レインの為に頑張る   作:3さん

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今更ながら、お気に入り評価ありがとうございます!

とても励みになります。
もう年明けてたよ(小声)






5話

 

 さーて、目の前に変な男の人が現れたよ(涙目)

 

 

 どうしよう……

 

 

【コマンドを入力しよう!】

 

 

 1、戦う。

 

 2、仲間に誘う。

 

 3、逃げる。

 

 

 

 

 

「よう、気分はどうだい?」

 

 迷わず俺は2を選んだ。

 

 だって、そりゃ相手は同じ人間だ。

 コミュニケーションが取れない猿じゃない。問答無用で撃ち殺すサイコ野郎じゃないだろう。……多分

 

 

 

「……まぁ、ぼちぼちって感じだ」

 

 

 返事は返ってきた。話が通じそうな奴で少し安心した。だが、此処で気を緩めるのは早い。その事から奴は武器を構えたまんまだ。今、返ってきた言葉も気がむいたから返した、と見ていいだろう。奴の気まぐれが長く続けばいいが。

 

 

 

「そうか。通路に大量に転がっていた死体はアンタの仕業か?」

 

 

 さっき見た通り、通路にはブロック死体が多くあった。死因や傷。そんな細かな事はわからないが。

 

 目の前にいるガスマスクはそんな事が出来るだろう。機関銃乱射とか洒落にならない。

 

 

 

「……さて、どうだろうな。俺はまだ、そんな多くは殺ってない」

 

 

 奴の言葉は至ってシンプル。多くは殺ってはいないが、数人は殺した……とのこと。この、イベントゲームは無差別のバトルロワイヤルと言ってもいい。攻撃されたらやり返す。たから、大量に人が死ぬのも当然か。

 

 

多くの人が死んだ

 

────そう思うと虫唾が走る。

 

 

 

 

 

「だがな、もう数人は殺した。それを聞いたお前はどうする?」

 

 

 

 ガスマスクの男はそう言った途端、下げていた銃を俺に再び向けてきた。まぁ、普通はそうなるよな。

 

 

 

「必死に命乞い……かな?」

 

 

 少しでも良いので、時間が欲しい。奴の気を留めさせるための軽口は道理だ。それに質問には答えてくれているし、奴の本質はそこまで悪くはないのかも知れない。だが、綺麗事を並べても俺達は人殺し。そこは変わらない。どちらかが引き金を引けば、それで終わる。

 

 

 

「はっ、情けねぇな」

 

 

 

 、と奴は少し笑った。俺は内心こう思った。

 

 

 

 情けなくて上等。殺し合いに美談なんていらない。腰抜けでも、臆病者でも、なんとでも言えばいい。過程はどうであれ、──生き残った奴が勝ちだ。

 

 

 それにレインも言っていた。

 

 

 ────逃げて何が悪い 、と。

 

 

 

「情けねぇ奴、腰抜けで結構。だが、俺はまだ生きたい」

 

 

 俺は手に持っていたリングを投げた。それは奴の足下に転がっていった。その行動の意味を奴は直ぐに理解出来るだろう。それで見逃してくれと願うばかりだ。

 

 

「リングはやる。だから、見逃してくれないか?」

 

 

 奴は当然それを拾い、こう言ってきた。

 

 

 

「人間1人の命が数百万か。随分と安いなぁ」

「はっ、逆だよ逆。俺ごときの命がたった数百万だ。お買い得だろう?」

 

 

 平常心を保ちながら必死に考える。奴がNOと言えば俺は簡単に死ぬ。それこそ、抵抗なんて出来ないだろう。俺も拳銃一丁は所持しているが、奴の武器の火力には程遠い。それに弾速だって桁違い。

 

 決して下手な真似はできない。

 

 

 

 

 俺の言葉を聞いて、奴は少し静かになった。この時間が長く続けばいいが…

 

 

 しかし、それは

 

 

「まあ、恨むんじゃねえぞ」

 

 

 奴が開いた言葉で崩れ去った。

 

 

 

 

 マスク越しからでもわかる殺意。

 

