「今月の上りがこれか。遠征、苦労の割には儲からねえよな。食糧庫で誘引剤を使って耐久戦をやった方が儲かる。とは言えヘスティア様には無理をするなと言われているし、ライドウ辺りが着いて来たがるからあまりやりたくねえ。無理をする必要はないな。むしろギルドからの遠征要請を躱す方向で考えるべきだな」
帳簿を睨みながら今後のヘスティアファミリアの行動方針を固める。
「オルガ、畑の収穫終わったよ」
ミカが部屋に入ってきて収穫したばかりのトマトを投げてくるのを受け取ってかぶりつく。
「今回は酸味がキツイな」
「うん、思ってた以上に。水が多いとこうなるのかな」
「記録は取ってあるんだろ、今度は少なめにして試せば良い。こいつは、生だとあれだがスープにはピッタリだろう」
「チーズとも合いそうだから焼いてみるってアキヒロが言ってたよ」
「そいつは楽しみだな」
ヘスティア様から恩恵を授かって3年経つが、ようやく中堅と呼ばれるぐらいの規模になった。孤児たちも今では300人を越えて、教会だけじゃ間に合わないからと周囲も纏めて買い取って孤児院も建てて、バイトの種類も増えた。
まあ、バイトに関しては問題も発生した。結果としてヘスティア様に頭を下げさせる羽目になり一層勉学に励む必要があると理解させられた。事の発端になったシノも最低限の知識と礼儀作法を真剣に身に着けた位だ。
「4番隊の調子はどうだ?」
「まだまだかな。盾の扱いと連射ボウガンの扱いは実戦でも行けると思うけど、阿頼耶識の習得に苦戦してる。やっぱり恩恵持ちだと感覚が違うらしいよ」
「そうか。阿頼耶識の空間認識能力の向上と念話は連携を行う上で重要だからな。アレが無いと誤射が起こる。いっそのこと4番隊だけダンジョンにとも思ったが。バイトの方は」
「リリルカが率先して動いてるから女の子は問題ないし、そっちを専門にしたいって子もいるみたいだけど、男は不満だらけらしいから出してない。畑での雑用も任せたくない」
「雑用で使いたくないレベルか。追放はしたくないんだがな」
ギルドからの紹介で入団した奴らだからか訓練とバイトばかりの現状に不満しかないようだな。
「一度分からせた方が良いよ、オルガ」
「だがヘスティア様が悲しむぞ」
一度は受け入れた相手だ。それを処分するのは…
「悲しむかもしれないけど、他の大勢のために割り切るよ。神様はそういうものだって自分で言ってたよ」
その話は聞いたことがある。俺の場合はヘスティア様本人じゃなくイシュタル様だったがな。本当の事らしいな。
どうするか悩んでいるところに、俺達より若い奴らの笑い声を聞いて窓に目をやる。将来に不安を持たずにいるその姿に決断する。
「4番隊を5番隊に再編成。4番隊に調子に乗っている奴らを纏めろ。ヤマギに時限式の誘引剤を用意させる」
「オルガ、良いんだね」
「調子に乗れるほど、俺達は強くない。だけど、今あそこで笑っている奴らを破滅に導こうとする奴がいるなら、俺は!」
「オルガ、最後のチャンスを与えた方が良い。今のままだと後悔を残すことになる。神様の教えだよ」
決断を下す前にミカが止めてくる。少しの間があれば多少は落ち着く。
「ああ、そうだな。いや、アキヒロ達も集めて事前に話しておこう。知らされていないのは気分が悪いだろう?」
「…そうだね。夜に集まるように言ってくるよ」
「トマトを配るついでに阿頼耶識で伝えておいてくれ」
「分かったよオルガ」
ミカが部屋を出ると同時にため息をつく。ギルドとは距離を取ろう。ウチとは考えが合わない。よくよく考えればギルドに世話になった覚えなんて無いんだ。魔石の売却だけで向こうは得してるんだからな。多少の付き合いだけで十分だろう。別に俺達は上を目指してる訳じゃねえんだ。
