レインの為に頑張る   作:3さん

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2話

「面白いですねぇ」

 

 

 さっきから、モニターやらスマホなどで睨めっこしていた少女が突然、そう呟いてきた。

 

 

 

 それは独り言か。

 

 俺と会話がしたいというアピールだったか分からなかったが、様々な事を知っている少女だ。彼女がそんな事を言うのは意外だった。

 

 

 

 

 だから俺はその事に気になり彼女に問いかけてみた。

 

 

 

 

「何が面白いんだ?」

 

 

 

 

 

 帰って来たのは、沈黙。

 

 やはり、さっきのは、俺と喋りたいアピールでは無かったらしい。今現在も彼女は、カタカタ、とキーボードを打っているだけだった。

 

 

 もうその作業を半日はしているだろう。

 

 

 

 

 だが、その作業は彼女とって大事な仕事。いつも彼女がこうしてくれているから、助けてくれる場面が多い。

 

 

 戦いという物は、相手の理解も大事なのだ。癖、職業、年齢、背丈い。そんな物もピンチの時は役に立つ。

 

 

 まぁ、その分、貴重な情報を得るまでが面倒なのだが。

 

 

 

 

 

 

 何故そんな話を今しているかと言うと、今、パソコンと睨めっこ中の少女は皆から【解析屋】と呼ばれ、情報収集の天才だったりする。

 彼女は頭脳明晰で有り、様々な知識や情報を知っている。他の頭が良いのも有るが、彼女が持つ異能が、その要因だったりするのだろう。彼女はその力を生かし、ダーウィンズゲーム内では様々なプレイヤーと交渉したりしている。

 

 

 

 

 ……交渉人、と言ったら俺もその部類に入ったのか? だが、俺は彼女から情報を買った訳ではないし、俺が彼女に何かした訳では無い。

 

 

 

 いや、俺が彼女に交渉したのだった。

 

 

 交渉と言うより、俺の方からの頼みだったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ダーウィンズゲーム』

 

 

 その外見は何処にでも有る、ソーシャルネットゲームで有り、ゲーム内での通貨で、ガチャやショップでアイテムをゲットして強くなる。言わば、普通のゲームだ。

 

 

 だが、それは外側だけの事実。

 

 

 

 

 その実態は酷く、現実離れした世界がこのゲームにはあった。まず、このゲームは己の命を賭けて戦う。それだけで、かなり非現実だが、まだこれは序の口。

 

 

 このゲームにはこんな事が沢山有る。

 

 

 ゲーム内での通貨は、現実で換金する事が出来る。

 

 ポイントと呼ばれるのがゲーム内での通貨であり、1ポイントは10万円という計算になり、バトル……言わば、殺し合いで勝ったりしたら多く貰える。この、ポイントと呼ばれるものが0になったらゲームオーバー。簡単に言うと死ぬ。だから、このゲームで生き残るのは基本、戦わないといけない。こんな、いかれたゲームなんて物はやめたいが、それも出来ない。アンインストールも出来ないし、公で公表するのも禁止されているから。もし破ると、物理的に消される。鬼畜難易度も良いところだ。

 

 

 そして、このクソゲーは、小さいな事にでも人の命がかかっている。

 アレをしたら死ぬ。コレをしたら死ぬ。

 

 

 始めたら最後。

 

 残るのは地獄だけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話を戻そう。

 

 

 俺とレインの関係についてだ。

 

 

 

 

 

 あの日。

 

 

 

 初めて、ダーウィンズゲームでバトルした日の事だ。

 

 俺は中年親父に刺され、死に物狂いで逃げていた。

 

 

 

 

 

 

 誰か助けて欲しい。まだ、生きていたい。

 

 その思いで逃げていた事は覚えている。そんな時に、スマホから通知が来ていてそれは、ダーウィンズゲーでのチャットからだった。俺はそのプレイヤーに指示通り動けと言われた。

