「ダガー、想像以上に良いMSだ」
設計にシャアが関わっているせいか、UCの洗練されたMSの設計思想が取り入れられている。装甲やビーム技術に関してはストライクに劣るが、こちらの方が慣れ親しんでいる分、扱い易く感じる。特にコックピット周りはグリプス戦役時の物に近い。
「ヤマト中尉、ダガーの具合はどうでしょうか?」
「かなり良い。ストライクよりもこちらの方が合っているよ。ライフルの方はどうだった?」
「とりあえずはストライクの予備分を2丁回してもらいました。1丁は潰して中尉の要望に合わせて間に合わせの改造を施します」
「頼む。それからサーベルの方はどうなっている」
「鍔迫り合いは、出力なんかの問題でまだ無理そうですがアイドリングモードは比較的楽に出来たそうです」
「そうか。なら、ダガーで出来るのはここまでだな。それにしても、本当に専用機は宇宙戦用の設計だけでいいのか?」
「アズラエル様からはそのように聞いております。なんでも、面白い人材が見つかったとだけ聞いてまして。そのためにガルダ級を1隻改装しているそうです」
「ガルダを?」
「少なくともアフリカはどうにかするそうです」
シャアの奴、一体どういう人材を見つけたんだ?まあ、任せろと言うのなら任せるだけだ。
アズラエル総帥に直訴して手にいれた理想の爆撃機は順調に飛行を続ける。
「ナガイ少佐、シュヴァリエ大尉より発光信号。準備完了だそうです」
「はいよ。オールウェポンズフリー。各銃座、良く狙え。敵さんはこちらに手が、まあ一応大型ミサイルなら届くが、それ以外は手が出せんし、最初の爆撃で片を付ける。諸君らは残敵の排除が目的だ。それでは行くぞ」
全長317m、全幅524mの巨体のほとんどを爆弾倉に改装し、翼にはG計画で開発されたアグニの出力を上げて大型にした物を12門設置。動力はニュートロンジャマーによって使用できなくなった原子力空母からかっぱらってきた原子炉と通常の物と併用。MSでは上がってこられず、ニュートロンジャマーの影響を受けない成層圏からの爆撃を目的として改装してガルダ級爆撃機
「鬼は~外~」
コンピュータの指示をガン無視して自分の感覚に従って爆弾倉を開いて投下する。3秒ほどで投射を止めて着弾を待つ。
「着弾確認。詳細は不明ですが、地上班からは見事に基地周辺の民間人の立ち入り禁止ポイントに全弾着弾していると報告が来ています」
「というわけで各銃座、原形をとどめている建物に食らわせてやれ!!」
オレの合図にアグニ改が次々と放たれていく。さすがにこれだけやれば戦車隊でも大丈夫だろう。
「撃ち方止め。シュバリエ大尉に合図を出せ」
「合図出します」
問題はないだろうが念のためにエアカバーのために高度を下げる。ニュートロンジャマーの影響下に入るが、飛行自体は通常のエンジンだけで問題ない。
「それにしても、あのアンドリュー・バルトフェルドに手も足も出させないとは。お見事です」
「このアルバトロスはそういうコンセプトだからな。戦いってのは相手を自分の土俵に引きずり込むのが基本だ。成層圏という安全地帯があるんだ。有効に使わないとな」
「そういえば他にも献策を上げたと聞いていますが」
「ああ、苦笑されたけど認可が下りたらしいな。旧式艦を多少改造してやるとさ」
「それは、どんな策なのですか?」
「連合に残っている宇宙拠点なんて月とアルテミス位でプラント方面なら全部敵だろう?適当にデブリとかゴミをカタパルトで飛ばしてハラスメントなんてどうってな?向こうがゴミを処分してくれて大助かりだ。何なら核廃棄物なんかも投げてやれってな。太古の昔も投石器で籠城している城なんかに敵の死体とか糞尿を放り込んで疫病で倒そうとしてたりしたらしいからな」
そう説明すると長年相棒を勤めてくれているセガワ中尉がドン引きする。
「ちょっとドン引きです。その発想にドン引きです。まあ、別に良いと思いますけどね。人間を超えた新人類には我々にできないことをやってもらわないと、ね」