そう結論を出せば気が楽になる。そうだよ、同類以外を入れるからおかしくなるんだよ。リリみたいにこっちに合わせてくれる奴ならまだしも、年下だからって調子に乗る奴の面倒なんて見る必要ないじゃないか。
それでもヘスティア様への報告だけは気が沈む。団長としての責任として粛々と処理しよう。俺達は本当の居場所に辿り着いた。そこを守るために俺達は戦う。それだけだ。
「舐められてるのは分かる。それをシメるのもな。だが、そのやり方でいいのか?そいつらだけが死ぬなら良いが他のファミリアに怪物進呈されても困るぞ。一応は同じファミリアだからな」
「ヤマギに用意させるのもなぁ、絶対引きずるぜ。まあ、シメるのは賛成だがよ」
相談して良かったと思う。アキヒロとシノの言うことは正しい。
「だがどうやってシメる。あいつらと俺達はレベルが違う。上から押さえつけても理解なんてしねえぞ」
シメるのは決まってもその方法に悩む。別に俺達はなめてくる奴らを殺したいとも思っていない。
「こういうのに詳しそうなのは、イシュタルファミリアか?」
「どうだか。ガネーシャファミリアの方が良いんじゃねえか?」
「いっそのことヘスティア様に?」
「それは最終手段にしようよ。一応、冒険者組は僕らで何とかするようにって言われてるし、答えだけ教えて貰うのはちょっとね。僕らの意見を言った上で相談した方がいいよ」
色々と意見が出るが経験が無いことで何処かに手を貸して貰うと言う意見しか具体的に出てこない。
「ねえ、オルガ」
「どうしたミカ」
「今回のことって根っこの部分の問題って何?舐められるのはいつものことだったでしょ?」
「ああ、そこか。簡単に言えば今までは身内以外の、外の連中に舐められていただろう。実際、よく分かっていない連中からは舐められるような活動だからな。事実は受け止めないとな。だから怒ってないんだ。だが、今回は一応身内だ」
「身内だから不味いのなら身内じゃなくなればいいの?」
「そうだな。このまま放っておくとバイト先が減る可能性もあるし、またヘスティア様に頭を下げさせることにもなる」
「追い出せば良いんじゃないの?」
「1年はファミリアから追い出せないルールなんだよ。だから矯正するためにシメるって話をしてるんだ」
「ファミリアの中で追い出せば良いんじゃないの?」
ミカの言葉に俺達は固まる。そのままミカはいつも身に付けているドライフルーツの入った皮袋を取り出す。
「ヘスティアファミリアっていう袋から腐ったフルーツを捨てることができないなら袋の中に袋をもう1つ入れてそこに腐ったフルーツを入れる。捨てられる時になったら捨てる。それで良いんじゃないの?」
ミカに言われて考えを回す。矯正よりはそっちの方が楽ではある。矯正するってことはその後も面倒を見るってことだからな。悪くない気がしてきた。
「オルガ、俺には結構良い考えだと思うんだが」
「俺もそう思うぞユージン。あいつらは家族ではなく仕事仲間、そういう風に分ける」
「賛成だな。もっと言えば寝床だけくれてやれば良い。上納金はそのまま1割でケツは持たねえ。それでなら席を残すのは我慢しよう」
「同じく賛成だ。なんなら寝床は別に借り上げても、買い上げても良い。これからもギルドから押し付けられることを考えるなら買い上げる方が良いか?」
「寝床を別にするのは早急にやろう。下の子達に圧をかけたりしてるみたいでクッキーたちがピリピリしてるんだ」
「あいつら、そんなことまでしてたのかよ。時間が空いてる奴はガードに入れ。面倒を見てやるだけで牽制になる」
くそっ、もっと早くに動くべきだった。
