何も無いのだ。
その事に、デンジュモクは感付き、身構えたがもう遅かった。
デンジュモクの足元が盛り上がり、何者かが飛び出してきたのだ。
「デネ!!」
デデンネだ。
さっきまでウルトラホールの真下でねむり状態になっていたデデンネが、ドレディアのアロマセラピーで回復したのである。
デデンネはそのままの勢いでデンジュモクに向かい、あなをほるで攻撃した。
『グッ………!!』
奇襲であり、更に効果はバツグンな攻撃には流石のデンジュモクは耐え切れず、その場に倒れ込んだ。
「凄い……!」
あの凶悪なウルトラビーストであるデンジュモクが目の前で倒されたのに、タヒョウは驚きが隠せない。
そんなタヒョウの目の前に、コアの姿のまま、戦闘不能になったメテノを抱えたドレディアが近付いて来た。
ドレディアはメテノを優しく下ろすと、何も言わずにロミの所へゆっくりと向かって行った。
「あ、ありがとう………ございます。」
タヒョウはドレディアに深くお辞儀をすると、メテノを抱え上げた。
そして、モンスターボールを取り出してメテノを戻すと、デデンネと勝利の喜びを分かち合うロミに目を向けた。
(凄いな…………ロミさんは……。
まるで、アイさんみたいだ……。)
ずっと泣いていたタヒョウに自然と笑顔が戻っていた。
ロミもタヒョウを見て、安心して優しく微笑んだ。
しかし、その時だ。
突然眩い光と共に、デンジュモクが再び起き上がったのだった。
『オワッタ………オモウナ!!』
デンジュモクは己の持てる力を全てを使うかのように、荒々しく四方八方に10まんボルトを放つ。
「………!デデンネちゃん!シグナルビーム!!」
「デネ!!」
ロミはデンジュモクの攻撃にいち早く反応した。
デデンネはシグナルビームを放ち、10まんボルトを迎撃する。
「ひぃっ…!!」
しかし、でんきが苦手なタヒョウは恐怖で体が固まり、動くことができない。
鋭い電撃がタヒョウに突き刺さりそうになったその時。
「レッダ!!」
ドレディアがタヒョウの前に立ち塞がり、身を挺して10まんボルトからタヒョウを護った。
「レェイ……ダッ。」
さっきまでのバトルで相当体力を使っていたのか、ドレディアは、その場で座り込んでしまった。
「え……ドレディア……さん………。」
タヒョウは自分を庇い、動けなくなったドレディアにショックを隠せない。
せっかく戻った笑顔も消えてしまい、また俯いてしまった。
そんなタヒョウを横目に、ロミは急いでドレディアをモンスターボールに戻して、再びデンジュモクへの攻撃を始めた。
「くっ………デデンネ!つばめがえし!!」
「デネ!!」
デデンネはすばしっこくデンジュモクに向かい走って行く。
『オソイ!パワーウィップ!!』
「デネ……!」
しかし、デンジュモクの素早さは衰えることを知らない。
デデンネのスピードを圧倒し、強烈なパワーウィップを叩き付けた。
「デ………ネェェ。」
デンジュモクの力は物凄く、デデンネも力尽きてしまった。
「………戻って!デデンネ!!」
ロミは急いでデデンネをモンスターボールに戻した。
モンスターボールを腰に付け直し、深呼吸をすると、タヒョウの方を向き大きく叫んだ。
「タヒョウちゃん!何いつまでもウジウジしてるの!?私は、笑顔で可愛いくて生意気なタヒョウが好き!!
今、デンジュモクと戦えるのはタヒョウちゃんだけ!
怖いのは分かる。でも、私や、タヒョウちゃんのポケモン達がついてる。諦めずに頑張って!!
見せてよ!コールジムのジムリーダーの実力を!!」
「…………!ロミ……さん!!」
ロミの必死の言葉にタヒョウは顔を上げ、ゆっくりと立ち上がった。
(そうだ。いつだってそうだった。)
そして、モンスターボールを取り出し、いつも以上に大きく振りかぶると気合い十分にモンスターボールを投げた。
「行けぇ!!クズモー!!」
「クモ!!」
「(わたしは一人じゃない。支えてくれる人がいる。支えてくれる仲間がいる。皆がいれば、何でもできる。)
わたしは誇り高きコールジムのジムリーダー!タヒョウ!!
固くて、しなやかな女の子!!
