『ヤマト准尉、急いで艦に戻れ!!』
「了解!!」
運んでいたコンテナを投げ捨ててスラスターを全開にする。ドッグ内を抜け、格納庫にまで機体を戻す。
「マードック軍曹、念のためにビームライフルの準備を!!」
『ビームライフルの準備って、ジンのライフルはどうするんだよ』
「状況によって持っていく方を変更します。ブリッジ、ストライク着艦しました。状況はどうなっています」
通信モニターにバジルール少尉が表示される。
『戻ったか。現在、ザフトの攻撃が再開された。MSではなく艦砲射撃でだ。火線から2隻と思われる』
2隻か。ストライクのビームライフルでやれるか?いや、アンチビーム爆雷があったな。ならばランチャーパック、ダメだ砲台しかやれない。となると残されているのは
「コロニーの住民の避難状況はどうなっています」
『どういうことだ?』
「現在、シェルター外で活動できるレベルかどうかです」
『まさか、コロニーを崩壊させるつもりか!?』
「このままザフトの攻撃が続けばそちらの方が住民にとって危険です。シェルターはそのまま救命ポッドでもありますからザフトの攻撃が止んだ方が生存率は高い。それにヘリオポリスはもうだめだ」
『くっ、やむを、っ!?遅かったか!!』
「マードック軍曹、ビームライフルを!!バジルール少尉、出ます!!」
『許可する!!フラガ大尉は出れるか!!』
感じ取ったプレッシャーとバジルール少尉の反応からMSが乗り込んできたと判断して格納庫から飛び出す。数は4、装備は対艦・対拠点だと!?
「やらせるか!!」
放たれた16発の大型対艦ミサイルをビームライフルを連射して全て撃ち落とす。その爆風に巻き込まれて小型ミサイルも全て誘爆する。その結果を確認してからスラスターを全開にしてビームサーベルを引き抜きながら2機のジンをビームライフルで撃ちぬく。いきなり2機も落とされ、硬直してしまっている1機をサーベルで切り裂き、バルカンで残りの1機の頭部を破壊する。そして何を思ったのか、機体を捨ててパイロットが逃げ出した。そのまま乗り捨てられたジンがシャフトへと墜落し、どんどん曲がり始める。
「アークエンジェル、MSは全て排除した。だが、ジンの1機がシャフトに墜落。歪みが広がっている。このままならコロニーは崩壊する。脱出準備を」
予定とは異なったが、結果は変わらない。
『ヤマト准尉は甲板にて待機。対空監視を厳に』
「了解」
崩壊するヘリオポリスから脱出し、ザフトを撒いた所で今後を話し合うためにブリーフィングルームに士官勢が集まる。一応オレも尉官でMSパイロットということもあり会議に参加する。
「それでこれからどうするよ。クルーゼ達は撒けたようだが、ヘリオポリスはあんなことになっちまったし」
「……最悪の状況は免れたとだけ喜ぶべきでしょう」
「バジルール少尉!?」
ラミアス大尉が怒りをあらわにするが、バジルール少尉の言も間違いではない。
「少尉、喜ぶべき状況ではないかと。最悪の状況だけは免れていますが」
「そうだったな。申し訳ありません、艦長。不謹慎でありました」
バジルール少尉が素直に謝罪する。気が動転しても仕方のない状況だ。オレだってそうだ。サイド7ではコロニーに穴は開いたが、崩壊までは行っていない。MSに乗ったからと言ってヒーローに成れるわけじゃない。それでも自分ならと思ってしまっていた。
「それじゃ、切り替えるぞ。とりあえず方針としては友軍と合流するで間違いないよな」
「そうね。というか、それしか道は無いわ。それに本来の任務であるこの艦とMS、ストライクだけでもなんとか持ち帰らないと」
「玉砕するなんて言われなくてよかったよ。ここから一番近い友軍は?」
「アルテミス要塞になりますね」
バジルール少尉がコンソールを操作して宙域図を表示させる。確かにアルテミス要塞が一番近い。その次は月か。
「アルテミスか。あそこってユーラシア派閥じゃなかったっけ?」
