この話でちょこちょこ実験を重ねていきます。
「初めましてだ、オレが今回の依頼人だ」
開発室に集まった二組の猟兵団に挨拶をする。団長二人のこちらを値踏みする視線を真っ向から受け止める。
「ほぅ、ただのガキというわけではないようだな」
「ああ、少しは話を聞いてやっても良いと思うぜ」
「お眼鏡にかかったようで何よりだ。オレはラインフォルトグループ第5製作所所長アーク・ラインフォルトだ。まあ製作所と名乗っているが正確には開発所、研究所という方が合っているんだがな。自己紹介はさておき、今回の依頼は第5製作所で開発した新型導力鎧システムと新型導力車の実践データ収集だ」
「新型導力鎧ねぇ。またけったいな物を作った物だな」
「勘違いしてもらっては困るな。新型導力鎧システムだ。まあ実物を見てもらった方が早いな。隣の実験室でそれをお見せしよう」
猟兵団たちを連れて研究所の隣に併設してある実験場へと案内する。
「おいおい、その新型導力鎧ってのは何処にあるんだ?何もないじゃないか」
赤髪の青年が何も置かれていない実験場を見て声を上げる。
「何度も言うが新型導力鎧システムな。そして物自体はここにある」
実験場の奥に置いていたアタッシュケースからフォースライザーを取り出し腰に装着する。プログライズキーはスティングスコーピオンを取り出す。そのままライズスターターを押す。
『POISON‼』
フォースライザーに装填してレバーを引く。
『フォースライズ‼スティングスコーピオン‼Break Down‼』
サソリのライダモデルを身に纏い猟兵団に向き直る。
「これが新型導力鎧システム、ライダーシステムだ」
ポカンとする猟兵団に性能を見せるために一足飛びで実験場の入口にまで跳ぶ。何人かが反応して武器を抜く。
「止めろ!!」
黒い団服の猟兵団のリーダーがそれを止める。
「ふぅむ、わずか数秒で装着可能な導力鎧か。整備性はどうなっている?」
赤い団服のリーダーが性能を尋ねてくる。
「このシステムは召喚して装着を行う。なので基本的にはこちらで整備を行う。ダメージにもよるが6時間もあれば整備は完了する」
「その言い方、人の手で整備するのではないのか?」
「専用の整備機械を用いる。各個体ごとに専用の物をだ。無論、データが蓄積されれば整備時間は短くなる」
「武器は?」
「固定武装以外は今のところない。既存の導力鎧と違って普通の武器が扱えるからな」
「なるほどねぇ。サイズ、装着者の身長制限は?」
「150セルジュから190セルジュ。とは言え体格が倍もあると言われれれば話は別だな」
「150セルジュか。もう少し下限はどうにかならないか?」
「フォースライザーの上位モデルのショットライザーなら140セルジュだな。ただし、バルキリーだけだ」
「バルキリー?」
「ああ、説明がまだだったな。まず今回用意した報酬にもなるのは各団にショットライザー1、フォースライザー2、レイドライザー4だ。それぞれ使用できる鎧が異なる。ショットライザーではバルカンとバルキリー、さらにこれらは2種類の形態を持つ。バルカンはシューティングウルフとパンチングコング、バルキリーはラッシングチーターとライトニングホーネットだ。フォースライザーでは4種類、滅、亡、迅、雷になる。一番下位モデルのレイドライザーはバトルレイダーのみになる」
「将軍クラス、士官クラス、下っ端か。装備に差があるのはどうとられるか。まあいい。バルキリーをこっちに回してもらえるか。フィーに使わせたい」
「ならばフォースライザーの方は先に選ばせてもらう。スペック表は」
「依頼を受けてもらえると思っていいのだな」
「ああ、面白そうではあるしこれが軍の基本になる可能性も少し見えた。乗り遅れるのは致命傷になるやもしれん」
「こっちもだ」
「いいだろう。契約成立だな。ではこれがそうだ」
導力演算機にフォースライザーの4体のデータを表示させる。
「滅と雷を使わせてもらう」
「なら迅と亡がこっちだな」
言われたとおりにプログライズキーとゼツメライズキーを振り分ける。
「最後に新型動力車だが、これも特殊でな。まあ見た方が早い」
