ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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ちょっとできに不満ですが、うまく言葉にまとめられないのでとりあえず更新です。
所々事実を改変してあります。「2」の方はともかく「さらば」と「2199」のあの人はもっと突き抜けた方がいいと思うんだ。

それから今日はちょっととある団体の活動日なので行ってきます。


宇宙戦艦ヤマト2199 元爆撃機乗りの副長 6

 

「また終業シフト中に問題か」

 

『申し訳ありません』

 

「謝る必要はない。すぐに上がる」

 

お馴染みの栄養ドリンクを煽り、水の入ったペットボトルを持って艦橋に向かいながら飲む。

 

「瀬川君、状況は?」

 

「今の時点で判明している情報は端末の方に送ってあります。ですが、先に対処すべきことができました」

 

「先に対処?」

 

オレの疑問に艦長が答えてくれた。

 

「我々はワープの最中に異次元の狭間に落ちたようだ。そして前方にいるガミラスもだ。そのガミラスから停戦の使者が送られてくる。向こうはこの空間からの脱出方法を知っていると言ってきている。どう思うかね、副長」

 

「脱出方法を知っているのに脱出していないということは簡単です。こっちにはあって向こうには無い物、おそらくは波動砲。それが鍵なんでしょう」

 

「やはりそうか」

 

「ですが、ガミラスはどうやって波動砲のことを」

 

「グリーゼ581の時にストーカーが居ただろうが。映像だけだろうが、それで大体の理論がわかったってことは、ガミラスも持ってるぞ、波動砲。正確には研究中とか、製造中とかだろうがな」

 

「なっ、そんな!?」

 

「今まで持ってなかったのは使い勝手の悪さと、そんなものを用意しなくても十分な数を用意できたからだろうな。この話は後でいいな。艦長もお分かりになられているのに停戦の使者を受け入れようと考えているということは、機関に問題が?」

 

「真空中から無限にエネルギーを汲み上げる波動エンジンが、逆にエネルギーを放出してしまっている。ここは我々の宇宙の法則とは異なる法則が働いているようだ」

 

「なるほど。つまり、波動砲を撃てばヤマトは動けなくなると。それでオレはどうすれば?」

 

「対応は君に全て任せる。見極めて欲しい」

 

「了解しました。古代君、ゼロでお客さんを第3格納庫に誘導してくれ。甲板部、いつもの倍を用意して丁重に迎えろ。それから、防疫チェックも行うから医療班を何人か第3格納庫に回せ。アナライザー、通訳を頼む。主計科、貴賓室の準備と飲み物の準備、種類を揃えておけ。保安科、ヤマト乗組員が使者に手を出さないように護衛に付け。使者に銃は向けるな。ついでに装備は小銃だけだ。瀬川君はオレと付いてきてくれ。今回、時間は敵だ。急げ!!それから個別に何人かに指示も出す。覚えておけ」

 

「「「了解」」」

 

すぐに動き始め、オレと瀬川君は船外服に着替えて第3格納庫で待機する。携帯端末から外の映像を見ているが、珍しいな、赤い戦闘機だ。戦闘機は緑しか見たことがなかったが、パーソナルカラーか?飛び方が綺麗だ。中々の腕だ。そして、第3格納庫に赤い戦闘機が格納され与圧が始まる。コックピットが開き、降りてきたのは体格からして女だった。

 

「アナライザー、通訳を頼む。まずは防疫チェックを受けて貰いたいのだがよろしいだろうか?できるだけ丁寧にだ」

 

「(最初に防疫チェックを受けていただきたいのですが、よろしいでしょうか)」

 

与圧が完了しただけで相手は普通にメットを外す。これは、地球人を捕虜に取ったことがあって同じ空気で生きていけることを知っているな。

 

「(必要ない)君の言葉は分かりにくい。それで、防疫チェックだったか。勿論受け入れよう。宇宙における最低限の礼儀だ」

 

「お受け頂き感謝します。瀬川君」

 

「失礼します」

 

