ユキアンのネタ倉庫   作:ユキアン

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宇宙戦艦ヤマト2199 元爆撃機乗りの副長

「はぁ~、オレの人生何処で狂ったんだろうな?どう思うよ、副長」

 

身体を深く艦長席に預けて隣に立っている副長にぼやく。

 

「ガミラスが来た所からでしょう、艦長」

 

「いやいやいや、最近まで飛行機乗りだったのになんで戦艦の艦長だよ」

 

2ヶ月前まで爆撃機乗りだったのに、階級を上げすぎた上に人手不足と適性があったために戦艦フソウの艦長に回されたのだ。

 

「それは『禿鷹』だからでしょう。民間からの引き抜きで唯一の爆撃機乗りで今の今まで生き残って戦果を上げてるエースだからこそ、戦果を上げた上で多くの者を引き連れて来てくれるだろうという期待を込められているんでしょう」

 

「へいへい。なら、生き残りましょうか」

 

マイクを取って艦内放送の回線を開く。

 

「戦艦フソウ艦長の永井大樹だ。知ってる者は知っているだろうが、『禿鷹』と呼ばれている改造爆撃機乗りだった。それが今じゃあ戦艦の艦長だ。それだけ苦しいのがこのガミラスとの戦争だ。嫌だねぇ、勝ち目が殆ど無いってのも。それでも、開戦初期に比べれば勝ち目が出てきている。全くの戦果を挙げれなかった状況から頑張れば多少の戦果を上げて生き残れる。オレがその生き証人だ。オレは無理なことは言わんよ、無茶は言うが。だが、その無茶に各員が応えてくれれば戦果を上げて生き残らせてやる。オレの言葉に迷うな!!オレ達はどれだけ無様な姿を晒そうとも生き残らねばならない!!オレ達の後ろには戦えない者達がいることを忘れるな!!以上だ。万全の体制で動けるようにしておいてくれ」

 

「中々の名演説で」

 

「皮肉か、副長?」

 

「いえいえ、感動してますよ。普段がやる気のない姿ですから、真面目な姿にいつもこれならなぁなんて考えてもいませんとも」

 

「やっぱり皮肉じゃねえかよ。まあ良い。さっきは言わなかったが、もう一個生き残るのに重要なことがある」

 

「なんです?」

 

「運。運が悪いとどうすることも出来ないな。こればっかりはオレにもどうすることも出来ん。お祈りでもしといてくれ」

 

「誰に?」

 

「世界各国の運命を司ってる神様に。全部に祈れば一神ぐらいは手を貸してくれるだろうよ。女神が多いからイケメンじゃないと駄目かもしれんが、変わり者もいるだろうよ」

 

そう言ってから適当に祈りを捧げる。

 

「普通こういうときって戦神に祈るんじゃないんですか?」

 

「むさ苦しいおっさんの加護より美人の加護のほうが気合が入るだろう?」

 

オレの答えに艦橋のあちこちから笑いが溢れる。

 

「ちなみに艦長、回線を切り忘れているみたいで今のも艦内全てに届いてますよ」

 

「あれ、本当だ。よし、総員祈っとけ。女神を射止めれば確実に生き残れるからイケメンは真面目に祈っとけ。イケメンじゃないやつはいざという時はイケメンを盾にしろ。きっと助かるぞ。オレは三枚目で酒豪だから戦神に好かれてむさ苦しいからな。ちょっとでも女性の比率を上げてくれ。オレに気合が入って更に生存率が上がるぞ」

 

今度は確実に艦内が湧いたのが分かる。それを感じてから回線を切る。

 

「狙ってましたね」

 

「爆撃機乗りですから」

 

副長との付き合いはオレが艦長になってからだが、妙に馬が合う。これで下戸でなければ最高の相棒になれたんだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦長、先遣艦の駆逐艦ユキカゼより入電。ガミラス艦隊接近とのことです」

 

「よぉし、総員戦闘配置に付け!!宇宙服着用も急げ、その後バイタルパート以外の艦内の空気を予め抜いとけ放り出されたくなければな」

 

予想は立てていたのでメットを被るだけで宇宙服の着用が終わる。さてと、生き残りに行きますか。

 

「艦種種別、後は配置図を出せ」

 

「超弩級戦艦三、戦艦七、巡洋艦二二、駆逐艦多数。配置はこのような感じです」

 

「旗艦キリシマから砲雷撃戦用意及び取舵三十」

 

「取舵三十、砲雷撃戦用意。砲術長、狙いは駆逐艦の艦橋だけでいいぞ。近いやつから撃っていけ。他のにはミサイルしか効かん。牽制なんかする暇があるなら一隻でも減らせ。航海長、オレの合図でいつでも急速沈降できるようにしていろ。機関長、かなり無理をさせる。出力が落ちるのは仕方ないが、絶対に火を落とすな。通信長、どうせバカスカ落とされる。キリシマの被害報告だけで構わん。気にしている余裕が無いからな」

 

「ガミラス艦隊から入電、『地球艦隊ニ告グ。タダチニ降伏セヨ』」

 

