ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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久しぶりに筆が進んだ


英雄伝説 閃の軌跡 外の英雄 4

預かった武器とライダーシステムの整備とARCUSの調整を終えて学園長室で学園長と共に帝国政府からのオーダーを受ける。

 

「ドライケルス大帝が残したとされる遺産の発掘と調査、そのオーダー確かに承りました」

 

「ドライケルス大帝が残したとされる遺産の発掘と調査への協力、そのオーダー承りました」

 

「学園長、詳細はアークが知ってるんで、場所を貸し出す程度だと思いますんで」

 

オーダーを伝えにきたアランドール大尉が学園長に気安く話しかける。

 

「正確には、遺産、巨いなる騎士、灰の騎神ヴァリマールの発掘と調査、修理、改修のために旧校舎一帯の貸し出し並びに空いている時間にリィン・シュバルツァーの手を借りることを要請するぐらいです」

 

「生徒を、ですか」

 

「ええ、これは昔から決まっていることです。リィン・シュバルツァーにはヴァリマールに搭乗する義務がある。アランドール大尉、リィン用のオーダーも持っているのでしょう?」

 

「一応は。おっさんが言うには流石に今日必要になることはないだろうけど想定より早くなるだろうからって預かっている」

 

その言葉に学園長が驚きを見せる。

 

「何を、最近になって大帝の遺産の情報が見つかったのではないのか!?」

 

「最近がいつを指すのかで大きく変わりますが、これは陛下もお認めになっています」

 

「陛下が…何が、帝国で何が起こっているのだ!」

 

「数年の内に全てが分かりますよ。恨むなら大地と焔の眷属を、人の業を恨んでください」

 

一応、大地の眷属の末裔だから後始末ぐらいはしてやるよ。焔の眷属の方は知らん。青の深淵が頑張っているのは知っているが、それ以外は引きこもってるだけだからな。

 

たまに愚痴大会なんて開いてる。ギルバートを生け贄にしてな。この世界にパワハラなんて言葉はないからな。したっぱをイビるのはそこそこ楽しい。試作品のテスターも進んでやってくれるからな。最悪、死にかけになれば昭和ライダーに改造してやっても良い。まあ、ショッカーライダーだけど。

 

 

 

 

 

オリエンテーションの最後に現れた石で出来た魔獣に苦戦するクラスメイトを導力魔術で援護していると、同じように援護だけするように言われているフィーが導力銃で牽制をしながら話しかけてくる。

 

「どう思う?」

 

「攻撃力は足りてるけど、連携が悪くて決めきれそうにないんだよね。レーグニッツが居なければラウラかユーシスが押さえている間に全員で総攻撃すれば行けるんだけど」

 

「素人にそこまで分からない、か」

 

「いよいよになったらオレがやるよ」

 

オレのARCUSにメモが仕込んであり、そこにはARCUSは不安定だから気を付けろ。繋がることで力を発揮するが、初対面で出来るわけがないだろう?特にマキアス・レーグニッツがいる限りは無理だ。一定範囲内の全員の意志が揃えばそこそこ強いんだけどな。オレが作った物じゃないから改良中。とアークの文字が書かれていた。フィーには見せておいたから警戒を怠っていない。

 

そして、ARCUSの機能を十全に使えていれば起きない状況が起きてしまった。導力切れ、弾切れ、弾かれて身体が硬直、呼吸を整える。全員が同時に動けない瞬間が。その隙をガーゴイルは見逃さない。

 

一番危険なオレから一番遠く、肉体的に弱い部類のエリオットに飛び掛かる。EPチャージを使うために目を離していたエリオットが気付いた時には目の前に巨体が迫っていた。他のクラスメイトも隠れて見ているサラ教官も間に合わない。次の瞬間には哀れにも巨体に潰されて床の染みになるだろう。

 

まあ、させないけど。少しだけ鬼気を解放、エリオットの前に飛び出し、惨・捌を連携させたアッパーでガーゴイルの巨体をはね上げ、壱・捌を連携した廻し蹴りで壁に叩きつける。

 

呆けているエリオットの背中を叩いて正気に戻してからARCUSのリンクを用いてフィーにガーゴイルの牽制を任せて、エリオットの手を掴んで立たせる。

 