 

 

 正常時なら、俺はその言葉に信用しなかっただろう。だって、ダーウィンズゲームのプレイヤーだ。今、逃げている最中に、プレイヤーに殺されそうになっている。 だが、その時は本当に必死だった。誰でも良いから助けて欲しい。

 

 

 そう願っていた。

 

 

 

 

 

 

 だから、俺はチャットな送り主の言葉に従った。

 

 

 

 返信を送ったら、直ぐ指示が来た。隠れて下さいとか、この階は安全などの情報をくれた。それに、指示通り動くと、どんどん相手を撒けた。まるで、俺より一歩、二歩先を見ているような感覚だった。俺は、このまま逃げ切れると思ったが、非情にも最後のチャットが現実を教えてくれた。

 

 

 

 簡単に言うと、俺の方が重傷で有り、このままタイムアップすると死ぬ、との事だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────結論から言うと俺は中年親父を殺した。

 

 

 

 

 

 

 躊躇いが無かった訳じゃない。だって、俺は普通の高校生だ。人なんて殺した事は無かったし、あの日が一番、血を見た日だった。でも、殺さなければ自分が死ぬ。

 

 

 戦わなければ勝てない。何処かの漫画で、見た台詞が再生された。死にたくなければ、戦わないといけない。その時そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 だから俺は、闘い相手を殺した。

 

 電車で見つけた、拳銃を使って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話は長くなったが、あの日、チャットをくれたプレイヤーはレインだった。それから俺は、彼女と連絡を取り、何度か会ったりして、その時にダーウィンズゲームの事など教えてもらったりした。その事のおかげで、初戦では命を拾ったし、今でも色々助けてもらっている。

 

 

 

 

 そう。彼女は俺の命の恩人なのだ。

 感謝しても仕切れない。

 

 

 

 だから、少し前に聞いてみた。

 

 何か俺に出来る事はないかと。

 

 

 

 

 その質問に、レインは

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、私の助手をして下さい」

 

 

 

 と、俺に言ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな事もあってか、

 

 

 今の俺は、レインへの恩返しを含めた助手もどきをしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一人の新人さんがですよ」

 

 

 作業にひと段落ついたのか、だいぶ遅れた返答が帰ってきた。やはり、そこまで集中するのは何か理由があるのだろう。

 

 そして、レインは今、新人と言った。それは当然、ダーウィンズゲームでの新人。多分、その新人が何かしたのだろう。例えば、高ランクプレイヤーを倒したとか。

 

 

 いや、自分で言ったがそれは無いだろう。このゲームは、初心者に厳しい。だって、何の知識も無く殺し合いさせられる。それに加え、中級者、上級者は初心者狩りが多い。そりゃ、自分の命がかかっているのだ。誰だって、弱い奴と戦いたい。まぁ、中には俗に言う、戦闘狂と言う者もいるが。

 

 

 

 初心者狩り、戦闘狂。この辺の奴らは俺と馬が合わない。

 

 

 

 

 話を戻すと、武器や、戦闘経験も無い初心者は一瞬で殺される。そこに、救いが有るのは珍しい。誰だって、自分の命優先だ。だから一日に何人もの初心者が死んでいる。そして、俺も初め、一度死んだような者だ。ほんと、レインがいなかったらどうなっていたか、考えただけで、夢を見そうだ。レイン様様である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、簡潔にまとめると、

 

 

 ダーウィンズゲームは無理ゲー、クソゲーもいいところなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新人が、高ランクプレイヤーを倒したとかか?」

 

 

 さっきから聞きたかった、本題にようやく聞けた。俺は可能性が無いと思いながらも、レインに聞いてみた。

 

 

 

「そうです。それもビックネームを二人」

「マジ?」

 

 

 

 

「マジです」

 

 と言って、レインは俺をモニターの方へ手招きして来た。多分、そこに全てが載っているのだろう。

 