「馬鹿か。降伏するならもっと前にしてるわ!!沖田司令もそんな感じに返信してるだろうよ。返信8秒後に急速沈降。砲術長、それを計算に入れておけ。射線の後ろにいる艦にも連絡入れとけ」

 

キリシマからの返信8秒後にフソウが急速で沈降し、今までいた場所にガミラスからのビームが通る。

 

「十八門から狙われてましたね」

 

「だな。後ろにいた巡洋艦はどうした?」

 

「こちらと同じく沈降しましたが、少し遅かったために主砲が吹き飛んだようです」

 

「下がるように言っとけ。こっちの戦果は?」

 

「駆逐艦二、いえ、いま三になりました」

 

「上出来だ。取舵十五。前方の駆逐艦群の中心にいる巡洋艦に向けて魚雷、その上方に向けてミサイル全弾発射。その後、左舷のバーニアを全開5秒だ」

 

指示を飛ばしたが、ロックオンせずにミサイルを撃ったことがないのか少し手間取った。これは当たるな。開きっぱなしの艦内放送に怒鳴る。

 

「艦首付近の者は下がれ、当たるぞ!!覚悟を決めとけ!!」

 

その3秒後に着弾し、艦が揺れる。

 

「隔壁閉鎖!!艦首荷電粒子砲への回路を切れ!!」

 

「ダメコン急げ!!負傷者は出来る限り自分たちで医務室へ!!今は生き延びるのが先だ!!化けて出るならガミラスか艦長の所に出ろ」

 

「面舵六十、全速だ!!オレの所に来たら後輩の加藤にお祓いしてもらうからガミラスの所に出ろ。ヤバイ、バレルロール!!」

 

戦艦でバレルロールなんてフソウが初めてだろうなと場違いな事を考えながら揺れに耐える。

 

「被害報告!!」

 

「左舷の一番外の装甲が溶けただけです!!」

 

「ダメコンはほっとけ。味方の艦はどれだけ残ってる!!」

 

「本艦とキリシマ、それと駆逐艦ユキカゼ、サミダレ、シグ、今シグレが轟沈しました!!」

 

「艦長、キリシマより入電。第一艦隊ハ現時刻ヲ持ッテ作戦ヲ終了。コレヨリ撤退スル。我ニ続ケ。以上です」

 

「殿を受け持つ。砲術長、残ってる魚雷とかミサイルとか実弾を全部ばら撒け。撤退支援だ。ついでにゴミなんかも捨てて少しでも船体を軽くしろ」

 

「了解」

 

「艦長、ユキカゼが敵艦隊に突入します!!」

 

「回線を繋げ!!」

 

「回線を封鎖しています」

 

「ちっ、砲術長、命令を変更だ。出来るだけユキカゼを援護してやれ」

 

「了解しました。主砲はどうします?」

 

「機関長」

 

「大分無茶をさせた。今撃つと船速がぐっと落ちる」

 

「バイタルパートと後部主砲と足以外のエネルギーをカットして回せ。これが限界だ。これ以上は、艦と諸君の命を預かる以上、出来ない。手が空いている者はその目に焼き付けておけ。何を思うかは人それぞれだ。敬礼!!」

 

フソウの援護を受けながらユキカゼは奮戦し、肉眼で艦の姿が見えなくなった頃、一つの爆発が宇宙を飾った。

 

 

 

 

 

 

 

「佐渡先生、いつもの奴を貰えますか」

 

「帰ってくると聞いとって用意しといたよ。本来はこんなものを使ってほしくないんじゃがな」

 

「オレだって使いたくないですけど、艦長なんてやらされちゃあ、酔ったまま指揮なんて出来ないですから。飛行機に乗る分には揺れて気持ちいいんですけどねぇ」

 

苦笑している助手の原田さんからアルコール分解酵素入りの栄養ドリンクを一月分受け取る。

 

「失礼する」

 

何処かで聞いたことのある声だなと思い、振り返ってみると沖田司令が入ってきた。

 

「むっ、君はフソウの」

 

「永井大樹二等宙佐です」

 

栄養ドリンクを沖田司令から見えない位置に素早く置いて敬礼する。

 

「君のお陰で実践を経験した多くの者が帰ってこれた。礼を言う」

 

「いえ、私と私についてきてくれた皆が最善を尽くしてくれた結果であります」

 

「それでもだ。ありがとう」

 

「はっ、恐縮であります」

 

よし、挨拶は終わった。とっとと引き上げるぞ。

 

「やはりここに居たか永井」

 

さっさと自宅に引き上げようとした所で恩師でもある土方宙将が医務室にやってくる。

 

「げっ、土方宙将!!」

 

「お前、また酒を艦内に持ち込んで酒宴を開いたようだな」

 

「いえいえいえ、そんなことありませんよ。第一、証拠なんてないでしょう?」

 

大丈夫だ。証拠は全て捨てたからな。確認なんて出来るはずがない。

 

「確かに現物はないだろうな。だがな、カメラには残っていたぞ」

 

カメラ?カメラなんて

 

「あっ、後部主砲のガンカメラ」

 

「撤退する時に投棄したゴミのコンテナから酒瓶がはみ出していたぞ。しかも、お前が学生の頃から隠れて愛飲していた酒瓶がな」

 