専用のプログライズキーのライズスターターを押す。
『ACCEL!!』
ライダモデルが召喚されるように目の前に導力二輪が現れる。プログライズキーを展開してハンドルの中央のスロットに装填するとエンジンが始動する。
「見ての通りだ。導力二輪、オレはバイクと呼んでいるこいつを試してもらいたい。こいつは各団7台ずつ用意してある。どれも同じものだが、こいつに関してはエンジン回り以外は改造してもらっても構わないし、3台までならぶっ壊してもいい。無論、レポートの提出は願うがな」
「ふむ、二輪か。小回りではこちらが上か。馬の運用も考えたことがあったが、こいつなら馬のデメリットはほぼないな」
「音は、結構デカいな。エンジンが少し強力すぎるんじゃないか?」
「まあ、特別製だな。本来は別の物に使う物なんだが、現在のところ余っていてな。流用したんだよ」
「それにしたって強力すぎだろうが。戦車とまではいかないが、普通の導力車並かちょい上だろう」
「それぐらいはあるな」
しかも関節部分に仕込む分でそれだ。これを四肢の関節に仕込んだうえで更に胴体にオーバルジェネレーターを搭載予定だったりする。
「エンジン回り以外は弄繰り回すぞ。出来れば設備を手配してもらえるか」
「此処の裏が第5製作所の工房だ。好きに使えばいい。基本的な資材は揃えてある。当分使う予定はないから各自の武器やオーブメントの整備なども行ってくれて構わない。仮眠室やシャワーなんかもあるから宿代わりに使っても構わん」
「リィン、お前マジで覚えておけよ」
「今回も本気で悪かったと思ってる」
お互いボロボロの身体を引きずりながらユミルへと歩く。すでにスタッグフォンで助けを求めているが、血の匂いに魅かれて魔獣が集まろうとしていたので隠れてやり過ごすことも出来ない。リィンの太刀は折れ、オレのサイクロンライザーとロッキングホッパーゼツメライズキーも破損し、メモリガジェットも救援に飛ばしたスタッグフォン以外は破壊された。戦う手段が一切無くなったうえに、オレは左腕が変な方向に曲がり、肋骨も幾らか折られ、右足も変な痛みを感じている。リィンは一応傷はふさがっているが右わき腹と両肩を抉られ、異能の力を引き出した時のように髪が白くなり瞳が紅から戻らなくなった。
「絶対エリゼとレンに怒鳴り込まれる」
「仕方ないじゃないか、あの幻獣を放ってユミルに来られたらどうするんだよ」
「それこそユン老師に任せろよ。というか、あの人何処に行ったんだよ」
「たまにふらっと居なくなるんだよ。数日で戻ってくるはずだよ」
「初めて1型を見せた時もかよ」
「そうだよ」
そこまで聞いてユン・カーファイの胡散臭さが一気に跳ね上がった。あの爺さん、カンパネルラ並に掴みどころがない。なんというか、雲どころか空気を掴むとかそんなレベルの存在だ。まるでこの世界に属していないんじゃないかと思うぐらいだ。ぶっちゃけ外の理には絶対触れてると思ってる。最低でも知識は盟主と同レベルだと思っておく。
「マジでキツイ。来年にはアイゼンガルドの主が飛来とかするんじゃねえのか」
「さすがにそれは勘弁して欲しい。伝説の暗黒竜と同等とか言われてるんだよ」
「帝都で大暴れしたってやつか。なら巨いなる騎士を引っ張ってこいよ」
「あれこそ伝説じゃないの?」
「実在してるらしいぞ」
と言うか、銀は見せてもらった事がある。あれと戦うためにブレイキングマンモスを製造してる。
「導力を使わない戦車用のエンジン?」
母さんから回された仕事とは言え、キワモノすぎる注文に回された意味を考えてしまう。
「無理かね?」
まあ、目の前にいる宰相直々の依頼じゃ仕方がないか。
「現行戦車の性能そのままとはいきません。丸々請け負ったとしても装甲はだいぶん薄くなりますし、航続距離も落ちます。2世代ほど退化した物になりますし、導入コストもランニングコストもお高くなりますよ?」
「構わない。ただし、砲だけは現行の物を利用出来るようにしてもらいたい。携行弾数は半分ほどで構わない」
言われた通りに設計をしていくが随分とキワモノになっていく。こんなのをどうするつもりなんだ?