瀬川君が注射器を取り出し、採血を行う。それを後ろに控えていた医療科の一人に渡して佐渡先生に確認に向かってもらう。

 

「今回の停戦内容とは別に質問、よろしいだろうか?」

 

「名前も知らない、顔も見えていない相手の質問に答えるとでも?」

 

「失礼した。地球防衛宇宙軍所属艦ヤマト副長、永井大樹。階級は一等宙佐」

 

「副長補佐、瀬川優樹。階級は三等宙佐です」

 

「銀河方面司令軍、メルダ・ディッツ。階級は少尉だ」

 

互いに簡単な自己紹介と敬礼を交わす。

 

「顔に関してはチェックが済み次第お見せすることを約束します。それで個人的な質問なのですが、赤がお好きなので?」

 

「何故そんなことを聞く」

 

「個人的に興味があるからです。私は本来なら飛行機乗りなので。よほど腕に自信がお有りなのでしょうし、実際に飛び方が綺麗でした。同じ飛行機乗りとして自分だけの色をしているということは、それだけ赤がお好きなのですか?」

 

「飛行機乗りが副長を?」

 

「人材不足とそっちの方の才能もあったということだけですよ。質問の方の答えをお聞きしても?」

 

「そうだな。それ位なら答えても構わないだろう。高貴な青には劣るが赤は綺麗な色だ。個人的にはとても好ましい」

 

「そうですか。質問に答えて頂きありがとうございます」

 

「構わない。それにしても貴方は我々が捕虜にしてきたテロン人とは違うな」

 

「テロン人?我々のことで合っているでしょうか?」

 

「そうだ。我々はそちらの星をテロンと名付けている」

 

「なるほど」

 

「副長、防疫チェックが済んだようです。問題ありませんでした」

 

「了解した」

 

メットを外して脇に抱える。瀬川君も同じようにメットを外して抱える。

 

「改めまして、私がヤマト副長の永井大樹です」

 

「副長補佐、瀬川優樹です」

 

「ああ、改めまして」

 

「それではご案内します。ですが、少々お待ちを。オイコラ!!テメエ、何をディッツ少尉の機体に触ろうとしてやがる!!」

 

「い、いえ、何も」

 

「ならその手の工具はなんだ!!口答えしてんじゃねぇ!!榎本班長、第3格納庫から全員出せ!!解析も一切許さん!!アナライザー、副長権限でディッツ少尉の機体の光学映像以外の情報を完全に削除しろ!!」

 

「了解しました!!おい、上杉!!テメエあとで修正だ!!触んなって言っといただろうが!!」

 

「カメラノ映像以外、削除完了シマシタ」

 

オレ達以外が第3格納庫を出るまで待機し、確認が終わってからディッツ少尉に向き直り、頭を深く下げる。

 

「申し訳ない。部下の不始末は私の責任です。本当に申し訳ない」

 

「念の為にカメラの映像と実際に調べても構わないだろうか?」

 

「もちろんです。アナライザー、映像の方を」

 

「ハイ」

 

アナライザーからオレの携帯端末にカメラの映像が送られてくるので携帯端末をディッツ少尉に渡す。ディッツ少尉は無言で映像を確認しながら、上杉が居た場所の確認を行っている。

 

「確認した。問題はないようだ」

 

「端末はそのままで。アナライザー、ライブ映像に切り替えろ」

 

「了解」

 

「それはディッツ少尉が持っていてくれ。それが先程の責任の謝意の気持ちだと受け取って欲しい」

 

「なるほど。だが、このライブ映像が録画に切り替えられるということも考えられる。その点はどうする」

 

「そうだな。もし録画映像だと思ったのなら私を撃てばいい。そんでもってヤマトも沈めればいい」

 

ホルスターごと銃を渡し、それとは別にスイッチも渡す。

 

「爆装している私の愛機の発射スイッチだ。私の独断で準備しておいた。他の航空機の弾薬や燃料に引火すれば確実に沈む」

 