「一度仕切り直す!全員、離れろ!」

 

「なっ、いきなりしゃしゃり出て来て」

 

文句を言い出すレーグニッツを無視して全力で震脚を行って床を大規模に粉砕し、部屋を大きく揺らす。

 

「仕切り直す!弾の補充、EPチャージ、怪我の手当てを手早く済ませろ!」

 

猟兵なら細かい指示はいらないけど、素人には全部指示を出す必要がある。フィーは余裕があるので更に細かい指示を出す。

 

「猟兵を率いての魔獣討伐を行ったことがある。それを元に陣形を変える。ラウラはタンク、ユーシスはバスターの2トップ。ガイウスはバスター寄り、レーグニッツはサポート寄りの遊撃。アリサは駆動優先、エマは威力重視で導力魔術を。エリオットはどちらかがEPチャージを行うときのスイッチ要員だ。質問は?」

 

本来は聞く必要もないのだがレーグニッツが露骨に顔をしかめたから説明するために質問を促す。

 

「何故僕がサポート寄りなんだ!」

 

「さっきのような状況になった時に瞬間火力が必要だからだ。自分の好き嫌いでエリオット、アリサ、エマが死んで良いなら好きにしろ。オレは余り手を貸すなと言われているから、フォローはギリギリまでしない。死にそうならまだしも腕の一本ぐらいなら見逃すつもりだ」

 

「これだから貴族は!」

 

「ならレーグニッツが守れば良いだけだ」

 

揚げ足を取ってレーグニッツの反論を潰す。ここでサポートに回らなかったら自分で否定した貴族と同じになるからな。

 

「他に質問は?無いなら最後にアドバイスを一つ。声かけをするだけでも戦いやすくなる。これからどう動くのか、残弾はどれぐらいか、それだけでもさっきのような状況になる可能性は減ったはずだよ」

 

まあ、声かけが多すぎると集中出来なかったりもするけどね。

 

フィーにARCUSで指示を出すとSクラフトらしき戦技でガーゴイルに隙を作って離れる。

 

「目標ガーゴイルの制圧、状況再開!」

 

オレの言葉に再びクラスメイトがガーゴイルに挑みかかる。最初よりは安心して見ていられる。声かけも何を言って良いのか分からないから、必要最低限の物で混乱はない。

 

「拙いけど、さっきよりは全然だね」

 

「素人の集団に自由戦えって言うのがそもそもの間違いだって。ある程度役割を固定して負担を減らさないと無理だ」

 

オレだってアークとの連携ですら手こずったんだ。死に物狂いで磨きあげたけど、基本はアークが合わせてくれたおかげだ。

 

それをある程度補助してくれるARCUSは素直にすごいと思う。それでも地力を上げてくれるわけではない。このままではスタミナ切れか集中力が切れて負ける。再生力を越えられない。だからアドバイスを追加する。

 

「喉仏の位置に再生を司る部位が、胴体中央、馬で言う腸の入り口辺りに核が存在している。積極的に狙え」

 

「リィン、そこまで分かるんだ」

 

「この前、アークと一緒に似たようなのと戦って力の流れの解説を受けたから」

 

ガーゴイルと呼ばれるタイプのゴーレムは本体を動かす核と特殊能力の核の2つが使用されて、前者は重心に、後者は喉か首辺りに設置されるのがほとんどだそうだ。理由はスペースの問題。核は大した大きさではないけどその周りの回路のスペースで大体その位置になるらしい。後は注視していれば場所ぐらい分かる。

 

「朝も思ったけど、なんか雰囲気変わったね」

 

「まあ、色々あったんだよ」

 

トールズを受験した後にとある事件が起きたのだ。それを乗り越えれば変わりもする。ちょっと、いや、かなり恥ずかしいので思い出したくない。あと、老師はいつか殴って見せる。アークは、もう殺しあって殴って殴り返された。ライダーシステムを殴り砕いたことには本気で驚いた。本当にすまないと思ってる。

 

そんなことを思い出していると、とうとうガーゴイルの核をユーシスの迅がフライングユートピアで砕いたことでガーゴイルは沈黙する。

 

