光戦神のファミリア   作:レンジャー1人

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まぁ前書き通りの『後の黒歴史』案件です。


序章
001 遠征帰り


☆ダンジョン37階層【白宮殿(ホワイトパレス)

『UGAAAAAA!!!』

黒っぽい強靭な骨を持つ戦士(ウォーリアー)系モンスター【スパルトイ】の雄叫びが巻き起こる

『………………!!』

同じ骨で構成されるが、スパルトイとは違い薄い天然の隠蔽膜(ギリースーツ)を纏う怪物(モンスター)、【スカル・シープ】の静かだが明確な殺意を持つ眼差しを向ける。二匹は一斉に互いへ飛び掛かる。スパルトイはその手に持つ剣を、スカル・シープは鋭利な爪の生えたその腕を。

身軽な動きが特徴的なスカル・シープはヒラリとスパルトイの剣を躱す。スパルトイも返す刀で追撃をかけるが、それよりも速くスカルシープの爪が迫る。が、爪の軌道に被せる形で掲げられたスパルトイの盾がソレを防ぐ。

 

本来(余程のことでもない限り)協力体制にある別種の怪物(モンスター)同士が戦い合う。

ここ深層37階層【白宮殿(ホワイトパレス)】の大目玉【闘技場(コロシアム)】は、怪物(モンスター)常に怪物(モンスター)同士が争い合う

―『戦わなくては生き残れない!』―

強化種が生み出される可能性が高く、怪物(モンスター)が生まれ落ちるまでの間隔(インターバル)が無く一定数存在するまで生まれ続ける為ギルドからの指定レベル――まぁこんな所に行くのはよっぽどの自殺志願者か戦闘大好き人間(バトルジャンキー)である――は第1級のLv.5〜6程度の超危険地帯である。そんな都市最強派閥(【ロキ・ファミリア】)でも決死行の最中でもない限りは滅多に立ち寄らない超危険地帯だが……………

 

今その【闘技場(コロシアム)】にて、一人の男が舞っていた。

 

 

上には軽鎧(ライトアーマー)、下には極東の(はかま)を着て、トドメに頭と背に蒼の帽子とマントを羽織っていた。一見すると『コーディネートに失敗した不審者』だが、その不審者は手に持つ双剣と、腰から自動的に怪物(モンスター)へ向かって行く六本の鎖が舞い、怪物(モンスター)を斬殺、突殺されて行く。

 

「………」

 

圧倒的な戦闘を展開する人物は、そのまま鏖殺を敢行する。【闘技場(コロシアム)】の法則上怪物(モンスター)がイヤと言う程降って湧くが、それすらも手に持つ双剣で切り裂き、鎖にて胴に風穴を開ける。心なしか1()()()()()()()()()()()()()()に見える不審者は目の前にいる――先程まで戦い合っていたスパルトイとスカル・シープの二体――怪物(モンスター)を視界に収めると、「………強化種か」と呟くと何処からか取り出した波打つような模様が特徴的な籠手を腕に嵌めた。次いで()()()()()()()()

 

『『!!!?』』

 

鋼の如き見事な半裸を急に見せつけてきた男に怪物(モンスター)達は困惑するが、次いでチャンスだと考え一斉に飛びかかった。

 

――人間唯一の利点の『防具』を躊躇なく脱いだ理由は定かではないが、何はともあれ殺せば終わり。

 

怪物(モンスター)所以の単純明快な思考に身を任せ、スパルトイは剣を、スカルシープは己の爪牙を持ってして飛び掛かる。

 

「―――が魂(ニス)】」

 

何事かを呟いた男は疾風のような籠手――武具名【ストームフィスト】――を装備した右手を振り上げ、地面に打ち付ける。

 

ついさっき装備されたので怪物(モンスター)達は知らないが、【ストームフィスト】には風属性の付与(エンチャント)が施されており、相手を攻撃した場合暴風が吹き荒れ攻撃した対象を吹き飛ばす魔法具だ。半永久的に使える【魔剣】の様なものとして、男の【ファミリア】の仲間が作った試作品を今回男が試験として持ってきていた。