「なるほど。了解した」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副長がガミラスからの提案を会議にかけるために作戦室に上がり、貴賓室には私とディッツ少尉だけとなる。改めてディッツ少尉を見てみるが、本当に肌の色以外は私達と変わらないと思う。

 

「中々変わっているな」

 

「何がですか?」

 

「お前達、二人だ。他のテロン人とは精神構造が根本的に違うように感じられる。緊張も、恨みも、何も感じない自然体で私に接してくる」

 

「軍人とはこうあるべきと己を律しているからでしょうね。個人的にはガミラスも恨んでいるでしょう。ですが、ディッツ少尉個人を恨んでいるわけではない。その切替が上手いのが我々高級士官ですので。若い者には難しいのでしょうが」

 

「そういうものか」

 

「そういうものです」

 

「先程の男は飛行機乗りだと言っていたが、腕の方はどうなんだ?ああ、話せる分だけでいい」

 

「そうですね、腕は並ぶ者がいないほどのエースですね。この戦争中に4度被撃墜されていますが、いずれも生還を果たして戦果も上げまわっていますから。まあ、所詮は艦載機ですから戦況に大きな影響は与えられなくて悔しそうでしたが」

 

「それはそうだろう。そもそもいくら戦闘機を落としたところで大勢は変えれないだろう」

 

「うん?ああ、勘違いをしていましたか。副長は対艦専門です」

 

「対艦?だが、テロンには雷撃や爆撃専門の機体はなかったはずだが」

 

「無理矢理ラックを増やして積載量ギリギリまで強引に括り付けてるんですよ。ほとんど有人ミサイルですよ。あれではちょっとしたデブリに触れただけで爆散します。それを平気で乗り回している狂人です」

 

「何故そんなことを?」

 

「少しでも生き残る確率を増やすためだと聞いたことがありますね。操縦の難しさと速度の低下は腕でカバーできるけど、弾切れだけはどうにもならないからと」

 

「本当に変わっているな。速度が落ちることは皆嫌がると思うのだが」

 

「速いのなら速いなりの、遅いなら遅いなりの飛び方があるそうです。飛ぶこと自体が大好きみたいですね。燃料の続く限り太陽が沈む方向に飛び続けて夕日を眺めるのが最高の贅沢だとか言ってましたっけ」

 

「それは確かに贅沢だろうな。いい趣味でもある」

 

「ディッツ少尉は何か趣味をお持ちで?」

 

「趣味といえるようなものはこれと言ってな。だが、私も空を飛ぶことは好きだな。宇宙もいいが、星の上で飛ぶ方が好きだ」

 

「私は飛ばせないので分かりづらいのですが、何か違いでも?」

 

「そうだな。感覚で言えば、大気がある分、操縦桿が重いな。天気などで感覚も変わってくる。その時その時に合わせて機体をコントロールするのが楽しいんだ。障害物も少ないしな。宇宙は宇宙で自由度が上がる。障害物は多いが、それを潜り抜けるのが醍醐味とも言えるだろう。そういう貴殿は何か趣味は?」

 

「私ですか?私はボトルシップ制作が趣味ですね」

 

「ボトルシップ?」

 

「まだ我々が星から飛び立てず、空すらも制することができなかった頃、地球は地表の7割が海という水で覆われた星でした。そして、この世の理が少しずつ判明し、技術が発展し、更なる生活圏の拡大に向けて大航海時代と呼ばれる時代、海には帆船がいくつも行き交っていました」

 

「帆船。確か、風を大きな布で受けて、それを推進機関とする木の船だったか?」

 

「潮の流れを読んだりもしますが、概ねはその通りです。その帆船の模型を作り、一度解体し、透明な瓶の中にピンセットなどを使ってもう一度組み立て直す。それがボトルシップです」

 

「瓶の中で組み立てる?よほど大きな瓶なのだな」

 

「制作過程の動画を見ますか?想像しているものとは全く別物ですよ」

 

「気になるな。良ければ見せて頂けるか」

 

携帯端末を操作して制作過程の動画を再生して128倍速にしてからディッツ少尉に端末を渡す。ディッツ少尉は興味深そうに動画を見ている。

 