お前なんかには、絶対に負けません!!」
タヒョウは自分を奮い立たせるため、デンジュモクに向かい叫んだ。
その顔には迷いはない。
「クズモー!アクアテール!!」
「クモッ!!」
クズモーは、タヒョウの指示と同時に駆け出し、尻尾に水のエネルギーを纏わせた。
『…オナジコト……………エナジーボール!!』
デンジュモクもすかさずエナジーボールを撃って反撃。
「クズモー!まもる!!」
「クモ!!」
クズモーは被弾する直前にバリアを貼って身を守り、そのまま直進していく。
『………パワーウィップ!!』
デンジュモクは触手を伸ばして更なる迎撃を仕掛けてくる。
「ベノムショック!!」
「クッ……モモモォッ!!」
クズモーもすかさず、ベノムショックを発射してパワーウィップを防いだ。
『……ヤラセナイ!
エナジー……………ン?』
次の攻撃を仕掛けようとしたデンジュモクだが、クズモーの姿が見えない。
ベノムショックとパワーウィップが衝突した一瞬でデンジュモクの背後に回ったのだ。
「行け!アクアテール!!」
「クモ!」
『………!?』
アクアテールはデンジュモクに見事に命中。
次の攻撃に備えるため、一旦距離を取った。
倒れかけたデンジュモクだが、持ち前のしなやかさで体制を立て直すと、全身に力を込め始めた。
「………来る……!」
タヒョウは自分の体が身震いするのを感じた。
苦手なでんきタイプの攻撃が来ると予感をしたのだ。
『ジュウマンボルト…!!』
タヒョウの予感は的中し、でんきタイプの10まんボルトがデンジュモクから発射された。
「(もう、怖くない。見守ってくれる仲間がいる。共に成長し競い合う仲間がいる。一緒に戦う仲間がいる。)クズモー!かわして!!」
「クモ!」
タヒョウは10まんボルトを既に感じ取っていたので、反応よくクズモーに指示を出せた。
クズモーもいつもよくキレの良い動きができている。
ウルトラビーストという強敵と対峙しながらもタヒョウの真剣な表情には笑顔が篭っている。
「うん、これでいいよタヒョウちゃん。(苦手は必ずしも克服しなくてもいい。ある時にそれは力になってくれるから。)」
「クズモー!ハイドロポンプ!!」
「クモォッ!!」
タヒョウの気持ちを受け、クズモーは力一杯にハイドロポンプを発射。
『ジュウマンボルト!!』
デンジュモクも再び、10まんボルトを発射し、ハイドロポンプを迎え撃つ。
「今だよ!アクアテール!!」
「クモォッ!!」
クズモーはハイドロポンプを止め、素早い動きでデンジュモクに急接近した。
『ナニ………!?』
あまりにも早いクズモーの動きに、デンジュモクは反応ができずにいる。
「クモ!!」
そんなデンジュモクに、強烈なアクアテールの一撃をお見舞いし、吹き飛ばした。
『グッ…………!!』
ダメージが相当溜まっているデンジュモクは、足元が覚束ず、今にも倒れそうだ。
「タヒョウちゃん!行けぇ!!」
「クズモー!トドメの………」
ロミの声援と共に、タヒョウはクズモーに指示を出そうとした、その時だ。
『キサマ……………ワレ………ユルサナイ!!!』
そう言うとデンジュモクは手足と尻尾を地面に突き刺した。
「(何をする気?でも、絶好のチャンス!!)クズモー!もう一度アクアテール!!」
突然の行動にタヒョウは一瞬戸惑ったが、一か八か攻撃に出た。
「クモッ!!」
クズモーも、デンジュモクの狙う事が起こる前に手を打てるよう、さっきよりも更に速くデンジュモクに接近する。
だが、次の瞬間。
デンジュモクの身体から禍々しい赤いオーラが現れ、その衝撃でクズモーは吹き飛ばされてしまった。
「大丈夫、クズモー!?」
「クモ!」
衝撃はさほど強くなかったのか、クズモーは直ぐに体勢を整え、タヒョウの呼び掛けに頷いた。
「よし!クズモー!!もう一度アクアテール!!」
「クモッ!!」
再びクズモーはデンジュモクに急接近、危険を承知で一気に方を付けに行った。
『………ムダダ!!』
しかし、デンジュモクは手足や尻尾を地面から抜くと、物凄いスピードでアクアテールを交わした。
そのスピードは格段に上がっており、まるで瞬間移動でもしてるように見えた。
『フゥ………。ヤッパリ………チカラ……ネズヨイ………!!』
どうやら、デンジュモクは体が衰弱すると、大地から電気エネルギーを吸い取り、体力を回復するらしいのだ。
