ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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生存報告とネタ帳に残ってた残骸を公開


鬼滅の龍

オレは何でまた生きてるんだろうな。セラが逝き、ソーナが逝き、留流子が逝き、イッセー達が逝き、子供や孫が逝き、地球が逝き、とうとう世界にはオレとオーフィスとグレードレッドだけになり、そして世界が逝くのと一緒にオレ達も逝ったはずだった。

 

なのにオレはこうして再び生を得ている。平行世界で再び生を得てしまった。この世界には、思い出の場所も人も何もない。ただ生きているだけだ。力の全てを失い、ただの一般人として。

 

ただ、最初はあまり生きるということに積極的ではなかったのだが、オレの生まれた家庭の事情からそんなことを言っていられない。

 

両親の話を聞く限り、明治時代後期から大正時代初期位で家業は炭売り。これから廃れる家業で、実際そこまで裕福とは言えない。まあ、父親があまり身体が丈夫でないのも原因の一つだが。その程度では動く気はなかった。だが、妹が生まれた。もう一度言う、妹が生まれた。

 

妹に貧しい思いなどさせてたまるか!

 

動き回れるようになるとすぐに父の炭作りから、山での山菜採取にちょっとした罠での狩猟、川で衝撃を叩き込んでショック漁法、それらで材料を揃え前世の趣味から極めたと言ってもいい燻製作りで家族で食べる分と近所に配る分、そして売りに出す分を大量に作る。それを近所の村ではなく都会の街にまで売りに出かける。

 

最初は不当に買い叩こうとする問屋ばかりだったので直接料亭やホテルの料理人の下にまで行き、強引に一口食べさせて質の高さを思い知らせて値段も相応に出させる。それらの代金で布や針、大工道具と資材を揃えて家族の分の服を縫ったり、炭焼き施設を大型化したり、燻製設備や蒸留設備を用意したり、家の修理やお風呂を改築したりと忙しく働く。

 

そして新年に父が家に代々続く奉納舞も6歳で継承して父の負担を減らす。何を考えたのか夜中から日の出まで12の型を延々と舞い続けるという気が狂っていると言えるそれを継承することで理解した。そしてあるはずのない記憶が見える。家に代々伝わる花札の耳飾りを付けた男が、刀を持って舞う姿を。

 

前世なら特別な儀式を行うことで可能となる記憶の継承。それが今の自分に起こっていることが分かる。ご先祖様は本当に感動したのだ。これを後世に残したい。その思いが胸の奥底から湧き上がってくる。

 

朝日に照らされる中、もう一度奉納舞を、ヒノカミ神楽を舞う。記憶の通りの動きを、呼吸を、全てを模倣する。舞う度に自分の体格にあったように調整をしながら、呼吸だけは完全に模倣するに至る頃には生まれ変わったかのような気分だった。まあ、家に帰ったら火傷をしたのかと驚かれた。父と同じ部分に火傷のような痣が浮かび上がっていたのだが、触った感じからして本当にただの痣だった。害はなさそうなので放置する。

 

 

 

 

 

 

販路を広げるたびにシマを荒らされたと因縁を付けて破荒戸を送りつけてくる問屋を、二度と逆らわないようにケツもちを再起不能にして店先に愉快なオブジェとして並べた帰り、奇妙な物を見てしまった。

 

季節外れの氷と、血を吐いて倒れている女性と頭から血を被ったような男の何か。臭いや気配から人間でないのは分かる。巻き込まれるのは嫌だが、あれの活動範囲が分からない。もし、範囲が広いと妹や家族に被害が出る可能性がある。よし、殺そう。

 

全力ダッシュから箪笥3つとその中身に加えて、それらを纏めて担ぎ上げるための鎖の重量を加えた跳び蹴りを叩き込んで吹き飛ばす。すぐさま鎖をほどいて箪笥を盾にするように女性の周りに置き、落ちていた刀を拾い上げる。

 

特殊な鉱石を使っているのか属性剣の一種であるのが分かる。そして、その力を全開で発動させる。高圧力と高熱を刀身に注ぎこみ、刀身が黒く変化する。

 

「痛たたた、いきなり酷いじゃ」

 

一瞬で折れた首を再生させた何かを刀で微塵切りにして仕留める。どうやら特効でも乗ったのか塵すら残さずに消えるそれを確認してから女性の手当てに入る。既に意識を失っており危険な状態だ。

 

抱き起こしながら気を流し込んで状態を確認すれば、冷気で肺がズタボロにされていて普通の方法では延命すら難しい状態だった。どうするか悩んだが、何かの縁と思い余り派手になりすぎないように治療することにする。そのためにこちらを見ている鴉に短刀を投げて仕留めておく。

 

シバリングを意図的に起こして体温を出来るだけ上げてから人工呼吸の要領で息を吹き込んで凍りついている体内を温め、余分な水分や血を吸い上げて吐き捨てる。それを数回繰り返して体内の氷を除去してから箪笥から水の入った竹筒を取り出して口内を洗い、商品である度数の高い果実酒に各種スパイスをブレンドした物を口移しで流し込む。これで体温は確保できた。

 

気功を使って軽い凍傷を治し、壊死仕掛けている肺に一月ほどで完治出来るように時間逆行の術を施す。苦しいだろうが、死ぬよりはマシだろう。それにこれなら薬などで徐々に回復したと誰もが思うだろう。魔法なんて誰も気付くはずがない。

 

治療を終えたので看病のために箪笥を担ぎ治し、女性を抱き上げて帰路に着く。山を10個ほど越えて自宅に戻り、母に事情を暈しながら話して服の下の手当てを任せている間に風呂を沸かす。風呂は準備が大変なので3日に一度程度で昨日用意したのだが仕方ないだろう。

 

入浴の介助も任せている間に病人食を用意する。食道も傷つけられていたからスープストックで作る重湯で良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目覚めるとそこは知らない場所だった。聞き慣れない音と嗅ぎ慣れない匂いが知らない場所だと告げている。特に匂いが独特で、清々しい気持ちにさせてくれる。

 

そこでようやく自分が助かったのと、呼吸が苦しいことで鬼殺の剣士として終わってしまったことが分かってしまう。

 

どちらのことで涙が流れるのか分からない。どうやってこの涙を止めれば良いのかも分からない。暗い感情が夜の闇のように私を包み込もうとする。それに怖じ気づいて、ただ泣いて啼いて哭いて、いつの間にか側に居た額に大きなアザのある男の子に頭を撫でられる。

 

「もう大丈夫だ。安心して眠ると良い」

 

そう言って耳飾りの太陽のように優しい笑顔で頭を撫でてくれる。それだけで私の涙は止まった。

 

「な、まえ、を」

 

「竈門炭治郎だ。さあ、ゆっくり休むと良い」

 

頭を撫でてくれていた手が、最後に額を軽く突いて、睡魔が襲ってくる。それに逆らうことなく眠りにつく。彼が、太陽が側に居てくれるなら、どんな闇も恐れる必要はないのだから。

 

 

 

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