 

 

……まぁその【半永久的】は【一瞬】と化すが。

 

 

男が【ストームフィスト】を勢い良く地面に打ち付ける。

 

高Lv.故の圧倒的膂力によって地面が割れ、クレーターが出来上がる。

 

付与(エンチャント)効果によって風が捲き上る。

 

風によって発生した()()()()()が発生し、怪物(モンスター)二体を切り裂いた。

 

風は更に肥大化し、風は()()へと発展した。

 

37階層【白宮殿(ホワイトパレス)】、【闘技場(コロシアム)】は、巨大なハリケーンに包まれた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

☆ 【闘技場(コロシアム)

「へぇ…【闘技場(コロシアム)】の下にこんなところあったんだ」

 

男――【バルドルファミリア】団長【決闘王者(チャンピオン)】の『フィガロ・マイルズ』は、物の見事に【闘技場(コロシアム)】をブチ抜いた結果見つけた地下――まぁ彼が今いるところ自体が地下なのだが――空間を探索していた。

 

怪物(モンスター)も出てこないし気温湿度共に適温。オマケに飲み水が湧いている…うん、【休憩場所(レストスポット)】として使えそうだね)

 

自分の迷宮地図(ダンジョン・マップ)にガリガリと書き込み、パタリと閉じた。

 

 

因みにたどり着く条件が闘技場(コロシアム)を打ち抜く事なのでギルドで【休憩場所(レストスポット)】として登録される事はなかった。

 

 

「フィガロ団長〜!どこですかー!?」

 

鈴を鳴らすような高音が響き、フィガロが己がこじ開けた『穴』を見上げた。

 

「マギちゃんかい?」

「あ!フィガロさん、見つけました!!だれかロープを〜!」

 

淵からヒョッコリと顔を出したのは薄紫の髪と紫紺の瞳が特徴的な女の子で。その子はフィガロの状況を確認すると戻っていった

 

『ロープ?いいけど…ハイこれ』

『ありがとうございます!ではこの不肖マギ・キリエライト。マシュっと団長を保護してきます!!』

『手はいるかー?』

『お願いします!流石にフィガロさんを一人では持ち上げられません!!』

『うーんいい返事。まぁあの人アビリティの所為で体重すごいあるからな』

『うっし。団長救出作戦班いくゾー!』

『『おおー!!!』』

 

Lv.6特有の超人的聴力で聞き取った会話に苦笑いしながら――次いでボソッと聞こえてきた『あれ団長の【不縛足(アンチェイン)】って壁登れたよな…?』という発言にもっと苦笑いになったフィガロは三人がかりで引っ張り上げようと下ろされてきたロープを引っ張ろうと――――

 

 

「あっ」

 

「「「うわあああーー!??」」」

 

 

能力(スティタス)差によって見事に穴へと救助隊三人を引き摺り下ろした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

☆ダンジョン階層

「団長が重いのは重々承知だろう?次からは注意するようにねぇ」

「はい……」

「すみません」

「善処しま「オン?」……注意します」

 

結局地形に影響されないフィガロの特殊武装(スペリオルズ)、【不縛足(アンチェイン)】によって纏めて配送されたマギ・キリエライト含めた三人は幹部用の大型天幕にて銀髪と白髪が混じっている人間(ヒューマン)によって説教を食らっていた。

 

ダンジョンのような場所には相応しくないように見える純白の白衣を纏うメガネ装備の痩躯の男性。迷宮都市(オラリオ)が誇るLv.4。【教授(プロフェッサー)】のフランクリン・フランシェスカ。因みに【ストームフィスト】の開発者は彼である――壊された事を知った彼は何処からともなく取り出した『100t』と書かれた漆黒のハンマーでフィガロを地に沈めていた――そんな彼は椅子にその身を沈めつつニヤニヤと自身が折檻した団員たちを眺めながら「もう行っていいよぉ」と手を振った。

 

「「「失礼しました〜……」」」

 

意気消沈した三人はそのままのそのそと出て行った。

 