だが、この爆発的なスピード上昇はどこか普通じゃない感じがする。
「いくよ……!クズモー…!!」
「クモ!」
タヒョウは内心少しの恐怖を感じたが、勇気を振り絞り、クズモーにワザの指示を送ろうとした。
だが、その時だ。
『ジュウマンボルト!!』
デンジュモクが一瞬にして、クズモーの前に現れ、超至近距離の10まんボルトを喰らわせたのだ。
「クモォォォッ!!」
「クズモー!!」
クズモーは勢いよく、吹き飛ばされて地面に倒れ込んだ。
10まんボルトの追加効果のマヒで、全身が痺れている。
「一旦戻って!!」
その様子を見て、タヒョウはモンスターボールを取り出し、クズモーを戻そうとした。
『ヤラセルカ!!』
「うわっ…!!」
しかし、デンジュモクは触手を伸ばし、タヒョウの手からモンスターボールを奪い取ってしまった。
『トドメ………!』
モンスターボールを地面に落とすと、デンジュモクは、全身に力を込めてでんじほうの発射準備をしていた。
「やらせない!!」
タヒョウはクズモーの前に立ち塞がった。
クズモーを守りたいという気持ちが、自然と体が動いていたのだ。
瞬きもしない真剣な表情は、どこか恐れを隠しているかのようにも見えた。
「タヒョウちゃん!逃げて!!」
ロミが必死に制止させようとするも、タヒョウはデンジュモクを見続けたまま一歩も動かない。
『バカ……………キエロ!!』
感情的になっていたデンジュモクは今までで一番強力なでんじほうを繰り出した。
あれに当たれば、間違いなく体中の水分が一瞬にして蒸発し、その命はないだろう。
タヒョウは歯を食いしばり、手をギュッと握った。
眼を開けてるのに、何かが目の前を塞ぐように暗くなった。
時間がゆっくりになるような感じがしてきて、頭の中で、今までの旅の思い出が、グルグルと回っていた。
(わたしは………コールジムのジムリーダー。
まだまだ未熟で、誇れる所なんて全然ない。
だから、わたしは………立派になりたい。
みんなと一緒に……強くなりたい!
こんな所で……………死んでたまるか!!)
でんじほうが炸裂し、タヒョウがいる地点を中心に、大爆発が起きた。
「タヒョウちゃぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
爆発による煙と突風にさらされながら、ロミはタヒョウの安否を心配し、必死に叫んだ。
しかし、爆煙からは一切の返事が聞こえない。
「そんな………嘘でしょ………。」
ロミの瞳から、涙が零れた。
信じたくない絶望が、目の前で起こってしまったから。
『ヤリスギタ。シカラレル……………?』
敵を抹殺し、冷静になったデンジュモクは無慈悲にそう呟くと、ロミの方に体を向け、再びでんじほうの準備をした。
『シンダ………ニンゲン………ポケモン…………イラヌ。
キサマ………ポケモン…………クレ。』
デンジュモクに見据えられたロミは恐怖と絶望で、何もできなかった。
(ごめん………タヒョウちゃん。
護れなかった。……………ごめん。)
『デンジホウ!!』
下を向き、涙ぐむロミにデンジュモクはさっきよりも加減をしたでんじほうを放った。
その時、爆煙から声が聞こえた。
「ストーンエッジ!!」
「テノッ!!」
それと同時に、巨大な岩石が飛んできてでんじほうを消滅させた。
『ナニ……!?』
「えっ!!?」
ロミとデンジュモクが驚いたような表情で、ストーンエッジが飛んで来た方向を見た。
爆煙は晴れてきており、中の様子が少しずつ確認できた。
爆心地を中心に地面が抉れており、爆発の凄まじさを物語っている。
「もう、心配掛けさせないでよ………。」
ロミはクレーターの中心を見て、安心した。
そこにはタヒョウが、無傷なままクズモーを抱いたまま立っていたのだ。
横にはストーンエッジを繰り出したと思われるメテノ、そして何故かマッハポケモンのガブリアスがいた。
「大丈夫!?タヒョウちゃん!!」
「はい!ガブリアスさんが助けてくれたのです!!」
タヒョウが被弾する直前に、空からガブリアスが飛んできて、でんじほうを無効化してくれたのだ。
『ナンダ………キサマ……!』
デンジュモクはガブリアスを見た途端に敵意を剥き出しにし、攻撃の体勢を取った。
『女の方へ逃げろ………。』
ガブリアスはそうタヒョウに言うと爪に龍のオーラを纏わせ、戦闘体勢に入った。
