遅くなってごめんなさい!!
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今日はとにかく沢山遊んだ。ヒッキーも珍しく前向きで、色んなアトラクションに乗って、ペアルックもしてくれた。この服は一生の宝物。しかもあたしのお願いを1つ聞いてもらえる事も決まった。それにこの後はレストランでディナーだ。
もうこれ以上ないってくらい幸せな日だ。だって、あたしがいつかしたお願いを、彼が叶えてくれたから。
今日は七夕とは程遠いけれど、まるで織姫になった気分だ。だから、あたしは欲張りな自分を彼に伝えられたらいいなって思う。今まで我慢してきた(させてきた)分、沢山のお願いを叶えたいなって!
星に願いを。七夕の夜のように、積もった願いを叶える為の1歩を踏み出します。
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「あたしね、好きなの」
俺は確かにその言葉を聞いた後、ソラに浮かぶような感覚に陥っていた。
先程の発言からしばらく、俺たちはパンさんのクリスマスレストランに来ていた。内装は流石ディスティニーというべきか、クリスマスという事で、パンさんというポップなキャラクターがいるのにも関わらず、ロマンティックな雰囲気になっている。これはゆきのんが来たら大興奮間違いなしですね、単身で突撃しても問題ない気もしなくもないような...いや平塚先生じゃあるまいし、考えるだけで悲しいから、お姉さん辺り連れて行ってね!多分絵的には映えるから!
そんな素晴らしい内装に心惹かれているかといえば、そうではない。先程の由比ヶ浜の発言がどんな景色よりも気になるからだ。
「なあ、さっき言ってた事なんだが...」
「ごめんね、分かりずらくて。あたしはね、全部欲しいの。」
そういうと由比ヶ浜は、同い年とは思えない程大人びた笑顔で、子供じみた事を語り始めた。
「あたしはヒッキーも、ゆきのんも、皆大好き。皆といると今日も楽しかったな〜って思えるし、こんな日がずっと続けば良いのになって思うの」
「いつか終わりがくるって分かってても、そう思うんだ...」
学生生活は必ず終わりが来る。いや、何も学生生活にかぎらず、物事には終わりが来る。人の気持ちでさえ、きっと永遠ではないだろう。それでも、彼女は想い続けたいと。終わりが来ようとも、その度にそれを乗り越えて、守りたい何かがあるのだと、その目は訴えていた。
「まあ、何やかんやで付き合いは続いていくんじゃないか?」
「そうかな...」
自分で言いつつ、その言葉の真実性を疑っている。恐らくそうはならないのだろうと、警鐘が鳴っている。なんとなくではダメだと。俺も彼女も、そしてここにはいない彼女もきっと同じ事を思うだろう。
「あたしは、ヒッキーとの時間も、ゆきのんとの時間も全部欲しいから、欲張りになる事にしたの!」
実に彼女らしい結論だと思う。何か1つでは無く、全部を求め、その為に全力で行動する。二兎を追う者は一兎をも得ずというが、全てを求めて何が悪いのだろう。今の俺は、彼女を見てそう思った。
そんな事を話している内に、料理が運ばれてきた。メニューが予め決められていたのは幸運といえる。俺が注文しようものなら、噛み噛みになるのは間違いなかっただろう。え?店員との会話は得意だろうって?メニュー名が長すぎるんじゃ!!!
由比ヶ浜も写真を撮りながら、ゆきのんに送ってあげよ〜とか言ってるし。大丈夫?それゆきのん1人で来る理由になっちゃうけど?本格的にお姉さんに連絡した方が良いかもしれない。
そんな料理に舌鼓を打っていると、装飾が施されたドリンクが運ばれてきた。現代に適応出来ない俺の語彙力では表現が難しいが、簡単に言えばアイスに火がついている...ように見える。いや不思議。どうやってやってるんだろう。これは写真撮って小町に自慢してやろうっと!
「凄いねこれ、アイスに火がついてるよ!」
「ああ、これは素直に凄いって思うな...でも、すぐ溶けちゃわない?これ大丈夫?」
「溶けちゃう前に飲んでって事じゃない?」
「でもこの量だと甘党じゃなきゃ厳しいぞ...」
「ならヒッキーでも大丈夫じゃん!きっと大丈夫!多分ね!」
「物凄く不安になるからその言い方やめて?」
「でも結局飲んでそう、ヒッキーだし!」
「どういうことなの...」
じんわりと蝕んでいって、やがて溶けて、なくなってしまう。この美しく儚い何かはやがてなくなってしまう。それは今か。1秒後か。それとも1年後か。
彼女は続けたいと言った。彼女は勇気を持って前に進んだ。では、俺は?俺の望みとは、何なのだろうか。その答え...いや、理由を、まだ俺は見つけられない。
続きも頑張ります!!