(まぁ正直彼が私の【ストームフィスト】を壊したことの方が心労的にも予算的にもヤバイからどうでもいいのだけどもねぇ)

 

内心呟きながら自作した際の【ストームフィスト】の作成金額を脳内算出してそれを見なかったことにしたフランクリフは『今後の予算どうしよう』と頭を抱えつつ背もたれを揺らし始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

☆迷宮32階層

『BVVUUUUEEE!!』

トカゲのような大きな体とギロチンの如く鋭利な歯。なによりも鮮血のような体皮の巨大モンスター『ブラッド・サウルス』は自分の足元にいるちっぽけな存在へその大顎を伸ばした。

「――シィ!!」

ちっぽけな存在はくるりと半円状に回りつつ自分の足の爪をその手に持つ小さな短剣で弾こうとした。

バカなやつだと鼻で笑い、そのまま自分の巨大な足がちっぽけな奴へと迫らせ、踏み潰さんと足を地面へ振り下ろす。

 

が、次の『ブラッド・サウルス』が見た景色は()()()()()()()()()目線だった。

 

『UGEEEEAA?!』

 

すぐさま体勢を立て直そうとするが自分の巨躯と反比例して小さな足ではなかなか時間がかかった。

四苦八苦する『ブラッド・サウルス』の視界に、ズンという音と共に鈍色のブーツが目に入る。目だけでその先を見ると、先程まで自分が踏みつぶそうと思っていたちっぽけな奴だった。

 

偶発入手(ランダムドロップ)の依頼は『ブラッド・サウルスの牙』が五つ。ここに来る前に七体倒してきたが、出てきたのは四つ」

 

もう片方の腕に付けられた巨大な片手大剣(バスタードソード)を手に持ち断頭台に立つ処刑人のように振り上げた。

 

「お前で最後になるといいんだが」

 

特に躊躇もなく振り下ろした剣は呆気なく首を切断し、ブラッド・サウルは絶命し灰へと還り、灰の中から一本の鋭い歯が出てきた。

 

「…怪物(モンスター)と言えど、生き物を殺すのはいい気分じゃないしな。よかった」

 

男は背嚢に『ブラッド・サウルスの牙』を入れると、拠点へと戻って行った。

 

探索兼開発系派閥(ファミリア)、【バルドル・ファミリア】の幹部が一人。

 

闘魂(スピリッツ)】のファビウス・クゥエイフは今日も元気に迷宮踏破(ダンジョンアタック)に勤しんでいた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

☆ダンジョン5階層

「いやー今回の遠征はあんまり振るわなかったな」

「だな。やたらと消耗が激しかった気がする」

「もしかしなくても今回は赤字か?」

「もしかしなくても団長が【ストームフィスト】壊したから間違いなく大赤字だな」

「アレいくらなんだ?」

「600万と少し」

「「「600万!!?」」」

 

5階層では、上級冒険者足る彼らからしたら小指でも伸す事ができる怪物(モンスター)ばかりの為、世間話に興じていた。

ある者は今回の戦果を言い合い、

またある者は今回の消耗の度合いを無想し、

またまたある者は【ストームフィスト】の被害総額告白し周囲の度肝を抜いた。

 

勿論消耗している彼らが【ゴブリン】や【コボルト】の凶刃によって命を落とす可能性も微レ存(ワンチャン)あるのでファミリア所属の下級冒険者が偉業達成(レベルアップ)と先輩たちの護衛を兼ねて周囲の警戒を行っているが、それでも彼らの空気はがっつり弛緩していた。

 

「なぁベノス」

「…なんでしょうか。ファビ」

 

周囲のバカ話には付き合わず黙々と周囲の警戒を怠らなかったファビウスと、時代の幹部候補の一人であるアマゾネスの【 意地殺し(ブレイブキラー)】。ベノス・アンヘルは二人静かに会話を開始した――因みに【ファビ】とは無駄に長い彼の名前の略称(ファミリア公認)である。

 

「今回このまま何事もなく終わると思うか?」

 

