似ているとは思った。地球とプラントの関係、MSの驚異、そして
「お父様の裏切り者ーー!!」
隣で泣き崩れる彼女とオレの前に寝かされているMS、装甲は灰色だが特徴的なデュアルアイに頭部のブレードアンテナ。オレが初めて乗ったガンダムに似ている。奥にはもう1機見えるが、装甲に切れ目が多い。まさか可変機なのか?
そんな疑問をかき消すように近くで爆発が起こる。一緒に逃げていた彼女の腕を引っ張り、シェルターの入り口に取り付く。収容可能人数は1人。導かれているのだろうか。そう思いながら彼女をシェルターに押し込む。
「お前はどうするつもりだ!?」
「出来ることをやる。それだけだ。縁があったらまた会おう」
それだけ言ってシェルターを閉じる。他のシェルターを探す余裕はないだろう。今この近くで安全なのはガンダムの中だろう。階段である程度降りてから身体能力に任せて飛び降りる。銃声が聞こえたことから護身のために倒れている警備員の腰から拳銃を拾い上げて弾を確認する。昔使っていた物とは少し違うが、それは身体も同じことだ。すぐに慣れる。ガンダムのメンテベッドに取り付き、ハシゴを登ってコックピットを目指す。途中、作業服の女性がザフト兵士のナイフに襲われそうになっていたのを拳銃で牽制し引かせる。
「子供がどうしてここに!?」
「詮索は後に!!この機体は動くのか!!」
ハシゴからガンダムに飛び移りながら確認する。
「えっ、ええ、一応は」
「ならば乗れ!!ここから離脱する!!」
コックピットに乗り込み、内部を見渡してからコンソールを叩いて起動させる。OSの頭文字がガンダムと読める。オレが乗っていたガンダム程スロットルなどが洗練されてはいないが、これならば使いやすい。
「ちょっと!?これは軍の機密なのよ」
「このあと正式に志願書を届ける。それよりも早く、ハッチを閉じる」
ちっ、OSが未完成なのか。これではまともに動かせない。何時から製造を始めたのかはしらないが、これではただの的だ。最低限の行動ができるようにありあわせでOSを書き換える。今はこれで十分だ。作業服の女性が乗り込み、身体を支えた所でハッチを閉じて立ち上がらせる。ハンガーから出る途中、燃え盛るトレーラーからシールドとサーベルを拝借する。ライフルもあったが、システムにはビームライフルと表示されている。コロニー内で使うわけにはいかない。
「貴方、一体何者なの」
「ヘリオポリスの民間人ですよ。それより、連合軍の貴方達がここでMSを作っている方が疑問ですよ。まあ、サハク家の協力があったのでしょうけど」
「何故それを!?」
「少し政治についての知識があればすぐに分かることですよ」
コックピットにロックオンアラートが鳴り響く。そちらを確認すればこのガンダム、ストライクの奥のメンテベッドに寝かされていた機体とザフトの量産型MSジンがこちらに敵意を発していた。ジンがライフルをこちらに向けてくる。
「フェイズシフト装甲を!!」
女性が叫ぶが、バッテリーが少ない。装甲への通電は行わずに身についている操縦技術とシールドで弾幕をかいくぐりながら接近し、そのままシールドバッシュでジンを後ろのビルに叩きつける。コックピット部分にビームサーベルの柄を押し当て、一瞬だけドライブさせて無力化する。爆発させるわけにもいかない。
奪取されたもう1機は既に逃走している。追いたいがバッテリー残量が気になる。仕方なくジンが持っていた実体剣とライフルを奪う。これで多少はマシになる。一先ずの危機が去った所でこめかみに拳銃を突きつけられる。
「もう一度聞くわ。貴方、一体何者なの。OSの書き換えは、まだ理解できるわ。だけど、ストライクを手足のように動かせるなんてありえない。ザフトなの」
「ザフトならさっきのジンのパイロットを殺す必要はないはずだ。オレはキラ・ヤマト。OSの書き換えができたのはカトウゼミのバイトで組んだプログラムがこの機体に使われているから。操縦できるのは人が作ったものだ、突飛なことにはならないし、ボタンに刻印がされているから分かりやすい。それに作業用ポッドにも乗ったことがある。あとは勘だ」
「勘で動かせるわけがないでしょう!!」