みんな、疲労困憊で座り込んだり、武器に身体を預ける形で休息をとろうとしている。そんな中、隠れて様子を見ていたサラ教官が軽い拍手をしながら姿を現す。軽い調子でオリエンテーションの終了を宣言しているが気を抜くのは早い。霊力の流れが速くなり、一ヶ所に集まり精霊の道が開かれる。

 

そこから現れたのは、アーク曰く焔の眷属が産み出したゴーレムの一種で、騎神に対抗するために製造されたらしいが、経年劣化で暴走個体が多いとのこと。ユミルにも出没して破壊したのは記憶に新しい。

 

慌てるクラスメイトやサラ教官を置いて前に一歩出る。時間が経つごとに精霊の道から続々と魔獣やガーゴイルが姿を見せる。そのどれもがこの場の霊力に繋がっているのが見える。つまり、こいつらが鍵なのだろう。

 

純ゼムリアストーン製の刀を抜き、鬼気を完全に解放する。

 

「八葉一刀流奥伝、閃の剣聖、リィン・シュバルツァー、参る!」

 

ゴーレム目掛けて走りだし、すれ違いに魔獣とガーゴイルを一閃で急所を切り払い仕留める。そのまま10アージュはあるゴーレムの膝を足場に肩まで飛び上がり、兜と鎧の隙間から緋空斬を叩き込み、核を破壊する。

 

観の目が冴える様になってから戦いが作業になることが多い。これって結構まずいことのように思える。ちょっと兄弟子に相談してみたいけど、いきなり訪ねるのもあれだしなぁ。

 

とりあえず、出てきた分は処理したけど、精霊の道は開いたままだ。後続が来られても困るので逃げる。

 

「撤退!先頭はサラ教官、殿はオレ、フィーは遅れそうなのをフォロー!」

 

反応が鈍いので精霊の道の方向が崩れるように再び震脚を行う。

 

「走れ!まだ終わっていない!」

 

追加で現れる飛行系の魔獣を見て走り出すクラスメイトを尻目にスタッグフォンを取り出して犯人に連絡する。

 

「なんのつもりだ、アーク」

 

『時計の針を速めようと思ってな。エマ・ミルスティン、彼女は焔の眷属だが、焔の眷属は蒼の深淵しか事実に気づいていない。邪魔をされるのはごめん被る。自分が導かないととか思ってるんだろうが、未熟な魔女に導かれると迷子になるぞ』

 

スタッグフォンを顔と肩で挟みながら緋空斬でおおざっぱに撃ち落とし、漏れたのを疾風で足場にしながら切り捨てる。

 

「それで、精霊の道を開いて何がしたかったんだ?」

 

『奴らはヴァリマールまでの封印を守る門番だ。殆どのセキュリティは押さえたが、最後の試練を受けるためには奴らを全て倒す必要がある』

 

崩した足場が再生してこちらに向かってくる巨大なワニのような魔獣の尻尾を掴んで武器の代わりに振り回す。

 

「随分時計の針を進めるんだな」

 

『ああ、魔女の術に短時間だが人を操れる魔眼があるからな』

 

「使うというのか?」

 

『使うだろう、普通?使わないなら余計に邪魔だ。そんな甘い考えで800年の怨念は絶てない。オレたちの敵はそういう物だ。巻き込むことはない』

 

ボロボロになったワニのような魔獣を精霊の道に向かって投げ、緋空斬で仕留める。

 

「確かに。なんか焦ってる感じもしてたしな。そっちの情報は?」

 

『姉貴分の蒼の深淵を探している。蒼の深淵が騎神に関しての情報を集めていたから自分も騎神の側に居れば会えると思ってトールズに来ている』

 

「ヴァリマールがあるのを知っていたのか?」

 

『ヴァリマールをここに封印したのが焔の眷属だ。ちなみに本人、人じゃないが、封印者は存命だ』

 

「不死者なのか?」

 

『いや、精霊とかそっち系らしい』

 

しつこく送られてくる魔獣を絶つために場の霊脈を歪めるために身体の負担を無視することにする。刀を鞘に戻しながら闘気を高め、スタッグフォンを真上に投げて構える。

 

「壱・参・肆・陸・連携、常世送り」

 

