レインの為に頑張る 作:3さん
俺とレインのイチャイチャ時間は、
ダーウィンズゲームからのメールで終わりを告げた。
しかもそれが余計に気分が下がる内容だった。
【宝探しゲーム】
開催地はシブヤ。
大勢のプレイヤーが参加し、大量ポイントゲットのチャンス。
開始時間は多分、メールに記載されていたカントダウンだろう。
24時間から開始したそれは、今はもう、23時間とちょっとまでになっていた。
まったく、急すぎる展開だ。
別に俺は多くのポイントを望んでいない。最低限のポイントで十分だ。だが、現実は非情で俺に招待メールが来た。選ばれた、と言えば聞こえは良いが、とんだくじ運だ。これはくじで言う所の、大凶に違いない。まぁ、大凶もレアな存在だが。
そして、最悪な事に招待メールはレインにも来た。俺だけなら良かった。なんてカッコいい事は言えないが、レインには危ない目にはあって欲しくない。レインは俺の命の恩人だ。それに、ダーウィンズゲームの色々な事を教えてくれた。俺は彼女に足は向けられないだろう。
ほんと、感謝しても仕切れない。
だからそんな理由もあってか、最近は自分の命よりレインの命。
レインが生きていたら、それでいい。
俺の行動原理はそれだ。
だが、今回はそれが難しい。
まず、このイベントは大勢のプレイヤーが参加する。しかも宝、つまりポイントの奪い合いなのだろう。交戦になる事は間違いないだろう。
正直言って、俺は余り強くない。シギルも正々堂々と戦える様な物ではないし、レインと一緒で、逃げる方が向いてる。それに、レインもサポート向けのシギルだ。
まぁ彼女の場合、そのジキルと頭脳で戦局を覆す事が出来るが。
だが、単純に俺達のパーティが弱いのは変わりない。そんな事もあってか、嫌な気掛かりが俺にはあった。
「シブヤって言ったら、アイツらの縄張りだよな」
「えぇ。最近も色々やってますよ」
そう言って、レインは俺にパソコンを見せてきた。
そこには、色々な事件が載っていた。
中でも物騒なのは、ヤクザの事務所を壊滅。建物は荒らされ、組員達はみな惨殺。そこにはそう記されていた。
……コイツらはほんと、物騒だな。善も悪も関係なく、自分達が楽しければそれでいい連中だ。
者のついでにコイツらの話を少ししよう。
ゲームをした事があるなら分かると思うが、このダーウィンズゲームにもクランと言う物が存在する。
クラン……簡単に言えば一つのグループだ。
このデスゲームにも存在し、安全確保や戦力確保。武器交換、情報売買。クランの方向性は多種多様であり、その存在は結構多い。俺とレインもメリットが多い為、クランを組んでいる。寂しい事にメンバー2人だけだが。
話をまとめるとイベントゲームの開催地、シブヤは厄介なクランの縄張りだったりする。
そう。
それが凄く厄介なのだ。
【エイス】
それが奴らの名。
コイツらは数も多い為、俺らは少数グループには嫌な存在だ。それに加え気性も荒く、戦闘狂、殺しに何の躊躇いも無い連中が多い。本当に気に食わなければ殺す。そんなイカレタ連中。
これが、ダーウィンズゲームでは無かったら、町のチンピラ程度だっただろう。だが、これは命の掛かった殺し合い。やはり人間、理解できないイカレタが奴が一番怖い。
この中でもトップ、クランのリーダーが一番、狂っている。
コイツはジキルも戦闘向けで強力。
それに加え、倫理観も壊れており、その残虐性が凄い。また、ずる賢く。退き際はなどを理解出来ている所なども非常に厄介。そして、今回のステージはシブヤ。アドバンテージ云々は当然、奴らの方にある。
だが、生き残る為には必ず奴らと闘う事になるだろう。
ほんと、考えるだけで頭が痛くなりそうだ。
そんな中、俺が遺言を考えている間にも、レインは一人で黙々とパソコンをいじっていた。多分、宝探しゲームでの事だろう。彼女なら、この短時間でも何か良い情報を掴めるかもしれない。
だが、返ってきたのは
「すみません。余り良い情報がありませんでした」
「いや、仕方ないだろう。まだメール来て、1時間ぐらいしか経ってないぞ」
俺は少し、彼女に期待し過ぎたみたいだ。レインだってまだ中学生。 それに、この短時間でよく調べ上げたと思う。現に俺は何も出来なかった。
「なぁ、少し情報交換しないか?」
俺がそう言うと、レインはうまい棒を食べながら頷いた。
粉が落ちる為、机で食べて欲しいが。
「まず、このイベントは私達の様な少数プレイヤーは不利です。それに加え、戦闘も不可避」
「そうだな。それに、下位のプレイヤーは何かしらペナルティがありそうだ」
「そして、やはり大規模なクランの存在は大きいですね」