「しっかり密閉してたのに!?バレルロールの時にどっかにぶつけて開いたのか!?」

 

「戦艦でバレルロールなど無茶をさせおってからに。表面はともかく、中身が酷いことになっているとドッグから連絡があったほどだぞ。相変わらずだな、お前は」

 

「土方君、相変わらずとは?」

 

「こいつは民間でスタント飛行をやっていたパイロットで宇宙戦士訓練学校では航空科に所属していたのですが、酒飲みでどこからともかく酒を仕入れたり、隼に無理矢理ラックを取り付けて爆装したり、卒業後も改造した爆装機で戦果を上げているんですよ。まあ、被弾率も高いのですが、脱出ついでにそのまま被弾した隼をぶつけて更に戦果を上げている際物を少しは落ち着かせようと艦長にしたんですがね。ご覧の有様で」

 

「戦果は十分上げて部下もできるだけ生きて連れ帰ったんですから飲酒ぐらい許して下さいよ、ってかオレを艦長にしたのって土方宙将だったんですか!?」

 

「たしかに戦果はあげているがそれとこれとは話が別だ」

 

「戦果をどれだけ上げている?」

 

「航空隊時に駆逐艦二三を大破・撃沈。被撃墜四。今回ので、えっと、駆逐艦を十一はやった覚えが」

 

「正確には航空隊時に更に巡洋艦三隻を中破・撤退、駆逐艦八隻を中破・撤退。今回の戦果は駆逐艦十四隻撃沈、少なくとも三十隻を中破・撤退。フソウは小破から中破。ただしエンジンと各部スラスターはオーバーロードで中破から大破。船員五百八十名中、三十九名が殉職、負傷者十七名、内十名が重傷だ」

 

「そこまでとは」

 

沖田司令が驚いているが、やれることをやっただけとしか言えないんだよな。

 

「話は変わるが永井。ある条件を飲めば今回は説教を免除してやっても良いし、次の任務でも目を瞑ってやろう。さすがに戦闘中の飲酒は許されんがな」

 

「まじですか!!やりますやります!!」

 

やっほい、土方宙将の説教は長いからな。それから逃げられるんだったら何でもやっちゃうぜ。

 

「土方君、では、彼が」

 

「見ての通り、態度はあれですが、能力があり、人間性もまともです。頭は柔らかい方ですし、人付き合いも得意です。多少の手綱を必要としますが、問題ありません」

 

「そうか。よろしく頼むよ、永井二等宙佐」

 

「はい?」

 

あれ、もしかして貧乏くじを引かされたか?

 

 

 

 

 

 

 

「ヤマト計画ねぇ。イズモ計画の方がまだ現実味があったな」

 

渡された命令書を読みながら副長の酌で一杯引っ掛ける。

 

「あれ?艦長ってイズモ計画のことをご存知なんですか?」

 

副長がツマミの合成ジャーキーを口にしながら尋ねてくる。

 

「一応誘われたから。まあ、現実的に移住してそっちにもガミラスが来たらどうするんだよって話だからな。それなら降伏した方がいいと思うんだよな」

 

「それで、ヤマト計画とは?」

 

「部外秘、まあ搭乗員リストに副長も入ってたから良いか。簡単に言えばガミラス以外の宇宙人が地球を元に戻せるものがあるからちょっくら取りに来ないかって話がそこそこ前からあったらしい。そんでもってそれを取りに行くために新造の宇宙戦艦を作ってたんだとよ」

 

フソウに積んであった実弾とかミサイルとか魚雷もこの戦艦に搭載するための試作品だったらしい。あれは役に立った。

 

「ちなみにそこまでの距離は?」

 

「16万8000光年。いやぁ、長生きしないとな」

 

「地球、滅んでますよね、それ」

 

副長が呆れながら炭酸水を飲む。

 

「まあ、普通に考えてワープが実用化されたんだろうな。たぶん、その宇宙人からの技術提供で。火星で拾った奴らが何かを持ち込んだって噂が流れてきたからな。たぶん、それだろう」

 

「それで、そのヤマト計画で艦長は副長に降格ですか」

 

「沖田司令も艦長に降格だからな。上の辛いところよ。階級上がるけど」

 

「ということは一等宙佐ですか。おめでとうございます」

 

「おう、ありがとさん。給料上がらないけどな。ったく、貯金どころか資産も全部売り払って酒を大量に持ち込むか。最長で1年の任務らしいからな」

 

「その前にどうやって持ち込むんですか?」

 

「いつもはまあ、賄賂で誤魔化した上に別ルートで持ち込んでるんだが、今回はちゃんと土方宙将と沖田司令から許可証を貰ってきたから堂々と私室に持ち込む」

 

土方宙将は苦い顔をして、沖田司令は苦笑していたがちゃんと文書でくれたから楽に持ち込めるな。

 

「気合い入れて生き残りに行きますか」

 

「お供します、艦長」

 

 

 

次に見たい奴

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  • ダンまち 兎大魔導士
  • ゴブスレ 大魔導士
  • ネギま ダークネス
  • 龍の子
  • 遊戯王 諸行無常

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