「これは、すごいな。ここまでの腕を持つとは、素直に賞賛する」

 

「ありがとうございます。起源は度のきついお酒を飲みながら模型を作り、飲み終わる頃に模型を完成させ、空いた瓶に入れて組み立てるのが正式というか、楽しみ方の王道なのですが、生憎お酒は飲めないもので」

 

「趣味なんだから他人に迷惑をかけなければそれでいいだろうさ」

 

「そうですね」

 

そこでちょうどタイミングよく副長が貴賓室に帰ってくる。

 

「結論が決まった。提案を受けるが、保険として爆装したオレのファルコンを向こうに着艦させることが条件だ。向こうの艦長とは話が付けてある。ディッツ少尉は通常空間に戻るまでは待機するようにとのことだ。瀬川君、引き続き任せるよ」

 

「了解」

 

「感謝する」

 

 

 

 

 

 

 

「こちらサーカス1、EX-178、着艦許可を」

 

『着艦を許可する。誘導ビーコンに従え』

 

「サーカス1、了解。S.I.D、誘導ビーコンに従い着艦しろ」

 

「了解」

 

着艦シークエンスに入ると同時にキャノピーを開けて機体の下に潜り込む。クレーンによってファルコンが艦内に運ばれる中、オレに向かって手招きしている作業員を確認する。そちらに向かって勢いをつけて飛び出し、誘導に従ってエアロックに近い死角に隠れる。

 

格納庫内の与圧が完了すると同時にエアロックからガミラス人の男が飛び出し、オレのファルコンのコックピットに何発も銃弾を撃ち込む。同時に死角から飛び出す。

 

「ふん、下等人種ごときが。対等であるわけないだろう」

 

「全くだな。簡単に予想通りに動きやがって」

 

振り向かれる前に頭を掴んで壁に思い切り叩きつけて首の骨を折る。

 

「こちらサーカス1、ヤマト、並びにEX-178、嵐は逸れた。天気は快晴。出航せよ」

 

格納庫内に歓声が上がる。随分疎まれていたんだな、こいつ。ファルコンに戻るとシートとキャノピーがボロボロなだけで異常は見当たらない。

 

「キャノピーの応急処置だけ施したい。多少強引で気密が出来てなくても構わない」

 

「すぐに取り掛かります。それから艦長が直接お会いしたいと」

 

「分かった。案内を頼む」

 

「こちらです」

 

案内されたのは意外にも艦橋だった。

 

「EX-178の艦長を務めるロスレ・ロンズだ」

 

「ヤマト副長永井大樹だ。協力に感謝する」

 

「いや、こちらこそ迷惑をかけた。命令系統が別とは言え、あそこまで勝手な行動に出るとは」

 

「色々複雑な事情があるのは分かっていたことです。打ち合わせ通り、次元開口の際に艦が激しく揺れ、頭を強く打ち、打ち所が悪かった。そういうことでいいでしょう」

 

「ディッツ少尉は無事かね?」

 

「私の副官が相手をしています。問題ありません」

 

「そうか。彼女はまだ話が分かる一等ガミラス人だ。言いたいことは分かるな」

 

「ええ、もちろん。あれは話が分からない一等ガミラス人でしょう?」

 

「そうだ。では、通常空間に戻り次第、正々堂々と」

 

「ああ、正々堂々と」

 

正々堂々と逃げさせてもらおう。やってられるか。

 

 

 

 

 

 

波動砲で通常空間への出口が出来ると同時にEX-178から発艦する。キャノピーがガタガタ言ってるが、レシプロ機に比べれば気にするほどではない。ヤマトに戻り、艦橋に戻るとちょうど通常空間に戻ったところだった。

 

「波動エンジン内のエネルギーは?」

 

「徐々に増えとります。現在23%」

 

「よしよし。それじゃあ、ディッツ少尉の発艦準備だ」

 

「このまま帰しちゃっても良いんですか、副長」

 

「帰すよ。上層部みたいな屑な大人にはなりたくないからな」

 

