どうやって死んだのかは分からない。分かるのは意味もなく死んだと言うことだけだ。転生したばかりの頃はそれを悔やんで泣き続けていた。泣いて鳴いて啼いて、そしてそれを見て立ち上がった。
前世では有名過ぎて原点とは全くの別物として君臨したそいつの名はスライム。オレはドラクエの世界に生まれていた。
それからは必死に情報を集めた。歴代ナンバリングの街や国の名前はない。モンスターを倒してもゴールドを落とさない。呪文は契約を行い、力量や適性が合えば使えるようになる。特技と言える物は有名所がない。呪文やモンスターから3が一番近い。
たぶん、ダイの大冒険とか言う漫画のドラクエの世界だと思う。生憎ゲームにしか興味がなかったからあまり詳しくない。知っているのはメドローアの本家ってことぐらいだな。まあ、なるようになるだろう。そしてオレは歴史に、業界でも良い。とにかく名前を残すような偉業を成し遂げたい。
そう思っていたが現実は厳しかった。田舎の町の普通の武器屋の息子には色々と壁があった。魔導書の値段とラインナップ、契約後の魔力操作からの発動の難易度、威力と使用回数からの自分のMPの確認してみればバラバラで訳が分からない、錬金釜は存在しないので手探りでの調合、何より親に理解してもらえないのがキツイ。
お袋はまだいい。本気で向き合ってオレの思いを告げれば、男の子なんだから挑戦してみればいい。手伝えそうにないけど、応援するといってくれた。
だが親父は違う。夢を否定するのは良い。オレが集めた素材や機材を壊すのもまだ我慢のしようはある。暴力を振るってくるのもホイミの練習に使えるから許そう。だが、オレを庇ったお袋を傷つけるのは違うだろう!
今まで、一度も振るうことのなかった力で親父を殴り飛ばす。イスとテーブルを巻き込んでそれらを壊しながら親父が床に沈む。苦しそうにしているから一応アモールの水(劣)をかけてやる。
それから部屋の隠し倉庫から偶然にも調合に成功した薬品類とへそくりの全財産15万ゴールドを引っ張りだし、へそくりを全部お袋に渡す。
「今までお世話になりました。親不孝なオレを許さなくてもいい。だけど、元気にしていてくれ。オレがお袋に望むのはそれだけだ」
そう告げて家を、故郷を飛び出す。魔物を呪文で蹴散らし、野草や果物なんかで自給自足し、村で薬草類を売ったり、回復呪文で治療して謝礼を貰い、装備を整えながら旅を続けて1年が立つ頃、オレは運命に出会った。
野宿をしているときに偶然出会っただけなのだが、人のよさに絆されてついつい自分のことを話し始めていた。
歴史に名を残せるぐらいデカいことを成し遂げたいこと。そのために子供の頃から努力してきたこと。母親は応援してくれたけど、父親は反対してきたこと。父親が邪魔をしてきたのは我慢できたけど、母親に手を挙げたことで我慢出来なかったこと。それから一人で旅をしていること。全部話した。
「後悔していますか?」
「親父を殴ったのは多少悪いと思ってる。でも、殴るしか選択肢はなかったとも思ってる。ただ、もうちょっとマシな飛び出し方があったんじゃないかって、そう思う時がある。これって後悔なのかな?」
「ええ、後悔でしょうね。ですが、良い後悔です」
「良い後悔?」
「誰かを守るために誰かを傷つけ、それに悩む。それを忘れたとき、戻れなくなります」
「戻れなくなるか。確かにそうだよな」
旅の中で見た生きるために何でもするようになり、それを悩まない奴ら。そんな奴らを時に懇願され、手にかけたこともある。それによって悪夢に囚われたことだってある。だけど、間違ったとは思ったことはない。つまりはそういうことなのだろう。そして、オレはそれを誰かに肯定してもらいたかったのか。
「ありがとうございます。今更ですが、名前をお聞きしても」
「ええ、私はアバン、アバン=デ=ジュニアール三世。勇者の家庭教師をしています。君は?」
「オレはポップ。ただのポップ。だけど、いずれは多くの人に知られるようになる男です」
そしてオレはアバン先生に弟子入りした。先生は博識であり武芸百般の凄い方だった。性格が甘いのは欠点とも言えるかもしれないが、そこは先生の友人であるマトリフ師匠が補ってくれる。