紅葉で現世との縁を切り、業炎で現世での姿を焼き払い、螺旋で常世への道を繋ぎ、緋空で常世へと送り出す。対幻獣用に開発した技だが、場の霊力と繋がる精霊の道にもしっかりと効果はあったようで、追加の魔獣の出現が止まる。

 

落ちてくるスタッグフォンを掴み取り再び耳に当てる。

 

『馬鹿野郎、やるならやると先に言えよ!逆流して機材がぶっ壊れただろうが!』

 

「操作中とは知らなかったんだよ」

 

『くそ、規格がオリジナルだから地味に面倒なんだぞ』

 

「ごめんって。文句は今度聞くから」

 

『そうしてやる』

 

通話が切れたのでクラスの皆に追い付くために走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅶ組に全員が参加することを決め、寮とこれから世話になるという設備に案内される。その設備は学園を挟んでトリスタの街の反対側の郊外に建っていた。

 

何故郊外にポツンと建っているのか気になったが、よく見れば裏の広大な土地を整地していた。どうもコース的な物を作っているようだ。この時点で嫌な予感はしていたが建物にかけられている看板を見て目元を押さえる。

 

「ここがこれからお世話になることが多くなるザイアエンタープライズトリスタ支店よ」

 

見間違いではなかったらしい。サラ教官が扉を開けて中に入るのを追いかければ双子の女性が出迎えてくれる。

 

「お待ちしておりました、バレスタイン様、Ⅶ組の皆様。私、ザイアエンタープライズ社長秘書を勤めておりますイズ・オライオンと申します」

 

「私はザイアエンタープライズ社長秘書兼トリスタ支店支店長を勤めておりますアズ・オライオンと申します。社長が工房でお待ちになっています」

 

「どうぞ、こちらへ」

 

アズさん達に案内された先には予想通りの人物が待っていた。

 

「ようこそ、特科Ⅶ組の諸君。私がザイアエンタープライズ社長兼幻夢コーポレーション社長兼未来ガジェット研究所所長兼ラインフォルトグループ第5開発所所長兼特科Ⅶ組スポンサーのアーク・ラインフォルトだ」

 

「「「「アーク!?えっ?」」」」

 

ガイウスまでアークの知り合いだったのか。

 

「アーク・ラインフォルトだと」

 

ユーシスまで知っていたのか。

 

「あの方を知っているのですか?」

 

「アーク・ラインフォルト、最近の正規軍の装備更新に大きく関わっている人物だ。ライダーシステム、導力二輪、輸送航空機、大型戦車などの数々の製品を産み出した天才発明家だ」

 

「そうなの?僕は幻夢コーポレーションの名前しか知らないんだけど、最近の玩具関連を牛耳ってるって位だけど、大人も夢中になってる人が多いって」

 

「それよりスポンサーってどういうことなんだ!?」

 

場が混沌としかけた所でサラ教官が手を叩いて落ち着かせる。

 

「色々聞きたいことがあるみたいだけど、先に彼の話を終わらせてからね」

 

「まあ、半分が顔見知りならこんなものでしょう。さて、改めてだけど、特科Ⅶ組はとある御方の希望で特別編成と独自のカリキュラムが追加される形なんだが、何時の世も特別とか独自のと言う言葉には追加予算がセットになる。それを賄うためにスポンサーになることを頼まれる代わりにカリキュラムを追加させて貰う形となった。とは言うものの形だけの物だから気楽に考えて貰って良い。君たちに頼むのはザイアエンタープライズの製品のテスターをやって貰う」

 

「ザイアエンタープライズのテスターと言うことは市販用にデチューンされた導力二輪か」

 

「その通り。この工房に置いてある全てのバイクを好きに使って適当に、最低でも年一度はレポートを提出してくれれば良い。無論レポート内容次第では礼金を支払う」

 

相変わらず金に無頓着だよなぁ。まあ、幾らでも稼ぐ手段を持ってるからなんだけどな。

 

「デチューンされたものとは言え、持ち運びを考えて召喚・送還機能は付けている。カスタマイズが必要ならアズかイズに伝えてくれ。必要なら講習も受け付けている。乗れないと後悔することになるからな。何か質問はあるか?」

 

「私、自前のがあるけど」

 

