ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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この素晴らしい錬金術で祝福を! 2

 

 

めぐみんが弟子入りして2週間。クリスとめぐみんの錬金物を査定する。質によってはそのまま買い上げて店で売っても良い。

 

「めぐみんはクラフトとフラムはもう完璧だな。あとは、質の高い材料を使わないと質の向上はないな。クリスはそろそろ布系に入ってもいいだろう」

 

「そうですか。ですが、他の店ではコレ以上の材料は売ってないですよ」

 

「私の方も材料がなくて布には手を出せてないんだけど」

 

「……あれ?あっ、すまんな。一番大事なことを教え忘れていた。オレ達の流派であるアストリッド流の基本は『材料は自分の手足で稼げ』だ。と言うわけでフィールドワークに行くか。というか、カゴも使ってないのかよ。これ、地味に錬金するのが面倒なのに」

 

「こんなカゴをどうしろと?お弁当でも詰めろと?」

 

めぐみんがオレが支給したカゴを掲げているが、それを錬金できるようになってはじめて弟子を取れるんだけどな。

 

「そのカゴ、コンテナと同じ特性が付いててな。中の空間を歪めてあるから、50個まで大きさ重さ関係なしに詰め放題なんだけどな。中級試験として時間も歪めて中に入れたものが劣化しないようにするのと上級でコンテナと中身を共有させる予定なんだが」

 

「はぁっ!?何さらっと神器みたいなものを支給してるのよ!!」

 

「コンテナと同じということは、このカゴにもジャイアント・トードが丸々50匹も」

 

「あっ、めぐみんの方は60個入る仕様だな。コンテナはクリスと同じで300だけど」

 

「なんでそんな差が」

 

「爆裂魔法しか使えない産廃アークウィザードだからな」

 

「ああ、その分アイテムを用意してないといけないからか」

 

「ジャイアント・トードぐらいスキル無しでぶん殴って仕留めれる様にならないとな。クラフトすら投げて届かせられないから杖でのショットを覚えさせる必要があるぐらい貧弱だからカゴをちょっと大きめに用意してやるぐらいはな」

 

「むぅ、バカにして。ちむちむ、フラムの量産は出来てますか」

 

「ちちむ、ちむ~」

 

「えっ、これだけですか?」

 

ちむちむからめぐみんがフラムを3回分1セットを受け取っている。

 

「どうしてですか、昨日はこれを3つだったではありませんか!?」

 

「ちむ!!」

 

めぐみんの嘆きにちむちむからの返答は自分と同じようなサイズのプラカードに書かれていた。

 

『待遇改善要求。パイ寄越せ』

 

「あれ?めぐみん、パイはどうした。弟子入りした時に言ったが、パイはちむ達の原動力だぞ。ちゃんとパイを与えてるか?」

 

「そう言えばめぐみん、ベッドで何か食べてたけど、まさか」

 

「た、食べてませんよ。ええ、決して。ちむちむの分のパイなんて食べてませんよ」

 

食べたな。はあ、全く、このバカ弟子は。何か食うなら降りてきて冷蔵庫の物を食えばいいのに。

 

「小麦粉と塩とミルクだ。とっとと、作って食わせてやれ」

 

ポーチから質の良い物ばかりを取り出してめぐみんに渡す。

 

「すぐに作ってきます!!」

 

キッチンではなく、自分の釜の方に向かっていく辺りアストリッド流錬金術師の思考に染まってきたな。まあ、妹弟子のように持ち運び用の釜で戦闘中にパイを錬金しようとは思わんが、注意しておかないとな。

 

「あっ、そうだ。外に出るんだったら私が組んでる子も連れて行って良い?」

 

「構わんぞ。オレも駆け出しの頃は見習い騎士とか駆け出し冒険者とパーティーを組んでたし。大分昔の話だがな。懐かしいな、あの頃は。今のめぐみんみたいにクラフトとフラムを量産してステルクをエスティと一緒に盾にしたり、ジオティクス皇太子とステルクにドラゴンの相手をして貰っている間に後ろの鉱石を掘ってみたり、酔ったエスティに襲われかけたりと、色々と懐かしい」

 

「なんかヤバイ単語がまじっていたような」

 

ヤバイ単語?