 もう、冗談や軽口なんて通用しないだろう。ならば、戦う。……そんな事は絶対にしない。そんなのは結果がわかっている。奴の銃弾が必ず俺の頭を撃ち抜くだろう。だから、戦力は一目瞭然。1の選択肢、戦うなんて事は絶対にしない。ならば残された選択肢は3の逃げるだけだ。

 

 

 

「……じゃあ、遺言ぐらいは言わせてくれ」

 

 

 

 

 返ってきたのは沈黙。それが答えだろう。俺の要望を答えてくれている限り、奴はやっぱり、そこまで悪い奴ではないのかも知れない。だが、状況が状況。俺は今、出来たこの時間。───隙を見逃す訳にはいかない。

 

 

 

「……ありがとう」

 

 

 答える許可は得た、あとは最後の言葉を言うだけだ。もう、そんな言葉は決めている。これが最後になるかも知れないのだ。息を吸い込み、大きく叫ぼう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………レイン愛してるうぅぅぅぅ!!!」

 

 

 

 

 

 俺はそんなふざけた事を大きく叫んだ。うん。予想以上に大きな声が出てしまった。これじゃあ、同じ建物にいるレインに聞こえてるかもしれない。……恥ずかちぃ。でも、レインへの愛は深いから仕方ないね。それにこれは作戦でもある。現にガスマスクの男も「うるさ!?」と耳を塞いでいる。

 

 

 

 よし、作戦通り。

 

 

 

 あとは俺の────異能(シギル)を発動したらいいだけだ。

 

 

 

 俺は迷わず左手の小指を折った。

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 奴は痛みで言葉を漏らし、左手を抑えた。

 

 

 

 

 

 ───成功だ。

 

 俺の異能は上手く発動したようだ。

 

 

 

 

 

 これで隙は出来た。

 

 

 

 

 

 

 俺は急いでその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして今に至る。

 

 

 

 

 

 俺はあの後、男を巻けた…なんて事はなかった……

 

 

 

 

「おい、待て!」

 

 

 

 初めは良かった。その場から離れられた俺はこの階にいるのは危険だと感じ、上の階か下の階のどちらかに移動しようとした。当然、エレベーター前には例の男がいるので、使えない。だから、非常階段を使うしかなかった。

 

 

 だが、それは無理だった。

 

 

 階段使うだけなのに何言ってんだこいつ。と思うかも知れない。けど、使えない物は使えない。その理由は簡単。階段が封鎖されていた。 誰の仕業…とかはこの際わからないから置いておこう。状況が状況だ。普通に考えて、強引に突破しようとするだろう。ほら、壁は壊して進めとか言うし。だから当然、無理矢理にでも進もうとした。だが、さっきも言った通り無理だった。出来るとか以前に不可能と言ってもいい。

 

 

 

 人間ではコンクリートよりも硬い──植物を壊すのは不可能に近い。

 

 

 そこは巨大な植物で覆われていた。今いる26階より下の階に行こうと思ったが、下階は植物に覆われそこより先には行けなかった。ならば上階。と思ったが、そこも続いているのは30階までだった。下階同様、巨大な植物が通路に生い茂っていた。

 それは、まるで俺達を閉じ込めているようだった。聞いた事のある話だが、コンクリートをも突き破って咲く花とかもあるらしい。だから、自然に生えてきた植物……と考える程、俺は馬鹿じゃない。一連の仕業は誰かのシギルと見ていいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! 待てって言ってるだろ!」

 

 

 …うん。発砲してる奴がそんな事言ったら駄目だろ。俺が馬鹿だった。非常階段が使えないから、危険も承知でエレベーター前に戻ったらこれだ。したくもない鬼ごっこを野郎としている。(命がけ)

 

 

 

「っツ! クソがぁ、野郎の尻追って楽しいかよ!」

 

 

 銃弾が肩に掠った。痛みで変な声が出てしまった。

 

 

 

「あぁ、楽しくないね!」

 

 

 

 なら辞めて欲しいですが。そんな俺の願い虚しく、機関銃の銃弾は止まらない。むしろ連写速度上がってませんかね?もうやだ帰りたい…

 

 

「どこまで持つんだろうな?」

「もう無理ぃ、休憩させて」

 

 

 

「はっ、まだまだ元気そうじゃねぇか」と、ふざけた事を言ってくる。

 

 もう足が限界だ。一般学生舐めんな。

 