「2台持ちで問題ないだろう?と言うか、何台でも乗ってレポートを出してくれればいい。それとフィーのは軍仕様だろうが」

 

「と言うことはオレもか。どうせならトライチェイサーとは違うタイプにするかな」

 

誕生日プレゼントに贈られたトライチェイサーはユミルで使うために軍用仕様で超オフロード寒冷地カスタムとかいう、カタログの値段を見てそっと閉じるような物を贈られたのだ。最初は恐る恐る乗っていたのだが、アークが幻獣に平気でぶつけて大破させるので遠慮はなくなった。

 

「乗り換えるのも複数台乗るのも自由だが乗らないという選択肢は存在しないからな。それから乗る時はヘルメット、あるいはライダーシステムの着用は義務だ。バイクでの死亡事故の9割は頭部の外傷だ。死にたくなかったら被るように。ヘルメットは無料で支給するから壁に架かっているのを好きに選んでくれ。アクセサリー類もそこの棚にある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食を終え、荷ほどきを済ませてから一服しようとキッチンでお湯を沸かしていると荷ほどきを終えたのかレーグニッツとアリサとエマ以外が食堂に姿を現す。

 

「私物の紅茶で良ければ用意するけど飲む?」

 

全員が肯定するので人数分を用意して席に着く。一応、顔を見せていない3人の分も用意だけはしておく。一口紅茶を口にしてからクラスメイトとの交流を深めることにする。

 

「それにしてもガイウスがアークと知り合いだったとは思わなかったな」

 

「オレもだ。アークは自分のことをあまり話さずにグエン老と色々と遊んでいる姿しか見たことがなかったからな」

 

「ああ、グエンさん、ノルドで隠居してるんだったか」

 

「ラインフォルトグループ前会長のグエン・ラインフォルトか。噂では現会長に席を逐われたと聞くが」

 

ユーシスがそんなことを言うがラインフォルト家は性格が似ていないのが特徴なんだよな。

 

「いや、アークが言うには歳が歳で気持ちが沈んだから兵器開発からサッパリ手を退くために会長を辞めると宣言したって聞いてるよ。まあ、イリーナさん、現会長が色々やり始めたところで出鼻をくじかれて混乱したからそんな噂が漏れたんだろうね。親子間の仲は別に悪い訳じゃないらしいよ」

 

グエンさんは職人気質でイリーナさんは仕事人、アークは遊び人気質でアリサは、よく分からない。子供っぽいとしか思えないけど。

 

「ふむ、フィーはアークとは何処で?」

 

「私?私は猟兵団に所属してるから。そこに依頼でライダーシステムのテスターを探してるってことでもう5年くらいになるかな」

 

「猟兵、だと。一般人からすれば死神と同意味ではないか!?」

 

「可愛い死神でしょ?」

 

驚くユーシスにフィーはおどけてみせる。

 

「別に珍しいものでもないよ。サラだって子供のときから猟兵で、その後に遊撃士で今は教師。戦場では有名だったんだよ、サラ。遊撃士としてもA級だし」

 

「サラ教官が元猟兵」

 

「猟兵だからって別に人殺しだけが仕事じゃないけどね。武器のテスターだったり、魔獣討伐だったり。武力を用いた仕事を請け負う。それが猟兵。そこだけ覚えておいてくれればいいよ」

 

「補足するけど、快楽目的の殺人を請け負う連中とか金さえ貰えばどんなことでもする連中とか様々だから。フィーの西風の旅団は倫理観は一般よりだから安心していいよ」

 

言葉が足りていないフィーをフォローしておく。わざと自分に近づかせないようにしてるけど、学生である以上それは認めちゃダメだ。

 

「んん、話は変わるがリィン、いつの間に剣聖になったのだ」

 

「ああ、トールズの試験を受けた後にね。まあ、色々大変でね。その、ユミルに龍鋼泉以外にもう一つ秘湯がね、灰翔鬼泉って名付けられた」

 

顔を思いっきり背けながら説明するとフィーとラウラが天を仰いだ。

 

「詳しく聞くつもりはないが、大丈夫なのか?」

 

「オレは三日ほど生死をさ迷って、アークは一週間意識不明の重体で霊薬を使いまくってなんとか生き返った感じかな?」

 

