ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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ありふれた職業で世界堪能 先出し3

「これで全部か、遠藤」

 

「確認している分はこれで全員だ。王城と教会の上層部の大半を処分してもよかったのか」

 

「狂信者、それもスキルなんかで洗脳されてる相手だ。後ろから刺されたくなければ処分するしかあるまい。爆破するぞ」

 

急いで教会に存在していた儀式場から逃げ出し安全圏まで逃げた所で爆破用の火薬の実を爆破させる。

 

「これでごみ掃除は完了だ。引き上げるぞ。遠藤は治安維持に努めろ。今回の混乱の乗じて人攫いや麻薬が流行る可能性が高い。処分しろ」

 

「了解です、マスター」

 

「必要な物資があれば報告を挙げろ。数日は復興作業で王都に滞在する。ああ、神代魔法を習得するといい。武器はあればあるだけ有利だ。きついかもしれんが、儂も共に向かう」

 

「神代魔法ねぇ、相性が良いと嬉しいんだけど」

 

「使えなければ他に使いやすい武器と種を用意してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「働かざる者食うべからず!!食いたければ働け!!仕事はいくらでもあるぞ!!」

 

魔族の襲撃で焼け出された王都民のために炊き出しなんて殊勝なことはしないが、労働に対する糧ならくれてやる。瓦礫の撤去から超々促成栽培で育てた麦と野菜各種の収穫、怪我人の治療に死者の埋葬。そしてこんな非常事態に不貞を働く馬鹿な兵士の公開処刑。吊るし上げて罪状の看板を目の前に突き刺す。吊るし上げている植物は当然神星樹だ。塵も積もれば山となる。マドラーがどれだけ投入されるか分からない以上、遠藤を強化しておかなければならない。負担は大きいが頑張ってほしいところだ。

 

 

 

 

 

 

 

「色々と仕込んでやったが、まだまだ足りなかったようだ」

 

牢番を気絶させて奪った鍵を使い、ハウリア族を牢から解放する。

 

「ボスとマスター!?どうしてここに」

 

「なに、王国には上下関係を叩き込んだ。今度は帝国の番だ。王国では個の力を見せつけた。帝国では群の力、それも一から鍛え上げたお前たちで示そうと思ってな。実地訓練だ。総員、速やかに離脱せよ。此処から西に10㎞の地点に仮拠点を設置してある。半日の休息後に明日に行われる王国と帝国の政略結婚による同盟を叩き潰す」

 

「イエス、マスター!!」

 

「では、楽しい楽しい革命の時間だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

皇帝が雫のことを気に入っているのは聞いていたが、なぜ儂が恋人だと思われるのやら。まあ、いいさ。個としての上下関係もはっきりとさせておこう。

 

「ルールはこちらで決めさせてもらうぞ。とは言っても簡単だ。狙っていいのはベルトより上だけ、上半身裸、気絶かリングから逃げ出せば負け。リングはそうだな、ハジメ、5m四方で高さは1m、ロープは4本だ」

 

ハジメにリングを用意させ、スーツとシャツを脱ぎ捨ててリングインする。

 

「掛かってこいよ。格の違いを教えてやる」

 

「上等じゃねえか!!」

 

皇帝がリングに上がると同時に上を脱ぎ捨てる。ハジメがゴングを鳴らし、皇帝が突っ込んでくる。それを腰を深く落として迎え撃つ。思い切り振りかぶった拳に頭突きで迎撃する。鈍い音と同時に骨が折れる音が聞こえる。皇帝の拳が砕けて骨が皮膚を突き破る。

 

皇帝が苦しそうに拳を抑えて下がろうとするのを肩をつかんで止め、鼻っ面に頭突きをお見舞いする。ふらついている皇帝に更に頭突きを叩き込む。キャンパスに沈んだ皇帝を無理矢理立たせて追い打ちで頭突きを顔面にお見舞いする。歯が何本か折れたようだが知らん。完全に意識を手放したところでハジメがゴングが鳴らして試合終了だ。

 

ブーイングの嵐が巻き起こるが一言で黙らせる。

 

「文句があるならリングに上がれ」

 

歯が折れた皇帝を見せながら笑顔で言ってやる。会場が静寂に満ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユエ、ティオ、そして徹が居ないな。ユエとティオは問題ないだろうが、徹が居ないのか」

