ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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妹から「2軍ジムリーダーで男の子」「サイトウをヒロイン」「エキスパンションでリストラが復活するから好きに任せる」「悪の組織臭いのに所属はなし」という仕様書を頂いた3度目の正直です。


ポケットモンスターワイルド

 

 

ジムリーダー。それはポケモンリーグが存在する地方において8人しか就くことのできないタイプエキスパート達。栄光に輝く彼らの裏には陽の光を浴びることのない2軍の存在がある。ポケモン協会が開催する試験には合格したものの、1軍より実力の劣る者、ジムリーダーとして人格に問題のある者、そして逆に強すぎる者。後者は時として四天王という形で離れることもある。だが、それを断る者も居れば、人数の関係上無理な者も出てくる。さらに2軍は協会員として扱われ副業が禁止されている。つまりジムトレーナーなどと兼任することも出来ない。飼い殺しにはぴったりの環境なのだ。

 

僕はそう教えられた。だけど、意味を理解できなかった。食べて寝て戦える。ボールも支給されるし、ポケモンの傷も治してもらえる。不満なんてない。

 

 

 

 

 

 

 

私は一体何と戦ったのだろう。周りから止めておけと言われた。対処できないし、卑怯だからとも言われた。それでも経験にはなるだろうとも言われた。だからといってここまで一方的に、攻撃を一度もあてることなく負けるとは思っても見なかった。

 

こちらのポケモンの攻撃に合わせてボールに戻し、こちらの技の切れ目に合わせて最適な技を放てるポケモンを最適な位置に呼び出し、そのポケモンも自分の役割をトレーナーの指示を受けずにこなす。

 

足元までボールで転がってきてスカイアッパー。ボールをスピンさせて投げ、その回転力を利用したころがる。空高くボールを投げて高さを活かしたヘビィボンバー。

 

そしてそれらを可能にするためのポジショニング。こちらのポケモンの攻撃を恐れずにかいくぐり、すれ違いざまにボールを投げたり、自分のポケモンを足場に大きく跳躍したり、どんな体勢からでも狙った所にボールを投げることが出来るだけの身体能力を備えている。

 

卑怯だという言葉も分かる。だけど、同じことをやれと言われても出来ない。そこには確かに彼の努力があるからだ。それなのに周りの大人達はそれを見ようとしない。努力ではなく結果しかみない。もしかしたら、私もそう見られているのかもしれない。

 

そこまで考えてしまうと、動けなくなってしまった。周りの大人達の視線が呆れを含んでいるんじゃないかと、見放されたんじゃないかと、ありえないのに思ってしまう。周りがざわついて、それが聞こえているはずなのに言葉じゃなくて音にしか聞こえない。息が苦しくなる。目の前が滲んで何が起こっているのか分からない。次の瞬間、ものすごい勢いで何かに押しつぶされるような感覚に襲われる。必死に堪えると景色が一変していた。

 

よく見れば足場がハガネールの頭だった。そして目の前に今まで戦っていたあの子が私の顔を覗いていた。

 

「うん、落ち着いた?」

 

言われてから息苦しさを感じなくなっていたのに気づく。

 

「ここには長いからね。たまにさっきの君みたいにプレッシャーに負けて混乱する人がいるんだ。そんな時は一回驚かして、それからゆっくりお話するのが良いって先生が言ってたんだ」

 

確かに驚いたいきなりハガネールの頭に載せられて、ハガネールがまっすぐ立っているのだから。

 

「変な目で見られてると思った?」

 

いきなり核心を突かれて一歩下がる。

 

「大丈夫大丈夫。変な目で見られてるのは僕だけだから」

 

そう笑顔で答える彼のことが分からない。

 

「その、怖くないのですか?」

 

「何が?」

 

「変な目で見られるのが」

 

「なんで?」

 

「なんでってそれは、それは」

 

なんでだろう。わからない。いや、わからないから怖い?