マトリフ師匠はスケベな所はあるけど、魔法に関してはアバン先生以上の使い手で、オレと同じように攻撃も回復もこなせる賢者タイプの人だ。本人は賢者なんて偉そうな肩書きよりもドスの利いている大魔導師を名乗っている。因みに補助呪文はそこまで得意じゃないそうだ。というか、この世界、ステータスバフ、デバフの呪文適性を持つ人が少な過ぎて古文書にしか残っていない。
その古文書も存在していない。唯一先生達が知っているピオラからピオリムとピオリーマに発展。それらから持続時間がゴミのようなスカラとバイキルトを開発した。この時点でアバン先生には卒業の証としてアバンのしるしを与えられたが、旅の同行は続けながらアバン流杖殺法と闘気の扱い方を習う。魔法使いにとって近接戦闘術は必須科目だからな。
そういうと先生も師匠も変な目で見てきたが、出来るけどやらないと出来ないは大きく違うと具体例を交えて説明することで分かって貰えた。まあ、才能が無いのか技までたどり着かないんだけどな。
旅を続ける中で立ち寄ったパプニカで王家から先生へ依頼があり、デルムリン島に住む少年の家庭教師を務めることになったそうだ。
そして、オレは再び運命に出会う。一目見て分かった。こいつが、この世界の主人公、勇者ダイ。その予感は当たった。1週間のスペシャルハードコース修業を終えたダイとアバン先生の前に復活した魔王ハドラーが現れ、3人で撃退することに成功するも大魔王の配下が世界中で暴れているということでアバン先生は自らの修業に旅立ち、オレとダイで魔王軍と戦うことになる。
その旅の途中、姉弟子であるマァム、兄弟子であり魔王軍でもあったヒュンケル、パプニカの王女のレオナ、ヒュンケルと同じく魔王軍だったクロコダインのおっさんのような頼れる仲間達と出会った。本当に充実した旅だった。
その旅も、もうすぐ終わる。ここがオレの終着点だ。
「先生、ヒムもラーハルトも動かないでくれ!」
オレの声に今にも飛び出そうとしていた3人が動きを止める。
「おいポップ、何か考えがあるんだろうな」
ヒムがバーンを警戒して顔も向けずに怒鳴る。
「考えるためにダイの話を聞く必要があるんだよ」
「バーンを目の前にしてそんな暇があると思うのか!?」
ラーハルトがすぐに飛び出せる形で力を込め始める。
「ある。バーンのあの構えと顔を見ろ。大きく足を開いてどっしりとした構え。あれだとすぐに移動なんて出来ない。そしてあの口許の笑み。3人に襲われようともそれを軽く捌ける自信が笑みになっている。あの構えを解くまでは時間がある。そして、この話を聞いて慌てて構えを解くような不様な真似を大魔王ともあろう御方がやるはずもねえよ」
「ふはははは、不遜な物言いだが、お前にはそれを許そうポップ。呪文だけとは言え私を越えるだけの才を見せつけたのだ。存分に考えるが良い!」
バーンの許しも得て、ダイからバーンの構えの秘密を聞き出す。予想通りの正体とダイのダメージから覚悟を決める。
「考えは纏まったようだな、ポップよ」
「ありがたいことにな。2つも突破口を見つけられたぜ。まずはその天地魔闘の構え、当初の考え通りカウンターの構えだ。奥義の3発同時発動と言う、他の誰にも出来そうにない強力過ぎる技だが、強力過ぎるためにそれにしかエネルギーを使う余裕がないから動けない。そして、おそらくだが発動後に一瞬に過ぎないだろうが技後硬直があると見た。これも動けないほどのエネルギーを使うからだが、最大の弱点でもある。だから、奥義の受け役と止めを刺す役に分けることで突破出来る。んだが、ダイがこの調子じゃ無理だし、メドローアじゃあ奥義の受け役まで巻きこんじまう。他のメンバーじゃあ、一撃で倒せる保証がない。ダイの暗黒闘気が抜けるまで400、いや430秒位か?流石にそれを待ってくれなんて言えねえ。だろう?」
「流石の分析力だ。天地魔闘にそのような弱点があるかどうかはともかく、理論的には納得出来る」
「それでダイが回復するまでオレたち四人が戦ったとしたら、今度は奥義の受け役が居なくなる。だから、こいつは予備プランだ。本命のプランはバーンの奥義の中でも一番厄介なフェニックスウィングを越えて、最低でも腕一本を奪い取るだけの一撃を食らわせる」
「何故フェニックスウィングに拘る。厄介なら放って置くことも出来るぞ」