 

「徹なら大丈夫だと思うけど、どうかしたの?」

 

「雫ちゃん、徹君がこんな機会を見逃すはずがないよ。三人とも姿が入れ替わってると思うけど、絶対に徹君は本気で魔物の振りして襲ってくるよ。私たちを鍛えるために」

 

「まさか、大迷宮の試練中にって、あれ、シアは何処に行ったの!?」

 

雫を視界に入れながら香織と背中合わせに構える。

 

「ちっ、シアを引きずった跡がある。もう仕掛けてきてるぞ!!いいか、徹だろうと魔物だろうと殲滅する気でいろ!!」

 

雫もようやく警戒態勢に入るが、それより先に三人で背中合わせになる。

 

「いいか、絶対に離れるなよ。魔物はオレと香織で遠距離で仕留める。離れた途端に徹に襲われると思え!!」

 

進行方向は雫に任せて絶対に離れないようにしながらゆっくりと進む。時折飛んでくる石は全て撃ち落とす。時間はかかったがゴール付近にたどり着いたところで舌打ちをしながら3体のゴブリンが姿を見せる。シアは簀巻きにされて引きずられている。どうやら切り抜けたようだ。

 

 

 

 

 

「おっ、起きたか。そろそろ飯が出来るぞ」

 

夢から覚めればいつの間にか棺桶らしきものに寝かされていたようだ。

 

「徹は無事だったのか?」

 

「うん?まあ普通の奴なら願望の世界のぬるま湯は心地いいんだろうけどな、儂みたいな歪な存在だと一発で分かるんだよ。何のバックボーンも持たないくせに平和な世界でゴルゴ13みたいな能力だぞ。気持ち悪くてすぐ目が覚めたわ。あと、一番のコンプレックスが解消してる気持ち悪さもあったな」

 

「まあ、そうだな」

 

それ以外どう返せばいいのかわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

媚薬スライムとは、この迷宮の主、分かってやがる。こういうのを求めてたんだよ、日本に居た時から。問題は一番スライムを被っていたのが徹ってことかな。

 

「徹、拘束はいるか?」

 

「うん?いや、前にも言ったけど生殖機能が殺されてるから性欲が無い。無い物を、0をいくら増幅しようと0だな。気持ち悪いから洗い流したいって思う程度」

 

ああ、そういえばそんなことを言っていたな。ところで、なんで綺麗な部分を採取してるんだ?おい、誰に渡す気だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいか、ゆっくりと下がれ。通路に戻ると同時に出来る奴らで防壁を作る。Gは儂の植物の栄養分にする」

 

真下から来るプレッシャーに負けないように気合を入れながらゆっくりと元来た道を引き返す。通路まで戻ったところで広域殲滅型の種を豆まきの要領で適当に投げまくる。最後に一番外側になる部分に防壁になる種を投げる。

 

「全力防御!!」

 

ユエが土壁を作り出し、香織が聖属性の障壁を張り、その外側に分厚い豆の樹を生やす。ハジメがシアと一緒に重火器を設置し、ティオもブレスの準備をする。

 

「やばいな、Gを甘く見ていた。儂の殲滅用植物が押し負けておる」

 

「殲滅用ってどんなのだよ」

 

「鳳仙花の爆発力と種の量を増やした物だ。マスターキー並の威力があるんだがな。ちょっとショック」

 

それでも弾けた種を次々と成長させて種をバラまき続ける。いずれは殲滅できるだろうが、そろそろ

 

「土壁が壊されるぞ!!」

 

土壁が崩れ、香織の張った障壁に張り付き、気持ち悪い腹側が見えるようになった。

 

「キモイキモイキモイ!?」

 

「ティオ、ぶちかませ!!」

 

ティオを先頭にしてブレスを吐かせて押し返す。それでもすぐに空いた空間に新しい奴らが入り込む。

 

「ユエ、もう一回土壁!!」

 

あと何回繰り返すことになるんだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の大迷宮にまで来たのだが、まさかのアクシデントが発生した。

 

「おい徹!!眠るな!!」

 

「わし、ちょうせいがかんれいちにむいてないんだよ。きほんおうしゅうでもあったかいちいきでのかつどうだったから」

 

徹のテンションが変に低いと思ったら生命活動そのものが低下してるとか、お前は爬虫類か!?