 俺はそう思う、レインの方へ寄った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【スドウ カナメ】

 

 

 モニターには、俺と同じ歳ぐらいな少年の顔写真が載っていた。

 

 

 プレイヤーネーム、年齢、異能(シギル)なども掲載されていた。

 

やはり、解析屋の異名は伊達じゃ無い。この情報だって、ここ最近で調べ上げたのだろう。レインまじ天才。俺のポイント全部上げてもいい程だ。まぁ、レインの方がポイント持ってそうだが。俺のスタイルでは、ポイントは多く貯まらない。むしろ、プラスよりマイナス寄りだろう。

けど、ポイントが0になれば即死。

 

 

いやーブラック過ぎて、マジ涙出そう。

 

 

 

 

 

 

 冗談はさて置き、

 

 スドウカナメと、掲載されているプレイヤーの情報に少し気になる所があった。

 

 

 

 

異能(シギル)不明……レインでも解らないのか?」

 

 

 

 そう。

 

 この、ゲームのプレイヤーにとって、大事なシギルが不明。確かに面白い存在だ。だが、他にも理由がありそうだ。シキルの事を聞いたら、他の事も聞こう。本当に、有名人を倒したのかもしれない。

 

 

 

「はい。最初は引き寄せ(アポーツ)かと思ったのですが、どうやら貴方と一緒で、新系統だと 」

「新系統……か」

 

 

 

 

 レインが言うには、俺の異能(シギル)も新系統らしい。俺のシギルは、デメリット方が多いと思うが。

 

 

 しかし、画面に映るスドウカナメのシキルも新系統。

 やはり、レインが興味を示す、なら強力なジキルなんだろう。

 

 

 シキルはランダムで決まる。それが、強力な者なら万々歳だ。だが、逆も然り。力が弱かったり、使い辛いシキルも当然ある。俺のジキルは後者だ。あると便利だが、使い辛さやデメリットもある。あと、使い所が難しかったりする。

 

 しかし、シギルは運営の運任せ。自分では選べない為、これで命が決まるといってもいい。当然、リセマラなんて物は出来ない。

 

 

 

 何回でも言おう。

 

 

 

 

 ダーウィンズゲーム辞めてぇ。

 

 

 

 

 

「シギルの事も興味深いですが、こちらの情報の方が面白いですよ 」

 

 

 

 

 レインが、モニターの一部を指差し、そう言ってくる。

 

 

 

 俺はそこを見た。

 

 

 

 

「嘘だろ」

 

 

 

 さっき、新人には地獄、と言っていた筈の俺はそれを見て驚愕した。

 

 

 

 

「無敗の女王と、新人狩り(ルーキーハンター)を倒したのか?」

「私が調べた限り、そうかと。本当だとしたら凄いですが」

 

 

 

 

 そう。

 

 この新人は、有名人2人を押し退けたのだ。

 

 新人狩りの方は兎も角、あの49戦、無敗の女王を倒したのは凄い。

 

 

 

 一度、レインの頼みで、情報収集を頼まれたが、怖すぎて辞めた。あれじゃ、命が何個あっても足りない。そう感じられる程に、無敗の女王は強い。そんな、存在をスドウカナメは倒したのだ。

 

 しかも、新人で。もし、俺が闘っていたら首が一瞬で飛んだだろう。

 

 

 

 まぁ俺は、首が飛んでも生きてそうだが

 

 

 

 

「でも、良かったですね。新人狩りをスドウカナメが倒してくれて 」

「そうだな。スドウカナメには感謝しないとな」

 

 

 

 

 レインは俺の顔を見て、そう言ってきた。やはり、彼女は気付いていたか。俺が新人狩りを狙ってた事に。まぁ、もうその必要は無いが。

 

 

 

 

 

 

 だが、新人と聞いていたスドウカナメ。

 

 