「これを20両ほど納めて欲しい。これ以上は必要になることはない」
「後継型の必要もですか?」
「そうなる」
単発の事態に投入することになるのか。この性能で?いや、待てよ。そう言えばレンが近々リベールで色々起こるって言っていたな。特殊な実験も行うと。そこで利用するのか?リベール方面に展開してるのは確か
「納めるのは第三機甲師団で宜しいでしょうか?」
「ほぅ、なるほど」
鎌をかけてみたら鬼が出た。濃密な殺気が襲いかかってくる。だが、その質に困惑する。よく知っているそれに身が縮まるどころか啞然とする。
「リィン?」
その呟きに宰相が驚く。その姿がリィンに重なる。
「宰相、まさか貴方が、リィンの実の父親なのですか?」
「……そうだ。私がテオに預けたのだ。リィンの幸せを願って」
「なら、それこそ名乗り上げ、いや、駄目か。宰相がシュバルツァー家と繋がっているなんて初めて聞いた。敵が多い以上、狙われるのはリィンとシュバルツァー家か」
「そうなる。それに今更どの面を下げて会えば良いものか」
「まあ、一発貰うのは確定でしょう。ユン・カーファイに徹底的に徒手空拳の型を叩き込まれてますから結構効きますよ。それに最近一段と力が馴染みましたから」
「馴染む?まさか黒の、鬼の力か!?」
急に立ち上がり詰め寄られて両肩を凄い力で掴まれる。
「リィンの異能が鬼の力だと言うならそうですけど」
「なんということだ。これも仕組まれているのか」
「えっ、何?どういうことなんですか」
宰相からの情報を纏めて頭を抱える。
「予言書に記されてる生贄がリィンの可能性が高いと」
「そうだ。それに干渉していると思われるのが私が契約を結んだ巨いなる騎士、黒の騎神イシュメルガだ」
「それは話しても大丈夫なのですか?」
「あれは基本的にこちらに興味がない。あるのは、全てを滅ぼすという欲だけだ」
オズボーン宰相から頂いた情報から今後の予定を組み立て直す。一番の問題は鬼の力そのものではない。鬼の力が黒の騎神とリンクしていて、その力でリィンの心臓が動いていることだ。つまり、別の心臓を移植すればすぐに分かり、黒の騎神を破壊すれば道ずれにされる。
これを回避する方法と技術を手にいれなければならない。その為にはオズボーン宰相にも協力して頂く。リィンには更に鬼の力に馴染んで貰う。
「リィン、何か言い訳は?」
「いや、元からアークのことを知ってたから。というかオレは出汁にされた方だと思うんだけど」
年末の帝都ヘイムダルの闘技場の舞台は熱気に包まれている。出来ればオレも観覧席の方に居たかった。
「宰相直々の指名だが、少しは楽しめそうだ」
オレとリィンに対峙するのは帝国有数の武人の一人、『黄金の羅刹』の異名を冠するオーレリア・ルグィン将軍だ。
本来、翌年にデビュタントを迎える貴族子弟の中から推薦を受けた者がハンデを貰った上で将軍達と一騎討ちを行い、帝国の次世代を担う若者に今の世代の重みを知って貰うという催しなのだが、それに巻き込まれた。
リィンがメインで、ハンデとして来年から一部の部隊に配備されるライダーシステムの御披露目を兼ねてリィンの友人であるオレの参加。代わりにオーレリア・ルグィン将軍は本来の得物を使用するというのだ。
「リィン、覚悟を決めるぞ」
「とっくに決まってるよ。スイッチを入れてないだけで」
「なら、行くぞ!」
『JUMP!』
『オーソライズ!』
ライジングホッパープログライズキーをゼロワンドライバーに認証させると同時にライジングホッパーライダモデルが現れ、周囲を跳び跳ねる。
「行こう!」