 

「分からない。だから怖い?」

 

分からない。自分が分からない。

 

「う〜ん、先生が言うにはね、人間は群れを作ることで生きている。それで群れは集団で動くことを義務付けられる。価値観なんかの統一を図り、それに適応できないものを排除する。ようするに、群れから追い出されるのが怖いってこと、だったかな?」

 

群れというのは分かりにくかったけど、仲間はずれに置き換えればストンと心のなかに落ちていった。

 

「仲間はずれ、怖くないの?」

 

「うん?周りにいるのは仲間じゃないでしょ?僕の仲間は僕のポケモンたち。あとは、先生と食堂のおばあちゃん!!」

 

そう言い切る彼の顔は輝いていた。

 

「負けたのは自分が弱いから。それを認められないからみんな弱いまま。弱くても、強すぎるよりは良いって上の人が抜けていくけどそれは負け犬の舐め合いと一緒だ。野生でなら生きていけない。僕は食べて寝て戦える、だからここにいるだけ。こうして君に色々話しているのもお世話になった先生がそうしなさいって言ったから」

 

「なんでそんな事を言いきれるの?」

 

「僕は野生のポケモンたちに育てられたからさ。捨てられたのかは知らないけど、先生に保護されるまで、僕はワイルドエリアでポケモンたちと一緒に暮らしていた。だからトレーナーは、人間はほとんど敵さ」

 

なんと答えればいいか分からなかった。ただ、人を敵と言い切りながら襲わないのはなぜなのか。

 

「ふ〜ん、変わっているね。この話をした人はすぐに怒る人ばかりなのに。うん、決めた。また何か聞きたいことがあるのならバトルをしよう。僕のポケモンは3匹、そっちは6匹。勝っても負けても何でも話してあげる」

 

そう言ってハガネールが降りようとする。

 

「待って!!どうやったら貴方みたいに強くなれるの?」

 

「う〜ん、昔から僕はポケモンの背中に乗ってバトルしてた。真似すれば良いんじゃない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2軍のスタジアムから家に帰り、お父さんに今日戦ったあの子の話を聞いてみると顔を顰める。あまり話したがらなかったけど、しつこく聞けば無愛想に負けたことだけ教えてくれた。そして関わるなとも。その言葉に失望した。私に勝つことを強要して自分は逃げている。お父さんの言う強さや勝利は薄っぺらいものだと自分で言ったのと同じだった。

 

翌日からあの子に聞いたようにポケモンの背中に乗って野生のポケモンとバトルしてみた。結果として腕を骨折しちゃったけど色々なことが分かった。

 

バトルしているポケモンの怖さ、私の指示のタイミングの悪さ、それをなんとかこなそうとして本来の力を発揮できていないもどかしさ。これを知っているからあの子は強い。そしてあの子がポケモンにとて最適な場所に出してくれて、絶対にダメージを与えないようにボールに戻してくれると信じ切っているからあの子のポケモンは全力で戦えている。

 

すごい。たった1回のバトルで世界が一気に広がった。骨折している間も手持ちのポケモンたちを自由に戦わせた。同じポケモンでも得意な技や距離が違うことを知った。戦いが苦手だけど、それでも勇気を出して戦っている子がいることを知った。技でも特性でもないポケモン固有の得意技があることを知った。そして、周りがポケモンのことを何も知らない人たちばかりだということに絶望した。

 

パルスワンとペアルックを着ているけどパルスワンはトレーナーのことを鬱陶しがっている。空を飛ぶタクシーのアーマーガアは、持ちにくそうにゴンドラを握っている。子供に群がられているドータクンは羞恥に耐えられなくて泣いている。そしてお父さんの手持ちのポケモンたちはお父さんに怯え、私を可哀そうな目で見ていた。その目に耐えられなくて2軍のスタジアムに走った。あの子なら、いや、あの子にしか分かってもらえないと思って。

 

夜だけど空いているスタジアムには何人も倒れ伏す2軍のジムリーダーとひんしを通り越してしまった彼らのポケモンたち。中央にはいつものように無傷のあの子とそのポケモンたち、それと医務室の先生。

 

「こんな時間にどうしたんだい?」

 