 でも俺はまだ、辛うじて生きている。日頃の訓練、レインとのランニング。今それが効果に出ていた。積み重ねって大事だなぁ、と他人事の様に考え、必死に逃げる。

 

 

 直線と右折に左折。どれだけの道を走っただろう。もしかしたら同じ所を通ったりしたかもしれない。それでも奴は追ってくる。…実は男の気があるだろうか。何にせよめんどくさい相手である。

 

 

 荒い息が肺から漏れる。根性論でどうにかしようとするが体の疲労、傷はどんどん蓄積されていく。うえぇ、また腕に掠った。俺には銃弾を避けられる人外的な反射神経も無く、それを実行できる身体能力も無い。

 

 ほんと、武器は外して欲しい。まぁ、俺にもシギルという特殊な武器はあるが楽に使えた様なものじゃ無い。だからさっきも言った通り、俺には勝ち目がない。現状の様にただただ逃げ回るしかないのだ。

 

 

 

 曲がり角、曲がり角…のお陰で奴と少し距離ができた。乱射されて、扉にすら触らなかった客室に入れそうだ。幸いにもその部屋に鍵は掛かっておらず無事、室内には入れた。身体中にある擦り傷を見れば無事とは言えないが。まあ、そこは置いておこう。

 

 

 

 

 俺は室内にあるもので、雑な応急処置をした。腕や足、それらはベットのシーツだの、タオルなので簡単な事はできる。問題は脇腹や背中といった所だろう。処置しようにも傷が深いのかとか、どう止血したらいいかわからない。素人ではここが限界なんだろう。

 

 

 

 一通りの事を終え、今の状況を考える。

 

 ────敵との戦力は圧倒的。

 ────俺、タタカイタクナイ。

 ────レインに会いたい。

 

 

 

 

 

 

 

 よし、レインと合流しよう。(名案)

 

 

 そろそろレイン成分が足りないし、レインも寂しがってる筈だ。いや、そうに違いない。

 

 

 

 ほら、レインからチャットが二通も届いてる。俺への愛がチャット二通で足りる筈がない。きっと会いたいとか、寂しいとかの類だろう。

 

 

 よし、届いたメッセージを読もう。

 

 

 

 

 

【合流しませんか?】

 

 

 …うん。

とっても簡潔! レインらしくていいね。それに、俺と早く会いたがっているのは見てとれた。寂しいならそう言えばいいのに。可愛い奴だなぁと思いながら次のメッセージを見た。

 

 

 

 

【今、スドウカナメといます】

 

 

 ……は?

 

 よし、今すぐでも合流しよう。スドウカナメ…突如現れた、超大物級の新人。俺個人の考えだが、新人狩りを倒してくれたのは感謝してる。 いつかは倒したいと思ってた相手だ。だが、それはそれだ。スドウカナメはレインと共にいる。それは駄目だ。もし仮に、スドウカナメが変態ロリコン野郎だったらどうする? レインは可愛い。スドウカナメの気が狂って、可笑しな事をするかも知れない。当然、俺は紳士だ。そんな事は絶対にしない。

 

 

 

 それにホテルで女子中学生と一緒とか事案だろう。警察呼ぶぞこの野郎。

 

 

 

 

 

 

「……待ってろロリコン野郎」

 

 

 

「何、言ってやがる」

 

 

 そんな野太い男の声が聞こえた。もうその声も聞き飽きたもんで、声だけで人物を特定できる。

 

 

「アンタもしつこいなぁ」

「そうかもな。扉開いてるぞ間抜け」

 

 

 開いた扉にその男は立っていた。五体満足で、左手にも何の支障もないようだった。当然、俺の小指も治っていた。

 

 

 

「扉を開けたのはわざと。……少し喋らないか?」

 

 

 帰ってきたのは沈黙。奴がNOと言えば、地獄の鬼ごっこに逆戻りだ。あれ、この流れさっきも見たぞ?