食堂の空気が完全に死んだがどうしようもない。知られる可能性もゼロじゃないから。

 

「よく縁を切られてないよね」

 

「今回の件に関してはアークが原因でもあるから」

 

「何をしたんだ?」

 

ラウラが純粋に尋ねてきたが、どう答えるか少しだけ悩んで正直に話すことにした。

 

「シュバルツァー家の噂は知っている?」

 

「…確か、捨て子を、そうか、お前がそうなのか」

 

ユーシスが多少濁してくれたが正直に話す。

 

「捨て子のオレを態々引き取って社交界から爪弾きになっているんだ。まあ、最近になって本来の親が誰なのかは確証はないけど分かって、捨てられたって訳ではなさそうってだけで十分だと思ってる。で、本題」

 

しょうもないことだから出来るだけ軽く話す。

 

「アークがイタズラで義母、義妹のエロ本を仕込んでそれを義母さんに見られた」

 

エリオットが口にしていた紅茶を吹き出して噎せていた。他の皆は何とも言えない顔をしている。

 

「まあ、それを宣戦布告と受け取ってユミルの山を夜通し追いかけ回して殺しあいの一歩手前ぐらいまで行って、途中で幻獣に襲われてほぼ相討ち状態になったんだよ。源泉を堀当ててなかったら凍死してた」

 

アーク曰く、オレは死ねないらしいけど。

 

「人間、死にかけから復活すると色々成長するものなんだなって」

 

実際、目覚めてから一段と鬼の力が馴染んで一つになった感覚がある。同時にそれに抗う人の力とでもいうべきオレ自身の力も強くなった。

 

改めてオレという存在と向き合えたことで目が開いたんだと思う。あらゆるものごとを見通せるようになり、ベッドの住民になっていたアークに隠していることを全て喋らせた。

 

その上で灰の駒として、戦うことを決めた。選ばれたからじゃない、自分で選んで戦うと決めた。800年の怨みと憎悪を切り払うと。アークと二人で主催の思惑を完全にぶっ壊す。

 

その後に老師から剣聖の試しを受けさせてもらい、晴れて閃の剣聖を名乗ることになった。

 

「煉獄って意外と住み心地良さそうだったぞ」

 

「そんな気軽に誘うんじゃない!?」

 

 

 

 

 

 

 

最後の試練を乗り越えた先にそれは鎮座していた。一つ目の秘湯が出来た日に同類である≪銀≫を見た。だが、これは

 

「灰の騎神って聞いてたけど、銀と比較しない方が良いか?」

 

全体的にくすんでいて、神秘性を感じない。

 

「経年劣化と埃が積もってるせいだ。すぐに整備を、先に清掃だな」

 

アークがすぐにヴァリマールに取りつき、戦術殻に清掃を命じる。

 

「げっ、間接部分の油がヤバイことに。ああ!?霊力の吸収機構が殆どぶっ壊れてるじゃねえか!中を開けるのが怖くなってきたぞ。何をやってんだよ焔の眷属!」

 

聞こえた分だけで時間がかかるのが分かった。

 

「アーク、時間がかかるみたいだから上に上がるよ」

 

「おう、放課後は工房の方に足を運んでくれ。それからイズにアランドール大尉にオーダーを持ってくるように連絡を入れるようにって伝えておいてくれ!嘘だろ、基盤がカビに覆われてるだと!?直るのか、これ」

 

大変そうではあるけど力になれそうにない。昇降機を使って地上に上がれば朝日が出迎えてくれる。昨日、食堂での雑談の後に軽く仮眠だけとってアークと二人でヴァリマールの回収に出向いたのだけど、最後の試練にたどり着くまでが結構大変だった。遺跡のギミック的に。途中から面倒になって壁を破壊した方が早い気がしてたから。

 

結局、そろそろ用務員さんが門を開けるような時間までかかってしまった。お陰で見られてしまった。だから釘を指しておかないとな。鬼気を解放して此方を監視していた者の元に一気に駆け抜けてアークから渡されていたスタンガン付きの首輪を嵌める。

 

「焔の眷属の使い魔って所かな。残念だけど、ヴァリマールは渡すわけにはいかないな」

 