リィンが目を閉じて集中する。
「変身!」『プログライズ!』
「神気合一!」
オレにライダモデルが纏わりつき、リィンが黒い闘気を発する。
「ライダーシステムゼロワン、アーク・ラインフォルト」
「八葉一刀流中伝、リィン・シュバルツァー」
アタッシュカリバーと太刀を構える。それを見てオーレリア将軍の口角が上がり、その二つ名に相応しい黄金の闘気が湧き上がり、宝剣アーケディアを構える。
「『黄金の羅刹』オーレリア・ルグィン」
「「「参る!」」」
「くっ」
「アーク!」
この試合何度目になるか分からないが、アークに庇われる形で距離を離される。
「余裕は」
「尽きた」
お互いの状況を簡潔に伝え合い、最後の攻勢に移る。アークが剣をアタッシュケース型に戻す。
『チャージライズ!』
アタッシュケースに導力が集まっているのを確認する。オレも剣に闘気を集めて蒼い炎に変換する。それを見てオーレリア将軍も剣に闘気を集める。そのまま三人でジリジリと間合いを詰める。近づきすぎたところでまた少し離れて間合いを確定させる。そのまま数秒睨みあったところでこちらが後の先を取ろうとしているのを承知でオーレリア将軍が先に動いてくれる。
「行くぞ!奥義、剣乱舞踏!」
オーレリア将軍が地面に剣を突き刺すと同時に様々な武器の形をした闘気が隆起しながらこちらに伸びてくる。それと同時にアークがアタッシュケースを剣に戻せば、その刃に導力が宿っている。
『フルチャージ!』
「おらあぁ!」
オーレリア将軍の剣乱舞踏に対してアークが剣を振ると、導力の剣撃が放たれ、同時に剣を投げ捨てて走り出す。そのアークに隠れるように後ろを走り、同時に跳び上がる。アークは前方宙返り、オレは横回転で。
アークの作ったライダーシステムは生物をモチーフにし、最大の技はモデルの能力を最大限に発揮させるものだ。飛蝗をモデルにしている以上、最大の技は蹴りだというのは分かっていたし、1型が実際そうだった。何より、アークのことは十分に理解している。アークの右足に導力が溜まり、前方宙返りから跳び蹴りを放つ。
それをオーレリア将軍が地面に突き刺した宝剣を引き抜いて強引に迎撃する。これだけで普通の相手ならアークが押し勝つところだが
「黄金の羅刹を、舐めるな!」
闘気が更に膨れ上がり、アークを力づくで弾き飛ばす。だが、オレに気付いていなかったのか、その目が驚愕に染まる。
ずっと、八葉一刀流の事で悩んでいた。オレには足りないものが多すぎる。中でも攻撃力が足りずに何度も魔獣や幻獣に追い込まれ、アークとコンビを組むことで何とかやってこれた。だけど、その分だけアークの負担になるということだ。
それを解消するためにもオーレリア将軍に勝ちたい。その手段はよく見てきた。足りないのなら在るところから強引にでも引っ張ってきて使う。横回転で跳び、生じさせた螺旋の力を、一の型をそのまま剛撃である三の型に上乗せする。
「一・三連携、鳳翼墜撃!」
今までの、刀を握ってきた中で最高だと言える一撃は、神速ともいえる切り返しを行った宝剣アーケディアと打ち合いになり、アーケディアに罅を入れたところで刀が砕け散り、その勢いのまま身体を切り裂かれる。
「しまっ!?」
これはヤバイ。そう思っても既に身体から力が抜けていっている。せめて内臓が零れないように仰向けに倒れるので精一杯だ。倒れた視線の先にはライダーシステムが解除されたアークが剣乱舞踏の武器の山の中で身体を貫かれている姿があった。お互いギリギリ意識があり視線だけで語る。
【また、エリゼとレンに泣かれて怒られるな】