「よし、とにかく俺達のグループを作るぞ。グループの名前とエンブレムを考える」
「「「エンブレム?」」」
「外の奴らからも俺達とあいつらは別なんだって分かって貰えるようにエンブレムを付けた腕章か、服の背中に縫い付けるか、とにかくグループを示す物を身に付ける。それが必要になる。今後、バイトもヘスティアファミリアではなく、新しく作るグループで受けれるように契約も変更して貰うつもりだ」
「なるほどねぇ、でもよ、俺達でエンブレムを描くのか?」
シノの言葉に全員が嫌そうな顔をする。まあ、簡単な図形や地図は書けるが、絵はちょっとな。
「モチーフだけ考えて、ライドが得意だったはずだから投げるぞ」
俺がそう提案すれば皆がほっと息をつく。
「モチーフだが、ヘスティアファミリアである以上、ヘスティアファミリアの紋章に関連するものが良いと思う」
「そうなると炉か」
「いや、オレ達を表すんだから炉である神様から生まれる鉄だろう」
「鉄をどうやって絵で表すんだよ」
「それは、ほら、あれだ、ビスケット」
「まあ、スラムの孤児と言う屑鉄鉱石がヘスティア様と言う炉で精錬されて今の僕たちって形で熱された鉄で赤色で表現すればなんとかなるかな。まあ、鉄っていうのは良いと思うよ」
「なら鉄で何を作る。剣、槍、斧、盾。一般的に使われるのはここ等へんだがよ、オレ達を表すものって何だよ?」
「俺達を表す、もしくは俺達が目指すものだな。シンプルな形の方が良いってのもある。下の奴らにもこれが俺達のマークだって分かるようにな」
俺達を表す、もしくは目指すもの。それをシンプルに。難しいな。剣や盾は、違うな。戦いを嫌う奴だっている。事務仕事の方が向いてるのや料理なんかが向いてる奴もいる。逆に戦いにしか向かないのもいる。
「…オレ、花が良い」
ミカがそう言い、全員がミカの方を見る。
「オレたちが目指したのは、オレたちの本当の居場所だ。きっとそこには笑顔があふれてるって、オレは思ってる。他に何があるかって考えて、花が咲いてたら良いと思うってアトラが言ってた」
「花か、良いな、それ。決して枯れない鉄の華、俺達にピッタリじゃねえかよ。鉄華団、俺達の居場所!」
「一度だけ警告しよう。押し付けられたとはいえ僕の眷属である君達、僕がどういう神であるかは知っているはずだ。知った上で、この暴挙かい?」
炎上するヘスティアファミリアの女子寮と避難のために出てきた僕の子供たちを背にして襲撃者であるギルドから押し付けられた眷属たちと闇派閥に属する者たちの前に立ち塞がる。
「知っているよ、その上、他の神より弱い状態で殺せるなら殺してみろって言ってるのもな」
何が嬉しいのか押し付けられた眷属たちのリーダーが楽しそうに笑う。
「そうかい。では遠慮する必要もないね。これぐらいは耐えなさい」
足元に落ちていた石を襲撃者たちに向かって蹴り飛ばし、砕けた破片が襲撃者たちを薙ぎ払う。それだけで僕の眷属たちは全滅し、3割が死を迎える。闇派閥の者たちも殆どが地面に転がるなか、一人だけが立ち上がる。
「ふむ、レベル3といったところかな。君は神に挑む権利を行使する義務がある。さあ、構えたまえ。その身で偉業を為し遂げよ」
逃げ出そうとする襲撃者の目の前に立ち塞がり、両手を広げて待ち構える。それでもなお、逃げ出した愚者に審判を降す。
「神の慈悲を払った罪、その身に、魂に刻み込むが良い。鳳凰幻魔拳、夢に擂り潰されるといい」
本来なら悪夢を見せる技だが、全ての望みが叶えられる絶望の夢に叩き込む。どんな願いであろうとも周囲がそれを叶え、努力を忘れ、自分で動くという意思を擂り潰す。最終的に輪廻の輪に溶け込み、転生することすら出来ない状態にする慈悲の無い技だ。