派閥、そういえばこの世界はUCと異なり統一政権ではなかったな。
「基本的なことですみません。この艦は所属的には何処になるのでしょうか」
「それは大西洋、あっ!?」
「何かありましたか、艦長」
「まずいわ。この艦、まだ識別コードが正式に登録されていないわ」
「あっ!?そうか、正式登録は明日の予定。それも極秘プロジェクトで製作されたということは」
「あちゃ~、ユーラシアとか大西洋の前にこれに関わってる上の所に転がり込まないと最悪撃沈されるのか」
似ていると今までは思っていたがホワイトベースよりもヤバイ状況だ。
「ハルバートン提督は、月にいるはずだよな」
「最新の状況ではそのはず。月一択になるわね。物資の方は持つかしら」
「ヤマト准尉が気付いたおかげでなんとか持ちます。というか、再度調べ直した方が良い気もしてきました」
「そ、そうね。各装備はもちろんだけど、もしかして通信コードも調整できていないんじゃあ……」
全員が無言になる。
「格納庫周りを確認させてくる!!整備は後回しだ!!」
「私は重要機関のハード周りを確認するわ。少尉はシステム周りを!!」
「准尉は私を手伝え!!火器管制周りならストライクと大きく変わらないはずだ!!」
「了解!!」
「危なかったわ。まさか食堂の裏方周りがオフラインだったなんて。最悪、少ない食料が全滅して腐敗、それが原因で疫病まで考えられるわ」
「さすがに焦ったわ。坊主、物資の回収の件もあるが、今回の件も含めて上に報告を上げる。昇進、はなくても昇給か金一封位はあるだろうよ」
「それでも調整が完璧とは言えないのが現状です。月への最短コース、それしかありません。ヤマト准尉、ストライクの状況は」
「実際に動かした訳ではないので完璧には遠い状態です。エールストライクでも9割といったところです。ランチャー、ソードは7割だと思うのですが、バランスが悪く、何とも言えません」
ランチャーはまだ分かるが、ソードはどうなんだろう?対艦刀、UCでも1年戦争時に少数のみ生産されたと資料で見たことがあるが。それに他の武装がブーメランとアンカーと癖が強い。ランチャーも、アグニが何故か左腕で保持するからエールのライフルのデータが使えない。
「戦えないことはないが厳しいか。やっぱり月に直行だな。ザフトは追ってくると思う?」
「普通に考えれば引くと思うのですが」
「艦が2隻。5機を奪取するつもりだったなら搭載されているMSは隊長機のシグーと奪われた4機だけのはずです」
「追ってくるかどうかは、微妙なところですね」
普通ならば追ってはこない。だが、相手がシャアのような奴ならどうだろう。コロニー内の戦闘でこちらをどれだけ脅威とみるか、それ次第だ。
「はっきり言って戦力不足だ。今回はここまでだな」
「逃げるのですか、隊長!!」
私の説明にイザーク・ジュールが反論する。それに追従するようにディアッカ・エルスマンも同意する。
「ここまでやられてのこのこ引き下がるなんて、本国にはどう伝えるんです?」
「事実をありのままにさ。逆に聞くが、君たちは残りの1機、確かストライクだったか、あれと同じだけのことが君たちに出来たかね?予備機に搭乗していたとはいえミゲルをコックピットだけを貫き、4機のD装備のジンのミサイルを全て撃ち落とし、ライルを除いた三人に反撃を許さずに撃破する。残念だが私でも無理だろう。敵はそれだけ強大だ。あのストライクだけが完成していたのか、パイロットの腕がいいのか、あるいはその両方か。もしくはG兵器とはあれだけの力が発揮できて当然なのか。それを調べるためにも本国に機体を持ち帰らなければならない。この意味が分からないのなら君達には軍服を着る資格はない」
悔しさを押さえつけているが、この程度で表情が顔に出るとは。何が新人類だ。ただの力を持った子供ではないか。二コル・アマルフィは怯えているだけだ。今さら戦場がどういったものかを思い出したのだろう。アスラン・ザラはまあまだマシな方か。