 

「襲われかけた?」

 

「いや、皇太子にドラゴンの相手を任せたって」

 

「当時は知らなかったんだよ。見習い騎士のステルクは口止めされてるし、国からの依頼の期限が迫っていて他のことを考える余裕がなかったんだよ。納品しに行って初めて知ったぐらいだ。それどころか陛下になってからも妹弟子の素材採取に付き合ったり、仮面を付けて正体がバレバレな世直しの旅なんかしてるぞ。ちなみに国内最強の剣士で騎士のプライドがずたずたにされたステルクは騎士を辞めちまった。その後、隣国の妹弟子の弟子の弟子である王女に仕えてる五十路間近の独身。オレの周りの同年代は独身が多かった」

 

「そういうあなたは」

 

「結婚してたぞ。まあ、新婚で死んだが。死因はおそらく妹弟子か妹弟子の弟子の親友に眠っている所をさくっと」

 

「いやいやいや、なんでそんなことになってんの!?」

 

「これには砂山より低く、水溜りより浅い理由があってだな」

 

「つまりはしょうもない理由なんでしょ」

 

「まあ、ぶっちゃけると妹弟子の弟子に一服盛られて既成事実を作られて子供を見せつけられ、結婚に至った。歳が親子ほども離れてるのにな」

 

「ロリコンだったの?身の危険を、うん?あれ?なんでそんな若い姿なの?」

 

「そりゃあ、師匠が作った若返りの薬の実験台にされたからな。レシピは頂戴したけど。妹弟子の弟子、妻にはちょっと年上にしか見られてなかった。ちなみにその時の妻は16で、オレは39。薬で20ほど若返ってた。そしてエスティに若返っているのを見られて全部ゲロらされた。薬も盗られたしな。並の男共よりも腕っ節が強くて男前だから婚期を逃すんだよ」

 

「直接言ったことは?」

 

「あるよ。酒の場で。結果、店が潰れた。物理的に。その日から二人して暫くの間、大工に転職してたから」

 

40過ぎのおっさんおばさんにはキツかったな。

 

「話を戻してと、明日朝から出発な。森の方に行くから、ついでにギルドの方で依頼も受けとけ。多重に受けて纏めてこなすのもアストリッド流では基本中の基本だ」

 

普通は特性に合わせて素材を用意しなければならないのに、師匠は特性を後から付け足すことが出来るチートだった。オレもようやく出来るようになったっていうのに。

 

クリスは組んでいる相手を探しに行き、オレはパイを渡し終えためぐみんと一緒にクエストを確認する。

 

「とりあえずジャイアント・トードの討伐を受けるのと同時にクラフトの強化案としてこんなクエストを発行してもらった」

 

【採取:とげとげしたもの 最低報酬100エリス、とげとげ具合で報酬に上乗せ。上限10万エリスまで。採取物はユキトのアトリエまで納品。一般人でも可】

 

「こうやって変わった物からでも錬金できるようにならないとな。たまに遊びで作ったものが役に立つことがあるのが錬金術だ」

 

「そんなものなんですか?」

 

「例えば、この前買った着ている人の魔力を吸って恐ろしく重くなる服とかは特性:重いと魔力吸収と布を満たす錬金素材だな」

 

「どこかで聞いたことのあるような効果ですね」

 

「まあそんな感じで失敗作でも品質が高いから部分部分で抽出すれば色々悪さが出来る。ちなみにアクセルで一番質のいい火薬を手に入れるなら爆裂ポーションだな。1本数万の使い捨てでフラム以下の火力だが」

 

「そんなのがあるんですか?」

 

「今度紹介してやる。高額商品しか置いてないし、アクセル周辺じゃあ役に立たない物ばかりだが、錬金術の材料にするならば中々の品揃えだ」

 

明らかにオレと同じで店を構える街を間違えたと思える。まあ、逆にそのおかげで弟子二人が出来たと思えばいいか。

 

「ジャイアント・トード以外にいくつか採取系も見繕ってもらった。装備の準備は大丈夫だな?」

 

「一応、フラムとクラフトは多めに持ってます。ちょっとした怪我を治すヒーリングサルヴも。杖も新調しましたし」

 

「まあ、普通はそんなものだな。オレはいつもの杖に秘密バッグの出し入れ自由の特性を組み込んだポーチに、旅人の靴に倍速手袋にトラベルゲート、ネタの空飛ぶじゅうたんだな」

 

「名前だけだと凄いのかすごくないのか分かりにくい装備が出てきましたね」

 

「簡単に説明すればポーチはコンテナと中身を共有、旅人の靴は歩く速度が倍、倍速手袋は採取の際の精密動作の速度を倍、トラベルゲートは指定したポイントへのワープ、空飛ぶじゅうたんはそのまんまだな。ただし使い捨て。しかも結構素材を用意するのが面倒」

 

「便利すぎるものばかりじゃないですか!?レシピレシピ!!」

 