「はん、所詮他の奥義は攻撃技での迎撃だ。場合によっては完全に迎撃出来ないかもしれないって考えが微かに存在しているはずだ。だが、フェニックスウィングは防御の奥義。絶対の自信を持つそれを破られたときの衝撃はデカい。それが出来なきゃ闘う土台に立てねえってのがオレの分析だ」
「ふむ、それでどうする?最大の威力があるメドローアは私には無力だ」
「ちゃんと用意してあるぜ。ヒュンケル達と捕まってる間、考える時間は幾らでもあったからな。メドローア以上の呪文、開発済みだぜ」
ギラグレイドを合体魔法として放った瞬間にそれの構想は出来ていた。あとは細かい計算だけだったがそれも終わった。
「勝負だ、大魔王バーン。大魔導師ポップ様の呪文の頂、受ける覚悟はあるか!」
「ふふふ、やってみせろ!大魔導師ポップ!」
バーンが今まで以上に気合いを入れて構える。
「全員、オレの後ろにいろ!」
先生達がオレの背後に回ったところで下準備の呪文を唱える。
「アストロン」
驚くダイたちを無視して独り言を一方的に聞かせる。
「これでバーンを仕留めれずに、そして腕も奪えなかったとき、予備プランである三人が盾になってダイがとどめを刺す作戦に入ってくれ。そのころにはダイにかけたベホマが効いてるはずだ。地上で待ってるメルル達には上手いこと伝えといてくれ。オレの研究の成果は今から使うこの呪文以外は師匠の所にポップの書として置いてある。できれば世界に広めて欲しい」
魔法力を高めて準備を始める。
「この博打に勝っても負けても、オレの旅はここまでだ。あばよ、ダイ」
両腕にメラゾーマを生み出し、それを合成してメラガイアーを生み出す。
「メラガイアー?それでどうするつもりだ」
「これは下準備だよ、黙って見てろよ!」
メラガイアーを待機させたまま、両腕に再びベギラゴンを生み出して、合成させてギラグレイドを待機させ、イオナズンをイオグランデに合成した所で鼻血が流れ始め、マヒャドを生み出した時点で両腕が裂けて血が飛び散り、マヒャデドスに合成したところで吐血する。バギクロスを生み出したところで音が聞こえなくなり、バギムーチョに合成したところで眼も見えなくなる。それでもまだ生き残っている感覚と全ての力を駆使して5つの呪文を同時に合成していく。暴れる5つの呪文を強引に合成させようとするが、全然進まずに反発する力が強くなる。それでも、バーンへダメージを与えてくれればいい。オレの命程度で、世界を救うための礎になれるならそれで十分だ。
合成を諦めて爆発させようとした時、走馬灯が見えてくる。大嫌いな親父が剣を打っている姿だ。明らかに手を抜いて打っているその姿を見せられて、そんな格好悪い男にはなりたくなかった。ここで合成を諦めたら、オレは格好悪い男になっちまう。それだけは許せねえよな!
折れそうになっていた心に炎が宿る。絶対に成功させるのだと力が漲る。蠟燭が消える間際の一瞬の閃光のように最後の力が湧き上がる。その全てを使って5つの呪文を合成する。合成して安定した力の塊をバーンに向けて開放する。
「
瞬間、世界が光に包まれる。
暖かい何かが体の中に入ってくるのを感じる。それを確認するために眼を開けば泣いているダイたちが見える。そして喜ぶ顔を見て悲しくなる。今、生きているのは姫さんの呪文の力だ。それが途切れれば再び眠りにつくことになる。その姫さんも限界ギリギリだ。別れの言葉はほんの少しだけだな。バンダナを外してダイに握らせる。
「ガキの頃からのお守りだ。やるよ、オレにはもう必要ない」
「必要ないなんて言うなよ!ポップ、お前は世界を救った英雄なんだ!大魔王を倒した大魔導師ポップなんだぞ」
「ああ、倒せたんだな。それだけは良かった」
少しずつ眠気が強くなっていく。伝えたいことは山ほどあるが、一緒に墓まで持っていくことになりそうだ。そう思っているとゴメの奴がふらふらと飛んできてオレの胸の上に落ちる。
「お前もダメなのか、ゴメ。ははっ、これで多少は寂しくねえか」
そろそろ姫さんが限界のようだ。皆に別れの挨拶をしたかったんだが、ダイだけで勘弁して欲しい。
「ダイ、泣くなとは言わねえ。休むのも構わねえ。だが、止まるんじゃねえぞ。また別の魔王が襲ってくるかもしれねえ。今じゃなくても未来に現れるかもしれねえ。だから、止まらず、繋いでいけ。お前がバランから受け継いだようにな」
