001 遠征帰り
☆ダンジョン37階層【
『UGAAAAAA!!!』
黒っぽい強靭な骨を持つ
『………………!!』
同じ骨で構成されるが、スパルトイとは違い薄い天然の
身軽な動きが特徴的なスカル・シープはヒラリとスパルトイの剣を躱す。スパルトイも返す刀で追撃をかけるが、それよりも速くスカルシープの爪が迫る。が、爪の軌道に被せる形で掲げられたスパルトイの盾がソレを防ぐ。
本来(余程のことでもない限り)協力体制にある別種の
ここ深層37階層【
―『戦わなくては生き残れない!』―
強化種が生み出される可能性が高く、
今その【
上には
「………」
圧倒的な戦闘を展開する人物は、そのまま鏖殺を敢行する。【
『『!!!?』』
鋼の如き見事な半裸を急に見せつけてきた男に
――人間唯一の利点の『防具』を躊躇なく脱いだ理由は定かではないが、何はともあれ殺せば終わり。
「―――
何事かを呟いた男は疾風のような籠手――武具名【ストームフィスト】――を装備した右手を振り上げ、地面に打ち付ける。
ついさっき装備されたので
……まぁその【半永久的】は【一瞬】と化すが。
男が【ストームフィスト】を勢い良く地面に打ち付ける。
高Lv.故の圧倒的膂力によって地面が割れ、クレーターが出来上がる。
風によって発生した
風は更に肥大化し、風は
37階層【
ーーーーーーーーーーーーーーー
☆ 【
「へぇ…【
男――【バルドルファミリア】団長【
(
自分の
因みにたどり着く条件が
「フィガロ団長〜!どこですかー!?」
鈴を鳴らすような高音が響き、フィガロが己がこじ開けた『穴』を見上げた。
「マギちゃんかい?」
「あ!フィガロさん、見つけました!!だれかロープを〜!」
淵からヒョッコリと顔を出したのは薄紫の髪と紫紺の瞳が特徴的な女の子で。その子はフィガロの状況を確認すると戻っていった
『ロープ?いいけど…ハイこれ』
『ありがとうございます!ではこの不肖マギ・キリエライト。マシュっと団長を保護してきます!!』
『手はいるかー?』
『お願いします!流石にフィガロさんを一人では持ち上げられません!!』
『うーんいい返事。まぁあの人アビリティの所為で体重すごいあるからな』
『うっし。団長救出作戦班いくゾー!』
『『おおー!!!』』
Lv.6特有の超人的聴力で聞き取った会話に苦笑いしながら――次いでボソッと聞こえてきた『あれ団長の【
「あっ」
「「「うわあああーー!??」」」
ーーーーーーーーーーーーーーー
☆ダンジョン階層
「団長が重いのは重々承知だろう?次からは注意するようにねぇ」
「はい……」
「すみません」
「善処しま「オン?」……注意します」
結局地形に影響されないフィガロの
ダンジョンのような場所には相応しくないように見える純白の白衣を纏うメガネ装備の痩躯の男性。
「「「失礼しました〜……」」」
意気消沈した三人はそのままのそのそと出て行った。
(まぁ正直彼が私の【ストームフィスト】を壊したことの方が心労的にも予算的にもヤバイからどうでもいいのだけどもねぇ)
内心呟きながら自作した際の【ストームフィスト】の作成金額を脳内算出してそれを見なかったことにしたフランクリフは『今後の予算どうしよう』と頭を抱えつつ背もたれを揺らし始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
☆迷宮32階層
『BVVUUUUEEE!!』
トカゲのような大きな体とギロチンの如く鋭利な歯。なによりも鮮血のような体皮の巨大モンスター『ブラッド・サウルス』は自分の足元にいるちっぽけな存在へその大顎を伸ばした。
「――シィ!!」
ちっぽけな存在はくるりと半円状に回りつつ自分の足の爪をその手に持つ小さな短剣で弾こうとした。
バカなやつだと鼻で笑い、そのまま自分の巨大な足がちっぽけな奴へと迫らせ、踏み潰さんと足を地面へ振り下ろす。
が、次の『ブラッド・サウルス』が見た景色は
『UGEEEEAA?!』
すぐさま体勢を立て直そうとするが自分の巨躯と反比例して小さな足ではなかなか時間がかかった。