「リリ君、アトラ君、教会の方まで皆を誘導して上げて。ビスケット君に毛布なんかを用意させているから」
「分かりました、ヘスティア様」
「馬鹿たちはどうしますか」
「オルガ君たち幹部勢で処理するよ。教会、ちょっと本気を出して守っているから」
少しばかりダンジョンの力を引っ張って変換して結界を張ってある。最深部辺りの怪物の湧きが減るだろうけど、そもそも誰もたどり着いていない以上問題ないだろう。
さあ、戦争を始めようか。名ばかりの戦争遊戯ではなく、本当の戦争を。そのための悪魔、魔導鎧は大地に立ち、それらを駆る戦士も用意した。
いい加減、寝ぼけたままの神々を叩き起こそう。
「ロキ、大変なことが起こった!」
フィンがドアを蹴破って飛び込んでくる事態にベッドから飛び起きる。
「何が起こっとるんや!」
「ヘスティアファミリアがギルドから破壊工作を受けたとして宣戦布告、既に制圧したと喧伝されている。さらに闇派閥との繋がりを持つ職員を処刑したとも」
「いや、はぁ、ちょっ、何処までが事実やねん!?」
「全部だ。ガネーシャ、オシリス、イシュタルが闇派閥との繋がりがある職員や破壊工作を行った冒険者、闇派閥の冒険者全てから確認と証拠が出たとも発表されている」
ギリシャ系の神が混ざっとらん。そういう配慮をしたってことやろな。
「そして、ここからが重要なことだ。はっきりとそうだとは言えないけど、ヘスティアファミリアの幹部勢だと思う者たちが闇派閥の神々を処した。神威による圧を完全に無視してだ」
何を言われたのかが分からない。いや、言葉事態は理解できている。それでも有り得ないと否定したい。その中で気になる部分から確認する。
「幹部勢だと思う?」
「そこなんだ、話しによれば全身鎧姿で中身は分からず、一言も話さずに意志疎通を行い、女神ヘスティアに仕える様子を見せた上で、名前が異なる。バエル、バルバトス、グシオン、フラウロス、ダンタリオンと呼ばれていたそうだ」
ソロモン72の悪魔の名か。神に抗う力を持ち、実際に反抗するのは何時だって悪魔、か。
「まだ続きがある。ギルド制圧の報せを受けてアストレアファミリアが女神ヘスティアと幹部勢と思われる5人を拘束しようとしたが、これを拒否。強制的に拘束しようとしたがバルバトス一人に返り討ちにあってギルド前に晒された。女神ヘスティアからは『その思いだけは認めよう。だが、力が伴わなければ意味はない。そもそもがだ、法を定めていない上、君らに罪人を裁く権利や役職が与えられていない以上君らの行いはただの私刑だ』と切り捨てられた」
「…言われてみればそうやな。確かにオラリオには明確な法はない。完全な無法地帯とは言わへんけど、規則とかそのレベルやな。アストレアファミリアにそういう権限があるわけでもない。ヘスティアの言い分は正しい。やりすぎやと思っても根拠は無いな」
明確なトップがオラリオには居らへんし、神は基本的に君臨すれども統治せずで行っとる。アレスみたいなのもおるけど、少数派やな。ウラノスが一番苦労しとるからその分ぐらいは上に見てもエエって考え程度。あとは全部力が物を言うのがオラリオや。
「アストレアファミリアの今後は不明だ。正義を掲げていた集団だけに、正面から負けたと言う事実は市民にとっては裏切りだ。オラリオで活動できるかどうか」
フィンが頭ん中でソロバンを弾いとるみたいやな。ウチで治安維持をやって評判稼ぎでもするつもりか?あのヘスティアがそれを許すかどうか。たぶん、傘下に治めて運用に口を出すつもりやろな。ギルドも同じやろな。オシリスだけじゃなくガネーシャとイシュタルともつるんでる以上間違いない。