黒猫の使い魔が逃げれないように抱き上げながら説明する。暴れて逃げようとするからARCUSでスタンガンを一瞬だけ起動させる。驚き動きが止まったのを見て全身を撫で回す。中々癖になる毛並みだ。

 

「こいつはアークのお手製でね、ゼムリアストーンを糸状にして通してあるから切ることは出来ないし、外すにはアークの持つ戦術オーブメントが必要になる。電撃はARCUSがあれば誰でも流せる。ヴァリマールもアークが政治的な根回しを終えてオレたちの手元に収まるように調整してある。全てが手遅れだよ。ヴァリマールは諦めるんだね」

 

「アンタ達、アレが何なのか分かって言ってるの!」

 

おお、喋れるのか。ついでに精神干渉を感じたけど効果はない。

 

「ああ、アークが用意したマスタークォーツで精神干渉系の魔女の術は効かないから。もちろん、アークも。だけど、答えてあげる。知っているとも。鋼の至宝の欠片、世界最高峰の錬金素材、そして大地と焔の罪の証」

 

「大地と焔の罪の証?」

 

「なるほど。それを知らされてないほどの下っ端か。詳しくはそっちの長に聞くと良いよ。それを知らないのなら関わって欲しくない。糞みたいな過去の眷属のせいで今を生きる多くの人が苦しんでいる。オレの母は死んだ。父は今も苦しみながら抗っている。そしてオレも死ぬ運命が定められている」

 

「なっ!?」

 

「それを覆そうと、何人も足掻いている。なあ、焔の眷属の使い魔。お前達、ついでの様に騎神に関わろうとしていないか?一族の使命だからとか、自分の力を使うなら騎神に関わるしかないとか、そういう軽い気持ちは一切ないと言えるか?」

 

「それは…」

 

「オレは、そんな奴らに関わって欲しくない。殺してでも排除したいと思ってる。それが素直な気持ちだ。エマと長にそう伝えてくれ」

 

 

 

 




原作との相違

リィン
閃Ⅳで救出したような混ざり具合。原作のような繋がりで保つのではなく、自らの成長で鬼の力と渡り合っている。若干脳筋気味に。常時灰髪赤目状態で、生死をさ迷った時に数年ぶりに黒髪に戻って驚かれた。観の眼が開眼してから察しが良く為りすぎてアークの隠し事の殆どを話させ、自分の運命を知る。そして、それを覆そうと奔走している親友、父親に並び立つ覚悟を決め、灰の駒として『黄昏』に挑む。原作ではⅦ組の重心を望まれていたが、むしろ危険から遠ざけるために一歩引くつもりである。フィーとはアークを通してよく顔を会わせ、時折模擬戦や修行を行い、『黄昏』当事者になったことを聞き内心同情していると同時に、西風の旅団の身勝手さに嫌悪感がある。


フィー
現西風の旅団団長。家族達はフィーを西風から離したと考えているがアーク的には依頼を放棄して姿を眩ませた他団員達が抜けた扱いで残ったフィーが団長という形を取っている。そのため、現在は違約金による借金濡れの生活を送っている。とは言え金に無頓着なアークが雇い主であるため無利子無担保ある時払いであるため、アークからの依頼を最優先で受けるだけで済んでいる。なお、団長になってからしばらくの間の依頼は人殺しや放火などの家族達がフィーにやらせなかった汚れ仕事ばかりである。そのため、自分のことを死神だとちゃんと認識している。猟兵であろうとするのなら出来て当たり前の仕事をこなしたからこそアークも契約を続けている。


ラウラ
再度模擬戦を行い、またもや惨敗。ライダーシステムを言い訳にしようとするも、普通に対応するリィンによって封殺される。また、アークにライダーシステムを借り受け三度挑むもリィンのようにライダーシステムが合わず、ボロボロの剣技で惨敗する。落ち込む中、アリアンロードに心の在り方を問われ、他の者たちに比べて自分が小さいことに気づく。改めて自分を見つめ直し、自分だけの剣の道を選ぶことで少し成長した。地味に他の同年代が剣や武以外に趣味を持っていることに傷つく。特に男二人(リィン・アーク)の料理やお菓子作りやお茶の腕が高いことに危機感を覚える。
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