「それって、あいつらの言い分が正しいと」

 

島君が過剰に反応しそうになるのを戯けて誤魔化す。

 

「飛行機乗りを副長になんてしてるんだ。どう考えてもおかしいだろう?」

 

「……はい」

 

「前方にワープ反応多数!!」

 

「何!?」

 

双眼鏡を取り出し、前方を確認すると確かにガミラス艦がワープアウトしてくる。

 

「くっ、やっぱり罠だったんだ!!」

 

「ディッツ少尉の発艦作業を中止。面舵90、最大船速でこの宙域を離脱!!」

 

「逃げるんですか!?」

 

「逃げる!!エネルギーが足らん。それに、次元の狭間に落ちるような不安定な宙域で戦ってたまるか!!もう一回落ちるぞ!!」

 

「了解、面舵90、最大船速!!」

 

「敵艦発砲、EX-178が撃沈されました!?」

 

「味方ごとか。いずれ仇はとってやる。それまで待っていろ」

 

爆沈するEX-178に向けて敬礼を送る。その後も追撃を行おうとするガミラス艦だが、波動砲で無理矢理空間を開いた影響か、揺り戻しのように再び開いた次元の狭間へと吸い込まれて全滅した。

 

「安心するのは早いぞ。現宙域から更に離れろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまん、ディッツ少尉。君の安全のためとは言え、営巣に押し込む羽目になって」

 

「それほどまでに軍規が守れないほどテロンは追い詰められているのだろう」

 

「いや、ガミラスと開戦してから軍規が弄られた。ガミラスに対して何をしてもいいとな。捕虜とすら認めないとな。それを逆手に取って逆に君を守る。守り易さから営巣に入ってもらうことになってる。ディッツ少尉の機体の行動半径内にガミラスの前哨基地を発見次第開放する手筈を整えてくる。それまでは休暇だとでも思ってくれ。何か食事のリクエストはあるか」

 

「いいや、任せる」

 

「了解だ。基本的にオレか瀬川君しか近寄らせない。何かあれば遠慮なくぶっ放せ」

 

ニューナンブをホルスターごとディッツ少尉に預けておく。

 

「正気なのか!?」

 

「ディッツ少尉なら信用できる。だからこそだ。身の危険を感じたら、容赦する必要はない。艦長からも許可を得ているし、通達もしてある。安全装置は此処。これをこうすれば撃てる。戻せば問題ない。自殺に見せかけようとする輩もいるかもしれないからな」

 

カメラの死角になるように、ディッツ少尉の銃も返しておく。使い慣れた物の方が良いはずだからな。

 

「分かった。好意に感謝する」

 

「気にするな。オレは最低限の礼儀だと思っている。では、また」

 

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディッツ少尉に説明を終えてから貴賓室において会議が開かれる。参加者はオレと艦長、古代君、島君、真田君、新見君だ。

 

「検査の結果、彼女の身体は我々とほぼ同一のものであると判明しました。肌の色以外」

 

「うむ。副長はどうか?」

 

「メンタリティーもほぼ同一です。我々が美しいと思うものは美しいと感じ、醜いと思うものは醜いと感じています。ガミラス人、つまり肌の青い者以外を下に見る傾向がありますが、昔の地球でも白人に多く見られるメンタリティーです。これは育った環境から身につけるものですので以上は見受けられません。また、ディッツ少尉個人は言動の端々や機体のパーソナルカラーなどから上流階級にあるとも推測されます。しかし、上流階級の中でも身分差をはっきりと分けても、話は分かる武人に近いです」

 

「他に分かったことは?」

 

「あ~、推測になりますが、政治体系的には産業革命後の大英帝国が一番近いんでしょう。植民地を増やしまくっている最中って感じです。実際、EX-178に乗っていたのは、我々と肌の色も同じザルツ人と呼ばれているガミラスとは異なる異星人でした。更に、白兵戦用にガミロイドの存在を考えると、急な領土拡大、いや、領域か。まあどっちでもいいか。とにかく、拡大によって人が足りていないのでしょう。恭順すれば2等ガミラス人として扱っていて同化政策を取っているんですから。かなりの無茶をしているようです。上級士官の質はたぶん、現在の地球とほぼ同じでしょうね。特に上の方ほど腐っているはずです。ここまでは順調ですが、そろそろまともな常勝将軍が来ると思います」