四苦八苦する『ブラッド・サウルス』の視界に、ズンという音と共に鈍色のブーツが目に入る。目だけでその先を見ると、先程まで自分が踏みつぶそうと思っていたちっぽけな奴だった。
「
もう片方の腕に付けられた巨大な
「お前で最後になるといいんだが」
特に躊躇もなく振り下ろした剣は呆気なく首を切断し、ブラッド・サウルは絶命し灰へと還り、灰の中から一本の鋭い歯が出てきた。
「…
男は背嚢に『ブラッド・サウルスの牙』を入れると、拠点へと戻って行った。
探索兼開発系
【
ーーーーーーーーーーーーーーー
☆ダンジョン5階層
「いやー今回の遠征はあんまり振るわなかったな」
「だな。やたらと消耗が激しかった気がする」
「もしかしなくても今回は赤字か?」
「もしかしなくても団長が【ストームフィスト】壊したから間違いなく大赤字だな」
「アレいくらなんだ?」
「600万と少し」
「「「600万!!?」」」
5階層では、上級冒険者足る彼らからしたら小指でも伸す事ができる
ある者は今回の戦果を言い合い、
またある者は今回の消耗の度合いを無想し、
またまたある者は【ストームフィスト】の被害総額告白し周囲の度肝を抜いた。
勿論消耗している彼らが【ゴブリン】や【コボルト】の凶刃によって命を落とす可能性も
「なぁベノス」
「…なんでしょうか。ファビ」
周囲のバカ話には付き合わず黙々と周囲の警戒を怠らなかったファビウスと、時代の幹部候補の一人であるアマゾネスの【
「今回このまま何事もなく終わると思うか?」
「…不確かな『勘』で言わせて貰えば、あり得ませんね。私達と同じ時期に【遠征】をしていた【ロキファミリア】からの文書によれば、40階層後半あたりで謎の【極彩色の
「あぁアレか、確かこっちはキャンプ中だから何人か派遣したよな?」
「ハイ。団長が壊した【ストームフィスト】のお金を何とか回収しようとしたフランクリフさんと高機動かつ遠距離攻撃に富んだローレンスさんが向かいました」
「――相変わらずイカレてるように見えて変な所で常識人っぽい人だな」
「私見ですがあの人は自分の
「あっそう…」
苦笑いした後に冷え切った一言で急に冷めた彼らは次いで今回の遠征について話し合う。
「今回の遠征は、
「ですね。恐らくは今回の
「【ランクアップ】した者が多いという事は、それ相応の
思い通りにならいかない現実に苛立ちを覚えながらも其れ等に対応する為話し合う二人。
「暫く
「…いや、あの人はウチの旗印だ。そうゆう目的で出撃制限してどっかから漏れたらファミリアの体裁が悪くなるし、下手したら新団員の集まりが悪くなりかねない」
「了解。でしたら『報告します!』…何でしょうか?」
大声と挙手によって自身の存在を最大限示した団員に、会話を一旦取りやめ聴く姿勢に入る。
流石に幹部と幹部候補という上位者同士の会話に横槍を入れるのは少し緊張したのか僅かな冷や汗をかきながらも、彼は為すべき事を為すため一息に話す。
「ロキファミリアが数十体の【ミノタウルス】を取り逃しこの5階層付近まで来ているとの事!信憑性は彼の派閥団員から届いた【
「…本当に起きたな」
「はぁ――ですね」
『噂をすれば影がさす』、若しくは『虫の知らせ』か。本当に起きてしまった
「Lv.1と2は
「他派閥の下級冒険者に被害が及んだらコトです!広く浅く遠くを意識したローラー作戦でお願いします!!【ミノタウルス】は
『了解!』
流石訓練されたファミリア団員だけあってさっさと指示通り
『後輩に被害が出ないようにな!?』
『当然!犠牲なんぞ出させねぇよ!』
『イクゾォォォーーー!!!』
猛々しい雄叫びを上げながら広範囲に散る冒険者を尻目に、ファビウスもサポーターに預かってもらっていた自身の大剣を装備。
「俺も行く。お前はここで待機と、非常時の指揮を」
「分かりました。万が一にもないでしょうが無事を祈ります」
激励を受け取り疾駆を始める。ぐんぐん上がって行く速度を肌で感じつつ、彼は尚もスピードを上げる。
「…被害が出なきゃいいんだがっ」
キリ悪いけど今回はコレで切ります!