「えっ……?(喋った………)」
タヒョウは、普通のポケモンが喋り掛けてきた事に驚いたが、素直に従うことにした。
「ロミさ〜ん!」
「タヒョウちゃん!」
タヒョウはメテノをモンスターボールに戻し、急いで、ロミのもとに駆け寄った。
まだ、デンジュモクがいるのは変わりないが、恐怖から解放されたタヒョウは今まで溜めていた涙が一気に溢れた。
「怖かったね。よく頑張った。」
ロミはタヒョウを抱き締め、優しく頭を撫でてあげた。
『ジャマスルナ!!エナジーボール!!!』
一方、デンジュモクは邪魔をしたガブリアスに怒り、凄まじい威力のエナジーボールを発射した。
『遅いな………。』
そう呟いたガブリアスはすでにデンジュモクの後ろにいた。
音速で、エナジーボールを切り裂き、デンジュモクにもドラゴンクローで切り付けていたのだ。
『ナニ…!!?』
デンジュモクは深い傷を負い、その場で倒れ込んだ。
それに反応したのか、空に開くウルトラホールが、更に広がりデンジュモクを吸い寄せた。
『キサマ………オボエ…………テロ……………。』
デンジュモクは吸い寄せられながら、ガブリアスを睨み付け、捨て台詞を吐いてウルトラホールの彼方へと消えていった。
それと同時にウルトラホールの穴も塞がり、完全に消えてしまった。
「……………凄い………。」
「何だったんだろう………。」
オーラを纏い、強化したデンジュモクをたったの一撃で倒したガブリアスに、タヒョウとロミは驚きを隠せない。
ガブリアスはクズモーのモンスターボールを拾い上げると、タヒョウ達のもとへ渡しにきた。
『これは君のだろ。大事にな。』
「あっ…………はい。ありがとうございます。」
タヒョウは涙を拭い、モンスターボールを受け取ると、クズモーを戻した。
ガブリアスはしばらく二人を見詰め、二人が抱く疑問を察したように話し出した。
『自己紹介が遅れたな。
俺は見ての通りガブリアスだ。名はない。
俺達は守り神様の指示で、ウルトラビーストからこのラーロアを護る、言わば“ビーストキラー”をしてるのさ。
人語を操れるのも、守り神様から受け取った力だ。』
「だから、わたしを助けてくれたのですか?」
『それもあるが、君からは極僅かだが、ビースト反応が出てる。』
「ビースト反応?」
今まで数回ウルトラビーストとあったタヒョウでも初めて言葉だ。
『ああ、ウルトラビーストと、直接肌に触れたニンゲンやポケモンからでる反応だ。』
「直接……………。」
思い出そうとしても、見当もつかない。
そもそも、ウルトラビーストとは遭ってるものの、今までこんな激しい戦闘をしていなかった。
「どう、タヒョウちゃん。何か分かった?」
「いいえ……。何も………。」
『無理もない。君から出ているビースト反応の源は………』
ガブリアスはそこまで言うと突然、空を見上げ、何者かと交信をしだした。
『どうしました?
……………何!?分かりました。大峡谷ですね。今行きます!』
「どうしたのですか?」
タヒョウとロミからしてみれば、会話を急に止め、一人でブツブツと何かを言ってるように見えていた。
『すまん。仲間から交信が来た。
ウルトラビーストらしき生物がトレーナーと一緒にいるらしいんだ。』
「大変ですね、頑張ってください!」
『ああ。』
そう言うとガブリアスは翼を大きく広げ、ニポ島に向けてマッハのスピードで飛んで行った。
「さっ、タヒョウちゃん。ニコニシティに戻ろっか。ポケモン、回復しないとね!」
「はい、そうですね!」
「なになに〜ぃ!急に素直になっちゃって!
私の事好きになっちゃった?」
「なっ………何恥ずかしい事言ってるんですか!!」
「あ〜!照れちゃって、カワイイ!」
「可愛くないです!!わたしは……」
「誇り高きジムリーダー………でしょ。」
「はい……!」
「もう、怒んないでよ。私、タヒョウちゃんの事、いちポケモントレーナーとして大好きだからさ。これからも頑張ってよ!」
「ええ…………えっと、ありがとうございます。」
「え〜ぇ?何てぇ?」
「もう、からかわないでください!」
「ふふん。じゃ、帰ろ!おててつなぐ?」
「嫌ですよ!恥ずかしいです!!
(ロミさん、ありがとうございます。
貴女のおかげで、トレーナーとして、また一つ、成長することができました。
わたしも、ロミさんの事、大好きです。)」