「どう説明したところで納得がいく答えはない。自分でも分かっているはずだ。ただ確実なのはオレは貴方の敵になるつもりはないということだけだ。死にたくはないしな」
コンソールを再び取り出して応急処置だったOSを最適化させていく。ついでに通信機器もアクティブ化してインカムを投げ渡す。渋々だが拳銃を下ろした女性が連合軍の周波数で呼びかける。
それにしても親父は技術者としては超1流だったんだな。特に学習型コンピュータの性能はすごい。あれがあれば、こんな未完成のOSはとっくの昔に完成していたはずだ。オプションパーツ?背中に3種類のパックを装着して色々な戦場に対応しようということか。それに合わせたOSも構築しなければならないか。実際に装備した際のウェイトも確かめる必要があるので仮組みだけしておく。
「駄目だわ。どこも通信に出ない」
「予定ではどうなっていた」
「港に母艦があるからそこに移す予定だったの」
「港の母艦はまだ無事のはずだ。艦が沈んだのならここからでも分かる被害があるはずだ」
「それなのに通信がないのは」
「乗組員が居ないか、ザフトの母艦が近いせいでニュートロンジャマーの影響だろう。しばらくは孤立無援だな。システムにあったストライカーパックは近くにあるのか」
「それなら東ブロックに。まだ壊されてなければ良いのだけど」
女性の案内に従って移動してハンガーに入る。そこには無事なトレーラーが3台停められている。センサーで安全を確認した所で機体を膝まつかせて降りる。女性も機体から降りてトレーラーの中身を確認する。
「ストライカーパックは無事みたいね。装備よりも機体を優先したからこちらまで手が回らなかったみたい。どれを装備するの?」
「ランチャーは無理だ。コロニーに穴が開く。ソードもMS相手には扱いにくい。エールストライカーにジンのライフルをもたせる。その前にランチャーからバッテリーだけを貰う。離れてくれ」
女性がトレーラーを操作してオプションパーツであるストライカーパックが装着しやすいように展開される。背中のコネクタにランチャーパックを接続し、バッテリーを移し替える。中々の容量だが、ランチャーの主兵装であるアグニを使うには少ないのではないか?バランスが悪いのは、データが足りないのだろう。バッテリーの補給が終わった所でエールストライカーの装着に向かう。可動式の大型エンジンが付いた重心のバランスが悪いパックだが、性能で言えば一番の汎用性を持った扱いやすいパックだ。
エールストライカーを装着し、OSを別ルートで構築する。装着しているパックごとに自動でパラメーターを切り替わるように分岐させるだけだ。あとは、実際に動かして調整するしかない。このあたりも学習型コンピュータの恩恵を感じる。
エールストライカーのOSがもう少しで組み上がろうとした所でコロニーの一部が爆発する。モニターを確認すればジンよりもスタイリッシュな機体、シグーがオレンジ色のMA、メビウス・ゼロと交戦している。メビウス・ゼロは追い込まれているのか、4基のガンバレルポッドをすべて失っている。FCSの調整が不完全な所で機体を立ち上げる。女性が退避したのを確認してからスロットルを全開にしてストライクを飛翔させる。通信を連合軍の物に切り替える。
「そこのMA、これより援護する」
『なんだ!?って、子供だと!?』
驚いているMAのパイロットを無視してシグーに牽制としてライフルを斉射する。余裕で躱せるはずだが、大きく距離を取り、そのまま逃走に入った。追うかどうか迷ったが、あまりあの女性を放っておくわけにもいかない。警戒しながら女性の元に戻ろうとした所で別区画の施設の一部が大爆発を起こし、そこから白亜の戦艦が姿を表す。
「ホワイトベース、こんなところまで似ているのか」
問題はあれもザフトに奪取された物かどうかだ。しばらく上空で待機していると通信が入る。サブモニターに表示されたのは連合軍の制服を着た女性士官だった。
「ストライクのパイロット、キラ・ヤマトだったか。ラミアス大尉から話は通っている。大尉を回収して右舷デッキに着艦せよ」
「了解。大尉を回収して右舷デッキに着艦します」