「では、君たちはG兵器のデータの解析を命じる。この結果は如何にして発生したのかを。出来なければ次は君たちがミゲル達のようになる」
私でも生き残るのが精一杯かもしれないな。ひよっこ達には何が原因か分からないと言ったが、同じ時期に同じ場所で並行して開発されたMSの性能差が極端に開くことなどありえない。つまりパイロットの腕が極端に良いのだろう。OSも専用の物のはずだ。反応速度が桁違いだ。あれと戦うには最低でも同じ性能のMSが必要になる。シグーでは話にならない。トライアル中の新型にG兵器のビーム技術を取り入れたのならなんとかなるだろう。それまでは暫し戦場から離れるとしよう。
「それで、現状はどうなっている」
モニターに移る軍人に現状を報告させる。
『はっ、何分混乱が激しく、確定情報はほとんどありません。確定している情報も送り込んだ護衛艦隊の全滅とヘリオポリスの崩壊となります』
モニターにはヘリオポリスの残骸が映し出される。多数の救命ポッドが浮かび、再建は難しいのが分かる。
「アークエンジェルとMSはどうなっている」
『不明です。恐らくは奪取、あるいは撃破されたと』
「そうか。まあ、構わないだろう。ああ、捜索隊は出せ。計画通り正式配備機はアラスカ基地とデトロイトで製造している。アークエンジェルたちは見事に役目を果たしてくれた」
『どういうことでしょうか』
「連合は一枚岩ではないのは最初から分かっていただろう。情報はユーラシアからザフトに流れた。だからヘリオポリスでは技術者の好きにさせた。コストの関係上G兵器は量産させられん。既に大西洋連邦に配備するMSは生産が始まっている。ナチュラル用のOSもまもなく完成する。ハルバートンはG兵器に拘っているようだが、たかが5機のMSで戦争は終わらんよ。だから囮となって貰った」
『つまりこの結果を予想していたと?』
「さすがにコロニーが崩壊するとは思っていなかったさ。だが、G兵器が狙われるとは思っていたさ。無論スポンサーとして警告もさせてもらったのだがね。ああ、もしもアークエンジェルとG兵器が生き残って味方の勢力圏に来たのならちゃんと歓迎するさ。貴重な戦闘データが得られるだろうからな。排除も隠蔽も許すな。乗組員も保護するように」
『かしこまりました。アズラエル理事』
通信を終え、窓から宇宙を見上げる。
「世界が変わろうと人は変わらない。それが答えなのか、ララァ」
人は争いの歴史を繰り返す。世界が変わろうとそれは変わらない。人類は滅びるその時まで愚かな生き物なのだろう。あのアクシズを押し返した光の中で私は見た。何処まで行っても人は変わらない。だから私は期待することも導くことも止めた。未来ではなく今を見つめ、守り、育む。私も父ジオンに魂を縛られていたのだろう。今の私は自由で、そして幸せだ。
「パパ、お仕事終わった?」
ドアをそっと開けてこちらを覗いている娘を手招きして、抱き上げる。そうだ、この暖かこそが世界を守り、そして滅ぼす。だが、それでいいのだ。それこそが人なのだから。
「アルテイシア、パパはもう少し仕事があるが、今度の日曜日はずっと一緒に居られるぞ。ママと一緒に何処に行こうか」
UCガンダムを見ていていつも思うのが、キャスバルはジオン・ズム・ダイクンに縛られすぎだと思うんです。
シャアの時は個人として見られていたのに、キャスバルとばれてからはジオン・ズム・ダイクンの息子としてしか見られなくなり、クェスには父親の代わりとして見られ、アムロもシャア・アズナブルとしてしか見ずに、ナナイぐらいしかキャスバル本人を見ていないように感じられるんですよね。
なので血の呪縛から解放して、普通とは言えないかもしれないですが家庭というものに触れさせれば丸くなるとも思ってます。そんな願望を体現させてみました。
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