 

 

「……あぁ、いいぞ。俺もお前は聞きたいことがある」

「はっ、この際何でも答える。趣味か?恋人か?それと─」

 

 

「ここ最近、あるタイプのプレイヤーが多く倒されている」

 

 

 と、奴は左手の小指を口の前に立て、そう言ってきた。まったく性格が悪い奴だ。それに人の話は最後まで聞いて欲しい。

 

 

「まあ、そのタイプのプレイヤーは良く言えば効率が良い。悪く言えば弱者や初心者達を狙うクズプレイヤー」

 

 

 …俺の変わったシギルだ。バレるのも仕方ないか。

 

 

「そうゆうプレイヤーが最近、多く倒されている。お前に覚えはないか?」

「へー覚えはないな。それに俺は弱いだろ?そんな芸当はできない」

 

 

 

 俺はこの戦いにすでに負けている。それは口論でも。戦闘でも奴に主導権を握られ、話術の場も奴の掌。兎にも角にも俺は逃げるしか選択肢がないのだ。

 

 

 

「あぁ。最初は俺もそう思った。機転は聞くが、戦う気も無い腰抜けだと」

 

 

 あぁ。俺はそんな奴だ。だからこの話はこれでいいだらう。もう終わりにしたい。

 

 

「だが、お前の異能(シギル)を見て確信できた。曰く、そのプレイヤーの異能(シギル)は特殊で、知らぬ間に骨が折れていた、切り傷ができていた。なんてざらにあるらしい」

 

 

 俺の願い虚しく、奴の口は止まらない。

 

 

「……もう確信したんだろう?その話が俺だって」

「そうだな。現に俺の指。お前の指も治ってる」

 

 

 奴は左手をふりながら言ってきた。どんな表情、感情でこの話をしていたんだろうか。まぁ、純粋に俺への興味なんだろう。俺の異能は変わっている。……シギルに変わってるも何もないか。

 

 

「お前のシギル…それはどんな能力だ?」

「はぁ。まず、俺のシギルは自身の傷を相手に反映することができる」

 

 

 返事もない。このまま続けてもいいだろう。

 

 

「でも、それは自傷行為でしか発動しない。人につけられた傷では無理だ」

「自傷行為……それはどんなだ?」

 

 

 急に喋りだす奴だなぁ。

 

 

「悪いが俺もイマイチわからないんだ。でも、自分の意思で腕を切るとか明白な傷ほど発動しやすい」

「だから骨を折った…か」

 

 

 簡単に言ったがこれが難しい。当然、痛覚もあるし発動する相手もランダム。目の前に複数人いたら一人にしか発動しない。そして、自傷行為と言うものが死ぬ程辛い。痛くて痛くて堪らない。

 

 

「お前のシギルはわかった。だが、互いの傷が癒えたのはなんでだ?」

「あぁ。それもシギルの能力だ。発動した傷は自分も相手も治る」

 

 

 これが難しい事の一つだ。相手を倒したいと思っても、傷は癒える。 痛覚はあるが相手を行動不能にはできないし、絶命させることもできない。1の傷が直ぐに0に戻るのだ。

 

 そして傷の治癒能力はまちまちで、骨折ぐらいの怪我なら30秒から40秒くらいで治る。やった事はないが、俺は頸を切っても死ななそうだ。

 

 

 

 

「なんか中途半端なシギルだな。強力なのかよくわからねぇ」

「まったくだ。これのせいで家族には煙たがられたよ」

 

 

 

 俺はごく普通の家庭で育った一般学生だった。それこそ人を殴ったことも、殺したこともない。だが、────ダーウィンズゲームで全てが狂った。

 

 

 それもその筈。もし、台所で料理している息子が包丁で指を切った、その傷が数秒で治ったらどうする?それは気色が悪いに違いない。夜な夜な傷だらけで帰ってくる息子。それを見た家族はどう思う?さぞかし不気味だっただろう。

 

 俺はダーウィンズゲームのせいで家を出た。いづらかったのもあるし、家族を巻き込みたくなかった。だが、家族はその事を知らない。家を出て行こうとした日の家族の顔を今でも覚えている。

 

『うちの息子は何をしてる? 夜な夜な喧嘩に明け暮れる馬鹿息子じゃないか』

 

 

 いつか家で聞いた父親の言葉だった。

 

 

 

 

 

 俺は10代の内に天涯孤独になった。しかし金には困らなかった。殺し合い(ダーウィンズゲーム)で得た金で1日を生きる。得た金が1ポイントだったとしてもそれは重かった。人を殺したのにランクとポイントは上がる。人を殺したのに運営からの待遇は良くなる。意味がわからなかった。俺は寂しかった。他人の目が心に突き刺さった。