メビウス・ゼロは既に右舷デッキに着艦しているので地上に降りて施設から出てきた作業着の女性、ラミアス大尉を手のひらに乗せて右舷デッキへと飛ぶ。作業員たちが居るところまで歩かせ、ストライクを膝まつかせてラミアス大尉を下ろす。その頃には通信を送ってきた女性士官やMAのパイロット、それにMPが格納庫に集まる。ストライクの電源を落とし、拾った拳銃をシートに残してからハッチを開けてウィンチを使って降りる。4人のMPがこちらにライフルを向けてくるので両手を上げておく。ラミアス大尉が一歩前に出て詰問する。
「キラ君、もう一度だけ尋ねるわ。貴方は、一体何者なの?」
「キラ・ヤマト。16歳、ヘリオポリスカレッジの学生。カトウゼミでこのMSのアームに関するOSを組み立てるアルバイトを行っていた。それから、第1世代コーディネーターだ」
コーディネーターという単語にMPがライフルの安全装置を外した。
「待て待て待て!!ここはヘリオポリス、オーブなんだ。コーディネーターが居たっておかしくないだろうが。それに第1世代ってことは両親はナチュラル、だろう?」
「もっと言えばオレは孤児です。育ての親である父さん達からは本当の両親のことは濁されます。たぶん、捨てられたんだと思っている」
思った通りのコーディネートが失敗した、流産したなどで夫婦間の仲が最悪に陥ることはコーディネーターが誕生した初期の頃から発生した社会現象だ。コーディネートにもリスクがないわけじゃない。親を見下す第1世代だって居る。結局UCでもCEでも人は変わらない。異なる技術を手にしても、結局はそれを他人に向ける。だからといって、可能性の光を消すわけにはいかない。
「それで、志願書を出すと言っていたけど、本当に良いのか?」
「軍の機密に触れたんだ。それがコーディネーターなら尚更危険だ。大人しく首輪をつけられるのが一番助かりやすいはずだ」
「まあ、な。軍人としてはあれだけどな。上の方にはコーディネーターってだけで危険な任務を押し付けたり、すぐに懲罰をかましたりな。まっ、ウチの第7艦隊ならそんなことにはならないだろうがな。坊主、撃てるな?」
「既に1人やりました。これからも出来ます」
オレの言葉にMAのパイロットが頭を掻きながらまっすぐした目で答える。
「……不甲斐ない大人なオレたちを恨んでくれとでも言うつもりだったんだがな。すまんが力を借りる。とりあえず、准尉待遇で今日のマルマルマルマルに入隊したとしておく。オレはムウ・ラ・フラガ、階級は大尉だ。ヤマト准尉はストライクに搭乗の上でオレの指揮下に入れ」
「了解。よろしくお願いします、フラガ大尉」
敬礼は16年ぶりだが、魂は覚えているものだな。
「というわけで、艦の方は任せるぜ、ラミアス大尉」
「なっ、私は技術士官なんですよ!?」
「オレはザフトが来たらゼロで出なくちゃならないし、それに、そっちが先任でしょ?それとも、そっちの少尉に任せるかい?」
「階級が高い方がおられるのです。私は辞退いたします」
「はぁ、どうしてこんなことに」
「ザフトが攻めてきたからでしょ。それよりも態勢を立て直す必要がある。坊主、ストライクの方は」
「エールストライカーなら問題ありません。他のパックはOSの調整が必要になります。ただ、ビームライフルだとコロニーに余計な損害を与えそうで、出来ればジンのライフルのような実弾兵装があれば助かるのですが」
「艦長、そこんところどうなのよ」
「コロニー内での戦闘は考慮されていなかったから。確か、デュエルのビームライフル用のグレネードランチャーがあったはずだけど」
「今回の件には合わないか。ジンのライフルを持ってるようだが、弾は?」
「3斉射で限界ですね。最悪、戦闘中に奪う必要すらあります」
「出来る?」
「やりますよ。最初の1回なら出来るはずです」
残っているライフルを使って爆発させずにライフルを奪う。あとは臨機応変に対応する。最悪、エールストライカーの加速力を頼りに突っ込む。
「オレの方でも出来る限り援護する。だが、向こうにはクルーゼもいやがるからな。あと決めとかないといけないのは?」
「まだ状況の確認が完全ではありません」
「物資、弾薬や水や食料はどうなっていますか、少尉」
オレの質問に何を言われたのか最初は理解できていなかったが、すぐに気がつく。
