「完結」無惨様をメス堕ちさせてみた   作:flyfull

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次でラストです


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氷が散乱する。目の前の肉の壁が私を向かい入れるように蠢いている。

きっと、この先で待っている選択はこれまでの人生の中で一番大きな選択になるだろうという確信があった。

深呼吸を一回。緊張しているのか、体が震える。

憐哀さんに会いに行く前に、服装が乱れていないか確認しよう。

だらしない格好で会いたくなかった。

いざ、向かおうとした時。庭先に、木蓮の花が咲いている。

何故か憐哀さんが思い浮かんだ。

どうしても一輪だけでも欲しい。

…失礼だろうけど、お願いしてみよう。

産屋敷さんは心よく頷いてくれた。ありがとう。何するのか分かっていたみたいで、小刀を貸してくれる。

小刀で枝の形を整える。これなら上出来だろう。

産屋敷さんに小刀を返し改めてお礼を言う。

憐哀さんを待たせてしまった。

少し急ごう。背中に少し太陽があたる。

 

 

肉の繭に入る。十歩ほど進むと憐哀さんがいた。声を掛ける前に憐哀さんの顔を見て、気が付いたら駆け寄っていた。

憐哀さんはとても怒り、そして酷く怯えている。二つの感情に飲み込まれていたから。

 

『憐哀さん!』

 

「あと少し時間があれば、こんな薬など分解し奴等を皆殺しに出来る!その後に奴等の屋敷で夜まで待てば私の勝ちだった!不滅の存在になる筈の私が死ぬなど許されない!私はお前と永遠を手に入れる筈だ!」

 

繭の外からは、何か焼けるような音がする。

憐哀さんが苦悶の表情を浮かべる。

助けたい!どうすればいい?

私はただ憐哀さんの心配をするしか出来ない無力感と、屈辱を感じていた。

出来る事はないか?今憐哀さんの為に出来る事は!

ふと、憐哀さんが手を握ってくれた。

私も握り返す。

 

「苦しい!体が焼けて塵になっていく!!必死で再生しているのに、再生が追い付かないのだ!」

「もっと私に触れてくれ!お前に触れているその部分だけが暖かい!苦しく無いのだ!」

 

抱き締める。私が抱き締めている部分だけで楽になるのなら、きっと助けになれるのだと思って。

両腕の中で収まっている、彼女が堪らなく愛おしい。

守りたいのに…

 

「…とても楽になった。お前は不思議な奴だな。私の心を変化させる唯一の存在だ」

 

繭の所々から、日差しが漏れてしまう。

 

『私は憐哀さんの唯一になれて光栄です。それに、貴女も私の特別です。貴女に一目惚れをした時からずっと…』

 

憐哀さんは、そうかとフッと笑った。

それはとても自然な笑顔でとても美しかった。

 

「これを私につけろ。」

 

憐哀さんは懐から、口紅を出した。

あの時の口紅だ。

 

憐哀さんの口に口紅を塗る。綺麗だ…涙が出る。

 

『憐哀さん。渡したい物があります。』

 

憐哀さんは少し不思議そうに、面白そうにしながら

「いいだろう受け取ってやる。」と言っていた。

 

木蓮の花を憐哀さんの髪に挿す。

 

『櫛の代わりです。勿論、貴女に渡す事の意味は知っています。そう言うつもりで渡しました。少し古くさい求婚の方法ですけど…受け取ってくれたなら嬉しいです』

 

突然の求婚だ。

憐哀さんは驚愕しているようだった。

 

「お前という奴は…どうしてくれる!太陽に焼かれて、とても痛くて苦しいのに!とても幸せなのだ!全てを共にしてくれると?そう思っていいのだな?」

 

勿論です…貴女は私の全てなのだから。

 

『私は共に同じ結末を迎えたい。貴女とならば何処に辿り着いたとしてもきっと大丈夫です。憐哀さん、私と結婚してくれませんか?苦しい時も…死ぬ時も、この世で背負った業でさえも全てを分かち合いましょう』

 

返事は口にくれた。

 

 

 

 

ほんの数秒なのかもしれないし、数分かもしれない。

気が付いたら唇を離し、見詰め合っている。

朝日が辺りを照らす。

繭は完全に塵に変わっていた。憐哀さんの体が焼け始めてしまった。震えていた。それは私の震えなのか、憐哀さんのものなのかは分からない。

お互いが恐怖を感じていた。

太陽から隠すように、より強く抱き締める。

 

「……お前は私と結末を共にすると言ったな?」

 

『はい。貴女はきっと地獄に堕ちてしまう。でも一人にはさせない。貴女が地獄に堕ちるのならば、私も地獄に堕ちます』

 

憐哀さんが私の頬に触れている。

そんな事をすれば太陽にあたってしまう!

憐哀さんの手が塵になっていく、それは頬に掠めて風に舞う。

 

「地獄なんて信じてはいない。だが、お前とまた会えるのならば地獄がある事を許してやる。待っているぞ」

 

体の大半が塵に変わってしまった…。

もっと早く出会えていたならばよかったのに…きっと幸せに暮らせていた筈だから。

 

「愛している。永遠に」

 

『私も愛しています!永遠に…!』

 

塵に変わる。腕の中に確かにあった温もりが無くなる。

空を切った腕は、憐哀さんが死んでしまった事を証明していた。

最後に残った服を抱き締める。

何も出来なかった事が悔しくて、憐哀さんが死んでしまったのが悲しくて涙が止まらなかった。

 

 

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