そこが限界だった。姫さんの魔法力が切れ、急激に眠くなる。最後に一言だけ残さなければ。
「人生をかけるだけの価値がある旅だったぜ。オレは精一杯人生を生き抜いた!」
そこが限界だった。
満足した顔つきでポップは死んだ。ゴメちゃんもポップの胸の上で光に包まれて消え去った。皆が悲しみに暮れ、涙を流す。
オレも同じように涙を流しているけど、悲しみは薄れ始めている。ポップは止まるなって、別の魔王に備えろって言ったから。ポップは冗談は口にしても嘘は絶対に言わなかった。だから、確信があったからそう口にした。だから、立ち止まってはいられない。
ポップから託されたバンダナを頭に巻き、涙を拭う。ポップが救った世界を守るために。だから、これは正しい行為なんだ。本物のキルバーン、ピロロが操っていた人形の頭部に埋め込まれた黒のコアを抱えてトベルーラで上空に運ぶ。威力がはっきりとわからない以上、出来るだけ離れた場所まで持って行かなきゃポップの救った世界が滅びることになる。だから、オレが犠牲になってでもやらなきゃいけないんだ。
(ば~か、オレがそんなこと望むかよ)
幻聴が聞こえ始めてきた。
(幻聴とか思ってるんだろうが違えよ。お前に渡したバンダナはな、魔道具なんだよ。こうやってピンチの時になんとかできる呪文を使うための補助をしてくれるって言うな。そのためにちょっとした意思と記憶も搭載されてる。ただし、助けれるのは3回までだし、放っておいてもそのうち壊れる。いつまでも死者にこだわられても困るからな。こいつはあくまでも前を向いて歩いている時に立ちふさがる壁を、オレが居たらこれぐらいの足場になってやれるってだけの魔道具だ)
そんな言葉と共に頭の中に呪文に関する知識が刻まれる。
(今回はこれまでだな。3回きっちり使われて欲しくも無いが、必要な時に発動するように付けとけよ)
言いたいことは一杯あった。だけど、ポップがくれたチャンスを活かす方が先だ。バーンが死んでから上昇を続けている、あの広場を強く頭に思い描いて黒のコアを投げて呪文を唱える。
「バシルーラ!」
黒のコアが天高く飛び去って行き、やがて爆発の光が小さく見える。
「やっぱりポップは凄いよ。2回も世界を救ったんだ。オレなんかよりもずっと凄いやつなんだ。オレが、ドラゴンの騎士であるオレがやらなきゃいけないことだったのに。オレが弱かったせいで!」
旅の中でずっとオレはポップに助けられてきた。だけど、オレはポップに何が返せただろうか。自分の弱さが嫌になりこのまま何処かに行ってしまいたくなる。そんな時、太陽がその姿を現して世界を照らす。
その太陽の光の中に優しそうな女性が見えた。知らないはずなのに知っているような、不思議な感覚を覚える中、真魔剛竜剣が目の前に浮かぶ。父さんと一緒に消えていたはずのそれに手を伸ばした瞬間、さっきのポップのバンダナの様にイメージが頭に叩きつけられる。
「そっか、分かったよ。ポップから貰った分に足りるか分からないけど、渡せる物はあるんだね」
他のネタを書くための下敷きです。
ポップ君には来世にも頑張ってもらいます。
ステータス
レベル:78
つよさ
ちから: 108
すばやさ: 211
たいりょく:163
かしこさ: 250
うんのよさ:256
さいだいHP:358
さいだいMP:541
こうげき力:199
しゅび力: 134
そうび
E みかわしのふく
E へんなベルト
クリムゾンフェザー
ふくろ
じゅもん
メラ メラミ メラゾーマ
ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン マヒャド
ギラ ベギラマ ベギラゴン
バギ バギマ バギクロス
イオ イオラ イオナズン
ホイミ ベホイミ ベホイム ベホマ
リホイミ リベホイミ
キアリー
キアリク
キアラル
シャナク
ザメハ
マヌーハ
ラナリオン
ベタン
スカラ スクルト
ピオラ ピオリム ピオリーマ
バイシオン バイキルト
バーハ フバーハ
マホカンタ
アストロン
モシャス
ドラゴラム
ヘナトス
ルカニ ルカナン
ボミエ ボミオス
マヌーサ
マホトラ
ラリホー ラリホーマ
マホトーン
マホカトール
バシルーラ
ルーラ トベルーラ
リレミト
レムオル