「シブヤって、エイスのホームだしな」
話が一旦、落ち着き静かな空気が流れた。
今、2人で言った事だが、このイベントはやはり厳しいものになる。 レインに聞く所【ダンジョウ健闘倶楽部】と言う、クランは比較的、穏健派だと言う。今も、そのメンバーに情報を売ったらしい。だが、ポジティブな話はそれぐらいで、俺達の先は暗そうだ。
俺が何か策を考えていると、
画面を見ていたレインが振り返り、俺の顔を見ながらこう言ってきた。
「正直言って、イベントが始まらないと分からない所が多いと思います」
けど、っと付け加えて
「今回も背中は任せます。お互い生きて帰って来ましょう」
俺の目を見て、そう言ってきた。
さっき、レインは只の中学生、と言ったが撤回しよう。こんなかっこいい中学生はレイン以外にいないだろう。さっきから、うじうじ、ダラダラ、と怖気ついていた自分が恥ずかしい。結局、俺みたいな平凡プレイヤーが何を言っても、現実は変わらない。
──────弱い者が死ぬ。
それは、遥か昔からあるありふれたもの。そう。弱い奴は死ぬんだ。
その現場を俺はこのゲームで散々見てきた。見て来ただけじゃなく、体感もした。何度も言うが俺は弱い。勿論、今直ぐにでもこのゲームを辞めたい。そして、イベントゲームなんていうものも参加したくない。
こんな俺だ。
一人ならもうとっくにのたれ死んでいただろう。
けど、今の俺には背中を預けられる相棒がいる。そいつは今、俺の返答を待ってくれている。もし、俺が断ったらどうなんだろうか、分からない。いや、優しいこいつならきっと許してくれるだろう。
だからもう、弱音なんて言ってられない。
覚悟は決めた。
「じゃあ俺の背中も預けた。信頼してるぞ相棒」
彼女の目を離さず、そう伝えた。
俺の言葉に納得してくれたのか、レインは小さく笑ってくれた。
「預けるも何も、私達は逃げ専なので、そんなかっこいい事は言えないですけどね」
「……そうだな」
その後、二人で大きく笑った。
そんな時間が経過して現在。
俺達は明日の為に、情報収集していた。この時点でもうゲームは始まっているのだ。情報は俺達にとって、大事な武器。強者に抗う為の、最低限のアドバンテージだ。けど、そんな戦いも難儀なもんで、時間がかかったりする。しかも作業も単調。そんなものを長時間していたら眠気が来る。
現在、俺とレインは重たい瞼を無理矢理開き、睡魔と戦っていた。もうレインは目が開いていない。半分、寝ているだろう。時刻は午前4時。流石にそろそろ寝ないと不味い。せっかく、集めた情報もこれでは無意味だ。
「レイン、もう4時だ。そろそろ辞めないか」
「そうですね。それに、何か支障も出てきそうです」
レインが瞼を擦りながら、そう言った。日頃から睡眠時間が短い彼女だ。その蓄積もあるのだろう。実際、俺も眠い。そろそろ、本当にやめた方が良いだろう。
「だろ。だから、おやすみ」
俺がそう言うも、返事は返って来なかった。まぁ、レインの静かな寝息を聞いて直ぐに理解出来たが。三代欲求にも有るように、睡眠は大事なのだ。
もう、俺も寝よう。
そう思った時に、今の現状を理解出来た。
レインは寝ている。
それだけ言ったら全然問題は無いが、その場所が悪かった。
今、レインが安らかな寝顔を見せ寝ているのは俺の膝の上。文面で分かるように、俺は今、身動きが取れなかった。彼女が俺の膝を座ってもう、6時間近くは経過していた。そんな長時間いるもんだから、この状態に慣れてしまった。それに、レインの体重は軽く、俺の膝の負担は少なかった。むしろ座られていることに、かい、、、この辺で辞めておこう。俺はまだ捕まりたくは無い。
まぉ、もう日本で重罪な殺人を犯してしまったが。
とりあえず、今はその話は置いておこう。
話を戻すと、今の状態だ。
構造は非常にシンプルで、レインが俺の膝の上で眠り、俺も寝たい。
そんな状況だ。これが赤の他人、家族だったら蹴飛ばしているところだが、相手はレイン。そんな無粋な事は出来ない。
起こす、というのも有りだが、彼女の幸せそうな寝顔見て、そんな残酷な事が出来るだろうか。
……そんな事は決して出来ない。むしろ、出来る奴は鬼だろう。
そいつは血も涙も無いな違いない。
どうするか悩んでいるうちにも、時間は流れ、時刻は午前5時。もう、綺麗な朝日が見えてきそうだ。
よし、もう俺も覚悟を決めよう。
何。人、一人が膝で寝てるだけだ。
重くないし、きっと寝れる筈だ。
俺はそう思い、目を閉じた。
すると、あっという間に睡魔に負けた。
なんて事は無く、俺はその後、一睡も出来なかった。