 

「航海は更に厳しいものになるか」

 

「まあ、予想の範囲内です。というか、同じメンタリティーと分かった以上、こちらの心理学にも当てはめることが出来ます。これは予測の上で最も重要なことだと考えています」

 

「なるほどな。よくぞそこまで尋問も行わずに情報を引き出してくれた。引き続き、ディッツ少尉の対応を一任する」

 

「はっ!!」

 

「情報長と致しましてはもっと有益な情報を得た方が良いと思うのですが」

 

「無理だろうね。副長が行けると思っていないようだ」

 

新見君の意見に真田君が反論する。たしかにそのとおりだ。

 

「ガミラスに不利になるようなことをするぐらいなら平気で自決するぞ。あれは、ガチで武人だ。ヤマトの乗組員と違って生半可な覚悟で軍人になっていないな」

 

「生半可ですって!!副長、本気で言っているんですか!!」

 

「島君、落ち着け」

 

「これが落ち着いていられますか!!オレ達に覚悟がないとでも言うんですか!!」

 

「ならば逆に聞こう。もし、ガミラスと開戦せずに、正確に言えばガミラスと出会わずに、平和に2199年を向かえた時、君はそれでも地球防衛軍の門を叩いていたか?」

 

「そ、れは」

 

「オレは絶対に叩いていない。今もスタントマンとして生きていただろう。だが、ディッツ少尉は軍人になっているはずだ。オレ達のように、危機的状況だから、親しい人間を殺されたからという理由ではなく、己の意思で軍人へとな。その差はデカイ。今の島君を見れば一目瞭然だ。頭ではなく感情で発言している」

 

「アンタなんかに分かるものか!!親父は、ガミラスのだまし討ちで死んだんだ!!それを分かっていないから」

 

「島君、君の父上、むらさめの艦長を務めていた島三佐はなんだった?」

 

「何を言ってるんですか?親父は立派な船乗りですよ!!親父をけなすつもりですか!!」

 

「そうだな、立派な船乗りだったのだろう。君を見れば分かる。だが、立派な船乗りだけではない。彼は軍人でもあった。上からの命令には逆らえない。逆らえば干される。いや、干されるだけなら良かっただろう。ねえ、艦長」

 

「副長、それは」

 

「いえ、言っておくべきでしょう。下の者達が揺れている。セクションのリーダーである島君ですら、この状態なんです。現場の判断を最優先するべきです。ヤマト計画は最優先で遂行されなければならないのですから」

 

しばらく考え込んだ後、艦長が口を開く。

 

「……山崎君を呼んでくれたまえ」

 

「了解しました」

 

「何を、何を言っているんですか!!艦長、副長!!」

 

「副長、艦内放送の準備も頼む」

 

「はい。島君、少し落ち着け。これから乗組員全員に真実を語るだけだ」

 

艦内放送の準備を整えて10分ほどで山崎さんがやってくる。

 

「呼び出してすまないな、山崎さん」

 

「いえ、どういったご用件でしょうか」

 

「君にかけられた戒厳令を現場判断により解除する。責任はオレと艦長がとる」

 

「……それは、ご命令でしょうか」

 

「そうだ。君はオレと艦長の命令で仕方なく話すことになるんだ。報告書にも航海日誌にもそう記述しておく」

 

「……分かりました」

 

「ありがとうございます、山崎さん。艦長、準備は整いました」

 