 

『何故、お前は生きている?』

 

 そう思うにはいられなかった。

 

 

 

 

 そんな時に

 ─────レインが現れてくれた。

 

 

 

 レインは俺と喋ってくれた。

 レインは俺と一緒にご飯を食べてくれた。

 レインは俺と一緒に戦ってくれた。

 

 

 

 ───────俺に守りたいと思える子ができた。

 

 

 

 

 だから、俺がレインの為に頑張るのはそれだけで十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がゲームで勝たないのは何故だ?」

 

 

 その事も知っていたか。俺はゲームでは勝たない。でも負けない。俗に言う引き分けばかりだ。ダーウィンズゲームはポイントの奪い合い。 ポイントが全損したらゲームオーバー。要はポイントが残っていればいいのだ。

 

 

 

「引き分け狙いだよ。それなら誰も死なない」

 

 

 

 

 

 俺は、バトルで互いのポイントが全損しない様に戦う。誰も死んで欲しくないからだ。その理屈で言えば俺のシギルは理にかなっている。自分が傷付けば相手にも傷。後はタイムオーバーまで逃げるだけ。バトル終了時には互いに擦り傷程度にしかならないから、そのダメージ量ならポイントは全損しない。バトル中で大きなダメージを負ったら当然、その分のポイントはなくなる。互いに生き残るのはこれしかないのだ。

 

 

 

 

「お人好し……いや、偽善者か」

「あぁ。そうだろうな。俺だって自分の命優先だ」

 

 

 奴の見えない目を見ながら俺は続ける。

 

 

「でも、できるなら誰にも死んで欲しくない。そう思うのは駄目なことか?」

「……甘いが、駄目じゃないだろうな。」

 

 

 奴の見えない顔が少し緩んだ気がした。

 

 

 

 

「それに、まぁ嫌いじゃない」

 

 

 

 

 

 

 そう言って、奴は俺に背を向けた。見逃してくれるのだろう。そして、奴は振りかえらず、最後にこんな言葉をくれた。

 

 

 

「悪い奴を懲らしめるのもいいが、【エイス】には気を付けろ」

 

 

 

 そう言って奴は歩き出した。

 

 やはり俺の目に狂いはなかった様だ。

 

 奴は悪い奴ではないと思えずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はぁ、と知らぬ間にため息が出た。この数十分で体力を使い果たした様だ。俺はシギルは自傷行為の傷は癒えるが、体力や病気などには力がない。だから寿命とかも例外なんだろう。……多分。

 

 

 

 疲労のせいか、体が自然と下に落ちた。客室の壁を背にして少し座る。

 

 と、そんな時にスマホの通知音が響いた。予想は出来る。レインからのチャットだろう。俺はそれを見た。

 

 

【交戦中ですか?下の階から銃声がしますので】

【私達は今、28階にいます】

 

 

 あぁ。良かった。レイン達がいるのが30階より上じゃなくて。もし、30階より上だったら合流できない可能性だってある。その話で思い出したが、エレベーターはどういう状況なんだろう。階段を見る限り…普通に稼働しているとは考えづらい。何かしらある筈だ。ならば、使うのは30階までは安全な非常階段だろう。

 

 

 

【返信遅れたごめん。俺は今26階にいる】

【今からそっちに向かう】

 

 

 短い休憩を終え客室を出ようとした時に、レインからチャットが届いた。

 

 

【いえ、私達がそちらに向かいます】

【了解。多分、エレベーターは危ない。悪いけど階段から来て欲しい】

 

 

 

 そのやり取りを最後に俺は客室を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 階段前について数分。

 

 レイン達はやって来た。二人を見る限り、怪我などはなさそうだった。意外と近くにいたんだなぁと思い、苦笑いが漏れる。まぁ、マスク野郎に遭遇したのが俺で良かったと思うばかりだ。

 

 

 

「レイン!! 無事だったか? スドウカナメに変な事されてないか?」

「……初対面なのに失礼な奴だな……」

 

 

 

 