「弾薬や修理材はともかく、水や食料はこれからだったはず。最低限は載っているはずだが」
「出来る限り積むべきだ。今後の手が減ることになる。コンテナに纏められているならストライクで搬送する」
「MSに荷運びをさせるだと!?」
「元々は重機だ。本来の使い方に戻るだけだ。ラミアス艦長、許可をいただけますか」
「えっ、ええ、許可します。コンテナは、アークエンジェル、この艦が係留されていたドッグの隔壁の向こう側に纏めてあるはずよ」
「……優先して運び込む資材をリストアップするが基本的にコンテナには内容物が種別ごとにマーキングされている。簡単にだが色で種類、黒のテープでのマーキングで重要度を示す。水色のコンテナが水、緑色のコンテナが食料や雑貨、黄色が機械類だ。マーキングは下から何もなし、一本線、二本線、二本のクロス、三本線だ。水は二本のクロスからが飲料水になる。出来るだけそれらを多く持ち帰れ。食料は逆に何もないか、一本線を優先する。缶詰などがそれに当たる」
「水を二本線のクロス以上、食料を無印か一本線で搬入します。右舷、左舷、どちらに持ち帰ればいいでしょうか」
「右舷だ。左舷ではフラガ大尉のMAを修理している」
「了解」
「その前に、パイロットスーツぐらい着ていけ。フラガ大尉、案内をお任せしてもよろしいでしょうか」
「まっ、オレも手持ち無沙汰だからな。坊主、こっちだ」
フラガ大尉に案内されてハンガーから少し離れたパイロットルームに案内される。大尉から投げ渡された白地に青いラインの入ったパイロットスーツに着替える。着替え方は世界が変わろうとも変わらない。二重のチャックを締めていき、手首に付いているスイッチを入れてスーツ内の空気を抜く。最後に投げ渡されたメットを被り二重のチャックでスーツに固定してメットの右側のスイッチを操作してバイザーの開閉、マイク、通信バンドの調整を終わらせる。
「へぇ〜、慣れたものだねぇ」
「プログラミング以外に外壁修理のバイトをしていたので」
フラガ大尉と別れてストライクのもとに戻る。ストライクの側には少尉がリストを片手に待っている。
「戻ってきたかヤマト准尉。改めてだが、私はナタル・バジルール、階級は少尉だ。この艦、アークエンジェルのCICを担当することになった。以後は私の指示に従ってもらうことになる。詳細なリストを用意したが、基本は先ほど説明した物で構わない」
「了解です、バジルール少尉」
リストを受領し、ストライクに搭乗する。シールドを左腕に懸架し、カタパルトを歩かせる。
『ヤマト准尉、カタパルトのテストを行う』
通信モニターにバジルール少尉の顔が映し出されカタパルトの使用を指示される。
「了解」
カタパルトに足を乗せると自動で固定され、発進位置まで引き出される。軽くしゃがませて重心を前にやり、射出に備える。
『システムオールグリーン、ストライク、発進!!』
「キラ・ヤマト、ストライク、出る!!」
カタパルトによってストライクが押し出され、正面から襲ってくるGに懐かしさを感じる。オレがこの世界に生まれた意味はわからない。何が出来るかもだ。だが、運命に導かれるようにオレはまたガンダムと共にある。ならば、またガンダムと共に歩んで行こう。その先で可能性の光を示すために。
どうしてあんなに酷いストーリーになっちまったんだ。
政治面で一番つまらないガンダムだと個人的に思ってます。
嫌いなわけじゃないよ、うん、アストレイって面白いよな。
次に見たい奴
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ドラゴン★エクスプローラー
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ダンまち 兎大魔導士
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ゴブスレ 大魔導士
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ネギま ダークネス
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遊戯王 諸行無常