「うむ。ヤマト乗組員全員に告げる。艦長の沖田だ。今、君達はディッツ少尉の言った言葉に悩まされているだろう。開戦のきっかけはガミラスからによる先制攻撃、それが地球防衛軍の公式見解とされている。だが、これは真実とは異なる。私はガミラスとのファーストコンタクトの際、司令としてあの場にいた。コンタクトは慎重にと命令を受けて我々は出撃した。だが接触直前、司令部から先制攻撃の命令が降りた。私は、再考を要請したが芹沢参謀に司令職を解任された。そして、芹沢参謀はむらさめに通信を入れた。同じ内容だろう」

 

「……嘘だ。そんなこと信じるものか!!アンタ達は親父を貶めて何が楽しいっていうんだ!!」

 

「島、落ち着け」

 

「うるさい!!副長にオレの気持ちなんか分かるものか!!」

 

「分からんな。オレはお前じゃない」

 

島君がオレに殴りかかってくるので、素直に殴られてやる。そして、胸ぐらを掴んで思いっきり殴り返す。床に倒れ込む島に向かって言い放つ。

 

「お前にオレの気持ちが分かるか、島。爺さんも親父も母さんも妻も、同じ戦場に立ち、目の前で死んでいき、オレ自身も不治の病に侵されるオレの気持ちが!!」

 

「し、知るか!!」

 

「そうだ。知れるわけはないし分かるはずもない。その気持は自分自身だけのものだからだ。知れとも分かれとも言わない。だから、相手に分かれなんて言っても無駄だ。だから、オレは事実だけを語っている。山崎さん」

 

艦長が山崎さんにマイクを渡す。

 

「皆、聞いて欲しい。自分は応急長の山崎だ。ガミラスとのファーストコンタクトの際に、むらさめに機関長として乗艦していた。艦長の島三佐は、出撃する時からずっと航海長との話をしてくれていた。宇宙人と友達になりに行くんだと。自分達もそれに賛同していた。軍人である前に船乗りであることに誇りを持っていたから。だが、それは、沖田艦長のおっしゃったとおり、芹沢参謀の命令に、いや、脅迫によって覆されてしまった。命令に従わなければ、むらさめの乗員の家族がまともに暮らせると思うなと脅された!!島三佐は、悔しそうに命令を受諾した。軍人である前に船乗りであり、何より親である島三佐を誰も攻めることは出来なかった。あの発砲直前の悔しそうな声と、砲雷長の罵声は今でもはっきりと思い出せる。そこからは公式の発表どおり、自分以外は脱出できず、救出された自分に待っていたのはニ枚の紙だった。一枚はファーストコンタクトに関する全ての事実の口外の禁止、つまりは箝口令の命令書。もう一枚は、通信での脅迫と同じ内容の脅迫文。自分は、口を閉ざすしかなかった。ずっと自分を騙しながら今日まで生き恥をさらしてきました」

 

最後の方は嗚咽が混じり、聞き取りにくかったが、それでもちゃんと伝わっただろう。マイクを山崎さんからマイクを受け取る。

 

「この放送を聞き、余計に悩まされているだろう。何のためにこれから任務に望めば良いのか。それは個々人で判断せねばならないだろう。だから、先にオレが何のためにこのヤマト計画に臨んでいるかを話しておこう。オレは飛行機乗りだ。空を、綺麗な空を飛ぶのが大好きだった。今はそれも出来ないのは諸君も知っての通りだ。オレは、あの綺麗な空を取り戻したい。地下での生活しか知らない餓鬼共にあの空を見せてやりたい。その為にオレはこのヤマト計画に臨んでいる。諸君は、諸君だけの答えを出せ」

 

 

 

 

 

 

オレのファルコンの修理が完了したと報告を受けて第1格納庫に置かせて貰っているファルコンの調整を行っている時に艦橋から通信が入った。

 

『副長、大変です!!山本さんがディッツ少尉と共に発艦しました!!』

 

「なんだと!?瀬川君はどうした」

 

『山本さんに襲われたみたいで、現在医務室で手当を受けています』

 

「ちっ、止めに出る。航空隊をスタンバイさせておけ!!それから二人の位置をこっちに送れ」

 

『了解』

 

メットを取りに走る間に発艦準備を整えさせる。

 

「副長、爆装したままじゃ追いつけませんよ!!」

 