 レインに抱き付きながらそう言う。嫌がっている素振りをしているが、内心喜んでいるに違いない。途中、スドウカナメが何か言っていたが気にしない。今はレイン成分を補充しなければ死んでしまう。

 

 

 

 でもレインに足を踏まれた。そしてゴミを見る様な目をされた。

 ……うん。これ以上は辞めておこう。まだ、俺は死にたくない。

 

 

 

 

 

「……私達は無事です。それより貴方の方は大丈夫でしたか?」

 

 

 

 俺から離れたレインがそう言ってきた。万全な二人から見て、満身創痍の俺は不思議に思うか。俺は今までの経緯を二人に説明した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンタの状況はわかった。それで、これからどうする?」

 

 

 スドウカナメがもってもな事を言う。状況は悪い。俺達はリングを集めないと死ぬ。だが今は、狭いビルに閉じ込められている。これでは動こうにも動けない。いや、まだエレベーターが稼働しているか……なども調べていない。当分の目的は──

 

 

 

「今はこのビル内を探索するのが先決でしょう。それに非常階段の植物も気になります」

 

 

 

 レインの言葉で俺達の目的は決まった。ならば後は行動するだけだ。 俺達はエレベーター前まで移動することにした。

 

 

 

「なぁ、俺達初対面だよな。名前ぐらいは交換しないか?」

 

 

 

 スドウカナメが俺の顔見て言ってきた。その提案には賛成だ。そろそろフルネームで言うのも疲れてきたし、さっきは失礼な事を言った。謝罪の意を込めて、俺はその提案に乗った。

 

 

 

 

「あぁ。さっきは悪かった。俺の名前は木田詩織(きだしおり)。レインとクランを組んでる」

「わかった詩織。俺は須藤要(すどうかなめ)。改めてよろしく」

 

 

 

 スドウカナ……いや、須藤と呼ぼう。須藤は俺に右手を差し出してきた。苛烈な戦果は置いておくとして、目の前にいる須藤は普通そうだ。 それこそ殺し合いにも巻き込まれていない、一般学生に変わらない。そんな印象だ。須藤が善も悪も関係なさそうな奴ならば、自分から握手など求めてこないだろう。

 

 

 

「あぁ。よろしく」

 

 

 

 

 俺は須藤の右手を握った。そして大事で肝心な事を伝えた。

 

 

 

「レインに手に出したら、どうなるかわかってるよな?」

「………肝に命じとく」

 

 

 

 ならばよろしい。俺達は熱い握手を交わし、一時的な協力関係になれた。俺はレインの言うことに従うだけだ。当然、須藤とレインがピンチなら、レインを選ぶ。俺の行動原理はそれだ。

 

 

 

 

 

「何をしているんですか?早く行きますよ」

 

 

 

 レインの言葉で我に帰る。レインは俺達よりも先に歩いており、数歩程、前にいた。

 

 

 俺はレイン元へと急いだ。近くにいた須藤はもう見えなくなっていた。後ろで小言を呟いているが聞こえない。

 

 

 

 

 

 

 

「………詩織さんシギルを使いましたか?」

 

 

 レインの横に着いた時、そう言われた。心配してくれているのだろう。その顔を見てすぐ理解できた。性格は悪いが、そうゆう顔を見た時、俺はとても嬉しくなる。家族にも煙たがられた、俺を彼女は見てくれている。幸せだと感じられる。

 

 

 

「少しだけ。でも、もう傷は治った」

 

 

 少し大袈裟に肩を回しながらそう答える。本当は、まだ少し痛むなんて言えない。言ってしまえば、レインは必ず心配してくれる。だからこそ言えない。

 

 

 

 

「はぁ。出来る限りシギルを使わないでください。……私も頑張りますので」

 

 

 

レインがそう言ってきた。顔を合わせてくれないから多分、照れているだろう。顔は明後日の方向を向いている。

 

 

 

「あぁ。善処するよ」

 

 

 

 

 

 口ではそう言ったものの、それを約束する事は出来ないだろう。

 

 

 

 心の中でレインに謝罪し、俺達は目的地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




引き分け判定はオリジナル設定です!(原作にはなかった……ですよね?)

引き分けは引き分けでも、ポイントは減るので、ポイントが足りないプレイヤーは普通に死にます。
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