「フィン、団員を暫く拠点に詰めさせとき」
「ロキ?」
「訳は後日説明したるさかい、数日間拠点から出すな。食料なんかはラウルだけに買いに行かせて追加料金払ってでも配達して貰い。この件にウチラは関わったらアカン。ヘスティアの所の5人、それで全部とは言いきれんし、今は少なかったとしても72人まで増えると思っとき。廉価版も用意してくるかもしれん。あれがなんとかなったとしてもヘスティアが出てきて全部が終わる。フィンはただでさえヘスティアに嫌われとる。物事を混ぜて考えたりはせえへんらしいけど、それはそれで済まされるかもしれん。これ、提案やお願いやない、命令な」
命令の部分で神気を出して念を押しておく。停まらんかったら、残念やけど切り捨てる。ウチもまだオラリオに居りたいし、他の子供たちも大事やさかい。
ギルドを制圧し、アストレアファミリアを鎮圧したことで僕らの存在感を高めることが出来た。フレイヤはこちらを覗いていたので気付き、ロキは関わると不味いと考えて引きこもった。これで神会での立ち回りが楽になる。
「オラリオの、正確にはギルドの運営に関してだが雑な部分を詰め直す。まずは治安維持だが、歓楽街に関してはイシュタルファミリアが、一般人の居住エリアをガネーシャが、ダイダロス通りなどのスラムや貧困層と呼ばれるエリアを僕のヘスティアファミリアが受け持つ。それに対してギルドから治安維持費を出す」
「そして、報復部隊としてオシリスファミリアを正式に認める。ギルドに窓口を作り、そこに報告が入ったあとに情報を精査し、必要とあれば報復に出る。無論、こちらもギルドから報酬を出す」
「なお、アストレアファミリアは今まで善意で行っていた治安維持を控えて貰う。正確には正当性を持たせないと言うのが正しい。現場が一緒になったのならイシュタル、ガネーシャ、ヘスティアファミリアの指示に従って貰う。不当だと感じたのなら後日、ギルドに報告する権利は与える。それらに対しても認められれば担当ファミリアに罰が与えられる。だが、訴えに妥当性が無ければアストレアファミリアに罰が与えられる」
「また、治安維持に関してだが、事前にエリアごとに基準を設けて書類を作成し交付する。基本的にはその書類を基準に治安維持を行う。エリアごとに異なるのは一括に裁くのが不可能だからだ。一般人の居住エリアの基準を歓楽街に持ち込めば歓楽街が潰れる。逆なら治安維持は不可能だ。よって最初から分ける」
「罰則に関しては基本はハンムラビ法典を使うつもりだ。目には目を、歯には歯を。それだけ厳しいものにするつもりだ。また、ディアンケヒトの所での治療費の2倍での罰金刑も採用する。被害者の治療と被告の治療費分だ」
「基本はこんなところだ。文句があるなら最高値で買おう。ルール無用の本当の戦争で擂り潰す!」
誰もが黙り込むなかでヘルメスが恐る恐る手を上げる。
「質問かい、ヘルメス」
「はい。あの5人は一体?」
「僕の眷属達さ。初期組から選抜している。鎧は僕の秘技により、眷属達の骨肉によって産み出した、あの子達のもう1つの身体『ガンダム』だ」
「それの製造方法って、公開して貰えたり?」
「既に鍛冶系の神に公開してある。交渉は個人で行えば良い」
そう言うとヘファイストスが口を挟む。
「あの、ヘスティア母さん、確かに教えては貰ったけど、私には無理よ。と言うか、子供達が耐えられないわ」
「根性が足りないね。オルガ君達は全身揃えるのに2年かけたけど、それでも耐えたと言うのに」
「えっと叔母上、どういう意味ですか?」
「言っただろう?骨肉によって産み出したと。文字通り、自ら身体を切り落として作ったんだよ。肉は腕や脚、骨は肋を主に使ってるよ。薬や魔法を使うと不純物が混ざることになるから痛みに耐える必要があるけどね」