「こいつはこいつで使いようがあるんだよ。出すぞ、離れてろ」

 

機体がカタパルトにまで引き出される間にミサイルの信管を切っておく。曲芸は久しぶりで不謹慎だが楽しみでもある。

 

「サーカス1、出るぞ!!」

 

カタパルトに押し出されてレーダーが指し示す方向に全速で飛ばす。それに加えて、増設ラックに懸架したままミサイルの起動させて、その推進力を加算させる。強力なGに押しつぶされながら、アステロイドの隙間を潜り抜けながら短距離通信を全周囲通信帯で繋げる。

 

「山本、今すぐ戻れ!!」

 

『もう追いつかれ、何あれ!?』

 

『正気か!?あれではパイロットが保たないぞ!!』

 

「鍛えか、たが違、うんだよ!!」

 

必死に操縦桿を操作し、アステロイドを抜けた所でミサイルの推進剤が切れたのでパージする。加速は十分に乗っているので、そのまま2機の間に機体を滑りこませる。

 

「誰の許可を得てこんなことをしてやがる、山本!!」

 

『あんな放送を聞かされて、上の一部の所為でガミラスと戦争になって、その所為で兄さんを失ったなんて、そんなの信じたくない!!』

 

「だろうな!!オレだって最初は信じたくなかったよ!!この事実を知った奴らは皆そうだ!!だけどな、今お前がやろうとしているのはただの八つ当たりだ!!それを分かっているのか!!」

 

『それでも私にはこれしか、兄さんの仇を討つしかないのよ!!』

 

「そんなこと、妹馬鹿の明生が望むわけないだろうが!!」

 

『えっ、兄さん』

 

操縦が疎かになった一瞬の隙を突き、急制動をかけて翼を機体外部にある緊急用排席装置に引っ掛けて、山本を機外に放り出す。ったく、後ろからなら狙撃なんて余裕なのに、前からの所為でこんな方法しかなかったな。くそ、翼が欠けた。ぐらつきやがる。まあ、飛べるから問題ない。

 

残ったファルコンは残念だが回収できないな。少し大きなアステロイドに衝突し爆散する。見飽きた花火だぜ。

 

「迷惑をかけたな、ディッツ少尉」

 

『いや、それより、大丈夫なのか?翼がすごいことになっているが』

 

「こんなの慣れっこだ。山本を回収するから先に帰投してくれ。ヤマト、状況を収めた。先にディッツ少尉を戻す。オレは山本を回収してから戻る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷惑をかけたな、ディッツ少尉。3日の距離にガミラスの前哨基地が、2日の位置に艦隊の反応がある。食料なんかは念の為に1週間分用意した」

 

「すまないな。色々と世話になった」

 

「こっちの方が色々迷惑をかけた」

 

「……もう一度だけ尋ねておこう。ガミラスに恭順を示すつもりはないんだな」

 

「個人的にはどっちでも良いんだがな。これでも責任のある立場だ。精神的に未熟なひよっこ達をなんとか飛べるようになるまで見守ってやらないといけない。好意は受け取っておくよ」

 

「そうか。残念だ。貴公は、ガミラスでも見ないほどのエースパイロットだった」

 

「ありがとう。オレも地球じゃあ一番の腕だと自負している。これで宇宙でも十分通用するって自信になるよ」

 

「だが、このままならガミラスが勝利するだろう。恭順を示すなら早くすることだな」

 

「忠告、感謝する。いずれまた戦場で」

 

「ああ、いずれまた戦場で」

 

お互いに敬礼を交わし、ディッツ少尉が手を差し出してきたので握手を交わす。エアが抜かれ始めるのでエアロックに退避し、ディッツ少尉の発艦を見送る。さてと、乗員のガス抜きを企画しないとな。

 

 

 

 

次に見たい奴

  • ドラゴン★エクスプローラー
  • ダンまち 兎大魔導士
  • ゴブスレ 大魔導士
  • ネギま ダークネス
  • 龍の子
  • 遊戯王 諸行無常

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