 

「ほら、気温調整用のアーティファクトと懐炉に湯たんぽ!!早くいつものお前に戻れ!!」

 

色々と持たせて様子を見るが、すぐには戻らないみたいだ。くそっ、日本でも冬場はテンションが低かったがここまでじゃなかったのに。

 

「なんというか、ゆるキャラみたいになっちゃったわね。珍しいものを見ちゃったわね、香織」

 

「うん、いつもキリっと……たまに目が血走ってたり、田舎のおじいちゃんとかおばあちゃんみたいな状態になってたからそこまで珍しくもない?まあ、こんなに気が抜けてる状態はさすがになかったかな」

 

戦力的に大幅にダウンだが、本人はこれでも迷宮に行く気満々なんだよなぁ。ここにある神代魔法と相性が抜群だって本人が言っている以上、連れて行かないと。

 

 

 

 

 

 

コタツムリになった徹は機動力だけは最近大量に見てしまったアレ並だったが戦闘には参加出来ずにいる。というか、速くてキモイ。邪魔にはなっていないからいいんだけどな。幻聴が聞こえだした中、それが自分の本心の部分であると一発で見抜いたりと頭の方だけは元に戻っている。

 

そして、今はちょっとコタツムリのキモさが目立っている。攻撃が味方に曲げられる空間で、一人だけ魔物をコタツの中に引きずり込んで処理している。

 

「徹、どうやってるんだよそれ」

 

「攻撃じゃない。愛情表現として抱きつき、絞め殺す。それだけだ」

 

こいつ、攻撃判定を伴わない状態でターゲティングを済ませてそこから対象を選択せずに攻撃してやがるのか。コンマイ語の対象を取る・取らないじゃないんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

『最後に何か言い残すことはあるかしら? 氷壁にでも刻んでおいてあげる。ここはそれぞれの空間と繋がっているから、運がよければ自分の試練を突破した誰かがやって来て遺言を見つけるかもしれないわよ?』

 

「……ま、だ……しに、たく…ない」

 

まだやりたいことがいっぱいある。もっと普通の女の子っぽいこともしたかった。香織みたいに恋をして、おしゃれをして好きな人の隣に居たい。他にも色々とやりたいことがある。

 

『そう、だけどそれは果たされない。苦しませずにやってあげる』

 

偽物が刀を振り上げる。それを直視することが出来ずに目を瞑る。そして刀が振り下ろされ

 

「なんだ、助けた方が良かったのかよ」

 

そんな声が聞こえたのと同時に金属同士がぶつかり合う音が聞こえた。恐る恐る顔を上げれば、いつも通りのショベルで刀を受け止めた徹がいた。しかも抱きしめられるような形になっている。

 

「死んだふりで隙を伺ってるのかと思ったら本当に負けかけてたのかよ。何を手古摺ってるんだ?」

 

ショベルを大きく払って白い私を壁まで吹き飛ばし、足場を破壊するように豆の蔓が押しつぶしていく。

 

「それにしても天乃河の奴、昔から使えない奴だったのか。悪気のない言葉こそが一番の武器だろうが。世の中のおっさんとお兄さんの間、おばさんとお姉さんの間の年齢に苦しむ奴がどれだけいると思ってるのか」

 

徹に最初の方の言葉を聞かれていたことに驚く。

 

「まっ、雫にも問題があったがな。何も言わずに理解しろってのも理不尽だ。まあ、期待を裏切るのが怖いのも優柔不断で中途半端なのも人間の心理としては普通のことだ。逆にそれを感じない方が人間として終わってる。儂のようにな。ふむ、その点に置いてだけは儂も天乃河と同じか」

 

そう言いながら仙豆を私の口に放り込む。それをかみ砕き、身体が治るのがはっきりと分かる。だけど、戦う気力が湧かない。

 

「さて雫、お前はどうしたい?あの偽物が言う通り、儂はこの試練を突破しておるし、ハジメも大丈夫、のはずだ。いや、中二病方面で弄られると怪しいかもしれんが。まあ、ここで無理をする必要もない。死への恐怖はあって当然の物で恥ずかしがることはない。困難を前に誰かに縋るのも悪くはない。何より、儂のような色々とおかしな存在を好いてくれているのは真面目に嬉しいと思っておる」