 普通の高校生みたいな外見とは裏腹に、相当な手練れらしい。多分、解析屋のレインから情報を買う奴は増えてくるだろう。現に俺も気になった。もし、闘う様な事があれば、絶対に闘いたくない。俺はレインと一緒で、逃げ専だ。少し前まで一般学生だったし、シギルも余り強力ではない。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。これで、この情報も高く売れます。ほくほくですよこれは」

 

 

 

 

 と、彼女は作業にひと段落ついたのか、ウキウキでうまい棒を食べ始めた。多分長時間、電子の海と戦っていたから、相当疲れている筈。

 

 後の事は、俺がしといた方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

「情報のバックアップとかするぞ。少し休んでもいいんじゃないか?」

「じゃあ、お言葉に甘えます。少しの間頼みます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 レインはそう言って、椅子から立ち上がった。多分、近くの床で数十分だけ眠るのだろう。本当は、布団でゆっくり寝て欲しいのだが、彼女は解析屋。彼女の情報を、買おうとする者はごまんといる。女子中学生を、ここまで働かせるブラック。マジで訴えるぞ、この野郎。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺が、レインの座っていた席に座り、情報の整理をして数分。

 

 

 

 やはり、この類は難しい。俺は他の頭も悪く、こうゆう系は苦手だ。 こんな、古代文字を解明する様な事をレインはよく出来るなと感心していると、寝ていた筈のレインが後ろから歩いて来た。

 

 

 

 

 

 そして、当たり前の様に俺の膝に座って来た。

 

 

 

 

 

 

 

「子供は寝る時間だぞ。」

「7分は寝ました。それにまだ休憩しときますよ」

 

 

 

 

 

 7分って、もう寝ない方がよさそうな気がする。それに、よく寝ないと身長も止まる。体調も悪くなるし、お肌も荒れるぞ。これはいよいよ、ダーウィンズゲームの創設者を逮捕しないといけない。女子中学生にここまでするとか、鬼畜すぎるだろう。

 

 

 そんな、今のレインの状況は、俺の膝の上に座り、うまい棒を食べている。日頃から彼女が食しているのこれだけ。それか、炭酸飲料。病院の先生が聞いたら、キレそうな献立だ。よし、決めた。今度、俺が何か作ろう。偶には、そうゆうの良いだろう。だが、俺がそんな事を考えている間も、レインは美味そうにうまい棒を食べていた。そんな光景を日頃から見ていたせいか、俺はうまい棒が無性に食べたくなった。

 

 

 

 

「それ、一口食べていいか?」

 

「いいですよ。貴方もこの味の美味しさに気づけばいいです。」

 

 

 

 

 レインは目を輝かせながら、そう言って。

 

 うまい棒を俺にくれた。

 レインが、美味いと言っているのだからそうなのだろう。

 

 

 レインの言ってる事は、全て。

 

 

 

 はっきりわかんだね

 

 

 

 

 

 冗談ささて置き、俺はレインから手渡されたうまい棒を食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これ、、何味?」

 

「納豆味です! 美味しいですよね!」

 

「あぁ、なんか、、独特な味で美味いな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 馬鹿野郎。

 そんな顔見たら、不味いなんて言えないだろう。

 

 

 俺の感想を聞いた彼女は今、ウキウキだ。

 

 

「今度、一杯買ってきます!」

 

 

 

 とか、言ってる。

 

 

 

 

 

 

 でも、まぁレインの笑顔見たら、なんか美味く感じる。気のせいだと思うが、多分、気のせいじゃないだろう。

 

 

 

 

 多分。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達の静かな話し声しか聞こえない部屋に突然、

 

 

 冷たい電子音が響いた。

 

 

 

 

 

 俺とレインの両方のスマホからだった。

 

 

 何故か、酷く嫌な予感がした。こうゆうのは意外と当たる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は自分の携帯端末を確認して、内容をすぐ理解出来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

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 うん。

 

 

 

 

 うまい棒はたこ焼き味が一番美味い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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