「だよなぁ、同じ人類ならまだ手加減、核廃棄物は無いなぁとは思うけど、あいつらは自分たちで同類ではないと否定してるんだ。なら、好き勝手させてもらおう。なんせ、条約に無いんだからなぁ」
オレがアズラエル理事に上げた提案は条約に反することは一切行っていない合法的な攻撃なのだ。全く心は痛まない。相手が上から見下すならその足を思いっきり引っ張って顔面を強打させてやる。
「さて、反撃の手段が整う前にカーペンタリアにも配達に向かうぞ。今度は定期便になるはずだ」
「それは楽しみですね。シュバリエ大尉に全権委任が完了しました。本部より帰投許可が降りました」
「了解。ついでに情報部にインド洋の敵潜水艦隊の位置を送らせろ。ハラスメントで残ってる爆弾をプレゼントしてやる」
「確度が高い物を優先させます」
アラスカに降りたと思えば直ぐに宇宙にとんぼ返り。代わりと言ってはなんだが、新型を回してもらえただけありがたいと思うしかないな。
「仕事が速いねぇ、アズラエル財閥は。これ、どれぐらいのエネルギーがあるの?」
目の前にあるのはほとんど姿が変わらない愛機のメビウス・ゼロだが、ガンポッドがマシンガンからビームライフルに換装されている。これなら今まで以上の働きは出来る。
「バッテリーは旧来の物らしいですけど、元々ガンバレルは大きいので各ポッドごとに30発です。威力の方はストライクの物と同じとだけ聞いています。ですが、その分本体のレールガンには手を加えていないそうです。色々と立て込んでいましてかなりの突貫工事があちこちで発生してるんです」
「そんだけ凄いんだろう、ストライクの技術は」
「正確には武装面ですね。大西洋連邦に配備される量産型MSはヘリオポリスが襲撃された時点で既にOSを除いて生産されていましたから」
「へっ?それマジなの?」
今まで知らされていなかった事実に間抜けな声で聞いてしまう。
「はい。G兵器はエース用と割り切って別ルートでの開発が進んでいました。武装面はジンと変わらなかったのですが、G兵器のビーム技術を運用できるように改良を施せば一気に戦力が増します。OSの方も10日もすれば開発完了だそうです。また地球にいるザフトに対してナガイ中佐率いる超高々度爆撃部隊がハラスメントを続け、攻略自体はキマイラ隊が行うそうです。ですので新設されるMS部隊は宇宙に専念することが決まっています」
「キマイラ隊?聞かない名だな」
「まあ、あまり公にはされない部隊です。その、本部、正確にはほぼアズラエル総帥直属のコーディネイター部隊とだけ言っておきます。あまり言いふらさないでくださいね、気にする方々が多いので」
それは分かる。ということは坊主もそこに送られたか。まあ、普通の部隊に配属されるよりは無難だろうな。精鋭部隊という名の使いっパシリとは言え総帥直属なら補給なんかはバッチリ受けられるだろうからな。それに部隊全部がコーディネイターなら噂に聞く『煌く凶星』みたいな単騎特攻なんて真似はされねえだろう。
「それで、オレはこいつに慣れた上でひよっこ共を鍛えろと?」
「今の所はそうなります。ご希望でしたら練習用のMSを回してもらいますが」
「いいよ。オレにはこっちの方が合ってる。それに、新設艦隊の護衛任務もあるしな」
「ああ、あのポイ捨て部隊ですか」
「いや、まあ、その通りなんだがポイ捨て部隊かぁ」
こっちもナガイ中佐発案の部隊らしいけど、デブリとか倉庫を圧迫してる旧式のミサイルとか核廃棄物なんかをプラントに向けてポイ捨てして向こうに処分してもらおうぜってコンセプトの艦隊らしいけど。
さてと、そんじゃま、坊主たちの足を引っ張らずに済むように訓練に行きますか。
評議会に呼び出され、戦況について説明しなければならなくなり資料をまとめたのだが、これでは私の目的を果たせそうにもないな。
「結論から申し上げます。我々はアズラエルを甘く見ていたようです」