「まだまだ作れるようなレベルじゃないぞ。それに材料もな、厄介なものばかりだぞ」

 

一応レシピを取り出して見せてやるが、すぐに顔を顰める。

 

「無理だろう?」

 

「確かに今は無理そうです」

 

「まあ、2年もすれば腕は追いつく。問題は材料だが、まあ、手伝ってやるよ」

 

というか、オレですら苦戦してるからな。代用になる材料を探し求めて旅もしたが、魔王軍の幹部をボコってようやく揃えたからな。どいつもこいつもうざかったが、バニルが特にうざかった。3回ほど殺したが、普通に復活しやがった。抜け殻は錬金素材にしてみたが中途半端な品質に特性で苦労に合わないような性能に腹が立った。今度は生きたまま釜に放り込んでやる。魂ごと素材にすれば多少はまともになるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、クリス、この草が布関連の素材に使えるやつだ。めぐみん、その木になっている実がレヘルンを強化するのに使えるぞ。マルチプル・マナ・ストライク!!」

 

採取できる物を指導しながら寄ってきた一撃熊をガスト式のスキルで四肢を砕いて動けなくする。クリスとめぐみんにとどめを刺させてレベリングも同時に行う。死体は錬金素材にならないことのほうが多いが、飯にするには問題がないので回収できる分は回収していく。

 

「店主殿よ、私の出番がだな」

 

「置物は黙ってろ」

 

ジャイアント・トードの粘液まみれの黄色い置物が何か喋ったようなので猿轡をかましておく。ちくしょう、喜び始めやがった。面倒くさい、縛って目隠しもして魔法の絨毯でギルドに送ってやる。めぐみん以上の産廃が居るとは思わなかったぜ。

 

「あの~、あんまりひどい目には」

 

「本人が喜んでるだろうが。というか、何故アレとパーティーを組んだんだ?」

 

「囮にしている間に私は私で仕事をね」

 

「囮のくせしてヘイト管理ができないとか問題だらけだろうが。最低でも挑発は覚えてろよ。目立つ格好と大声は基本中の基本だぞ」

 

空いた時間にハガレン式錬金術でポーション瓶を量産する。錬成陣を書くのが結構面倒くさい。軍人の錬金術師が錬成陣を手甲や掌やグローブに予め錬成陣を刻んでおく気持ちがよく分かる。

 

「粗方取り尽くしたな。それじゃあ、今回だけは特別にトラベルゲートで帰るぞ。いずれは二人も作れるようになるからな」

 

ポーチからトラベルゲートを取り出し頭上に掲げて力を開放させる。頭上の空間が歪み、対象者であるオレ達三人に魔力で翼が形成され、歪みに飛び込む。次の瞬間にはアトリエの釜の前だ。

 

「テレポートを魔道具に詰めるなんてすごいですね」

 

「まあ、転移先は自分の巣、つまりは拠点になるんだがな。条件が結構厳しい。王都支店にすら飛べないからな。癖で作ったが、材料を考えると他のものを作ったほうが良い気がした微妙な失敗作だ。自分でテレポートを使ったほうが便利だな」

 

アーランドでは便利だったんだけどな。テレポートを覚えた結果、無用の長物となってしまった。こいつを錬金素材に何かを作るか。

 

「さてと、それじゃあコンテナに素材を詰め終えたらダクネスを迎えに行ってくるわ」

 

「次までに最低限挑発スキルを手に入れておけと伝えとけ」

 

「私もジャイアント・トードの討伐証明とお肉を売ってきます」

 

「帰りにちゃんとパイの材料を買って来るんだぞ。またストライキを起こされるぞ」

 

「分かってますよ!!」

 

ギルドに向かう二人を見送り、アトリエのソファーに寝転がる。トラベルゲートを使ってどんなものを作ろうか?空間操作系になるのは間違いない。となると、どこでもドア、いやいや、通り抜けフープもいいな。時空操作系を混ぜ合わせてタイムテレビなんてのも面白そうだ。

 

「あの~、すみません。ギルドでクエストを見て来たんですけど」

 

ソファーから起き上がり入り口の方に顔を向けて二人組の男女の男の方を見て少し懐かしく思った。こっちの世界でもアーランドでも見なかった、最初の世界にしか無い服装。

 

「ジャージか、何もかもが懐かしいな」

 

「えっ!?ジャージを知ってるってことはオレと一緒なのか!?」

 

「まあ、ちょっと色々と異なるけど、根っこは同じだ。ようこそ、オレのアトリエに」

 