 

そういえばそれも聞かれてるんだっけ。理解すると顔が熱くなる。

 

「雫が自分を押し殺していたのは地球にいたころから知っていた。香織と一緒にハジメを着けまわしてたのをこっそり付けてたりしたからな。可愛らしいマスコットのキーホルダーに見惚れてたりしてたからな。だから、普通の感性をしてるのはすぐに分かった。雫は普通の女の子だ」

 

普通の女の子。今までずっと欲しかった言葉。その言葉に縋りつきたくて手を伸ばせば、徹はしっかりと握ってくれる。

 

「硬い手だ」

 

小さいころから竹刀を振ってきた私の手は肉刺が出来、潰れ、硬くなっている。それが余計に普通の女の子らしい香織と比べて好きになれなかった。それを思い出して手を引こうとするのを徹は逃がさないように、しっかりと握りしめる。

 

「雫は嫌うのだろうけど、この手は雫が雫である証だ。目を見れば為人が分かるように、手を見れば歴史が分かる。この手を恥じることはない。誇りに思え。自分で誇りに思えなくとも、この手は確かにクラスメイトを救ってきた。それは雫自身が選んだことだ」

 

手を見れば歴史が分かる。

 

そうだ。光輝に巻き込まれるようにこの力を使ったりもした。偶然にもこのトータスで得た天職も刀を振るうのに適していた。それでも力を振るわないという選択肢もあった。刀ではなく剣にすることも出来た。先生の護衛として最前線から離れることだって出来た。だけど、私は選んだ。刀を握って戦う道を。普通の女の子らしくはないけれど、間違っていたなんて思わない。

 

「徹、私の刀を」

 

「おう」

 

徹が握っていた手を放して刀を持たせてくれる。立ち上がり、徹の豆の蔓から逃れようとする偽物に向き直る。だけど1つだけ聞いておきたいことがあって顔だけ振り返る。

 

「ねえ、私、普通の、かわいい女の子かな?」

 

かわいいを付けるかどうかちょっとだけ悩んで、だけど徹がどう思ってるのか気になって付けて聞いてみた。

 

「儂的には普通の綺麗な女の子だな」

 

「そっか」

 

望んでいたのとは少し違う答えが返ってきた。でも、それでもいい。これからも時間はある。それに普通の女の子ではあるんだ。くじけてる暇はない。そう思っていたのだけど

 

「なんせ儂らはそこまで接点が無かったからな。ああ、さっきの手を伸ばしてくる姿はかわいいとは思ったかな」

 

不意打ちは反則だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふはははは、遅いお目覚めだな。これより最後の脳改造手術を始める」

 

「止めろショッカー!!」

 

一頻りショッカーごっこを楽しんでからハジメをベッドから解放する。

 

「神代魔法のフルコンプでボーナスでも貰ってたんだろうが、儂は儂で変成魔法によるバージョンアップを済ませた!!具体的にはスーパーコーディネイターキラ・ヤマトから超進化人類エヴォリュダー獅子王凱位に」

 

左手の甲にGストーンの紋章を輝かせて見せる。

 

「化け物じみたパワーアップじゃねえかよ!?というか、ガチのエヴォリュダー!?」

 

「ああ、さすがにこれは魔法だ。光魔法のライトを超細かく設定してそれっぽく見せてるだけだ。さて、変成魔法を儂なりにアレンジした結果を簡潔に説明しよう。ステータスを好きに割り振りできるようになったというか、今現在のステータスとか肉体そのものをポイントで計算してキャラエディット出来る。不要なスキルとかステータスを振り直したり、ちょっと体の再調整とかした結果進化したといっても過言ではない」

 

「反則にも程があるだろう!?」

 

「ついでにハジメが倒れてる間に体の悪い部分を直して、ついでに香織に頼まれてハジメのドンナーをオルカンにしておいた」

 

慌ててズボンの中の相棒を見てみれば確かにドンナーがオルカンになっていた。鏡を見せられると髪も元の黒に戻っている。

 

「後でもうちょっと詳しい資料を用意してやる。理想の自分に大変身ってな」

 

 

 




たぶん雫ちゃんのシーンが増えると思う。
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