「いや、えっ、そんな馬鹿な!?狂っている、それを教える叔母上も、その眷属も狂っている!」
「何を言う、君達が求める英雄も同じじゃないか」
「絶対に違う!英雄っていうのは、もっと胸がワクワクするような「常識に囚われない存在」…そうです。それが分かっていて「君達が見ているのは英雄のコインの表面だけだよ、ヘルメス。そして、オルガ君達が見せたのは裏面だ。オルガ君達の表面は君たちにとってはつまらないと思うことだ。自分達と同じような、苦しんでいる孤児を一人でも減らそうとする活動さ。それは普通なら称賛に値するし、僕にとっては十分に英雄と呼べる。まあ、僕が英雄嫌いだから本人達も拒否するだろうけどね」
「英雄が嫌い?」
「ヘルメス、いや、ここにいる皆に聞こう。君達の推しの英雄の活躍を思い浮かべてみて」
しばらく待ってから問いかける。
「奪うな、壊すな、殺すな。守っていた英雄の名を上げてみろ」
「「「ヘスティア母さん」」」
「…いないようだね。僕としてはアスクレピオスを推したいところだが、彼も理を破壊しようとしたと言える。理解できるかい、英雄っていうのは破壊者の一面を持つ者なんだよ。破壊の結果、語り手の主観によって正邪が決められる。だけど英雄と言うコインの価値は変わらない。それなのに君達は表しか見ない。全方向から見て、初めて英雄と言うコインがどういう物なのかが理解できる。磨かれて光っているのか、汚れて曇っているのか、磨耗してくすんでいるのか、作られたばかりで綺麗なのか」
周囲を見渡せば理解できていない神の方が多い。
「君達の考えは薄いんだよ。彼らは自分達の意思で生きている。君達の玩具ではない。カルナが良い例だ。アルジュナがマザコンに敗北したのは体裁が悪いと隠して虚飾にまみれたアルジュナを持て囃す。同じことだよ、ヘルメス」
ヘスティア・ファミリア
1番から4番隊までを抱える43人で構成される中規模ファミリア。団長はレベル3のオルガ・イツカ。エースのレベル4のミカヅキ・オーガスとアキヒロ・アルトランド。実働部隊は1番から3番で、4番は改宗及びレベル1の新人から構成される。下部組織に鉄華団を有し、オラリオの便利屋と思われている。1番から3番の団員と鉄華団上がりは全員が阿頼耶識を使用できる。
別のファミリアから悪魔と称される幹部専用装備であるガンダムは圧倒的防御力と環境適応力を誇る。文字通り自分の骨肉を削って作り出したもう1つの身体であり、阿頼耶識の力を使って精神力を利用して稼働する。素材は生体装甲の一種であり、体力や精神力、本人の骨肉を食らって成長、修復が行われる。
1番農作部隊・2番屋台部隊・3番生産部隊
1番農作部隊長ミカヅキ、2番屋台部隊長アキヒロ、3番生産部隊長シノがまとめる実働部隊。ダンジョン遠征ではなく、普段のバイトの部隊である。主にその系統が多いだけで他のバイトを行うこともある。
鉄華団の維持管理にユージンとビスケットとアトラとリリルカ、これに団長であるオルガが幹部として扱われる。戦闘力よりも管理能力が幹部に必要なのが特徴である。(全員がガンダムを生み出すだけの覚悟ガンギマリなので戦闘力がないとは言わない)
鉄華団
ヘスティア・ファミリアの下部組織。孤児院の運営と慈善活動、人材派遣を主に行っている。ヘスティア・ファミリアに入団するための入り口と思っても良い。仕事時にはお揃いの背中に『決して枯れない鉄の華』が描かれているジャケットを羽織っている。(飲食物を提供する場合は除く)
現在、400人近い人数が所属しているが、まだまだオラリオで衰弱死する孤児はいる。