「よ、よかったぁ~。実は」

 

カズマ君の事情を聞かせてもらったのだが、中々笑えた。神にも色々なやつが居るんだな。

 

「事情は分かった。同郷の好だ、ある程度援助してやるよ。ギルドの登録料と数日分の生活費と最低限の装備をやるよ。さすがにそれ以上は金をもらうが、多少は値引いてやる。この店は初心者の街アクセルに合わせた物しか店頭には置いてないが、注文に応じてどんなものでも用意してやる」

 

「ありがとうございます」

 

「とりあえず、二人で10万エリスもあれば十分だろう。装備だが、それはジョブについてからだな。一度登録してこい」

 

「はい。ほら、行くぞアクア」

 

出ていく二人を見送ってからコンテナから材料を出して初心者用の武器防具を片っ端から錬金していく。二組ずつ用意してあるから問題ないだろう。あとは、ヒーリングサルヴとクラフトだな。これでいいだろう。最初はカエル狩りでレベル上げと金を貯めて最低限の衣食住を揃えないとな。秋口だから冬までに蓄えを貯めないと凍死する。さすがにおんぶにだっこってのはアストリッド流に反するからな。

 

ついでに飯を錬金しながらカズマ君にもトラベルゲートを使った錬金アイテムのアイディアを貰うかな?日本を離れて大分時間があるからな。アイディアなら地球で引きこもりをやっていたカズマ君の方が上だろうな。

 

戻ってきたカズマ君たちに装備と金と簡単な町の地図を渡して激励する。カエル程度ならクラフトで大丈夫だと説明しておいたからなんとかなるだろう。

 

 

 

 

 

深夜に目が覚めて、喉の渇きを覚えて1階のリビングに降りる。水を飲んでベッドに戻ろうとした所で氷が溶けてグラスに当たる音が聞こえる。店側を覗いてみると窓際でユキトが珍しくお酒を飲んでいた。

 

「珍しいね、お酒を飲んでるなんて」

 

「うん?クリスか。ちょっとな」

 

それだけを言うとまた月を見ながらグラスを傾ける。ダクネスを迎えに行ってきてから少し様子がおかしかった。

 

「何かあったの?」

 

「ああ、そうだな、うん、軽いホームシックかな?転生者に会ってな、もう50年以上昔の話なのに色々と覚えているものだ。懐かしさに少しな」

 

「家族は?」

 

「5人家族でな、父と母、兄貴と妹とオレ。普通の一般家庭だ。死因は釣りをしている時に何かに引っ掛けて引きずり込まれた。死体が残ったのかすら分からん。気づけばアーランドで赤ん坊だ。そっから50数年、また死んでこっちに来て、すっかり忘れていたんだけどな。少しだけ思い出しちまった」

 

「……帰りたい?」

 

「いいや、アーランドに生まれ落ちてしばらくしてから帰りたいって思いだけは完全に断ち切った。盗賊とは言え、人を殺めて、それが罪にならなかった時点で帰るのは諦めた。帰っても世間に馴染めないだろうと思ってな。だけど、今更になって家族がどうなったのか、それぐらいは知りたいと思っちまった。今の今まで忘れ去っていたくせにな」

 

そう言ってまたグラスを傾けながら月を見ている。私達の不甲斐なさが彼らのような存在を生み出してしまっていることに心が痛くなる。だけど、私達も必死なのだ。それに、謝って済む話でもない。だからといって何もしないのは悪いとも思ってしまう。

 

「気にするな。この世界に来た時から流れに身を任せると決めている。あとは、オレの腕次第だ。人生は出たとこ勝負。全知全能な者など存在しない。神だろうが、力が強いだけの存在だ。しかも万能じゃない。エリス教の神、エリスもパッドで底上げしてるって話だしな」

 

「誰がそんなことを!?」

 

だから心の中があまり平静じゃない状態で挑発されてしまい、それに乗ってしまう。クリスを通して見ていて、咄嗟に反応してしまった。

 

「ほれ、そんな簡単に挑発に乗る」

 

「あぅ」

 

「ってことは、あのアクアってのも本物の女神か。神としての威厳を全く感じなかったが術式で押さえられてるんだろうな。羽衣だけは恐ろしいぐらいに神秘を纏ってるから分かりやすかったが」

 

「アクアって、まさかアクア先輩が来てるんですか!?」

 

「うん?ああ、カズマ君を怒らせて転生特典として道連れにしたって聞いてるが」

 

「私は絶対に会いませんよ」

 