G兵器と共にプラントに帰還してから早2ヶ月。情勢は圧倒的に連合側に傾いた。既に地上は完全に連合軍に取り戻され、我々は宇宙に叩き出されることも無くすりつぶされた。それも旧態依然の戦力によってだ。超巨大爆撃機が地均しを行い、戦車と歩兵がそれを制圧する。まさに教科書通りと言ってもいい。潜水艦が何隻か残っているようだが、補給もままならない以上、いずれは降伏するか、海の藻屑となろう。
そして先週には、地球軌道上を奪還された。奴らが送り込んだ量産型MSダガーとビーム兵器を搭載したMA部隊によってだ。こちらはようやく新型MSゲイツに試作量産型ビームライフルとビームサーベルを運用できるようにし終えたばかりなのにだ。戦術も大したものだ。MS同士が戦っている間にMAが戦場を迂回して後方の艦船に襲いかかる。ご丁寧に実弾とビームの両方で襲われ、帰るべき場所を失ったジンやシグーを重力圏内に押し込むように遠巻きにビームライフルを撃ってくる。あとはビームに焼かれるか、大気との圧縮断熱で焼かれるかの二択だ。
さらに月方面からは大量のデブリが定期的に投射されて来る。こちらもご丁寧に資源として使いようが無い物、土砂を固めたような物から生活排水の詰まったタンクなどだ。初期のころはミサイルまで投射され、2基のコロニーに被害が出た。それからは連日のように投射されるデブリを迎撃し続けている状態だ。いつ飛んでくるか分からない物を待つというのは兵としては未熟なザフトでは対応しきれていない。これが続けばさらにコロニーへの被害が広がる。
状況の確認だけで気が滅入ってくる。何より一番の問題は別にある。
「つい先ほどですが、北米においてニュートロンジャマーの効力領域が減少したと報告が上がりました。確認に時間がかかったようで1ヶ月前には原子力発電所が稼働していたようです」
「なっ、ニュートロンジャマーキャンセラーをナチュラルが開発したとでもいうのか!?」
「いいえ、MSを正確にはMWですな、それを正しく運用したといえばいいのでしょうか?我々には考え付かない方法です」
「はっきりと簡潔に報告しろ!!」
「地下に埋まったニュートロンジャマーを掘り返されました。MSにMSサイズのシャベルを持たせて」
私の報告に評議会の方々の目が点になる。
「MS工廠があると思われるデトロイト周辺の一角が生産されたMSによって掘り返されニュートロンジャマーを回収されました。あとはそれを調べ上げ、有効範囲を割り出し、原子力発電所周辺に大部隊が展開され、無効化されました。これにより北米でのエネルギー不足は解消され、世界中に打ち込んだニュートロンジャマーの性能が公表されました。時間はかかるでしょうが、エネルギー不足は完全に解消されます」
先週の軌道上海戦に現れたMSはこの原子力発電によるエネルギー不足解消からの生産量アップで揃えられたのだろう。先程まで怒り狂っていたザラ国防委員長が力なく椅子に座り込む。
「そんな、原始的な力技に、われらの英知が敗れるのか」
「原始的だからこその応用性とでも言いましょうか。何も手が打てないからこそ許された非効率手段です」
常人の発想ではないし、平時の際には絶対に認められないだろう。だが、今は非常時だ。非効率だろうと許されてしまった。
「連合軍が攻めてくるまでどれだけかかると見ている?」
「遅くとも半年。早ければ3ヶ月と見ています。戦力をどれだけ整えてくるのか、それによって時間は変わると見ています」
「……士官学校生を繰り上がり卒業させる。ゲイツでなら対抗できるはずだな」
「少なくともジンでは厳しいでしょう。それと繰り上がり卒業をするぐらいなら士官学校にゲイツを配備していただいた方が効率的です」
戦場に足手まといを連れて行ってなんになるというのだ。これでは私の夢どころか命すら危うい。切り捨てるか?
その後も会議は進むが、ジェネシスの開発は中断。リソースをゲイツに振ることで決定した。これにより、私の夢は今大戦においては完全に消えることとなる。
ギレンの野望で知っているんだ。序盤の地上はフライマンタ、デブロック、ミデア、ディッシュ、量産型ガンタンクで余裕だって。戦いは数だよ兄貴。