あの子が周りの惨状が何でもないように話しかけてくる。だけど、それが気にならなかった。ああ、そうか、そういうことなのだろう。

 

「私、群れから外れちゃった」

 

その言葉にあの子よりも隣りにいた先生が笑顔になった。

 

「どうやら彼女は周りの群れよりも君の群れに近い習性に近くなったようだね。どうだね、群れに入れてあげないかい?」

 

「いいの?先生、あまり群れに入れるのを嫌うのに」

 

「彼女は大丈夫さ。きっと君と仲良く出来る」

 

「ふぅん、それじゃあよろしくね。僕はセルヴァ。君の名前は?」

 

「サイトウ」

 

「うん、それじゃあよろしくね、サイトウ。これから他の地方に行くよ。ここの群れと大喧嘩したからね。悪いのはあっちだけど、別の群れの言うことなんて信用されないから」

 

それは分かる。だけど何処へ行くんだろう。

 

「先生の友だちがいるイッシュ地方だって。そこにやっぱり群れから外れた子がいるから会ってみないかって。その子はポケモンの言葉が分かるんだって」

 

先生が変わったポケモンをボールから呼び出す。黄色いおじいさんみたいな見た目をしていてスプーンを持っている。

 

「長距離の移動に便利でね。さあ、こっちに来ると良い」

 

そばに寄ってセルヴァの服を掴むとそれを振り払われてちゃんと手を握られる。それだけで今までで一番心が落ち着く。

 

「それでは行こうか。フーディン、テレポート」

 

 

 

 

 

 




すごいしぶい顔をされたけどセーフとのこと。ちなみにバトルはポケスペに近い感じを想像して頂けると分かりやすいです。ダイレクトアタックをしないだけぬるいです。



セルヴァ
ワイルドエリアで『先生』に保護されたポケモンに育てられた子。一般人の感覚と異なり野生のポケモンに近い。『先生』の教育によって知識や最低限のルールはみにつけているが、負け=死の世界で生きてきたため生きるための努力を欠かさない。周りの大人(群れ)とは馴染めないと割り切っている。ポケモン協会によって2軍ジムリーダーとしての身分を有しているが、それは拘束するための方便である。
バトルはルール上、問題のないボールテクニックとポケモンたちの力を最大限に引き出すためのポジショニングがメイン。ポジショニングのためにポケモンの技に突っ込む(ギリギリで回避)こともしばしば。
イッシュ地方に赴いてから寝ているとサイトウがベッドに潜り込んでくるが群れを守るのが群れの長の役目だからと気にしていない。
Nがサイトウに固執するために微妙に仲が悪い。サイトウは自分の群れの仲間だから渡すつもりはサラサラない。

サイトウ
本来ならジムリーダーになるはずだった女の子。セルヴァとの出会いで運命が大きく変わる。死に瀕したことで周りの感情が見えるようになったことで周囲の人間に絶望する。セルヴァしかすがるものがなく依存状態。手持ちのポケモンとは新しい関係を構築中。
似たような能力を持つNに付きまとわれているがサイトウの能力は感情を見える、対象はポケモン以外も含む。そのことに気づいていないNの行動は裏目に出てしまい、余計にセルヴァへの依存を深める。最近ではセルヴァと一緒じゃないと寝れない。

バーブレス 通称『先生』
とある地方の元チャンピオンのポケモン博士。研究テーマは『トレーナーとバトル』人がポケモンの力を引き出し、ポケモンが人の力を引き出すという考えを証明するために研究を続け、挫折する。人のポケモンへの理解の不十分。それによって野生のポケモン以上のポテンシャルを引き出すのが難しいというのが証明され、野生同士の本気の殺し合いを観察してしまい学会を去る。失意のまま旅をする中で偶然にも色々なポケモンが集まった群れに育てられて暮らしていた少年を見つけ、その群れを捕獲し少年を保護する。元とはいえチャンピオンだった自分を追い込んだ少年と群れに興味が芽生え保護者として彼らを観察することにする。ゲーチスとは一応友人。たぶん、きっと、おそらく友人。

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