「そこら辺は任せるさ。まっ、話を戻そうか。神だろうが力が強いだけの存在だ。強者なんだから理不尽に振る舞えばいいさ。油断している内に足を引っ張って転がしてその間にのし上がるからな。人間は弱いけど、油断ならない存在だ。神々に喧嘩を売って滅ぼしまではしなくとも勝利しているものはいる。オレ達みたいな錬金術師はよくよく喧嘩を売ってるだろう?この世は弱肉強食なんだ。だから、気に病むな。オレはオレで楽しんでいる」

 

「嘘ですよね。だって、懐かしんで悲しんでいる」

 

「悲しい=不幸ではない。色々な刺激があるからこそ人生ってのは楽しいんだ。オレより年齢は上なんだろうが、濃い人生を歩んでいるオレから見れば神々なんて子供だ。与えられた役割をただこなすだけの神生なんてくだらないんだろう?」

 

「それは、その」

 

「まあ、それでも気になるっていうのなら酒に付き合え。こっちの世界には静かなバーがなくてこうやってアトリエで飲んでるんだが、誰も傍にいないってのはそれはそれで寂しいものでな」

 

「酒場ならいくらでもありますよね?」

 

「酒を飲むって言っても色々な楽しみ方があるってことだ。ワイワイ騒ぐのもいいが、静かにゆったりとした時間の中で飲む酒っていうのが性にあってるんでな」

 

お酒に付き合うのは決定事項なのかグラスが用意される。諦めて椅子を引っ張ってきて対面に座る。

 

「ほれ、飲みやすい酒だから」

 

「ありがとうございます」

 

彼の言うとおり、甘めで飲みやすいお酒だった。

 

「これも錬金術で?」

 

「再現してみただけだ。アーランドではよく飲んでたやつだ」

 

「思い出のお酒ですか」

 

「まあ、そんなもんだ」

 

そこからはほとんど無言の時間が続く。たまにお酒をグラスに注ぐ音、グラスを置く音、氷とグラスがぶつかる音。彼は私の方を見ずに月だけを眺めている。目の前に女神が居るって言うのにと本来なら怒る所なのでしょうが、何も言えずにちびちびとお酒を飲むだけでした。

 

 

 

ふと、強烈な吐き気と頭痛に目が覚める。ベッドから床に落ちて頭を打つ。

 

「あ、頭が割れる」

 

一体何が、と言うかここは、クリスの部屋?現状が把握できずに居るとドアがノックされる。

 

「起きたようだな。ほれ、黒の香茶と経口飲料水だ」

 

手渡された黒の香茶を何とか飲み終えればベッドから落ちて頭をぶつけた分以外の痛みと吐き気が消え去る。それから経口飲料水を飲み終える頃にはようやく周りを見るだけの余裕が生まれた。

 

「説明するなら二日酔いだな。昨夜は大変だったぞ。急に倒れたと思ったら寝てるし、ベッドに運んでいる途中で吐くし、寝かしつけてしばらくしてから嫌な予感がして部屋を覗いたら寝ゲロで死にかけてるし」

 

「わ~~!!わ~~!!そんなことしてませんよ!!」

 

「めぐみんはよく眠ってたから気付いてないが、こっちは掃除と洗濯が大変でな。お米様抱っこで運んだせいでローブが酷いことになった」

 

「おっ、あれ?お米様抱っこ?」

 

お姫様抱っこの聞き違い?

 

「こう、俵を担ぎ上げる持ち方。意識を失っている人体なんて持ち運ぶのが難しいんだぞ。あと、ほれ、洗濯も終わったぞ」

 

そう言って彼が私の服を投げ渡してくる。あれ?いつの間にかクリスの寝間着に着替えさせられてます。

 

「着替えはオレがした。服は適当にクリスのタンスから引っ張り出したから」

 

つまり見られた!?彼が何かを察して部屋から逃げ出す。

 

「あっ、パッドは肌に優しいタイプのを1割増しで縫い付けといたから」

 

「きゃああああああああ!?」

 

なんでそんなことを!?

 

 

 

 

 

 

 




ワクと同じペースで飲めば誰でもこうなる。もう二度と同じペースでは飲まない(戒め)
次はキャベツか。あと、ウィズとベルディア。カズマとはちょくちょくつるみながらも固定パーティーにはならない感じですね。めぐみんも同じでクリスはアクアから逃げてますw

次に見たい奴

  • ドラゴン★エクスプローラー
  • ダンまち 兎大魔導士
  • ゴブスレ 大魔導士
  • ネギま ダークネス
  • 龍の子
  • 遊戯王 諸行無常

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