「…不確かな『勘』で言わせて貰えば、あり得ませんね。私達と同じ時期に【遠征】をしていた【ロキファミリア】からの文書によれば、40階層後半あたりで謎の【極彩色の怪物(モンスター)】が出て来たという情報もあります。異常事態(イレギュラー)が起こる可能性が著しく低いこの上層でも、注意する事に越した事は無いはずです」

 

「あぁアレか、確かこっちはキャンプ中だから何人か派遣したよな?」

 

「ハイ。団長が壊した【ストームフィスト】のお金を何とか回収しようとしたフランクリフさんと高機動かつ遠距離攻撃に富んだローレンスさんが向かいました」

 

「――相変わらずイカレてるように見えて変な所で常識人っぽい人だな」

 

「私見ですがあの人は自分の研究所(ラボ)が無くなることが怖いだけだと思いますよ?」

 

「あっそう…」

 

苦笑いした後に冷え切った一言で急に冷めた彼らは次いで今回の遠征について話し合う。

 

「今回の遠征は、経験値(エクセリア)的には黒字だが、お金(ヴァリス)的には立派な赤字だな」

 

「ですね。恐らくは今回の攻略(アタック)で団員達の技量ないし【スキル】、【ランクアップ】した可能性は高いと思います。ですが―――」

 

「【ランクアップ】した者が多いという事は、それ相応の超えた物事(偉業)があり、其れに応じて物資(アイテム)の消費も速くなる…ままならないな」

 

思い通りにならいかない現実に苛立ちを覚えながらも其れ等に対応する為話し合う二人。

 

「暫く団長(金遣いの荒いヤツ)の出撃を控えるように言いますか?」

 

「…いや、あの人はウチの旗印だ。そうゆう目的で出撃制限してどっかから漏れたらファミリアの体裁が悪くなるし、下手したら新団員の集まりが悪くなりかねない」

 

「了解。でしたら『報告します!』…何でしょうか?」

 

大声と挙手によって自身の存在を最大限示した団員に、会話を一旦取りやめ聴く姿勢に入る。

 

流石に幹部と幹部候補という上位者同士の会話に横槍を入れるのは少し緊張したのか僅かな冷や汗をかきながらも、彼は為すべき事を為すため一息に話す。

 

「ロキファミリアが数十体の【ミノタウルス】を取り逃しこの5階層付近まで来ているとの事!信憑性は彼の派閥団員から届いた【勇者(ブレイバー)】署名の懇願書。それと先程【遠見】持ちの団員が確かに【ミノタウルス】を発見しました!!」

 

「…本当に起きたな」

 

「はぁ――ですね」

 

『噂をすれば影がさす』、若しくは『虫の知らせ』か。本当に起きてしまった異常事態(イレギュラー)に対し、二人は指示を出すため大声を張り上げる。

 

「Lv.1と2は(スリー)――いや、四人一組(フォーマンセル)で事に当たれ!それ以上は単独行動(ソロ)だ!!」

 

「他派閥の下級冒険者に被害が及んだらコトです!広く浅く遠くを意識したローラー作戦でお願いします!!【ミノタウルス】は怪物強度(モンスターレベル)Lv.2!単独なら3はいる強敵ですので注意を!」

『了解!』

 

流石訓練されたファミリア団員だけあってさっさと指示通り四人一組(フォーマンセル)もしくは単独行動(ソロ)で散っていく冒険者達。

 

『後輩に被害が出ないようにな!?』

『当然!犠牲なんぞ出させねぇよ!』

『イクゾォォォーーー!!!』

 

猛々しい雄叫びを上げながら広範囲に散る冒険者を尻目に、ファビウスもサポーターに預かってもらっていた自身の大剣を装備。

 

「俺も行く。お前はここで待機と、非常時の指揮を」

「分かりました。万が一にもないでしょうが無事を祈ります」

 

激励を受け取り疾駆を始める。ぐんぐん上がって行く速度を肌で感じつつ、彼は尚もスピードを上げる。

 

「…被害が出なきゃいいんだがっ」




キリ悪いけど今回はコレで切ります!
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